第8話 部活紹介フェスタ 1
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俺達の追いかけっこは、俺が階段脇の通路で詰む形で終わった。くそ、中庭とかに抜けられなかったか。
「結構楽しかったね」
「私は疲れちゃいました」
詩穗と結衣菜は軽く汗を掻きながら笑って俺を両側から拘束していた。左手を結衣菜が、右手を詩穗がそれぞれ手を握ってきており、俺は連行されるように部活紹介フェスタとやらを回っていた。
「もう逃げないから離してくれませんかね?」
「「駄目」」
2人は声を揃えて笑顔で俺に言い放ってくる。
「そういえば、なんで私達は追いかけっこしていたんだっけ?」
「そういえばなんでしたっけ?」
良かった!追いかけっこの理由を忘れてるみたいだ!それにしても2人の手は小さいな。やっぱりこうしてみると詩穗の方が少し小さいか?
「まぁ、いいや!この方が楽しいからってことで」
「私はりん君と手を繋いでいたいだけだけど」
「もう、本当に一ノ瀬さんは可愛いね」
「・・・結衣菜でいい」
「へ?」
「だから・・・その・・・結衣菜でいい」
「そっか・・・うん!わかった。じゃあ結衣菜ちゃんで。私のことも詩穗でいいから」
「わかった、詩穗ちゃん」
「うん」
なんか知らないけど、結衣菜と詩穗が仲良くなったようでよかった。
「それでどこに向かっているんだ?」
(ついでに言うと、いつまでこの公開処刑が続けられるんだ?)
流石に後者は口に出すことは出来なかった。
周りからは男子の嫉妬の視線が痛いほど伝わってくる。まぁ、俺と結衣菜のことは噂になっていると聞いていたから、なんかあのカップルは・・・とかは聞こえてくるが、今はそれに加えて詩穗とのこともあり、男の敵とか聞こえて来ているんですけど・・・。
「ん~・・・このままグラウンドの方に行く?」
「グラウンドには何があるの?」
「えっとね~・・・」
「なになに、サッカー部、野球部、ソフトボール部に陸上部」
俺は詩穗が持つ上北がくれた紙に目を落として読んでみた。
「結構まともな部活だね」
「まぁ、これがない学校の方が珍しいかもね」
だが、その他に書かれている部活や同好会は変なのが多い。
「ねぇ、このバ部って何かな?」
「バブーって赤ちゃんの真似か?」
「違うよ!?ほら!ここ!!」
詩穗は否定をしつつ、俺の手を解放して地図を指差して言ってきた。
「本当だな。なんだバ部って」
「・・・グラウンドにあるってことは、運動系なのかな?」
「他の部活を見つつ行ってみるか」
俺達はグラウンドの部活を見るべく、向かい始めた。
(って、なんで詩穗はまた俺の手を繋いでくるんだ!)
またもや俺は公開処刑されながら、グラウンドに向かったのだった。
☆ ☆ ☆
「・・・なんじゃこりゃ」
「あははは!あれおかしいでしょ!」
「あ、あれは何?」
俺達はグラウンドに出ると、三者三様の反応を示した。
はっきり言うと、グラウンドはカオスと化していた。いつからこの学校はコスプレ大会になったんだ?
グラウンドには野球部がユニホーム姿で、野球体験をさせているみたいだ。これはまだわかる。
サッカー部もユニホーム姿でPKのようなことをやっている。これもわかる。
陸上部は・・・なんだあれ?着ぐるみか?
そして、ソフトボール部はというと。
「ソフトボールって水着でやるもんなの?」
「そんなわけないじゃない」
「でもあれは・・・」
「どこから見ても水着ですね。しかもビキニとかも着てますよ?」
「まだ4月だぜ?寒くないのか?」
見るからに寒そうなのだが、ソフトボール部の女子達を見てみると、汗を結構掻いている。
(あ、運動しているから平気なのか?)
ソフトボール部の部員達はなんだかんだで動き続けている。あれだったら暑くなるから大丈夫なのか?
そんなソフトボール部員を男子生徒は遠目から見ている人が多くいるようだ。まぁ、男としては当然だよな。
でも、なんか別の競技に思えてしょうがなかった。
「りん君、あまり見ないでね」
「そうだよ。ああいうのは見ない方がいいよ」
「わかってるよ。で、バ部だったか?それはどっちでやっているんだ?」
「えっとね~・・・あっちみたい」
詩穗の案内でその謎の部活、バ部に向かう俺達。そこに向かうまでの間に詩穗は俺の手を解放してくれた。どうやら恥ずかしくなってきたらしい。
その向かうまでの間も他の部活も横目で見ていたが、なぜか着ぐるみが長距離走を走っていたり、脱衣野球拳(男限定)をやっていたりしている活動もあった。
(いや、着ぐるみで長距離って死なないか?しかも野球拳(男限定)ってやつも女子で沸いているし)
俺はそれらを見つつ、バ部と思われる場所に到着をする。
「・・・・・・これがバ部?」
「うーん・・・、場所はここだと思うけど」
「あ、合っているみたいだよ」
結衣菜が指を差した方にバ部と看板のようなものがある。ただ部員は5人ほどしかいないが。
「おお!君達!バ部に興味があるのか!?」
「あ、いえ、なんの部活だと思いまして」
「見て分からないのかい?」
「「「・・・・・・・・・・」」」
俺達は部員の姿を見てみる。
部員は子供が馬に乗って揺れるおもちゃの大人バージョンみたいのに跨って前後に揺られていた。
いや、本当になんの部活?
「申し訳ないですがちょっとわからないですね」
一応先輩ということで俺は敬語で返答する。
「これは馬術部さ」
「馬術って馬に乗るあれですか?」
「そうだ!だが、部費が足りず、こういったおもちゃにしか乗れないんだ」
(じゃあ別の部活とかにすればいいんじゃ)
「それって名前のせいではないのですか?」
「な、なに?」
「あ、いえ、バ部だと何の部活かわからないですし」
「・・・・・・そうなのか?」
「は、はい、私達はそれで何の部活かを見に来たわけですから」
詩穗もがんばって敬語で何がいけないのか説明をする。
「部長、やはり正式に馬を買ってから馬術部にするってのは、無理があったんじゃないんすか?」
「やっぱりそうだよな」
「お、お前達!それでは馬に示しが付かないではないか!」
(え~、馬に示しつける前にバ部って名前つける方もどうなんだ。馬が来てからって・・・そんなだるまの目を書くみたいなことを部名でしなくても)
俺は内心で色々とツッコんでおいた。
「ねぇ、今の内に何処かに行かない?」
「そうだな。ここは詩穗を生贄にして」
「ひどい!」
俺達は部員同士でごたごたしている内にその場を退散することにした。