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第88話 肝試し?

 俺と詩穗の前のペアであるはじめ、結衣菜ペアから5分間隔開けて俺と詩穗は洞窟へ入った。


 すると、前方の奥の方から、結衣菜の悲鳴が聞こえてきた。


「な、何か仕掛けでもあるのかな?」


 手も繋いでなかった詩穗が、俺の腕にしがみつきがら聞いてきた。


「上北が関わってる時点で、何かあると考えていいと思うぞ」


「はぁ、やっぱりそうだよね」


 詩穗は肩を落として答えた。詩穗も上北のことをだんだん分かってきたようだ。


 洞窟内は懐中電灯の灯りしかなく、とても暗い。


 通路みたいなものはあるにはあるが、ほとんどが岩を削ったような道で、とても歩きにくい。


 所々の岩には水溜まりも出来ているので、ここは満潮時には海に沈むのかもしれない。


 幾つか道は分かれていたが、上北の説明通り、紐で入れないようになっていた。なので実質一本道になっている。


 そんな暗い洞窟を詩穗とゆっくりと進んで行く。


 カチ


 歩いていたら、何かのスイッチのような音がした。


 次の瞬間。


「なっ!?」「きゃあっ!?」


 水が頭上からざばぁっと音を発てて降ってきた。


 せっかく乾いていたのに、一気に濡れてしまった。幸いなのはまだ水着を着ていたことだ。


「なんなのよぉ」


 詩穗は髪の毛が顔にべたっと張り付いてしまったようで、髪を整えていた。


 俺は上を照らして確認してみると、大きなタライが逆さまになった状態でぶら下がっていた。


「また古典的なトラップを」


 足下のスイッチで稼働するようになっていたのだろう。床にも黒く塗り潰されているが、後から付けた木の板で出来たスイッチを見つけた。


 その後にも幾つかトラップがあったが、どれも水を使ったトラップで、詩穗と一緒にずぶ濡れになってしまった。という、これは肝試しというのだろうか?


 洞窟内は外より涼しいので、これだけ濡れていると風邪を引きそうだ。


「詩穗、大丈夫か?」


「少し寒くなってきたかも」


「とはいっても拭くものもないし、着替えもないしな」


一先ひとまずこれで………。ふぅ暖かい」


「おい」


 詩穗は俺の背中に抱き付いてきた。


 確かに詩穗から熱は伝わってきて、俺も暖かくはなった。


 だが、詩穗は水着だ。


 殆どないと言っても、詩穗の慎ましい胸が背中に当たっているのはわかる。


「うん。もう大丈夫。琳佳君、行こ」


 詩穗は頬を赤く染めながら俺の腕を引っ張ってきた。


「恥ずかしいならやらなきゃいいのに」


「い、いいの!本当に寒かったんだから!それに琳佳君にはこれまでにも何度も…………」


 そこまで言って、詩穗は赤かった顔が更に赤くなった。恐らく今までのことを思い出したのだろう。


「そういえば琳佳君に見られちゃったんだよね………。それにあの時は…………」


「し、詩穗!早く行くぞ!」


 このままでは負のスパイラルに入りそうだったので、今度は俺が詩穗の手を取った。


 ちゃんと付いてきてくれてはいるが、詩穗の顔は俯いたままだ。


「……………琳佳君」


「なんだ?」


「結衣菜ちゃんの次でいいから、私も愛してくれない?」


「いきなり何を言ってるんだよ」


「だ、だって…………女の子として大事なところ、琳佳君に見られ」


「もうそのことは忘れたよ」


 面倒なことになりそうだったので、できるだけ優しく言う。


「ほ、ほんとに?」


「ああ」


「私が見た目と違ってボーボーだったことも?」


「え?つるつるだった記憶が…………あ」


 そこまで言って誘導されたことに気が付いた。


 詩穗の方を見てみると、顔や首だけでなく、身体まで赤くなり、プルプルと震えていた。


「……………結衣菜ちゃんに相談、しようかな」


 なんかおっかない言葉が聞こえてきたが、これ以上蒸し返さないために、聞かなかったことにしよう。


 それからも洞窟はまだ続いていた。


 そして、突き当たりと思われる場所に、古い祠がひっそりと佇んでいた。


「こんなところに祠か?」


 離れた場所から懐中電灯で照らして見てみる。


 相当古いのか、あちらこちら傷んでいるのが見てとれる。


 祠の前には看板があるが、こちらも古く、書かれている文字が掠れていて読めない。


「琳佳君、祠のところに何か置かれてない?」


 詩穗に言われた辺りを照らして見ると、お札のような物が置かれていた。


 近付いて見てみると、このお札は真新しく、後から置かれた物だと気付く。


「まさかこれを取れってことか?」


 俺はしゃがんでそのお札を手に取ると、地面を踏む足下の感覚が無くなった。


「は?………っ!?!?!?」


「きゃあぁぁぁぁ!!」


 俺達は叫びながら、突然空いた穴に落ちていった。


 すると、すぐに何かに着地して、流れの速い川のようなところを滑り台のように滑り落ちていく。


「りりりり琳佳君!どうなってるの!?」


 いつの間にか詩穗が、俺を跨ぐようにしてしがみついていた。


「わかるわけないだろ!!」


 手探りをするも、周りはつるつるとした感触しかなく、水と共に滑り落ちていく。


 まるでウォータースライダーのようだ。


「ん?」


「どうしたの!?」


 半ば狂乱気味の詩穗が叫びながら聞いてくる。


「いや、暗くてわかりづらいけど、これってウォータースライダーなんじゃ」


「へ?……………きゃあ!?」


 次の瞬間、ザバンと大きな音を発てて、俺達は着水した。


 そこは明るく、洞窟内とは思えない程に整備されていた。


「お疲れ様、りん君、詩穗ちゃん」


 詩穗と2人で状況が飲み込めずにポカーンとしていると、結衣菜がプールを泳いできて、そんな言葉で迎えてくれた。


「もう!2人とも遅すぎ!!」


 莉愛もやってきてそんなことを言ってくる。


 いまだに状況が飲み込めない俺達は、ただ呆然とすることしか出来ない。


「お二方、どうだった?結構楽しめただろ?」


 そう言いながらやってきたのは上北だ。


「偶然見つけた屋敷の地下について美浜殿に聞いたら、この施設のことを教えてくれてな。肝試しに使いたいと打診したところ快く引き受けてくれたのだ」


「そ、それじゃあ今のは本当のウォータースライダーだったのか?」


「そういうことだ。それよりお前達はそのままでいいのか?一ノ瀬が嫉妬するぞ?」


 上北に言われ、自分の身体を見下ろすと、詩穗がまだ抱き付いたままだった。


「ご、ごめんなさい!!結衣菜ちゃん!違うんだよ!これは」


 詩穗は慌てて離れながら結衣菜に謝り始めた。


「わかってるよ。最後のは結構怖かったもんね。でも詩穗ちゃんはりん君に気がないのはわかっているから大丈夫だよ」


 結衣菜はニコニコしながらそんなことを言う。


「あの、えっと、それはその………うん」


 結衣菜の凄みに圧されたのか、詩穗は迷った後に静かに頷いた。


 そしてこの後は、地下のプールにあるウォータースライダー等で皆で遊ぶのだった。

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