第77話 変異アメーバ捕獲作戦 2
俺達は順調に変異アメーバを捕獲していった。
因みに詩穗以外は下着姿となっている。
莉愛は堂々としており、水着と思えば問題無いと言っていた。
しかし、近くにいる結衣菜は顔を真っ赤にしながら動いていた。やはり凄く恥ずかしいらしい。
詩穗のところには一匹も変異アメーバが来ないので、仕方なく結衣菜と莉愛のサポートをしていた。この時からなぜか詩穗は機嫌が悪そうだった。
「そろそろ出なくなってきたか?」
ホースから水は出しっぱなしになっているが、変異アメーバは一向に出てこない。
「詩穗ちゃん!後ろ!!」
「へ?きゃあっ!!」
詩穗の後ろにいつの間にか1メートル以上はありそうな変異アメーバがおり、詩穗に襲い掛かっていた。
俺はすぐに助けるために動いた。
「なっ!?」
しかし、いきなり変異アメーバが水を触手のように伸ばして、俺の足を絡め取ってきて転んでしまう。
「りん君!きゃあっ!!」
「ちょっ!ちょっと!!離しなさいよ!!」
俺は起き上がろうとするが、足を絡め取られているので、上手く起き上がれない。
声がして方を見てみると、結衣菜はお腹に触手が巻き付けられ、身動きがとれなくなり、莉愛は腕と足に触手が巻き付けられていた。
「待ってろ!こんなものすぐに」
すると、目の前にパサリと黒い大人なパンツが落ちてくる。
「えっ?ウソっ!?」
声がした上を見上げると、そこには異性には見せてはいけない場所が。更に上の方には小さいが男とは明らかに違うピンク色の部分も………。
「見ないでっ!!!」
「ぐほっ!!」
詩穗が足で俺の顔面を踏みつけてきた。一瞬足を上げた時に更に凄いのが見えた気がするのは気のせいだろう。
「え?え?なんで!?下着は大丈夫なはずじゃ」
顔面の痛みに耐えながら声がした方を見ると、結衣菜が消え行くパンツを抑えていた。俺の位置からはその………また見えてしまっていた。
「くそ!こんなもの!!」
俺が足に巻き付いた水の触手に触れると、ただの水となり、ズボンを濡らした。
「は?いったい何が」
俺は何が起こったのか分からない。しかし、これなら。
「詩穗、悪い!」
「ひゃっ!?」
詩穗の方を見ないようにして、詩穗の身体に纏わりつく変異アメーバに触れると、逃げ出すように詩穗の身体から離れていった。
そして次に結衣菜の方に向かう。
「結衣菜!」
「ひゃんっ」
結衣菜のお腹付近に纏わり付いていた変異アメーバに触れる。こっちはすぐに水に戻っていった。
「もうやだぁ!!」
「りん君、あんまりこっち見ないで」
詩穗は胸に両手をやりその場に座り込んだ。結衣菜はパンツだけやられたので手でそこを隠していた。
「莉愛は」
「ふん!どうよ!!」
莉愛はすっぽんぽんの状態で武器であるラケットを片手に仁王立ちをしてふんぞり返っていた。
隠す気がないのか、胸も下も丸見えの状態だ。
「琳佳!さっきの奴はどこ!!」
そしてその状態でこちらに身体を向けて怒鳴るように聞いてくる。
「た、たぶん向こうに行ったぞ」
俺が教えると、莉愛は隠す気ゼロで俺の目の前を横切り駆け足で向かっていった。
(うん、いい感じで胸が揺れてるな、眼福だ。)
「りん君、何を見てるのかな?」
「べ、別になにも………、他にはもういないのかなっと」
結衣菜から軽蔑の視線を受けて、莉愛から目を逸らす。
俺は誤魔化すように莉愛のいない方を見渡す。
(うーん、水は出しっぱなしだけど、出てくる様子はないし、これで終わりでいいか?)
「一、一応もう出てくる感じはしないぞ」
『了解、念のためもう少し警戒しててくれるかい』
「了解」
俺達はもう少しだけ警戒を続けた。あ、因みにこの時に詩穗は前線離脱した。
☆ ☆ ☆
「ふむふむ。戻るような簡単な命令は聞くようだな。僕の遺伝子を組み込んだだけはある」
琳佳や結衣菜達が戦いを繰り広げていたプールに備え付けられている教員が使用する部屋の中で、戻ってきた変異アメーバを見ながら呟く小さな人影があった。
「下着も溶かせるように出来たし、これを量産すれば。後は男用にも改造しようかな。それはそれで女子に需要ありそうだ。そうなると男の協力者が必要か」
小さな人影、生物科学研究部部長はぶつぶつと今後の展開を頭の中に描いていく。
「あの男にまた頼むか」
「俺は協力はせんぞ」
部長はいきなり背後から声を掛けられビクッと身体を震わせた。
後ろを振り向くと、上北が腕を組みながら立っていた。
「おお!上北君ではないか。丁度良かった。また協力を」
「しないと言ったぞ。あんたは何をしようとしている。何を目指しているんだ」
珍しく上北は冷たい視線で部長に言葉を投げる。
「これは男の人の夢を叶える道具だよ。君だって男だ。こういうのは好きなのだろ?上北君」
部長は自分に変異アメーバを纏わり付かせる。
すると部長の着てきた制服は溶けていき、僅かに膨らむ胸や、いろいろと肌色の面積が広がっていく。
「俺はそういうものに興味はない。それに、そんな色仕掛けにもならん身体をよく見せようと思ったものだ。それにあんたの目的はそれを売り捌くことだろ?最近ネットショップで買うものが無いのに、いろいろと見ているようではないか。それだけではないぞ。他にも」
上北は生物科学研究部部長の家族や友人、更には普段の様子等も細かく調べ上げていた。
上北は偶然ネットでこの学校の様子がアップされていることを知った。
上北はそれを校長である久遠先生に大丈夫なのかと問いたところ、殆どが健全なものであり、久遠先生も許可を下ろしていた。
しかし、不健全なものや許可していないものも流れていると、久遠先生は頭を悩ませていた。
上北は今後、何かあったら助けてもらうことを約束させ、調べることにした。
そして浮上してきたのが、目の前にいる生物科学研究部部長だった。
それとなく興味があると匂わせて、上北はこの部活の部長に近付いていたのだ。
「………………………」
上北は調べがついていると言わんばかりに部長に向かって証拠を突き付けると、部長は黙り込んでしまう。
「それにその後ろに置いた物はなんだ?どうせあいつらのことを盗撮でもしていたんだろ?最近ネットにアップしてるのもあんただろ?」
「…………ははは、洞察力のある君は騙し通せなかったみたいだね」
「その発言は認めるということか?」
「もちろん認めるよ。でも巨額を手に入れるためにはやめるわけにはいかないのさ。良い大学には大きなお金が必要なんでね」
不敵に笑う顔からは、反省の色はまったく見えなかった。
「そうか。ならもう容赦はしないでいいな」
上北は胸ポケットからボイスレコーダーを取り出す。
「本当は警察に突き出したいのだが、一応依頼なのでな。これを校長に渡すとしよう」
「やれるもんならやってみたら?ここの校長は殆ど不在なのは知って」
「はーい♪祝芽峰高等学校校長の天音 久遠でーす♪」
「は?」
部長はいきなり登場した久遠先生に呆然とする。
「ごめんねぇ♪私、一応ここの校長もしてまーす。上北君からいろいろと報告は上がってるし、これで証拠も掴めたから、後は貴方の態度で今後の人生変わってくるから、大人しくしてね♪」
久遠先生がそう言うと、生物科学研究部部長は膝を付き、その場に崩れ落ちるのだった。
「あ、この子も私が貰ってくね」
久遠先生は部長を引き摺り、変異アメーバを自らの肩に巻き付かせ、その場から出ていった。
「あっ、本当に服が溶けてきた!?早く戻らないと!!」
聞こえてきた久遠先生の声を聞いた上北は大きく息を吐いた。
「一のところに戻るか」
上北は一件落着と心の中で呟き、1人で戻って行った。
そして、一や琳佳と一緒に片付けを済ませ、プールの方も片付けることにする。
捕まえた変異アメーバは生物科学研究部の方へ引き渡した。
使用した機械はロボット部にお礼と共に返却し、部室に3人で戻った。
「もうお嫁に行けないよぉ」
中に入ると、詩穗が机にうつ伏せになり、騒いでいるのだった。