第74話 作戦会議
「えっ、なんで莉愛がいるんだ?」
結衣菜が変異アメーバを捕獲してから数日後、放課後となり部室に行くと、何故か中学生である莉愛が私服姿で座っていた。
「えっと、莉愛は琳佳に呼ばれて来たんだけど」
「は?」
「え?」
もちろん俺は莉愛を呼んだ記憶はない。何がどうなっているんだ?
「おぉ桜坂、予想以上の早く来たな」
「げっ、何で上北がいるのよ」
「俺が呼んだからに決まってるだろう」
「え?でもメールは琳佳から………」
莉愛はスカートのポケットからスマホを取り出し確認する。
すると、プルプルと莉愛が震えだした。
「どうしたのだ桜坂。お前は何かを勘違いしているんじゃないか」
「……………」
莉愛はそんな上北の言葉に目もくれず、スマホを見続けプルプルしていた。
俺は莉愛のスマホの画面を莉愛の後ろから確認する。
そこには件名に俺の名前が書かれ、宛先名の所には莉愛が登録していないメールアドレス。つまり上北のアドレスが表示されていた。
「なんて………間違いをしてんのよ。莉愛は………」
恐らく件名の俺の名前を見て勘違いしたんだろう。
「このような手に引っ掛かるとは落ちぶれたものだな。いや、お前はこういったことには素直に引っ掛かることは得意だったかな」
「こんのぉ………上北ぁ!!」
「おっと」
殴り掛かってきた莉愛をひょいっと避ける上北。
「避けるな!」
「そんな攻撃力のありそうな攻撃に易々当たるわけにはいかんからなっと」
部室の中で上北と莉愛の追いかけっこが始まった。
「ほれ」
「おまっ!?」
上北が俺の後ろに来た時、俺は上北に殴り掛かろうとしている莉愛の方へ突き飛ばされた。
「えっ!きゃあっ!!」
俺は莉愛を押し倒すように倒れてしまった。
咄嗟に莉愛の拳を避けようとしたものだから、莉愛の胸へ顔からダイブしてしまう。
「も、もう琳佳ったら。莉愛の胸がそんな恋しかったの?」
「んなわけあるか」
俺は起き上がりながら言う。
「莉愛、怪我してないか?」
「うん。琳佳が飛び込んで来てくれたことの方が嬉しかったから、痛みなんてどっか行っちゃった」
「そ、それならいいけど」
なんか莉愛の言葉に少し恐怖を感じながら返事をする。
「ふむ。落ち着いたところで今日やることを説明会するぞ」
「「誰のせいでこうなったんだよ(のよ)!!」
何事も無かったように話し始めようとする上北に2人でツッコミを入れてしまう。
それから変異アメーバ捕獲の作戦会議が始まった。
今日は学校側にも協力を取り付けており、放課後の部活動は中止にしてもらった。
なので今日の放課後はいつもどこからか聞こえてくる部活の喧騒は聞こえてこない。
部活動をしているのはここ新聞部と生物科学研究部の2つだけだ。
何故このような対策を取ったのかというと、変異アメーバは水道管を通って、餌となり得る女子がいる場所に出るらしい。
部活で生徒が多くいるとトイレはもちろん、手を洗う等の行為で出現場所がバラバラになってしまうからだ。
「ねぇ待って。莉愛が呼ばれたのって」
莉愛が嫌な予感を感じ取ったのか口を挟んできた。
「囮になってもらうからに決まってるだろう」
「やだよぉ!!囮なんてっ!!」
「なぁに。死ぬことはないから安心しろ」
「でも裸になるんでしょ!!」
当たり前のことだが、莉愛を含め結衣菜と詩穗も目で『嫌』と訴えかけている。
そう。今この学校にいる女子はここにいる3人と生物科学研究部の数人しかいない。
狙われるのは彼女らしかいないのだ。
「安心しろ。男全員、生物科学研究部の部室で待機することになっている」
「ねぇ上北君。それって私達だけで捕まえろってこと?」
詩穗が不安そうな顔で聞いてくる。
「一応その予定だ」
まぁ、女子が裸にされつつある場所に男子が入って捕まえるわけにはいかないしな。
「それとグループをここの3人で1グループ、生物科学研究部の方で2グループと分け、3ヶ所で網を張る」
「えっと、それはどうして?」
結衣菜が質問をする。全員でやった方が早く片付くと思っているのだろう。
「1ヶ所に全て集めたとしても数で押されることを危惧するというのが1つ。それとその………なんだ」
いきなり上北の歯切れが悪くなった。
「上北。何を隠してるのよ。私達が捕まえるんだから早く言いなさいよ」
1つ年上の上北に強く当たる莉愛。
「………あいつらは合体する可能性がある」
そう。あいつらは元々1つだったからなのか、複数が集まり個になることがあることが、生物科学研究部の部長から聞いてわかったのだ。
俺も上北からそのことを聞いた時は驚いた。それって本当にゲームとかで出てくる○ング○ライムみたいな感じじゃん。
「合体って………。そんなのどうやって捕まえればいいのよ」
莉愛が絶望的な顔で呟く。
「安心しろ。ちゃんと作戦は考えてある。新聞部の場所は室内プールになる。なのでプールの半分程の大きさの袋を置いて追い詰めようと考えている。桜坂達はそこで誘い出しを頼む。誘い込んだらこの無線で合図を貰えれば、外で待機している俺達が袋の口を閉じる」
「なんで外にいるのよ!」
「お前達は服を溶かされ裸になるのだぞ?男の俺達がいるわけにはいかないだろ」
一応着てもらう服は学校で用意して貰った制服を使うので、結衣菜達の財布に負荷はないが、あれを相手にする際には一緒にいるわけにはいかない。これはしょうがないことだ。
そう思っていたのだが。
「琳佳なら見られても大丈夫だから一緒にいなさいよ」
「おまっ!何を言って」
まさかの莉愛の言葉に俺は叫んでしまう。
「わ、私もりん君になら下着姿ぐらいなら………その」
結衣菜もそんなことを言ってきた。
「し、詩穗は嫌だよな?俺に見られるの」
「あ、当たり前だよ!2人共!何を言ってるの!」
詩穗は顔を真っ赤にしながら結衣菜と莉愛に突っかかる。
「でも男手が必要なことがあるかもしれないよ?」
「うっ」
莉愛の言葉に詩穗はたじろぐ。
「大丈夫だよ詩穗ちゃん」
落ち着かせるように結衣菜は詩穗の肩に手を置く。
「私も詩穗ちゃんもりん君に下着見られたことあるから」
「ぜんっぜん大丈夫じゃないよ!!」
そんなやり取りの末、俺は結衣菜達3人の護衛として、共に屋内プールへ出ることになった。
「………………よし。これを久遠先生に送って」
俺達のやり取りを他所に、一は1人で満足そうにパソコンでの作業を終えるのだった。




