第73話 おてがら結衣菜
更新が遅れて申し訳ありません。
朝から昨日の続きと思われる事件があり、校内はちょっとした騒ぎになった。
念のためということで、事件のあった昨日のトイレと今朝の更衣室とシャワーは学校側から使用禁止とされた。
「上北、お前は今回の事件の原因わかってるのか?」
「どうしてそう思う」
「こんな事件が発生しているのに、お前にしては静か過ぎると思ってな」
「なるほど。ま、一応はわかってはいる」
時刻は放課後。
詩穗と一は相変わらずパソコンで何か座業している。
結衣菜はトイレに行ってから来るということで、俺は上北と事件のことを話していた。
「今度は授業中に起きてたんだろ?」
「そのようだな。場所は体育館近くの水道付近。またもや女子が数人被害を受けたようだ」
「やっぱり水が関係してるよな」
「今のところはそうだな」
「今のところはって………まさか今後は水場以外にも拡がるってことか?」
「可能性は高い。なんせ相手はアメーバなのだからな。あいつらは水場に多いが、土壌にも住む種がいるしな」
「アメーバって、生物科学研究部の」
相手が分かったところで、更なる問題が発生する。
「………で、どうやってアメーバを捕まえるんだ?」
アメーバは微生物の一種なので、見つけるのは難しい。そんな奴を捕まえるなんてどうすればいいか解らない。
「そこも大丈夫だ。そのアメーバは女子生徒の衣服を栄養として巨大化してるようなのでな。といっても水を含まなきゃ数cmってところらしい」
「水を含むと?」
「数mにはなるらしいな」
「化け物じゃねぇか!!」
数mってゲームに出てくるスライムみたいなモンスターと一緒じゃん。
「っていうか、なんで女子の衣服しか食べないんだ?」
「それは作った本人がそういう風に作ったからだろうな」
「変態なんだな」
そんな話をしていると。
「りん君りん君りん君!!」
バタバタと結衣菜が駆け足で部室に入ってきた。
「どうした?」
「見て見て!!」
結衣菜は口を結んだコンビニの袋を見せてきた。
俺は袋を受け取り、外から確認をする。どうやら水が入っているようだ。
そして、中を確認するために結び目を解こうとする。
「あ、待って!」
「え、うおっ!?」
「きゃあ!?」
結び目を解いた瞬間に、中から水が飛び出して来て、少し離れた場所で作業をしていた詩穗に掛かった。
「り、琳佳君、何するのよぉ」
詩穗はいきなり水を浴びさせられ、文句を言ってくる。
「悪い。水を掛けるつもりは…………っ!?」
「どうしたの?」
水を浴びた詩穗はもちろん濡れていた。
でも夏服だからといっても、ベストを着ているので下着が見えることはない。
しかし、濡れたベストとシャツは次第に形を失くし、詩穗の服は溶けるように失くなっていく。
詩穗は自分が裸になっていくのに気が付いていないのか、きょとんとしている。
そして、詩穗の胸が全部見えそうになったところで
。
「りん君は向こう向いてて」
「いてっ」
結衣菜に首を無理矢理方向転換させられる。
一と上北も同じように詩穗の方を向かないようにしていた。
「詩穗ちゃん、ちょっとごめんね」
「なっなんで私裸になってるのっ!?!?」
「詩穗ちゃん!動かないで、きゃっ!!」
その後、袋のがさごそとした音がしてきたと思ったら、結衣菜から男性陣は部屋から出るように言われた。
廊下に出てしばらくすると、少しだけドアが開いた。
「りん君、私と詩穗ちゃんの体操着を持ってきてくれない?これ、私と詩穗ちゃんのロッカーの鍵」
ロッカーは教室の前の廊下に設置されている。
俺はその鍵で2人のロッカーから体操着を持ってくることになった。
☆ ☆ ☆
「一ノ瀬、そいつはどうしたんだ?」
「トイレの手洗い場で捕まえてきたの」
上だけ体操着に着替えた結衣菜は簡単そうに言ってきた。
「結衣菜、捕まえるってどうやったんだ?」
「えっとね………」
トイレを済まし、手洗い場に行くと不自然な水溜まりがあったらしい。
そして掃除用具が入っているところから袋を持ってきた。
結衣菜は袋の口を開くように構えて近付いたら、その水が襲い掛かってきたらしい。
その水は運良く袋の中に入ったのことだった。
「結衣菜、危険なことはしないでくれ。一言言ってくれれば向かうから」
「ごめんなさい。でも女子トイレに入るの?」
「緊急事態なら入るよ。結衣菜を助けるためだったら」
本当に危ないことだったら、そんなこと気にしてる暇はないしな。
結衣菜は俺の返答を聞いて、顔を真っ赤にしてうつ向いてしまった。
「ふむ。これが変異アメーバなのか」
上北はビニール袋に入っている水を袋の外から揉んだりして、中身を確認していた。
「感触はただの水だな。時折変な抵抗を感じることがあるが」
「でもそいつが捕まったということは、今回の事件はもう解決だな。後は生物科学研究部の山田に連絡先をして」
「いや、まだだ」
俺はこれで解決かと思っていたが、上北は否定をしてきた。
「音無、アメーバの繁殖方法は知っているか?」
「確か細胞分裂…………あ」
「そうだ。あれだけの女子生徒に被害が出ているにも関わらず、このアメーバは小さ過ぎる。恐らくは細胞分裂して増えた個体だろう」
どうやら事件はまだまだ続くようだ。
☆ ☆ ☆
「おお!捕まえてくれたのか!」
「ああ。うちの部員が捕まえてくれてな」
上北は1人で生物科学研究部を訪れていた。
そして、結衣菜が捕まえたアメーバを生物科学研究部の部長へ渡す。
「恐らくそれは繁殖した奴の一部だろ?」
「そうだな。被害の生徒は少なくとも30人以上はいる。それを踏まえても10匹以上に増えているだろう」
部長はビニールの中に何かの液体を流し込みながら説明する。
「捕まえることには協力はする。しかし友人を怪我させる実験には付き合わせないぞ」
「わかっている。ほら、これから僕は実験するから男子は出て行ってもらおうかな」
上北は背中を小さな手でポンと押されて退室した。
「反省しているようには見えなかったな。さて、どうするか……………」
上北はそう呟きながら廊下を歩いていった。




