第72話 事件は続く
あの事件の後、山田と一緒に生物科学研究部の部長を探したが部室にもおらず、連絡も付かなかったので解散となった。
そして帰り道、部活のメンバーと別れ、結衣菜と2人きりになった。
「なぁ結衣菜」
「何?」
「今日のその、下着姿になった女子生徒って怪我とかしてたのか?」
「ううん。怪我はなさそうだった。でもなんか濡れてたみたい」
「濡れてた?」
「うん。その女子生徒は手洗い場の前にいたし、床も濡れてたから、水道が壊れてたのかも」
「でもなんであんな場所で下着になるんだ?」
「………なんでかな?」
「女子生徒は何か言ってなかったのか?」
「うん。泣いてばかりいて、話せる状況じゃなかった」
「そうか」
俺はこのことを後でまとめて上北に教えることにした。
あいつは頭が切れるから何か解るかもしれないからな。
そして、SNSで上北に伝えてからしばらく経ち、夜も遅くなってきた頃、俺は自室でマンガを読んで過ごしていた。すると、上北から電話が掛かってきた。
『音無か?』
「ああ、電話してきたってことは何か解ったのか?」
『まぁな。だがあれを捕まえるのは少し骨が折れそうでな』
「あれって、何が原因かもう解ったのか!?」
『だからそう言ってるだろう。ただあまり他の人、特に女子連中には知られない方がいいかもしれん。知ったらかなりの騒ぎになりそうだからな』
「ってことは結衣菜と詩穗にも言わない方がいいのか?」
『今のところはな。だが、もし協力してもらうとするなら、この2人と桜坂に協力してもらうと思うぞ』
「莉愛もか?」
『ああ。とりあえず俺は明日1人で調査する。音無は一ノ瀬と見回りをして欲しい。特に水がある場所をな』
「わかった。それじゃあそろそろ切るぞ。お休み」
『ああ、良い夢を見ろよ』
こうして上北との電話が切れた。
時計を見ると、いい時間になっていたので、俺は明かりを消して寝ることにした。
☆ ☆ ☆
「りん君、朝だよ。起きて」
「ん、んん?」
愛しい人の声で意識が浮上してくるのがわかる。
「りん君、朝ご飯出来てるよ」
「……………」
だが、睡魔には勝てずに、そのままもう少しだけ寝てることにした。
「………ちゅ」
「っ!?」
唇に感じた感触で一気に目を開けると、頬を赤くした結衣菜の顔が目の前にあった。
「おはよ」
「あ、ああ、おはよ」
「もう朝ご飯出来てるから、着替えたら来てね」
制服姿の結衣菜は照れ臭そうにしてパタパタと部屋を出ていった。寝ている姿勢の俺からは結衣菜が翻った時に薄ピンク色のパンツも拝めることが出来た。
「………朝から刺激強すぎる」
俺は唇にほんのり残った結衣菜の感触に浸りながら制服に着替えた。
そして、朝食の前に一度トイレに行くことにした。
いつも通りにトイレのドアを開けると、そこには金色の髪をした先客が、パンツを下ろして便座に座っていた。
「「…………………」」
俺は寝起きだったからなのか、思考が付いてこない。
先客、莉愛もいきなりのことで頭が付いてこないのか、無言でお互い見つめ合っている。
チョロチョロ………。
そして、用を足してる音が響き渡ってくる。
「………そ、その、ごめんっ!!」
俺はその音で我に返り、急いでトイレから出てドアを閉めた。
しばらくすると、顔を真っ赤にした莉愛が出てきた。
「……………見た?」
「その………ごめん」
莉愛は怒っているのか、俺を睨み付けたまま黙り込んでいる。
「…………こ、今回は莉愛が鍵閉め忘れてたのが原因だから許してあげる。でも早く忘れて」
「努力はする」
こんな衝撃的なことはしばらくは忘れられそうにないけど。
その後の朝食の席では少し気まずい空気が流れていたのは、言うまでもない。
☆ ☆ ☆
莉愛は中学校へ。俺と結衣菜はいつも通りに登校する。
正門を潜り、校舎へ向けて歩いていると、部活棟の方から女子達の悲鳴やら騒ぎ声が聞こえてきた。
この学校の運動系の部活は朝練があるので、朝早くから生徒がいるのはいつもことだ。
しかし、今回の様な騒ぎ声ほ聞いたことがない。
「行ってみるか」
「うん」
俺達はその声が気になり、結衣菜と2人で声が聞こえてきた方へと向かった。
部活棟に入り、声が聞こえてくる部屋の前にやって来る。
「………結衣菜、頼んだ」
「うん。覗いちゃダメだよ」
その場所は女子更衣室。
中からは悲鳴は無いが、まだ騒いでいる声が聞こえてきている。
俺は中を覗けない位置で待ち、結衣菜がそっと扉を開けて中の様子を確認する。
そして、中へと入って行った。
数分後、結衣菜が何事もなさそうに出てきた。
「どうだったんだ?」
「えっとね、女子の制服とか体操着でもいいから着るもの34人分用意することになった」
結衣菜に中の様子を聞いたところ、下着姿の女子がたくさんいたそうだ。皆服を溶かされたと言っており、結衣菜が来るまで、どうやって服を調達するか談義していたそうだ。
でも流石にそんな量は俺達だけじゃ用意は出来ない。
なので担任で校長でもある久遠先生に頼むことにした。
久遠先生の配慮により、すぐに服は用意され、女子更衣室から真新しい制服や体操着に着替えた女子生徒がぞろぞろと出てくる。
授業は既に始まっているが、俺と結衣菜はその女子生徒達に何があったか詳しく聞くことにする。
因みにこの場には久遠先生もいるので、俺達のクラスは自習となっている。
そして女子生徒達の話を聞きまとめると、いつも通りに朝練を終えて、更衣室に併設されているシャワー室で汗を流した後、服を着ようとしたら水に溶けるように消えていったらしい。
何故か下着は残っていたので、どうやって出ようか迷っていたそうだ。
「本当に一ノ瀬さんありがとね。感謝しかないよ」
女子生徒はそうお礼を言って、戻っていった。
「服が溶けるって、エロゲーでありそうなことだな」
「やったことあるの?」
「えっと………その、知り合いにやってる奴がいて」
「嘘。りん君、持ってるんだね?」
「…………………はい、持ってます」
「今日帰ったら見せてね?」
結衣菜の恐怖の笑顔に俺は頷くことしか出来なかった。
この前お宝画像が消されたばかりだというのに、こっちまで消されることになるなんて。
「………………もっと私を見てくれていいのに」
「何かいったか?」
「ううん、何でもない」
俺達はこのまま久遠先生と教室に戻ることになった。
☆ ☆ ☆
「むぅ、下着までは溶かせないのか。何かもう一工夫すればあるいは………」
そんなことを呟きながら女子更衣室から離れていく人影が1つあった。




