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第71話 報告と新たな依頼

 俺と結衣菜の依頼から始まったデートは、なんだかんだで楽しめた。


 帰りに夕飯の買い物を一緒にして帰宅すると、莉愛が結衣菜の着ている新しい服を見て「次は莉愛のを買ってよ!」と俺にねだってきた。


 流石に結衣菜の服は良い値段をしていたので、申し訳ないが莉愛の服を買う余裕は無い。


「機会があったらな」


 俺はそう誤魔化すしかなかった。


 そして休み明け、デートの報告をするために依頼者の男子生徒を新聞部の部室に呼んだ。


「えっと、映画館の後の昼食はいいと思います。話が盛り上がりましたし」


 結衣菜は俺の隣の席に座り、向かい側に座っている男子生徒からは見えないところで、俺の手を力強く握り締めながら懸命に話していた。


「ただ、その……やっぱりゲームセンターは人を選ぶと思うので、彼女さんと相談した方がいいかと思います。それと好き合っているのなら、彼女さんは一緒にいるだけで………」


 なんだかんだで、しっかりと彼女視点での見解を話している結衣菜。


 その様子を上北達はニヤニヤしながら見ていた。


 それにしてもあいつらは何をやってるんだ?パソコンを弄っているようだが。


 俺と結衣菜が報告している間、詩穗がパソコンをずっと操作しているのだ。それを上北とはじめが横から見ている状態だ。


「助かったっす。彼女と相談してみるっす」


 男子生徒はお礼を言って、部室を出て行った。


「はぅ~。りんくーん」


「お疲れ様」


 緊張から解放された結衣菜がもたれ掛かってくる。その頭を優しく撫でてやる。


「んんー。やっぱりこれ好き」


 結衣菜は腕を俺に回して抱き付くように更に密着してきた。どうやら完全に自分の世界に入ってしまったようだ。


「お前達、ご苦労だったな。ミッション達成だ」


「っ!?」


 俺は上北が近付いていたのに気が付いていたが、自分の世界に入っていた結衣菜はビクッとして、顔を赤くしながら後ろを向いた。


 俺も後ろを向くと、上北だけでなく詩穗とはじめも俺達の方を見て、なんて声を掛けたらいいかわからない顔をしていた。


「っ~、み、皆がいるの忘れてたよぉ」


 結衣菜は恥ずかしさから机に俯きながら、足をパタパタさせて照れ始めた。


「それより詩穗、さっきからパソコンで何をやってるんだ?」


 俺はパソコンで作業している詩穗に聞いた。


「んーとね。資料のまとめ、かな」


「資料?」


「うん。部活としての活動にもなるし、久遠先生にもやってくれると助かるって言われたから」


 よくわからないが、久遠先生からの頼みらしい。


「俺も手伝うか?」


「えっと………」


 何故か詩穗は戸惑いながら上北の方を向いた。


「お前は手伝わないで大丈夫だ」


「そうか?なら他に」


「助けてくれ!!」


 突然部室の扉が開き、1人の男子生徒が駆け込んできた。


「む、お前は生物科学研究部の山田ではないか」


「知ってるのか?」


「ああ。あの部活は俺もかなり興味があってだな。以前に訪問した時にそこの山田と知り合ってな」


「上北様、それより助けてくれ!」


(上北様って、こいつらの間に何があったんだ?)


「落ち着け。状況がわからんと助けようがない」


「あ、ああ。実は………」


 この山田とやらの説明によると、生物科学研究部で研究していた試験体を、山田のミスで逃がしてしまったようだ。


 今、生物科学研究部の皆でその試験体を捜索しているが見つからず、切れ者である上北に助けを求めにきたと言うことらしい。


「話はわかった。で、逃げられた試験体とはどういう奴なんだ?」


「それがその………アメーバなんだ」


「アメーバというと、あの微生物で単細胞生物のアメーバか?」


「そうなんだ。だからどこに行ったか分からなくて」


 確かに特定の微生物を探しだすのは無理難題な感じだな。っていうか、これ引き受けても見つけられるのか?


「だがアメーバに逃げられたとしても、特に問題はないだろう。アメーバなんて土壌や水辺とそこら辺りにいるだろ」


「それがそのアメーバは部長が変な細胞変質をさせていたらしくて」


「問題があるのか?」


「教えてはくれなかったけど、部長の慌てようからすると恐らくは」


 話を聞いていると、生物科学研究部が何をやっているのか怖くなってきたな。


「よし。とりあえずその部長に会いにいくぞ」


 俺達ははじめと詩穗を部室に残して、山田と一緒に生物科学研究部の部長に会いに行くために、生物科学研究部の部室に向かっていた。


「きゃああぁぁぁぁぁ!!!」


「む?」


「な、なんだ?」


 突然聞こえてきた悲鳴。


 場所は少し離れてはいるが、遠くはない。


 俺達は悲鳴が聞こえてきた方へ走って向かった。


 放課後ということもあり、昼間よりは人は少ないが、部活をやっている生徒はそれなりにいる。


 皆も何事かと悲鳴が聞こえた方へと向かっていた。


 そして辿り着いたのは女子トイレ前。


 流石に男子は入れないので、結衣菜に様子を見に行って来てもらう。


 そして、結衣菜は1分もしないで女子トイレから出てきた。


「結衣菜、何が中であったんだ?」


「えと………その、りん君、耳貸して」


 結衣菜は言いづらそうにしていたので、結衣菜に耳を貸すことにする。そして結衣菜は小声で


「下着姿の女子生徒が泣いてたの。他の人が服を持ってくるらしいから大丈夫だとは思うけど」


 確かに男子生徒ばっかり集まっている中で、このことは話しづらいな。


 この騒ぎは他の女子生徒が服を持ってきてくれたことで収まったが、なんで下着姿になったのかは、この場では解らず仕舞いだった。



 ☆     ☆     ☆



 事件があった近くの空き教室から、女子トイレでの顛末をこっそり見ている人がいた。


「ほ、本当に成功していたとは………これで僕の夢へ一歩近付いた」


 その人は喜んだ後に、難しい顔で考え始めた。


「問題はどうやって捕まえるか………ん?」


 そこに見慣れた男子生徒、山田が3人の生徒を引き連れて事件のあった女子トイレから遠ざかっていくのが見えた。


「確か山田といったかな。それに他の3人は噂のバカップルと上北君か………。そうか、上北君になら話しても協力して貰えそうだ。うん、それで行こう」


 その人は上北が1人になるまで尾行するのだった。

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