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第70話 依頼でデート4

「~♪」


 結衣菜は今、新しく買った服を着て、鼻歌を歌いながら俺の腕に抱き付いて歩いている。


 新しい服は結衣菜の魅力を上げてしまったのか、先程よりも周りからの男の視線が強くなっている気がする。


「そんなに嬉しかったのか?」


「うん♪だってりん君からのプレゼントだもん」


 結衣菜は本当に嬉しそうに答え、更に強く抱き付いて来る。


 周りからは殺意のこもった視線も感じるが、それ以上に今が幸せだ。


 なんか依頼だということを忘れそうになる。


「それよりどこに向かってるんだ?」


「せっかくだからりん君にこれも選んで欲しいかなぁ、なんて」


 結衣菜は少し頬を赤くしながら指を差した。


 その指先にあったのは…………。


「いやいやいや!俺入れないぞ!」


 結衣菜が指差したのは女性の下着専門の店、すなわちランジェリーショップというやつだ。


「私がいるから大丈夫だって」


「俺捕まりたくないぞ!」


「私の連れなんだから、堂々としてれば大丈夫だよ。ほら、いこ?」


 俺は結衣菜に引かれて、ランジェリーショップに入るのだった。


 そこは俺にとって未知の世界。お客は女性しかおらず、店員ももちろん女性だ。


 そんな中、俺だけ男だと凄く目立つ。


 さっきから周りから女性の視線が突き刺さるのがわかる。


「ゆ、結衣菜、やっぱりこれは」


「い、いいから私の下着選んで。これもりん君の好きなの選んでいいから」


「と言われても」


 周りを見渡すも、当たり前だが女性の下着だらけ。色とりどりのショーツやブラが並んでいる。


 やばい。見ているだけで恥ずかしくなってきた。


「で、でもサイズとか見方わからないし」


「それじゃあ色とか形とか選んで。サイズは私で選ぶから」


「そ、そういうことなら」


 だけど、それで下手なの選んだら結衣菜に軽蔑とかされそうで嫌だな。色とかは妥当に白にしておくか。うん。そうしよう。


「ねぇりん君。こういうのはどうかな?」


「ぶっ!?」


 結衣菜が手にしたのは布面積がやたら小さい黒い紐みたいなパンツだった。ブラも殆どがレースで出来ており、向こうが透けて見える。


「さ、流石にそれは」


「え?りん君こういうの嫌いだったっけ?この前見た女の人の写真に」


 結衣菜がジト目で俺を見てくる。


「………はい。好きです」


 俺は潔く認めることにした。


「それじゃあこういうの持ってないし、一応サイズ合うか確認してくるね」


 結衣菜は同じ種類の下着を選んで試着室へと入っていった。


(俺、ここで待たなきゃいけないのか?)


 結衣菜の姿がいなくなれば、当然俺1人なわけで、知らない人が見たら変態に見えるんじゃ。


「ねぇねぇこれ可愛くない?」


「っ!?」


 そこで聞き覚えがある声が聞こえてきた。


 声がした方を見ると、同じクラスの女子が3人で下着を見ていた。そして次第にこっちに移動してきている。


(ま、まずい。逃げるにも目の前を通らなきゃいけないし、隠れるといっても結衣菜が入っている試着室しか………)


 クラスメイトの女子に変態扱いされるか、結衣菜に怒られるのを覚悟で試着室に逃げ込むか………。


(悪い!結衣菜!)


 俺は結衣菜が入っている試着室に逃げ込むことにした。


「きゃっ!?り、りん君!?な、なんで入って」


「しーっ!静かにしてくれ。ちょっと緊急事態なんだ」


 結衣菜は姿見の方を向いて、さっきのブラを付けようとしている最中だった。もちろん上半身は裸で下は元々穿いていただろうピンク色のパンツに包まれたお尻が見える。


 俺の買って上げた服は上下が1つになっている服なので、全部脱いだのだろう。


 すぐにカーテンの方を向いて視線を外したが、結衣菜の胸の先端をちらりと鏡越しに見てしまった。


「き、緊急事態って」


「あっこー、これはどうかな?」


「「っ!?」」


 俺と結衣菜は同時にビクッとして驚く。


「な、なんで添野さん達が」


 なるほど。添野さんというのか。クラスメイトだけど名前までは覚えてなかった。


 俺は試着室のカーテンの方を向いたまま視線を下に下げる。


(やばっ!靴が!)


 試着室に入る時に靴を脱いでしまっていたようで、試着室の外に置いたままになっていた。こんなところに男物の靴と女物の靴が一緒に置いてあったらまずいと考え、俺はしゃがんでそれをカーテンの隙間からバレないように素早く取った。


 そして立とうとすると、頭にふにょんという感じの何かにぶつかった。


「り、りん君、いきなり何を」


「わ、わりぃ。く、靴を取ろうとして」


 結衣菜がいつの間にかこっちを向いていたらしい。立ち上がろうとした俺は結衣菜のおへそを目の前にして、頭の上に結衣菜の胸が乗っかっていたのだ。


「ねぇ、今男の声しなかった?」


「「っ!?」」


 結衣菜がいきなり俺の頭を自らのお腹に押し当ててきた。俺の鼻腔に甘い結衣菜の香りが広がっていく。


「ひゃん」


 俺は驚いた拍子に靴を持っていない方の手で、結衣菜の腰に手を回し、パンツ越しに結衣菜の柔らかいお尻を掴んでしまった。


「悪い」


「んっ、り、りん君はこのまま黙ってて。私は大丈夫だから」


 それから数分間、俺は結衣菜のお腹に押さえつけられ続け、俺の手も変に動くことが出来ずに、結衣菜のお尻を掴み続けた。


 しばらくすると、添野さんの声が遠くなっていくのを聞いて、結衣菜は俺の頭を解放してくれた。


「ふぅ。危なかったぁ」


「本当にごめん」


「ううん、大丈夫。クラスメイトに見つかる方が問題になりそうだし」


 結衣菜はそう言って、俺の行動を許してくれるようだ。


「それじゃあ俺は外で」


「待って。ついでにこれ付けて貰ってもいい?後ろで変に髪が引っ掛かっちゃって困ってたの」


 結衣菜は背中のホックを見せて頼んできた。


「い、いいのか?」


「恥ずかしいけど、見られちゃったし、いつか全部見せるから………その…………」


「………わかった。じゃあ少し触るぞ」


「う、うん」


 俺はそのまま結衣菜のブラを付けてあげることになった。しばらくはブラを伝ってきた胸の感触が、忘れられそうにない。



 ☆     ☆     ☆



「あ、あんなところに行かなきゃいけないんすか?」


 琳佳と結衣菜のデートの尾行組は琳佳達の立ち寄っている場所に驚いていた。


「ぼ、僕はもう帰ろうかな」


 はじめは恥ずかしくなってきたらしく、帰ろうとしていた。


「結衣菜ちゃん、琳佳君に下着を選ばせるなんて………もう大人なんだね」


 詩穗は何を想像したのか、顔が真っ赤になっている。


「お、出てきたぞ。おい、そろそろ終盤だ。最後までバレずにいくぞ」


 その中、相変わらず平然としているのは上北だ。


 上北は顔を真っ赤にした2人が店から出てきたのを確認し、尾行を再開した。



 ☆     ☆     ☆



「音無 琳佳!」


 ショッピングモールを更に散策していた俺は、いきなりフルネームで呼び止められた。というよりフルネームで呼んで来るのは一人しかいない。


「なんですか、伊万里いまり先輩。今結衣菜とデート中なんですけど」


 何か嫌な予感がしたので、こう言って早く切り上げて貰おうと考えたのだが。


「ええ。見ればそれぐらいわかるわ」


 伊万里先輩は無い胸を張りながら言ってくる。


「…………よし、勝ってる」


 結衣菜は伊万里先輩のと比べて小さく呟いた。


「何か失礼な言葉が聞こえたような気がしたんだけど」


「気のせいです、先輩」


 結衣菜が視線を逸らしながら答える。


「それより貴方達があの店から一緒に出てきた様に見えたのだけれど」


 伊万里先輩が指差す方には、先程までいたランジェリーショップがあった。


「付き合っていて許嫁だとしても、学生である内は清いお付き合いをしなさい。その……不純異性交遊は学内で禁止されてるのだから」


 伊万里先輩は頬を染めながら早口でそう言うと、踵を返して立ち去って行った。


「………伊万里先輩、まさかそれだけを言うために声を掛けてきたのか?」


「そう………なんじゃないかな?」


 伊万里先輩は本当に真面目な性格をしているようだ。


 この後、いつの間にか地下にある食材売り場で、いつものように夕飯の買い物をして帰ることになった。


(これはデートというより夫婦だよな)


 そう考えると、顔が暑くなってきた。


「りん君、顔が赤いけど大丈夫?」


「あ、ああ、大丈夫。ただカップルというより夫婦みたいだなって考えてただけだ」


「夫婦っ!?」


 結衣菜の顔がボンッといきなり赤くなった。


 結局お互いに顔を赤くしたまま家に帰ることになり、家で色々と莉愛にからかわれることになるのだった。

いつも読んで頂きありがとうございます。

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