第64話 生徒会長の尾行
結衣菜と詩穗にその、やらかしてしまった俺は土下座で謝り続け、なんとか許してもらえることが出来た。
取れてしまった結衣菜のシャツのボタンは、裁縫道具を持っていた詩穗が手慣れた手付きですぐに直してくれ、無事に帰宅することが出来そうだ。
今日は特にやることがなかったので、軽くお喋りをしたら帰ることにした。
そして、3人で学校の正門に差し掛かると。
「琳佳ぁー!」
中学校の制服に身を包んだ莉愛が、物凄い勢いで突っ込んで抱き付いて来た。莉愛の大きな果実も俺に押し付けられる。
「っと、どうして莉愛がここにいるんだ?」
「家の鍵を忘れちゃったの」
「な、なるほど」
顔を近付けてくる莉愛から距離を取ろうとする。
「莉愛ちゃん?」
「あ、結衣菜もいたんだ」
「りん君とはいつも一緒に帰ってるんだから当たり前でしょ!それより早くりん君から離れて!」
結衣菜はそう言って、無理矢理俺から莉愛を引き離した。
「莉愛ちゃん相変わらずなんだね」
「やっほー。詩穗も一緒なんだね」
俺達のやり取りを見ていた詩穗が呟くと、莉愛が詩穗に気が付き挨拶をした。
この2人は何回か言葉を交わしたぐらいなのだが、意外と仲良くなっていたりする。というか、莉愛が少し子供っぽい性格なのと、詩穗の面倒見が良い性格が相成った結果なのだろう。
「それにしても今日は暑いね~。日陰で待ってたのに汗掻いちゃったよ」
莉愛は胸元をパタパタとして、涼み始めた。中学生らしからぬ胸の谷間が見え隠れする。
「莉愛ちゃん、お行儀悪いよ」
「だって暑いんだもん」
「待つんだったら、琳佳君に連絡すればよかったのに」
「実はその、スマホも家に忘れちゃって」
てへっと、舌を出して笑う莉愛。
俺の周りで女の子3人がわいわいと話し続ける。結衣菜と莉愛は何かと俺の身体に触れてこようとするので、部外者には見えていないだろう。
そして場所は学校の正門前。
帰宅する生徒達が多くいる。
相変わらず男子からは射抜いてくるような殺意の籠った視線を向けられているのが分かる。
「琳佳、帰りにアイス食べようよ」
「あ、それなら最近出来た喫茶店のアイスが美味しいって聞いたよ」
俺に向けられる視線に皆は気が付くことなく、結衣菜と莉愛に連行されるようにして、喫茶店に連れられて行った。
☆ ☆ ☆
(やはり音無 琳佳、侮れないわね)
琳佳達の正門前で繰り広げられた様子を見ていた人達の中に生徒会長である伊万里 麻里の姿もあった。
(部室でも彼女の前で他の女子生徒を押し倒していたし………。彼女の一ノ瀬 結衣菜の方もあの状況を受け入れているようにも見えた。今だってあの中学生を侍らせていた)
実際には琳佳にじゃれついているだけなのだが、麻里の目にはそういう風に映っていた。
(いえ。もう少し様子を見て判断しようかしら)
麻里は琳佳達4人の尾行を開始することにした。
4人の尾行を開始してから10分程経ったが、4人は自宅に帰らないのか、駅の方へと歩いていっている。
そして、先月オープンしたばかりの喫茶店に入っていった。麻里も気が付かれないように喫茶店に入り、4人が見える場所の腰を下ろした。
(なるほど。ああやって女子の機嫌を取っているのね)
琳佳以外の目の前にはこの喫茶店自慢のジェラートとパンケーキが置かれていた。琳佳の目の前にコーヒーが置かれているだけだ。
女子達はきゃっきゃっしながら何かを話しているのが見て取れる。琳佳も時折話を振られ話しているうだ。
(こう見てると、仲の良い友人にしか見えないけど…………なっ!?)
結衣菜がパンケーキとジェラートを琳佳の口元へと持っていった。琳佳は間接キスになるのを躊躇わずにそれを口に入れた。
(あんな破廉恥なことを公衆の面前でやるなんて…………えぇっ!?)
すると、莉愛も悪乗りするように結衣菜と同じことをやり始めた。琳佳は拒否しようとしたが、隙を狙われ、パンケーキとジェラートが乗ったフォークを口の中に突っ込まれてしまう。
(ちゅちゅちゅちゅ中学生の子に何をやらせてるのよっ!!)
しかし、麻里には琳佳が命令をしてやらせているように見えていた。
そして、結衣菜と莉愛の口論が始まる。
もう1人の女子、詩穗はそんなやり取りを見て笑っていた。
☆ ☆ ☆
「ねぇ詩穗、今日琳佳の家に来ない?」
「え、急にどうしたの?」
喫茶店を出ると莉愛がそんなことを言ってきた。
俺も結衣菜もいきなり過ぎて、何のことかまったくわからない。
まぁ、来るのは別に構わないけど。
「せっかく詩穗と会えたから、一緒にお喋りしたくて」
(さっきまでずっと話してたよな?)
俺は言葉に出さずにツッコミを入れる。
「うーん、遅くならなければ大丈夫だよ。でも琳佳君はいいの?」
「大丈夫だ。どちらにしろ結衣菜と莉愛もいるからな」
そこに詩穗が加わっても、大差はない。
「それじゃあ、お邪魔しようかな」
「やったぁー!ほら!早くいこ!」
莉愛のテンションが上がったのか、俺と詩穗の手を掴んで走り出した。
「あ、待ってよ!置いてかないで!」
俺は空いた手で結衣菜の手を取り、一緒に莉愛に引っ張られ帰宅をした。
☆ ☆ ☆
「ま、まさか全員お持ち帰りするなんて………」
琳佳達が仲良さそうに琳佳の家に入っていく姿を見た麻里は、電柱にもたれ掛かるようにしてぶつぶつと呟いているのだった。




