第61話 莉愛の取材
結衣菜とスーパーで買い物を終えて帰宅すると、リビングの方からテレビの音が聞こえてきた。
「「ただいま」」
合わせたわけでもないのに、俺達は2人で同時に帰宅の挨拶をした。2人で顔を見合わせて笑顔になる。なんとなくこういったことが嬉しかったりするな。
「おかえり~」
莉愛はテレビに視線をやりながら挨拶を返してきた。
どうやらテレビに集中しているようだ。
「私は着替えたら夕飯の準備しちゃうね」
「おう。俺は莉愛に確認取っておく」
結衣菜は部屋に戻るために部屋に行こうとするが、すぐに戻ってきた。
「り、りん君、私のバストは84のDカップだから」
「っ!!」
いきなり何を耳元で囁いてくるんだ!
結衣菜は恥ずかしくなったのか、駆け足で2階にある自室へと向かった。俺は深呼吸をして落ち着いてから莉愛の隣に向かった。
「莉愛」
「なーにー?」
莉愛はこちらをちらっと見たが、すぐにテレビに視線を戻してしまう。
「ちょっと話があるんだけど」
「・・・うん」
テレビに集中はしているが、返事が返ってくるから聞こえてはいるんだろう。俺はそう解釈し、話を続ける。
「学校の新聞で莉愛のこと書かせてもらうけどいいか?」
「・・・・・・うん」
よし。とりあえずは許可取れたぞ。空返事かもしれないけど。
「それでその、莉愛のバストサイズとかって教えてくれたりは・・・流石にしないよな。悪いな。変なこと聞いて」
「・・・89のF」
「は?」
「89のFよ!今テレビ見てるんだから変なこと言わせないでよ!」
耳まで赤くして怒鳴られてしまった。
というか、結衣菜と5cmしか違わないのに2つもカップ離れてるのか。カップの大きさなんて計り方知らないけど。(後で調べて2.5cmでカップが変わることを知り、それぐらいが普通だと知った)
今これ以上聞くと怒られそうなので、夕飯の後にでも聞くことにしよう。
☆ ☆ ☆
「好きなもの?琳佳だけど」
夕飯の後に改めて莉愛の取材をしていた。
「そう言ってくれるのは嬉しいけど、そうじゃなくて趣味とか」
「んー、趣味ねぇ。やっぱりスポーツとか身体を動かすことかな」
莉愛は嫌がることなく、取材を受けてくれていた。
「苦手なことは?」
「勉強」
苦手なことの質問には即答してきた。予想していた通りの回答だけど。
「あ、でも今は頑張ってるわよ。琳佳と同じ高校に行きたいから」
「・・・・・・」
「そ、そうか」
一応言っておくと、莉愛への質問はリビングで行っている。
ソファーに腰を下ろし、右に莉愛が。左に結衣菜が座っている。
莉愛が俺のことを口にする度に、結衣菜が無言でプレッシャーを掛けてきているのだ。
莉愛は一応俺達の仲を認めてはいるのだが、一時的に外国で暮らしたことが原因なのか、はたまた元の性格なのか、俺に対する好意を隠そうとか抑えようとはあまりしていない。
莉愛は当たり前のように、俺の腕に自分の腕を絡めてくるし、顔も息が掛かるぐらいまで近付けきたりする。
結衣菜はその度に俺の腕を抱き寄せ、自分の方へと引き寄せようとしている。
「他に質問はないの?」
「えっと・・・何かあるか?」
「なんで聞き返してくるのよ」
こういった取材はやったことないから、何を聞いたらいいのか分からないのだ。
なので、一応これで終わりにすることにした。
明日まとめて、上北に足りないことがないか確認することにしよう。
☆ ☆ ☆
「って感じなんだけど」
翌日、部活の時間で上北に莉愛の取材のことで、足りないことがないか聞いた。
「ふむ。桜坂のことは大きくは出さない予定だから、これだけあれば十分だな。それにしてもバストサイズは見た通りだったな」
「は?」
見た通りってどういうことだ?
「普通見てわかるだろ。例えば一ノ瀬は85あるかないかぐらいで、それなりに細い方だから推定Dカップぐらいだろ」
「「っ!?」」
こいつほぼ当てて来やがったぞ!
俺達の会話を聞いていた結衣菜は恥ずかしそうに、両腕で胸を隠している。
「鶴野宮は・・・・・・」
「・・・・・・な、なによ」
詩穗は何故か少し胸を寄せるように、腕を前に回す。
「・・・・・・75のAカップか」
「違うもん!!77のBカップだもん!!少しは成長してるんだから!!・・・・・・・あ」
俺と一は視線を逸らして、聞いていないふりをする。上北はにやにやとしてやったりの顔をしていた。
「あ・・・・あ・・・・あ・・・・・・いやああああぁぁぁぁぁ・・・・・」
詩穗は顔を真っ赤にして、部室を飛び出し、どこかへいってしまった。
「上北君」
「っ、な、なんだ?」
結衣菜に低めの声で呼ばれ、少したじろぐ上北。
俺もちょっと怖い。
「すぐに謝ってきなさい」
「りょ、了解した」
上北はすぐに立ち上がり、詩穗の後を追い掛けて行った。
「2人も聞いてあげなかったことにするように」
「「は、はい」」
何故か残っていた俺達もとばっちりで、怒られてしまった。




