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第60話 新聞作り

 体育祭が終わり、それぞれ休日を過ごし、またいつもの平日が戻ってきた。


 今は授業が終わり、部活の時間だ。


 部室には莉愛を除いたいつもの面子が揃っており、カタカタとパソコンに打ち込むキーボード音が響いていた。


「上北、この競技の写真はどこかにあるか?」

「そいつなら何枚か撮っているはずだ。確かこっちのフォルダに・・・」

「一ノ瀬さん、ここの文章頼めるかな?」

「う、うん」


 それぞれ皆が協力して、体育祭の新聞作りに励んでいた。


 部室にはパソコンが3台用意してもらっているので、それぞれの記事を手分けして作成している。


「上北君、この記事は出来たから、フォルダに入れといたよ」

「ああ、了解だ」


 いち早く1つの記事を完成させたのは詩穗だった。


 詩穗は体育祭の時、1人でクラスメイトをまとめ、上北の無茶振りに答えて莉愛を参加させたりと色々とやってくれたらしい。


「うぅ~、詩穗ちゃん、ちょっと助けてもらってもいい?」

「いいよ。丁度今一段落したところだから」


 詩穗は結衣菜の方へ助けに向かった。


「・・・・・・俺達ってなんだかんだで詩穗に助けてもらってるよな」


 部活でもクラスでも詩穗は、小さな身体ながらも走り回り、皆を助けて回っている。


「だな。鶴野宮は確か長女だろ。恐らく弟達の面倒を常日頃から見ているから、色々と気が付くのだろう」


 確かに上北の言うとおりかもしれない。この部活のメンバーで姉弟がいるのって詩穗ぐらいだ。


 詩穗は本当に気配りが上手で、自分の仕事と平行に周りを助けたりしている。


「琳佳君、ここのフォルダに使えそうな写真入れといたよ」

「おう。ありがとな」


 とまぁ、何も詩穗には頼んでいないのにこんな感じにやってくれたりする。


「そういえば莉愛のことはどうすんだ?」


 体育祭で俺達のクラスの助っ人として活躍した莉愛は『勝利の女神』として敬われていた。


 クラスメイトにも莉愛の素性を聞かれ、俺と上北、はじめの幼馴染と簡単に説明はしてある。


 男子からは、俺にべったりだったことを説明要求しろ、と言われたが、本当に幼馴染以外の何でもないので、説明が出来ない。


 更には学校内で莉愛のファンクラブを立ち上げようとしている輩までいる始末だ。


 何か新聞で説明を入れておいた方がいいと考えたのだ。


「そうだな。一応桜坂のことは特集で組むつもりだ。予想以上に目立ったようだしな」


 やはり上北も同じ事を考えていたか。あれだけ目立てばそれも当然か。


「でもそれを桜坂さんの許可無く掲載しちゃって大丈夫なの?」

「それなら大丈夫だ。音無が頼めば、即答で許可が降りるはずだ」

「・・・上北、体育祭の時もそうだったけど、面倒な頼み事とか俺になすり付けていないか?」


「・・・・・・気のせいだろ」

「今の間はなんだったんだよ!」


 自分でも莉愛なら頼めばすぐ許可は降りると思うけどさ。


「ついでに桜坂の取材とかしておいてくれ」

「取材っていっても何を取材するんだよ」

「そうだな・・・。やはり男子受けならあの胸のサイズとかだな」

「流石に教えてくれないと思うぞ」


 俺達はそんなこんなやり取りをしながら作業している内に、下校時刻になってしまった。なので今日は解散となるのだった。



 ☆     ☆     ☆



「りん君、冷蔵庫にまだ食材あったっけ?」

「うーん、まだあったとは思うけど、そんなに量はなかったと思う」

「それじゃあスーパーで買い物していこっか」


 俺と結衣菜がそんな話をしていると。


「なんか夫婦の会話だよね。お父さんとお母さんが似たような会話をしてるとこ見たことあるよ」

「そんなの今更だろ」

「仲が良くていいんじゃない?」


 俺達にとっては当たり前の会話なのだが、後ろを歩く詩穗、上北、はじめから、そんな会話が聞こえてくる。


「・・・やっぱり変なのか?」


 俺は後ろを振り返りながら聞いてみる。


「べ、別に変って訳じゃないよ。でも学生がする会話じゃないなーって思っただけで」


 詩穗が慌てて弁明をするが、本音を普通に言っているような気がする。


「わ、私とりん君は親公認の婚約してるし、一緒に暮らしてるんだから、これくらい当たり前だよ」


 結衣菜は頬を染めながら嬉しそうに答える。


 だいぶ最初より慣れてきたとはいえ、まだこういう話を振られると恥ずかしいようだ。


「ま、新聞でお前達のことは公開したから、堂々といちゃつけるようになったしな。俺に感謝しろよ」

「あれは余計なお世話だ!」


 あれは本当に公開処刑もいいところだ。


 今でも校内だけでなく、校外でも指差されて噂されるぐらいなんだから。


 俺達はわいわいと話しながら、それぞれの帰路に着いたのだった。



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