第5話 初授業
いつも読んで頂きありがとうございます。
本文を少し改稿しました。
「あ~・・・ねみぃ」
俺は重い瞼を擦りながら起床する。今日からさっそく授業があるのだ。昨日の内に教科書とかの準備は出来ており、部屋の隅にカバンの中に入って置かれている。
「っし、飯作るか」
朝の身支度をしてすぐに俺は朝食作りに入る。これは日課のようなもので、もう慣れっこだ。
今日は簡単にトーストに目玉焼きにと手軽に出来るものにする。
「おはようさん」
「ああ、おはよう」
すると匂いにつられたのか、親父が起きてくる。
「悪いな。俺の時間に合わせてもらって」
「いいんだ。琳佳の暖かい朝食を食べるためだ」
親父はそう言って席に着く。本来なら親父はもう少し遅い起床だ。だが、今日からは本格的に俺の学校が始まるため、いつもより早い時間に起きてもらったのだ。
「親父はコーヒーでいいか?」
「ああ、それで頼む」
「私もコーヒーがいいな」
「あいよ」
俺は注文通り自分の分も含めたコーヒーを3つ用意してから、それを持って席に着く。
「へぇ・・・りん君って料理も出来るようになったんだね」
「そりゃあなって、なんで結衣菜が俺んちにいるんだよ!?」
いつの間にか、結衣菜が俺の隣の席に座ってコーヒーを飲んで寛いでいた。って俺がコーヒー用意してたじゃん!?気付けよ!!
「へ?だって昨日言ったよ?朝迎えに行くって」
「ああ、言ったな。言ったけどなんでウチにいてコーヒーを飲んでるんだよ」
「そこにコーヒーがあるから?あ、朝ご飯は食べてきたからお構いなく」
「説明になってないわ!」
結衣菜はそう言ってコーヒーを口に運ぶ。静かに苦いと呟いたような気がしたのは気のせいか?
「ははは、結衣菜ちゃん、久しぶりだね」
「はい、お久しぶりです。お父様」
「これからも琳佳のことを頼むよ」
「はい、お任せください」
「って、あんたらいきなり何の話してるんだよ!」
俺は平然と結衣菜がいることに疑問を持たない親父と、普通に話す結衣菜にツッコミを入れる。
「それより琳佳。早く食べた方がいいんじゃないのか?」
「あ、マジだ!くそ!」
俺は慌てて朝食を口に放り込む。
「ほら、結衣菜!行くぞ!」
「うへぇ・・・甘い」
「って、どんだけ砂糖入れたんだよ!!」
いつの間にか取ってきて入れたのか、シュガースティックの空袋が5本もコーヒーの横に置かれていた。それは甘くなって当然だ。
「じゃあ、行ってくる!」
「お父様、行ってきます」
「車には気を付けて行くんだぞ」
俺はカバンを持って結衣菜と共に家を出た。
☆ ☆ ☆
「・・・・・・ふふ」
「どうした?ご機嫌だな」
いきなり微笑みだした結衣菜に俺は聞いてみる。
「だってりん君とこうやって学校に登校するのって夢だったんだもん」
「そういや、小学生の頃は別の学校だったから、こうやって一緒に登校することはなかったもんな」
結衣菜はお嬢様学校に通っていた。俺は普通の小学校だったので、家が隣同士でよく遊んではいたが、登校することはなかった。
「だからもう嬉しくって嬉しくって!昨日もなかなか夜寝れなかったんだ」
「どれだけ楽しみにしてんだよ!」
まぁ、それだけ俺との登校を楽しみにしてくれるのは悪い気分ではないけど。
「それよりやっぱり手を繋ぐのはやめないか?」
「え、なんで?」
「いや、だってさ」
俺は周りを見てみる。
周りは学校に近付くに連れて生徒の数が増えてくる。よって、手を繋いでいる俺達はかなり目立っていた。
「そんなに私と手を繋ぐのは嫌?」
「・・・そんな目で見られると断りづらいんだが」
「嫌?」
「・・・・・・・・・わかったよ。繋いでていいぞ」
「ありがと♪」
結衣菜は周りの視線なんて気にしないで、手を繋ぎながらピタッと肩をくっ付けてくる。
(ああ!もう!これじゃあ絶対何か噂される!!下手をしたら男子に殺されるぞ!!)
俺はそんな懸念を抱きつつ、注目されながら登校するのだった。
☆ ☆ ☆
「おはようさん」
「・・・・おはよう」
俺は教室に入ると適当に挨拶をする。結衣菜も小声だが挨拶をした。
「おはよう」
「おっす!」
先には何人かの生徒が登校しているので、俺達に挨拶を返してくれる。
「お二人さん、朝から熱々だね」
「詩穗か。おはよう」
後ろから声を掛けられたが、すぐに誰かわかった。会って間もないのにこうやって声を掛けてくる女子生徒は詩穗ぐらいだ。
「うん、おはよう。一ノ瀬さんもおはよう」
「・・・おはよう」
一ノ瀬はやっぱり人見知りなのか、俺の時との会話が嘘のように萎縮してしまっている。
「りん君、こっち」
「お、おう」
俺は結衣菜に手を引かれて窓際の一番後ろの席の方へ連れてかれる。
「りん君、ここに座って」
「え?だけど俺は」
結衣菜は昨日と同じ席に座る。そして、自分が座っている窓際の一番後ろの席の右隣を指差して言ってきた。
「最初の方は席を自由に変えていいって先生言ってたよ」
「でも・・・」
「駄目なの?」
「・・・・わかったよ」
少し涙目で上目遣いで言われたら俺は折れるしかなかった。ただ問題がある。
「音無、おはよう!」
「相変わらず朝から煩い奴だな」
そして、予想を裏切らずに問題の上北が声を掛けてきた。
「煩いとは心外だな。気持ちよく朝を迎えるには挨拶が一番だろ」
「お前の存在が一番気持ちよくない原因なんだよ!」
「はっはっはっ!照れるな照れるな!」
「照れてんじゃねぇ!」
「うぅ・・・」
俺が上北とい言い合っていると、結衣菜が怖がったのか、俺の後ろにしがみ付くように隠れてしまう。
「お前が騒ぐから結衣菜が怖がってるじゃないか!」
「騒いだのはお前も一緒だろう!」
「あー、はいはい。朝からBLはいいから。ホームルーム始めるから早く席に着いてね」
「BLじゃない!」
いつの間にかチャイムがなっていたらしく、久遠先生が俺達の間に入って制止をしてきた。余計な言葉と一緒にだが。
「って、なんでお前がそこに座る」
「しょうがないだろう。俺達が騒いでいたおかげで他の席は埋まってしまったのだから」
「マジか」
確かに昨日座っていた席には別の生徒が座っていた。
「琳佳君も早く座ったら?」
「お前も前に座ったのか」
気が付くと、窓際一番後ろに結衣菜が、その右隣に俺、更に右隣には上北が。そして、俺の前の席に詩穗、上北の前の席に一と仲の良い?連中が固まって座っていた。
(ってか、一の奴、いつの間にそこに座ったんだ?)
「じゃあ、皆!おはよう!ホームルームを始めるよ」
やたら元気の良い久遠先生の声で朝のホームルームが始まった。
普通に連絡事項とやらを述べた後は時間を置かずに、最初の授業が始まる。
なので、授業の準備をすることにする。
(最初は国語だったな)
今日の授業は基本科目が並んでいる。国語、数学、社会、英語と並んで午前の授業だったはずだ。
(・・・・・なんでまだ久遠先生は教卓にいるんだ?)
久遠先生も授業の準備で教室からいなくなると思っていたのだが、ずっとニコニコしながら教卓に居座っていた。
そこでチャイムが鳴る。
「じゃあ、最初は国語の授業だね。皆、教科書は持ってきたかな?っていっても最初は使わないけどね」
なるほど、久遠先生は国語の教師だったのか。それならば移動しない理由はわかる。
「じゃあ、今日は初日の最初の授業ってことで、簡単なテストをやってもらおうかな。皆の実力を知りたいし」
『えー!!』
テストと聞き、クラスメイトの皆は不満なようで声をあげる。
「あ、テストって言っても簡単なものだし、出来なくても成績には反映しないから安心して」
その言葉を聞いて、皆は安堵の息を吐いた。
「じゃあ、プリント配るから、前の人は後ろに回してね」
久遠先生は先頭に座っている人にプリントを渡す。1番前の席の人から後ろに順番にプリントを取り、後ろへと回し始める。
すると、なぜかプリントを見た人達からざわついてきた。
(ん?何か変なもんでも書かれてるのか?)
俺の席は一番後ろなので、情報が一番遅い。やっとのことでプリントが詩穗から回されてくる。
「なっ!」
俺はプリントを見て絶句する。
(な、なんじゃこりゃあ!!)
プリントには普通の漢字の問題、短めの文章の問題と国語の問題があるのはわかる。これは国語の授業なのだから。なのに
「先生~、なんで計算問題が入ってるんですか?」
「裏には英語の問題も入ってますよ?」
そう、国語らしい問題の後は数学、英語となぜか別教科の問題が並んでいたのだ。
「・・・・・・この英語の問題、歴史の内容だね」
「・・・マジか。って結衣菜、もうこの英文を和訳したのか」
(配られてから数秒しか経ってないぞ)
だが、結衣菜の言葉で更に訳が分からなくなる。
「え?だって言ったじゃん。皆の実力が知りたいって」
「あのー、先生?久遠先生って国語の教師なんですよね?」
「え?うん、そうでもあるよ」
詩穗が質問すると、久遠先生は変な返答をする。
久遠先生の言っている意味が分からない。そうでもあるってなんだ。
「えっと、先生は国語の教師で、今は国語の時間でなんですけど・・・。なんで計算とか英語もやらないといけないんですか?」
「だって私が担当する教科でそれぞれその度にテストをやるより、一度でやった方が皆も楽でしょ?」
「はい?」
「だから、私が担当する教科、国語、数学、英語、社会、化学、生物、物理の内、今日の午前中の授業をテストでまとめたものなんだけど」
・・・・・・・・・・・
『え、ええええええぇぇぇぇぇ!!!』
まさかの事実に二日連続で久遠先生に驚かされる俺達だった。
わかりづらいところがあったら指摘等もお願いします。