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第54話 体育祭 1

 グラウンドに全校生徒が集まり、体育祭開会式が行われていた。


「え~本日もお日柄が良く・・・」


 例によって、今は校長ではなく、教頭先生が台の上で開会の言葉を長々と話していた。


「今日は皆さんの練習してきた力を存分に発揮出来ることを。そして」

「あ~、教頭先生の開会の言葉の途中ですが、長いのでここで終わりにしさせて頂きます。次は」

「あっ、ちょっときみ」


 教頭先生は生徒と他の先生によって、壇から無理矢理退場させられていった。


「次は生徒代表による宣誓です。生徒代表の方、宜しくお願いします」


 開会式は教頭先生の挨拶以外は滞りなく進んでいった。



 ☆     ☆     ☆



 俺は結衣菜や上北達と一緒に自分達のグラウンドを囲うように並べられた椅子へと向かった。


 グラウンドで基本的には競技が行われるので、観戦席のように椅子が並べられているのだ。


 そして、席に着いて久遠先生から一言貰い、その場は解散となった。


 要はここで他の生徒の競技を見てもいいし、家族のところに行ってもいいということだ。


 でも俺達新聞部はというと。


「体育祭委員に話は通してあるので、何処のクラスが勝ったとかの情報は貰えることになっているから、最悪観戦しなくても構わない」


 体育祭当日の新聞部の打ち合わせをしていた。


「でも出来る限り競技は見て、その様子を観察してほしい。後は意気込みとかも聞くのがいいかもしれんな。他にも」


 なんか上北がやって欲しいことを次々と言っていく。


「なぁ上北」

「なんだ?」

「そんなに取材しても、新聞に納まるのか?」

「無理だな」


 普通に無理って言ってきたよ、こいつ。


「だが、選択肢は多い方がいいだろ?」

「まぁ、そりゃあ・・・」


 そう言われてしまうと、こちらからは何も言えなくなってしまう。


「ま、体育祭を楽しみつつやってくれればいい。それより音無と一ノ瀬、お前らは2つ目の競技に出るのだろ。早めに準備した方がいいんじゃないか?」


 俺と結衣菜はそう言われて、出場の控え場所に向かった。



 ☆     ☆     ☆



 これからやる競技は○○競争としか書かれていない。


 競争と名前が付くことから、競い合うものだということしか分からないが、これは学年男女問わずの競争らしいので、借り物競争みたいな感じだと予想している。


 ただ、唯一の決まりは1クラス2人を出すということだった。


 周りには男同士や女同士でのペアばかりだ。男女ペアは俺らだけのようだ。


「どんな競技なんだろうね」

「さぁな。なんか毎回何かの競争としか情報は出していないらしいぞ」

「へぇ、そうなんだ」


 そして、俺達の競技が始まる。


 用意されているのはバレーボールや平均台や跳び箱といった物等だ。


「・・・・・・なんか嫌な予感がするんだが」

「そう?」


 俺は用意されている物を見て、1つ心当たりがあるものが浮かんだ。せめて運ぶのに道具があればいいんだけど。


「それでは今回の○○競争は、ボールを手を使わずに障害物を越えて、ゴールまで運んで貰いまーす。途中で落としたら、手を使っていいので、落とした場所からスタートしてくださいね。もちろんヘディングやリフティングは禁止です」


(やっぱり!思った通りだよ!)


 俺は予想通り過ぎて、心の中で叫んでしまった。


「ねぇ、りん君。どういうこと?」

「ええと、それは」


 この競争は手を使わずにボールを運ぶというのが趣旨なので、2人で身体を使ってボールを挟んで、ゴールを目指すという競技だ。


 そのことを結衣菜に説明すると。


「私とりん君なら出来そうだね」

「いや、でも下手をすると身体をくっつけるんだぞ」

「うん。人前は恥ずかしいけど、競技なんだから仕方がないよ」


 仕方がないと言いつつ、結衣菜は笑顔だ。


 そんな様子を見た周囲の男子から睨まれ、呪い殺されそうな雰囲気が漂ってくる。


 そして、それぞれのペアにボールが1個ずつ配られていく。


「りん君、どうやって持つ?」

「背中同士で挟んでいく方が安定するか?」

「でもそれだと1人は前見えないよ」


 俺と結衣菜は何かいい方法がないか考える。


「あ、そうだ。りん君、背中向けて」

「あぁ、これでいいか?」

「うん、それでこうやって」


 結衣菜は俺の背中から抱き付いて来た。背中には結衣菜の胸の感触と、硬い何かの感触が伝わってくる。


「結衣菜、これって結衣菜の胸の上にボールを置いて、俺の背中と挟んでるのか?」

「うん。これなら下に落ちずらいかなって。りん君はこのまま私をおんぶすれば、動きやすいんじゃないかな?」


 俺は試しに結衣菜を背負ってみる。


 結衣菜も俺の腰に足を回して落ちないようにとしがみついてきた。


 確かにボールは落ちずらいし、俺1人の足で動くので、2人で持って行くよりは、運びやすい。


 念のため体育委員に聞いたら、ルール上は大丈夫とのことだった。


 他のクラスも俺達を見て真似しようとするが、男性同士だと重さがきつく、女子同士だと力が足りないようで、この方法では上手く運べるペアはいなかった。1組だけ小柄な男子生徒が1人いたが、俺達みたいに走ったりしたら安定しないみたいで、脇や下からボールがこぼれ落ちていた。


 たぶん、俺達は走っても結衣菜の胸が緩衝材となっていたんだろう。


 結果、この競技は俺達が余裕で1位をもぎ取ることが出来るのだった。

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