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第48話 取材《体育祭練習風景》

 昼休みが終わり、午後の練習の時間がやってきた。


 新聞部に所属している面子は、クラスをまとめる詩穗を除いて取材をする予定だ。


 詩穗を除くと俺達は4人なので、2人1組で2組に分かれて取材することになった。


 もちろん俺は結衣菜と組まされることになった。


 上北からデジカメを1台受け取り、俺達は自分のクラスと同じ練習場所であるグラウンドから回ることにした。


 グラウンドには既に練習を始めているクラスが幾つもあった。

 大縄跳びにリレー、ムカデ競争、借り物競争等々・・・・。


「え、借り物競争?」


 俺は改めて見てみる。

 4人の生徒がスタートし、置いてある紙を見て、カバンやらタオルやらメガネやらを持ち、ゴールを目指している。完全な借り物競争だった。


「・・・りん君、あれって練習する意味あるのかな?」

「借りる物の紙は運営委員が用意するだろうから、あまり意味がないと思うぞ」


 それでも、そのクラスは真面目に借り物競争の練習を続けていた。


「写真撮る?」

「一応グラウンドを見渡せるように1枚は取っておこう。こんな風にやってるぞって感じで撮ろう」


 俺達はグラウンドが全体を見渡せる場所に移動し、全体が写るようにして写真を撮った。


 それからは1つ1つのクラスに断りを入れて撮っていった。


 そこが終わると幾つかある体育館を回っていく。


 それなりの写真が撮れた頃に、どれくらい写真が撮れたか確認していると、俺達が撮る前のデータが残っていることに気が付いた。


「こ、これって私達の写真?」


 結衣菜が言った通り、それらは俺達が一緒にいる写真ばかりだった。

 一緒に手を繋いで歩いている姿や、弁当を結衣菜に食べさせて貰う姿等々。その枚数は百を有に越えている。


(あいつ、いつの間にこんなに写真撮ってたんだ?)


 俺からすれば恥ずかしい写真ばかりなんだが、これを見た結衣菜は頬を染めつつも、幸せそうな笑みを浮かべていた。


「ふふ」

「どうしたんだ?これ盗撮みたいなもんだから怒るところじゃないのか?」

「そうかもしれないけど、私はりん君とこんな風に過ごしたなぁって思い返すと幸せな気持ちになるの」

「なるほどな」


 それはわからなくもなかった。

 1つ1つの写真を見ていくと、自分の記憶がより鮮明に掘り起こされる感じがする。


「だから、この写真とデータだけ貰って削除してもらうかなって」

「まぁ、いいんじゃないか?後で上北に聞いてみよう」

「うん♪」


 俺達はその後も練習するクラスを取材して、部室へと戻った。



 ☆     ☆     ☆



 部室へ戻ると、既に上北とはじめは戻っていた。


「お疲れ」

「そっちもな。どうだ?いい写真とコメント貰えたか?」

「それなりにはな」


 俺達もいつもの隣り合った席に座りながら答えた。


「あ、あの、上北君」

「む、なんだ?」

「この」

「ああ、そのデータなら好きに持っていくといい。プリントアウトしてほしいなら明日には渡せるぞ」

「ほ、本当?」


 上北の言葉に結衣菜は目を輝かせる。


「もちろんだ。元よりそのつもりでデータを削除しないでお前達にデジカメを貸したからな」

「そっか。ありがと」


 結衣菜は素直に喜んでお礼を言った。だが、俺は今の言葉に少しの不安が残った。


「取り敢えずお前達の撮って来た写真をパソコンに入れるぞ」


 上北はどこからか持ってきたパソコンにデジカメのデータを入れ始めた。


「あ、あとこれ。皆のコメントを書いた紙」

「恩に着る」


 上北はキーボードを片手で叩きつつ、結衣菜から紙を受け取った。


「上北、一応メモは上から時間の早い順で書いてあるからデータと見て合わせてくれ」

「了解だ」


 俺達がやり取りをしている間、はじめはというともう1台のパソコンでなにやら作業をしていた。


「・・・はじめは何をやってるんだ?」

「これかい?これは新聞のレイアウトをね」


 どうやらはじめは新聞のレイアウトをしているようだ。

 画面には新聞みたいな区切りがしてあるレイアウトがあった。

 一応どの記事がどこに来るかコメントのような物も小さく記入してあるようだ。


 もちろん今回の取材の事前の練習風景という区画もある。


「なぁ、この『近況』って何の近況なんだ?」

「き、近況は近況だよ。最近の出来事みたいな」

「ふーん・・・」


 なんか歯切れが悪いし、説明も曖昧で怪しいが、あまり突っ込まないことにした。


 すると、廊下の方が騒がしくなり始めた。


「あ、ちょっ、ちょっと!!」

「こっちから琳佳の臭いがする!!」


 なんか詩穗の慌てる声と、最近聞いた騒がしい声も聞こえてきた。


 そして、ドタバタとこちらに走ってくる足音が2つ聞こえてきた。


「琳佳!!」


 大きな声と共に開けたドアの先には、金髪ポニーテールの少女、桜坂 莉愛が立っていた。

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