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第47話 活動へ向けて

「はぁ、まさか莉愛りあのやつが帰ってくるとは・・・」


 俺は風呂に浸かりながら独り言を漏らした。


 莉愛は俺が中2の時に莉愛の母方の実家があるイギリスに引っ越して行ったのだ。あれから2年ちょいで帰ってきたことになる。


「でも性格とかはあまり変わった感じがしなかったな。変わったとすれば胸ぐらいか」


 俺は中学の頃に上北やはじめとよく一緒に遊んでいた。そこに実は莉愛も引っ越すまでは仲間に入っていたのだ。

 莉愛は小学校に転校してきた当初、ハーフってことで、軽いいじめを受けていた。莉愛は家が隣同士ということで、よくそういった出来事を俺に話してくれていたのだ。

 俺はいじめられた過去を持っていたので、莉愛を放って置くことが出来なかった。


 それから一緒にいることが多くなり、俺が中学生になっても、いつも後ろにくっついて来たのだ。


「りん君、入るね」


 曇りガラスの扉の向こう、脱衣所から結衣菜の声が聞こえてきた。


「あぁ・・・・・・・え?」


 俺は考え事をしてたので適当に返事をしてしまう。そして、結衣菜の言葉を理解した時には時既に遅く、風呂場の扉が勢いよく開けられた。


 そこには結衣菜がタオルすら巻かずに肝心なところだけを手で隠して入ってきていた。


「なっ・・・なっ・・・なっ!?!?」


 俺は突然のことに頭がフリーズする。結衣菜は俺に見られているからなのか、その場から動こうとしない。俺は俺で結衣菜の方に視線が釘付けになっていた。


「り、りん君、そんなにじろじろ見られると恥ずかしいよ」


 結衣菜は可愛らしいお尻をこちらに向けながら言ってくる。


「い、いきなり入ってくるなよ!」

「いいって言ったもん」


 確かに空返事で答えてしまっていた。だけどそれで入ってくるってのはおかしい!


「りん君、ちょっと詰めて」

「ま、まさか入るつもりか?」


 うちの浴槽は大人2人が入るにはきつすぎる。少し小柄な結衣菜だとしてもそれは変わらない。


「よいしょ」

「っ!?!?!?」


 結衣菜は俺に背を向け、浴槽に足を入れるために片足を上げた。少し見てはいけない部分も見えてしまったような気がする。そして、結衣菜はもう片方の足も入れ、俺の足の間に腰を下ろそうとする。すると自然に結衣菜の柔らかそうなお尻が目の前にくるわけで・・・。


「お、俺先に出るぞ!!」

「きゃっ!り、りん君!」


 俺はいろいろと耐えられなくなりそうになり、結衣菜の下ろそうとするお尻を手で持ち上げて、慌てて浴槽から飛び出し、風呂場を後にした。


 そしてタオルと着替えを掴み、裸のまま自分の部屋に駆け込んだ。


「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・、莉愛のやつの影響か」


 たぶんお風呂エピソードを聞いて、対抗心を燃やした結果なのだろう。


「・・・結衣菜とどんな顔で合わせればいいんだ」


 この日の夜、俺は悶々とする夜を過ごすことになった。



 ☆     ☆     ☆



 莉愛がやってきた翌日、この日は日曜日で比較的平和な1日だった。

 まぁ、朝に結衣菜と顔を合わせた時は気まずい雰囲気をお互いに出していたが、朝食を一緒に準備しているうちに、いつの間にか無くなっていた。

 2人で公園や駅前にまで足を伸ばして、ぶらぶらとデートをして、夕食の買い物をして帰宅する。

 夜も特に何事もなく過ぎていった。


 そして週が明け、また学校がある1週間が始まる。


 いつも通りに結衣菜と登校し、上北やはじめ、詩穗のクラスメイトの皆と朝の挨拶を交わし、ホームルームの時間を待っていた。


「今日の午後、俺達は練習を抜けて活動するから、そのつもりでいてくれ」

「活動?」


 上北が俺と結衣菜、はじめ、詩穗を集めてそんなことを言ってきた。俺は活動の意味がわからないので、首を傾げる。


「私はクラス委員でまとめなきゃいけないから難しいかも」

「そうだな・・・。なら鶴野宮はこの前と同じ様にクラスをまとめててくれ。活動は俺達4人でやる」

「僕は一応練習箇所の仕分けはしてきたよ」

流石一にのまえだ。仕事が速いな」

「上北君、えと、その、私は質問を考えてきたんだけど」

「リストはあるか?」

「う、うん。これ」

「・・・・・・・これは使えそうだ。助かる、一ノ瀬」

「・・・・・・・・・」


 俺は活動とやらがわならないまま、話が進んでいく。結衣菜も何か書かれた紙を渡していたし。


「・・・なぁ、結衣菜」

「なに?」


 俺は結衣菜に小声で話しかける。


「活動ってなんだ?」

「えと、新聞部の活動だよ。ほら、イベント事に新聞にする約束でしょ?」


 結衣菜に耳打ちされて思い出した。そうか。体育祭も立派なイベントの1つだもんな。

 練習風景の取材をするということか。


「皆、おっはよー♪ホームルーム始めるから席に着いて。音無君と一ノ瀬さんは朝からいちゃつかないでね」

「「っ!?」」


 教室に入ってきた久遠先生の一言でクラスメイト全員の視線が俺達に集中した。男子からは射殺されるような視線が向けられる。


 俺達はそそくさと離れ、お互いの席に着いた。


 体育祭は今週の日曜日だ。

 こうして、体育祭までの最後の1週間が始まった。

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