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第45話 週末

 アスレチックでの練習は暗くなる前に切り上げることになった。

 上北は何を考えているのか、1度学校に行ってから帰るようで、その場で別れることになった。

 はじめとは途中にあるスーパーの前で別れた。俺と結衣菜は夕飯の買い物をして帰るからだ。


「じゃあ2人共、また月曜」

はじめ、今日はありがとな」

「また、ね」


 簡単に挨拶をしてはじめは帰路に着いた。

 俺と結衣菜はそのままスーパーの中へ入る。俺は入り口にあるカゴを手にしている間に結衣菜はカートを持ってきてくれる。

 俺はカートにカゴを乗せて、結衣菜からカートをもらい、移動する。

 もう何回も繰り返しているので、自然とこのような形になってしまう。


「りん君、今日は何にする?」

「なんでもいいよ」

「それが1番困る返答なんだけど」


 結衣菜が少し困った顔をして見てくる。


「そうだなぁ・・・」


 俺はスーパー入り口付近にある安売りや、おすすめの品の広告を見る。


「・・・ハンバーグとかにするか?玉ねぎと挽き肉とか安いみたいだし」

「うん、わかった。付け合わせとかいる?」

「その辺りは見ながら決めようぜ」

「うん」


 メニューが決まると、俺達はハンバーグの材料となるものをカゴへと入れていった。

 付け合わせはじゃがいもが安かったので、他の野菜を足してポテトサラダにすることになった。


「結衣菜ってデミグラスソース作れる?」

「うん、作れるよ。でも本格的なのは時間が掛かるから、今日は難しいかな」

「ってことは簡単なのは?」

「それなら30分もあれば作れるから大丈夫。りん君はデミグラスソースがいいの?」

「出来れば」


 もし作れなかったら、市販のを買っていくつもりだった。


「わかった。材料は・・・」


 結衣菜は香辛料を追加で買い足していく。


 ここ数日、結衣菜と一緒に暮らしてわかったことだが、結衣菜は料理のレパートリーが多い。ハンバーグみたいな定番の物から、煮込み物や蒸し物等、和洋中も作れるのだ。

 昨日は酢豚を作ってくれたが、ものすごく美味しかった。


 結衣菜は最近になり、うちの台所の使い勝手がわかってきたのか、手際も良くなってきているのだ。


 俺も料理は出来る方だと思っていたが、さすがに結衣菜には負ける。なので、最近は結衣菜が主体で俺が手伝う形で料理することが多くなった。


 そうこうしている内に、必要な物は全て揃い、レジへと向かう。


「あら?今日はハンバーグでも作るのかしら?」


 いつもの店員のおばさんがカゴの中身をレジに打ちながら声を掛けてきた。


「はい」

「いいわねぇ。こんなに若い奥さんが料理上手で」

「そうなんですよ。いつもすごく助かってます」

「そ、そんなことないよ。りん君だって作ってくれるもん」

「いや、でも最近は」


 俺達がそんなやり取りをしていると、おばさんはクスクスと笑い始めた。


「あ、ご、ごめんなさい」

「いいのよ。本当に仲が良いのね」


 おばさんはそう言いながら、カゴの中の最後の商品のレジ打ちをした。


「はい。合計は・・・」


 会計は結衣菜に任せて、俺は先にカゴを持ち、先に袋に入れていく。基本的に生活費は結衣菜に持たせているのだ。


 今回はそこまで量は買っていないので、1つの袋で事足りてしまった。


 そして、結衣菜と一緒にスーパーを出る。


「りん君、私も半分持つよ」

「半分って・・・、今日は1袋だから大丈夫だぞ」

「ううん。そうじゃなくて」


 結衣菜は俺の手から袋の手持ちの片方を取る。

 結果、俺と結衣菜で1つの袋を持つ形にねった。


「なるほど。こういうことか」

「うん」


 結衣菜は嬉しそうに頷いた。

 まぁ、嬉しいことは嬉しいんだけど、周りからの視線は少し痛い。


 そのまま俺達は帰宅し、俺は風呂掃除を。結衣菜は料理と家事分担をする。

 俺の方が大抵早く終わるので、途中からは結衣菜の手伝いに入る。


 最近はこれが普通になりつつある。結衣菜が来る前はこれを1人でこなしていたから、俺もかなり楽が出来ている。


 夕飯のハンバーグも上手い出来上がり、2人でお互いに食べさせ合いながら、仲良く食べた。外ではこんなふうに食べさせ合うなんて、恥ずかしくて出来ないからな。


 夕飯の後はリビングでテレビを見ながら適当な話題を話しながら過ごす。


 いい時間になったら俺から風呂に入るために立ち上がる。なんかもうこれが流れみたいになってきている。

 ただ、リビングで話している時の結衣菜の頬が、少し赤くなっているような気がした。



 ☆     ☆     ☆



 風呂から上がり、自分の部屋でベッドでごろごろしながらマンガを読んでいると、ドアがノックされた。


「りん君、入っても大丈夫?」


 ドアの隙間から結衣菜がちょこんと覗き混みながら聞いてきた。


「ああ、いいぞ」


 マンガから視線を外し、結衣菜の方に向ける。そこには可愛らしいワンピースの寝間着を着た結衣菜が立っていた。そして、手には枕が抱えられている。


「・・・・・・ダメ?」


 結衣菜が何を聞いてきているのかは、状況からなんとなくわかる。要するに一緒に寝ていいかという質問だろう。


「・・・・・・・」


 俺が黙っていると、結衣菜は目をうるうるとしながら見つめてくる。


(そういえば一緒に寝るのは週末とかなんとか言ってたな)


 俺はそんなことを思い出す。


「・・・・・・いいぞ」

「やった♪」


 結衣菜はうるうるした目から、一気に嬉しそうな笑顔になる。

 結衣菜は自分の枕を、俺の枕の隣に並べ始めた。


「りん君♪」


 結衣菜は寝転がってた俺の後ろから、自分も寝転んで抱き付いてきた。


「お、おい」

「えへへ~♪」


 あまりくっつかれると、すごく柔らかいし、良い香りがするし、いろいろとやばいんだけど。


「ん~・・・りん君、いつもより硬いかも」

「え?」


 何が?と聞き直しそうになるが、我慢をする。


「ほら。肩とか足とかいつもより硬いよ?」


 結衣菜は手と足を俺に巻き付けながらそんなことを言ってきた。

 まぁ、確かに今日は普段使わない筋肉を使ったから疲れているかもしれない。たぶんその影響だろ。


「マッサージしてあげるよ。うつ伏せになって」

「それじゃあお願いしようかな」


 俺がうつ伏せになると、結衣菜が俺の上に座ってきた。そして、肩を揉み始めてくれる。

 これ、けっこう気持ちいいかも。


「どうっかなっ?」


 結衣菜は頑張って力一杯やってるようだが、俺にとってはこの力加減が丁度良い。


「ああ、すごく気持ちいい」

「それじゃ!これで!頑張るね!」


 結衣菜のマッサージは本当に気持ち良くて、俺はそのまま眠りに落ちていった。



 ☆     ☆     ☆



 俺が目を覚ますと、まだ辺りは暗かった。時間を見ようと身体を動かそうとすると、右腕が動かないことに気が付く。

 俺は視線を右手の方に向ける。


「すぅ・・・すぅ・・・」


 すると、至近距離に結衣菜の顔があった。結衣菜の寝息が俺の顔に掛かるぐらいに近い。どうやら俺の右腕は結衣菜の枕として使われているようだ。


(そうか。俺、昨日は結衣菜にマッサージされながら寝ちゃったのか)


 昨夜のことを思い出しつつ、結衣菜の寝顔を至近距離で見る。少しでも動いたらキス出来てしまいそうだ。


「んぅ・・・りん君・・・ん」

「っ!?」


 結衣菜の顔が突然俺の方に近付いて来た。そしてそのまま唇同士が接触する。


「・・・んぅ?」

「・・・・・・・」


 結衣菜の瞼がゆっくりと開く。俺達はキスをしたまま、超至近距離から見つめ合ってしまう。


(これって・・・俺が寝込みを襲ったことになるのか?)


 俺がそう思った時、結衣菜の頬が赤く染まり、ゆっくりと唇が離れる。


「ん・・・おはよう、りん君」

「お、おはよう」


 結衣菜は照れながら微笑み、朝の挨拶をしてくる。


「ん・・・」


 そして2度目のキスをしてくる。


「えへへ。こういうのなんか良いね」


 結衣菜はそう言いながら抱き付いてきた。

 よかった。寝込みを襲ったとは思われなかったようだ。


「今日はこうやってイチャイチャしながら過ごそっか」


 今日は結衣菜とイチャイチャして過ごす日になりそうだ。

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