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第42話 お疲れからの帰り道

 大縄跳びの練習は上北の指示が飛び交いながらも順調に進み、結構な早さで飛べるようになってきていた。


「はぁ、はぁ、はぁ・・・」

「も、もう・・・だめ・・・・・・」


 1時間以上の練習を続け、俺達クラスメイトの皆は疲弊して、地面に座り込んでいた。

 大縄跳びで疲れすぎだって?でも考えてみてもくれ。

 上北の指示で、1度に4人1組で跳ぶようになり、それを約2秒で3組跳ばせようとしてたんだ。

 俺達のクラスは全部で8組ほど出来たから、6~7秒毎に4人で息を合わせて大縄跳びを飛び、回り込むために走り続けるんだ。

 もう常に女子や足の遅いやつを引っ張りながらの1時間だ。


 流石の俺でも疲れた。


「結衣菜、大丈夫か?」


 俺に寄り掛かりながら休む結衣菜に問い掛ける。


「きょ、今日はもう・・・歩けない・・かも」


 結衣菜はぐったりとしながら答える。他のクラスメイトも同じような状態だ。


「うむ・・・よし。次は」

「まだやるつもりなのか!?」


 そんな中、上北がこの惨状を見て、次をやろうと進言しようとしてきた。


「もう出来ないのか?」

「まだ出来ると思っているのか?」


 俺が聞き返すと、上北は周りを見渡した。


「うむ。まだいけそうだな」

「お前は鬼か!!」


 この座り込んだり寝転んだりして休む皆を見てよく出来ると判断できるな。


「しょうがない。今日はこれぐらいにしておこう。久遠先生もそれでいいか?」

「うん。先生も流石に疲れたからね~。今日は早めに切り上げて休んでもらおうかな」


 意外と元気な久遠先生が皆を見渡しながら言った。この人も上北と同類なのか。


「それにしてもやっぱり運動するときは水着に限るよね」

「・・・どういうことですか?」


 久遠先生は突然そんなことを言い始める。


「だってさ。ほら、周りの女の子を見てみてよ」

「・・・・・・・・」


 もう6月に入り、蒸し暑い日が続いている。

 そんな中、体操着でこれだけ動くと当然のことながら汗をかく。

 そして、体操着が濡れると透けるわけで・・・。


「・・・結衣菜、あれの他にも黒い下着持っていたんだな」

「っ~!?」


 前に見たかなり際どい黒い下着とは別の黒い下着が透けて見えていた。確かに水着なら透けることはないか。

 結衣菜は胸元を隠し、俺の背中に抱き付いてきた。


「り、りん君、このまま女子更衣室の前に行って」

「な、なんで?」

「りん君以外の他の男の人に見られたくないから」

「っ~!?」


 結衣菜は顔を真っ赤にしながらそんなことを言ってきた。流石に今の言葉は照れる。


 にやにや


 近くにいた上北と久遠先生からの視線が痛かった。

 俺はそそくさと背中に結衣菜をくっつけたまま、女子更衣室前まで連れていった。その際に他の女子達から覗きと間違われそうになった。っていうか、他の女子に頼めばよかったんじゃ・・・。


 とまぁ、こんな調子で練習は終わっていった。



 ☆     ☆     ☆



「りん君、今日は何か買って帰ろ?」

「そうだな。俺も疲れたし惣菜でも買って帰るか」


 学校を出た俺達は夕食のことを考えながら歩いていると、周りからは「流石新婚さん」とか「なんであんなやつが」等の色々な声が聞こえてくる。

 まぁ、あれだけ大々的に掲示板に貼り出されればこうなるか。


「あ、あはは・・・新婚さん・・・だって」

「み、みたいだな。実際に似たようなもんだし」


 将来結婚することはほぼ確実で、同棲している。これは新婚と言われてもしょうがない。


 俺達は手を繋いだまま近くのスーパーに向かう。


 そして、惣菜コーナーで選んでいると。


「あら?若奥様じゃない。相変わらずラブラブなのね。今日は惣菜なの?」


 と、店員のおばさんからそんなことを聞かれてしまった。

 ここのスーパーは結衣菜と何回も来たことがある店だ。顔を覚えられていてもおかしくはない。

 それにしても若奥様か。なんか俺に言ってるわけじゃないけど照れるな。

 結衣菜も顔が赤くなってるし。


 俺達は惣菜を買い、帰路に着く。


 体育祭の練習で疲れたこともあるのか、俺達は黙ったまま手を繋いで歩いている。


 今日は夕食を食べた後はのんびりとテレビでも見て過ごすか。そこに結衣菜がいるだけで違う感じもするだろう。


 そんなことを考えてふと結衣菜を見ると、視線がぶつかる。

 こうして視線を少し合わせるだけでなんとなく相手の言いたいことが伝わる感じがする。


「今日は一緒に寝る?」

「勘弁してください」


 全然伝わっていなかった。こんな疲れている状態でも、結衣菜と一緒だと意識して寝れなくなる。


「どうしても?」

「どうしても」

「私はりん君が隣に寝てくれると安心できるんだけどなぁ」

「・・・・・・」


 そんなことを言われては断りづらくなる。


「ふふ、冗談だよ。りん君が寝れなくて明日とか倒れられたら困るもん」

「結衣菜・・・」


 結衣菜はちゃんと俺のことをわかっていてくれた。


「だから一緒に寝るのは週末に・・・ね?」

「・・・・・・・」


 ということは週末は俺は寝れない夜を過ごすと。


「りん君、明日からも頑張ろうね」


 結衣菜の笑顔が妙に眩しく感じられた。

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