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第41話 体育祭練習

「さぁみんな!これから大縄跳びの練習するよー!」

『・・・・・・・・・え?』


 午後の授業開始のチャイムとほぼ同時に、教壇にいた久遠先生が服を脱ぎ捨てて、そんな言葉を言ってきた。服の下は下着ではなかったということは言っておこう。

 まあ、当然の如く、クラスの皆は頭に疑問符が浮かぶ。困惑する声もほぼ同時に揃えて出した。


「あ、あの、先生?なんで大縄跳びなんですか?」


 詩穗が代表して久遠先生に質問をする。ってそっちを聞くのか。


「なんでって・・・体育祭の競技にあるからだよ?」


 久遠先生の言葉にクラスメイトの皆はざわつき始める。というか、久遠先生が動く度に予想以上に大きな胸が形を変え、男子がざわつく。隣からは結衣菜の視線を感じるし。


「き、聞いてませんよ!それに今朝だって競技決めした時にはなかったじゃないですか!?」


 詩穗の言うことは正しい。朝にはそんなこと一言も言っていなかった。競技にも大縄跳びは入っていなかったはずだ。でもそれ以上に言うべきことがあると思う。


「うん。さっき決まったことだもん」

『・・・・・・え?』


 久遠先生は服がお尻に食い込んだのか、手で直しながら言うと、また皆の声が重なった。


「昼休みに軽く教員会議で『やってみたいねー』って言ったら、『やりましょう!』って他の先生達も同意して決まったんだよ♪」

「・・・・・・・」


 そんな軽い感じで競技増やしちゃっていいのか?あ、そういえば久遠先生って校長で一番偉いんだっけ?でも他の先生って知ってるのか?


「ってことで皆!この競技はクラス全員参加で、全学年クラス対抗ということになったから練習に行くよ!」

「って、待ってください!!」

「ん?音無君、どうかした?」


 俺が久遠先生を呼び止めると、周りのクラスメイトからは『聞くのか?』という声が聞こえてくる。いや、だって気になるだろ。大縄跳び関係ないし。


「なんで久遠先生は競泳水着なんて着てるんですか!?」


 そう。久遠先生は教室に来たときから競泳水着姿だったのだ。綺麗な太ももが眩しい。


「これは私の体操着みたいなものだから気にしないで」

「た、体操着?」


 そんな露出をした体操着はいいのか?いや、陸上やってる人達よりは露出していないのか?でも競泳水着は水着だし・・・。


「ほら。そんなことより練習に行くよ」


 そういうことで、クラス全員でグラウンドに出ることになった。



 ☆     ☆     ☆



「で、誰が回すんだ?」


 大縄跳びには当然のことながら縄を回す人が2人必要になる。大縄跳びで1番体力が必要で、1番大事なのが縄を回す人だ。


「体力的に男子がやるべきだろう。それと出来る限り背丈も近い方がいい」

「後は大縄跳びの前後の競技に重なっていない人がいいんじゃないかな?」


 上北とはじめが既に作戦を練り始めている。

 他の皆もそんな2人の様子を見ながら雑談をしていた。


(なんだかんだで頼りになるもんな)


 特に上北は相手にすると疲れるが、こういう時に味方でいると安心する。


「先生よ。今回の大縄跳びのルールはどんなのだ?」

「んーとね、制限時間内に続けて何人跳べるかを競うルールだね」

「1度に跳ぶ人数は?」

「決めてないよ。でも、同じ人が連続で跳んだのは換算しないってルールだね」

「なるほど。1度に何人跳んでもいいのだな?」

「流石上北君、気が付くの早いね」


 なるほどな。1人ずつというルールがなくて、跳んだ人数で換算するなら2人ずつ跳んだ方が速い。でもその分失敗するリスクは出てくる。


「縄を回すのは俺と・・・そうだな。鈴木にやってもらおう」


 上北は自分とクラスメイトの鈴木君に頼んだ。鈴木君は上北と体型も同じぐらいで、運動も出来る奴だ。まぁ、性格が少し荒っぽいが。


「マジか」

「ああ、マジだ」

「わーったよ。上北が言うならやってやるよ」


 鈴木は少し嫌そうにしたが、引き受けてくれるそうだ。


「後は大縄跳びを跳ぶのが苦手なやつはいるか?恥ずかしがらずに教えてほしい」


 上北が言うと、数人が手を上げた。へぇ、結構いるんだな。


「では、跳べない者は飛べる者とペアで跳べ。タイミングはその内にわかってくる。他の者も2人ペアを作ってくれ」


 すると、皆は近くの仲の良い友人と組み始めた。


「りん君」

「なんだ?結衣菜も跳べないのか?」


 こくこく


 結衣菜は少し恥ずかしそうに首を縦に振った。


「じゃあ俺と組むか」

「うん」


 こうしているうちにペアは次々と出来あがっていき、全員がペアを組み終わった。


「それじゃあまずはやってみるぞ」


 こうして大縄跳びの特訓が始まった。



 ☆     ☆     ☆



「お前はこいつの組め。お前はこっちだ」


 飛び始めたのはよかったのだが、いきなり2人同時に跳ぶとなると、やはり引っ掛かる人が出てくる。

 そして、そのまま続けて何周かした頃、上北がいきなりペアを変え始めた。


 どうやら、歩幅やタイミングの取り方等が似た者同士をペアにしているようだ。


「音無」

「なんだ?」

「お前は一ノ瀬と久遠先生と3人で一緒に跳べ」

「・・・・・・は?」


 久遠先生?何を言ってるんだ上北のやつ。


「ごめんね、音無君。実はこれ担任も参加する競技なんだ」


 ペロッと舌を出しながら、久遠先生は俺の腕に抱き付きながら言ってきた。というか、競泳水着姿で抱き付いて来ないで欲しい。結衣菜が怖い笑顔を向けてきているから。


「そんなルールあるんですか?」


 俺は久遠先生を腕から引き剥がしながら聞き返す。


「だって・・・・・・私がやりたかったんだもん」

「そ、そうですか」


 久遠先生なら年齢?的にも大丈夫だろうが、中には結構なお年をいった先生もいるのだが、大丈夫なのだろうか?


「お、おい、あれ見ろよ」

「人間の動きじゃねぇな」


 何人かが別のクラスの練習を見て話していた。


「・・・・・・・マジ?」


 そこには俺が気に掛けていた結構なお年の先生が、生徒に見本というばかりの高速の大縄跳びを見せていた。って、宙返りしてるし!?

 回している方の生徒の方がきつそうだ。


「流石は元帥殿だ」


 上北がそれを見て、そう呟いた。


「上北、元帥ってなんだ?」

「なんだ?知らないのか?あの御方は忍者部の顧問であり、世界忍術競技大会で常にトップで在り続けられる御方だ。今年でもう10年目になるはずだ」

「な、なんだって?忍術競技大会?」


 なんだそれ?初めて聞く言葉だけど。


「ま、要するに凄い御方だということだ。これ以上は俺でも消されかけんので言えん」

「どんな人なんだよ・・・」


 なんか詳細不明の忍者部が怖くなってきたぞ。あ、でも確かうちのクラスの天井裏に部室があるんだっけ・・・。

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