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第3話 帰り道

本文を少し改稿しました。

 俺は結衣菜と手を繋いで帰路に着いていた。もちろん、周りの男子生徒からは嫉妬の視線が突き刺さりまくっている。


「・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・」


 久々に会う結衣菜はかなり可愛くなっている。俺は中学時代は上北達と悪ふざけをしていたせいで、女子への免疫は無いに等しい。幼馴染とはいえ、今の結衣菜と手を繋ぐことも、かなり緊張をしていた。


 何か話さないと思っても、なかなか声を掛けることが出来ずにただただ歩くことしか出来なかった。


「・・・ごめんね」

「え?」


 突然、結衣菜の方から話しかけてきた。


「その・・・私、人見知りで上手く話せないの」

「・・・・え?でも俺とは話せてんじゃん」

「それはりん君だからで・・・その・・・」

「そ、そうか」


(そんな風に頬を赤く染めて言われると、どうしたらいいかわからん!)


 俺は心の中で叫んだ。本当に可愛くなりすぎているな!


「だから・・・その、処世術で無表情で過ごしてたら冷徹女って言われるようになって・・・・」

「ああ、そういうことだったのか」


 なぜ冷徹女と言われたかはわかった。なぜ上手く話せないのかもわかった。


「でも、なんで上北にはあんな風に強気で突き放すように話してたんだ?」

「それは・・・その、男の人が怖くて拒否反応がでちゃうっていうか・・・。あの上北君だっけ?悪いことしちゃったかな?」

「いや、あいつに対しては真っ当な対応だと思うぞ」


 まぁ、上北にはいいクスリにはなっただろう。


「あ、もちろんりん君は別だよ!こうやって腕を組んだって平気だし!」

「お、おい!」


 結衣菜は手を離して腕に抱き付いてきた。結衣菜は平均女子くらいの胸はある。俺の腕にはその女子特有の柔らかい胸の感触が伝わってきた。


「ね!」

「ね!じゃなくて!胸当たってるから!」

「~~~っ!?」


 結衣菜は今気が付いたのかそそくさと腕を解放して少し距離を取り、胸を覆い隠すような仕草をする。


「うぅ~・・・りん君のエッチ」

「いや、お前から抱き付いたんだろ」


 笑ったり赤くなったり、くっついたり離れたりと忙しい奴だな。

 今の結衣菜を見ていたら、なんだか少し緊張も解れてきたな。


「・・・で、何やってんだ?お前」

「っ!?な、何でもない!」


 結衣菜は腕で何かを抱きしめた時の感覚を思い出しているような仕草をしている。


「いや、その状態で何もやってないは無理があると思うぞ」

「うぅ・・・りん君の腕が逞しくなってて・・・・その・・・・嬉しくなっちゃって」


 語尾の方は殆ど聞き取れないくらい小さな声になっていた。


「ほ、ほら、それより帰るんだろ?行くぞ」

「あ、ま、待って!」


 俺は恥ずかしくなり、少しぶっきらぼうに声を掛ける。

 すると、結衣菜はそう言ってまた俺の手を握って来るのだった。



 ☆     ☆     ☆



「俺の家は昔のまんまだからこっち方角だけど、結衣菜の今住んでいる所はどこなんだ?」


 結衣菜は引っ越してからどこに住んでいるか俺は知らない。ずっと手を繋いでいたから俺の家の側にまで連れてきてしまったが、大丈夫だろうか。


「えっと・・・私はあそこのアパートで独り暮らしだから」

「え、一人暮らし?」

「うん」


 結衣菜が指を差した方は少し古めのアパートが佇んでいた。


「何かあったのか?」

「え?」

「いや、だって女の子の独り暮らしって色々と家族の方であったとか聞くだろ?」

「私はその・・・りん君を探しにこっちに来たっていうか・・・」

「は?」


 まさかの言葉に俺は聞き返してしまう。


「だ、だから!りん君に会いたくてこっちの高校に受験したの!」

「お、俺がここにいなかったらどうするつもりだったんだ!」

「調べたから知ってたんだもん!」

「そんなもんどうやって調べるんだよ!?」


 え?そんな個人情報って調べられるもんなの!?


「りん君のお父様だよ!教えてくれたの!」

「・・・・・は?親父が?」

「う、うん。去年の年末にりん君の家に電話を掛けて、お父様が笑いながら教えてくれたよ?」

「・・・・・・・俺、何も聞いてないんだけど」

「それは私も知らないよ。でも、受験して受かったから、慌てて独り暮らしを決めてこっちに来たの。私の暮らしていた場所だと、少し遠かったから」


 結衣菜ってそこまで行動力があるやつだったのか。


「ん?でもなんでお前が冷徹女とか噂がこの学校にも流れて来てるんだ?」

「それはたぶん私が有名なお嬢様学校で賞を取ったからだと思う」

「賞って・・・え?お前、賞を取るほど何か凄いことしたの!?」

「う、うん。なんか流れで」

「流れで取れるなんて凄すぎだろ」


 はぁー、結衣菜がなんか遠い存在になった気がする。


「で、何の賞を取ったんだ?」

「それは・・・秘密。恥ずかしい」

「まぁ、お前が嫌なら無理には聞かないけど」

「・・・ありがとう。やっぱり優しいね」

「お、おう」


 やはり、不意討ち気味に笑顔を向けられると照れてしまう。

 今後は結衣菜に対してだけでも免疫を付けないと色々大変そうだ・・・・・・出来るのか?


「じゃあ、また明日ね」

「お、おう、また明日な」

「そうだ。明日の朝、りん君を迎えに行ってもいい?」

「え?まぁ、構わないけど」

「なら迎えに行くね。家もそこまで離れてるわけでもないし」

「ああ、わかった」

「じゃ、また明日。バイバイ」

「じゃあな」


 結衣菜はスキップしながら、アパートの方へと向かっていった。

 あいつ、スキップするほど嬉しいのか。


「・・・・・・白か」


 スキップした影響でスカートから白い何かチラチラと見えてしまっていた。


  (・・・・明日、気が向いたら注意してやるか)


 そう思いつつ俺は自宅へと向かって歩きだした。



 ☆     ☆     ☆



 帰ってから俺は色々と片付けに入る。まだ教科書とかが段ボールに梱包されたままなのだ。後は洗濯もしなければならない。

 何故家事までしているかというと、俺の母親は俺が中1の時に交通事故で他界してしまい、親父と二人暮らしになったからだ。


 今では料理もだいぶ出来るようになったので楽になったが、母親が亡くなった直後は俺と親父は意見の衝突ばっかり起こしていた。

 今思うと、俺はそのストレス発散で中学時代、上北達と騒いでいたんだと思う。


「でも今日は親父が帰ったら結衣菜のこと聞かないとな」


 何故、結衣菜から連絡が来てたことを内緒したのか問い質さなければならない。


 親父は普通のサラリーマンだ。何か大人の付き合いが無ければ夜7時ぐらいには帰って来る。


 それまでに俺は今日の夕飯を作っておかないとな。


「あ~・・・冷蔵庫に何かあったっけな」


 冷蔵庫を開けてみると、中に食材はあまり入っていなかった。


「買い出しに行くか」


 今日の学校は午前中に終わったため、まだ昼飯も食べていない。駅前辺りで軽く昼食を取って、そのまま近くのスーパーに買い物に行くことにした。

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