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第36話 のんびりと

 朝食兼昼食の天ぷら蕎麦は結衣菜と一緒に美味しく頂いた。


 途中、結衣菜が蕎麦であーんをやろうとしてきたが、蕎麦だと難易度が高いのでやめさせた。まぁ、その後海老天ではやられたが。


 そして今は食後の休憩で結衣菜が入れてくれたコーヒーをリビングにあるソファーに座って飲んでいるところだ。


「りん君、今日は何する予定だったの?」

「んー、家でのんびり過ごす予定」

「お出掛けは?」

「しない。あ、でも夕飯の買い物には行くかもな」


 さっきエビとか使ったからな。冷蔵庫の中も少なくなってたし。


「私も今日は一緒にのんびりしてもいい?」

「いいけど・・・いいのか?何もしないかもしんないけど」

「いいの。りん君と一緒にいたいだけだから」


 結衣菜は俺の横にぴったりと付くように座りながら言ってきた。

 俺に少し寄り掛かってきているため、結衣菜の肩が俺の腕に当たる。


(う、ここからだと胸元が覗き見える)


 俺は出来るだけ意識しないようにするため、適当にテレビを付ける。特に面白そうなのはやっていないから、ニュースでも付けておこう。


「あ、こういうところりん君と行きたいなぁ」


 結衣菜が声を漏らす。

 ニュースは温泉特集みたいのをやっており、山奥の秘湯を紹介していた。


「飯も旨そうだな」


 山菜と川魚をメインにした料理がテレビに映る。


「・・・・・・頼んでみようかな」

「何か言ったか?」

「ううん。何でもない」


 俺と結衣菜はこの後もテレビを見ながら、のんびりと過ごすのだった。



 ☆     ☆     ☆



「結衣菜は夕飯一緒に食うか?」

「うん。りん君がいいなら」

「1人分ぐらい増えても大差ないからいいぞ」

「やった」


 時刻は夕方になり、今は近くのスーパーで買い物をしている最中だ。

 流石に結衣菜の服装はワンピースの上に春物のコートを着て、胸元も隠れていた。少し残念な気がするが、まぁ仕方のないことだ。


「で、何を作るか決めてるの?」

「いや、何か安い物があればそれで考える」

「りん君、なんか主夫みたい」

「あー・・・間違ってはないかもな」


 母親が他界してからは家事をかなりやるようになったからな。


「あ、豚肉安いみたいだよ。特売だって」


 結衣菜はかごを持っていない俺の手を掴んで引っ張ってくる。今日はやけに機嫌が良いな。


「可愛い夫婦ね」

「若くて羨ましいわ」


 特売品の方へと引っ張られていると、周りの奥様方からそんな声が聞こえてきた。


「~~っ」


 結衣菜は途端に顔を真っ赤にして、俺の影に隠れた。


「聞こえちゃったみたいよ」

「真っ赤にしちゃって本当に可愛いわね」


 俺達のことを話している奥様方はニコニコしながら通り過ぎて行く。


「・・・・・・め、迷惑だった?」

「何が?」

「そ、その・・・私なんかと夫婦に見られて」

「いや、どっちかというと嬉しかったな」


 このまま結衣菜と付き合っていれば、将来はこうなる訳だしな。


「う、嬉しかったんだ・・・えへへ」

「~っ!」


 結衣菜は凄く幸せそうに微笑んだ。

 俺はその顔を見て、凄く恥ずかしいことを口にしたことに気が付いた。やばい、普通に思っていたことを口にしてしまった。


「りん君♪行こっか」


 結衣菜は手を繋ぐからランクアップして、俺の腕に抱き付いて歩き出した。


 もう人の目を気にしない。そう言わんばかりの行動だ。


 もちろん、周りの人からは見られまくっていたが。


(ここが学校じゃなくてよかった)


 もし学校だったら、彼女いない男子生徒に殺されるかもしれない。


「これも安いみたいだよ♪」

「そ、そうみたいだな」


 結衣菜は本当に幸せそうな顔をしていた。それほど嬉しかったということだろう。


 結衣菜の幸せモードはスーパーを出てからも続き、俺ん家に到着する頃には戻っていた。


 その際、自分の行動を振り返り、顔を真っ赤にして「もうあのスーパーには行けない」とぼやいていた。



 ☆     ☆     ☆



「お、今日は結衣菜ちゃんも作ってくれたのか」

「はい、お粗末な物ですので、口に合えばいいのですが」

「いやいや、琳佳とは少し味付けが違っていて新鮮な感じがして美味しいぞ」

「それなら良かったです」


 結局、夕飯はお昼同様、結衣菜と一緒に作った。

 いつもの時間に親父は帰ってきて、俺と結衣菜の3人で食卓を囲っている。


「結衣菜ちゃん、この前までこの家で暮らしてたもんだし、もうこっちに引っ越してくればいいんじゃないか?」

「ちょっ!?」

「お、お父様、いいのですか?」


 まさかの言葉に俺は驚き、結衣菜は目を輝かせた。


「ああ、部屋も余ってるし、お前達が結婚を前提で付き合っているというのならば問題はないだろ」

「わ、私はりん君と結婚したいです!ですから問題はないです!」

「琳佳はどうなんだ?」

「あ~・・・まぁ、その」


 ここで結婚したいなんて言ったら、結衣菜が本当にここに引っ越しするかもしれない。いや、嬉しいが健全な男子としては好きな娘といると色々と困るわけで。


「りん君は私と結婚するのは嫌なの?」


 結衣菜がうるうるとした目で見つめてくる。


「いや、そんなことはないぞ。でも結衣菜の両親に確認した方が」

「ん?結衣菜ちゃんの御両親は結衣菜ちゃんがしたいのなら反対はしないと返事を貰ってるぞ」

「え、いつそんな確認をしたんだよ」

「えっとだな・・・」


 親父はスマホを取り出して、操作を始める。


「あったあった、ほれ」


 親父はSNSアプリのある画面を開いて渡してきた。それを受け取ると、隣に座っている結衣菜も覗き込んで見てくる。


『いつも娘がお世話になっております。夫の方は私が何とかしておきますので、結衣菜は琳佳君と好きにさせてあげて下さい。ですが、娘の独り暮らしはやはり心配なので、出来るのならば、娘をそちらのお宅で住まわせて頂けないでしょうか?何かあったらこちらに連絡をして頂ければ幸いです』


 と、そんな文面があった。っていうか、結衣菜のお袋さんが一緒に住まわせるように言ってるのかよ。


「って親父、このメッセージって俺達が付き合い始めた頃に届いてるやつじゃんか!」

「ああ。だから試験勉強を兼ねてお前達を一緒に住まわせたらどうなるか試してみたんだ。結果、特に問題無さそうだったからこの機会にと思ってな」


 く、あの試験勉強の時の結衣菜の泊まり期間はそういう意味も込められていたのか。


「それに琳佳を1人家に置いて行くのは心細かったから丁度いい」

「ん?どういう意味だ?」


 親父は真剣な顔をして、俺を見てきた。


「実はな・・・週明けから1年程単身赴任してくれないかと、上司から今日言われてな。今は息子と相談させてくれと言って、返事を保留させて貰ってるんだ。生活費はお前用の口座に入れるようにはすれば問題はないが、やはり1人で残して行くのは不安だったんだ。結衣菜ちゃんなら安心して琳佳を任せられるからな。こちらとしても安心して行ける」


 単身赴任か。仕事の上司に言われたら断りづらいだろうし。


「わかったよ。そういうことなら俺からは何も言わないよ」

「ありがとう。そういうことだから結衣菜ちゃん、琳佳のことは頼んだよ」

「・・・・・・・・・・」


 親父が結衣菜に頼むが、肝心の結衣菜から返事はない。


「結衣菜?」


 俺も気になり、隣の結衣菜を見てみる。そこには顔を真っ赤にして下を向き、何かぶつぶつと言っている結衣菜の姿があった。


「ととととということは1年間はりん君と2人暮らし・・・・ってことだよね?どどどうしよう!?結婚したほうが・・・。いやりん君がまだ出来ないよね?ううん、この際だから新婚みたいに一緒のベッドで寝るとか・・・・?あと、お風呂でばったりとか?いやいやもっと凄いこととか・・・」

「・・・・・・・・」


 何かいろいろと嫌な予感がする言葉が聞こえてきたんだが。でも恋人ならいいのか?いや、まだ学生だし・・・。


「おーい、結衣菜ちゃん」

「は、はひぃ!!」


 おお、結衣菜が変な声で返事をしたぞ。


「その、琳佳のこと任して大丈夫かな?」

「は、はひ!こちらこそよろしくお願いしましゅ!!」


 ということで、結衣菜は俺の家で同棲することになった。


 俺、理性保っていられんのか?

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