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第35話 休日の朝

 皆で遊んだ日の翌日は土曜日で学校は休みだ。

 結衣菜は昨日自宅のアパートに帰り、俺の家でのお泊まり会も無事に何事もなく終わった。


 俺は昨日まで勉強浸けの日々だったので、試験後最初の休日の今日は家でのんびりと過ごす予定だ。


 ふと目が覚めると、俺は昼近くまで惰眠を取っていたようだ。

 そろそろ起きようかと考え、寝返りを打つと柔らかいクッションのようなものに顔を突っ込んだ。そのクッションは花のような甘い良い香りし、安心する暖かさがある。

 抱き心地がよかったので、俺はそれに抱き足も絡め、身体全体で柔らかさを堪能する。


「・・・・・・・ん?この匂いは」


 だがその直後、最近よく嗅いでいた匂いだと思い、そっと目を開けて見る。すると、目の前には肌色が広がっていた。


「・・・・・・・・・りん君」

「んぐっ!?」


 結衣菜の声が聞こえたと思ったら、後頭部を押さえられ、肌色の膨らみ部分に顔を押し付けられた。


(やわらかっ!?じゃないっ!!やばい!!これ結衣菜の胸だ!?)


「んっー!!んっー!!」


 俺は結衣菜の胸に鼻と口が塞がれ、息が出来なくなり、窒息しそうになる。

 俺は思わず手で結衣菜をパンパンと適当に叩く。


「んー・・・お尻いたいよぉ・・・・・え?」


 結衣菜は状態維持をしたまま寝惚けた声を出した。どうやら結衣菜も寝ていたようだ。だが、その時点で俺は既に意識が遠退いていて。


「・・・・・・・・ガクリ」

「り、りんくーーーん!!!」


 結衣菜が目を覚まし気が付いた時には、俺は気絶をしてしまうのだった。



 ☆     ☆     ☆



「で、なんで結衣菜がここにいるんだ?家の鍵は親父が閉めていったはずだけど」


 俺の家では家族が家にいるとしても、鍵を閉めて出掛ける習慣がある。

 親父は今日仕事のはずだから、鍵は掛かっていたはずだ。


「それはこれを使って」

「・・・なんで俺ん家の鍵もってるんだ?」

「りん君のお父様から昨日の朝に貰ったの」

「・・・・・・・あの親父め」


 渡すのは別に構わないが、せめて俺にも一言欲しい。


「それでりん君に会いたくなってここまで来たら、りん君気持ち良さそうに寝てて」


 結衣菜はその状況を何故か頬を染めつつ説明していく。


「一緒に横になったら気持ち良さそうだなぁって思って、横に寝てたら本当に私も寝ちゃってたみたいで」


 結衣菜はてへっと舌を出して可愛く笑う。


 因みに結衣菜は今、白のワンピースを着ている。胸元も緩いので、胸の谷間が少し見えている。

 たぶん俺はあそこで窒息しそうになっていたんだ。

 脇には生地が薄めのコートが置いてあるから、それを上から羽織って来たのだろう。


「まぁ、結衣菜といられるのは嬉しいからいいけど、次からは連絡欲しいかな」

「連絡はしたよ?返事は来なかったけど」


 俺はスマホを確認してみる。

 そこには不在着信やメールまで結衣菜からいろいろと届いていた。


「わりぃ、寝てたから気が付かなかった」

「うん。そうだと思ったから来たの」

「な、なるほどな」


 なんか最近、結衣菜に俺の行動は読まれていることが多くなった気がする。


「ってもうこんな時間か」


 スマホの時計を見ると、昼過ぎになっていた。朝御飯も抜いているから腹が減ってきた。


「結衣菜は昼は食べたのか?」

「ううん。まだ食べてないよ」

「それならどこかに」

「だからりん君と食べようかと思ってお蕎麦買ってきたの。最近暑くなってきたから冷たいお蕎麦がいいかなって」


 俺がどこかに食べに行こうかと提案しようとしてら、結衣菜はスーパーの袋から蕎麦を出して言ってきた。まだ6月になっていないのに、外は暑い日が続くようになってきている。そんな日に冷たい蕎麦は結構魅力的だ。


「確かエビとか冷蔵庫にあったから天ぷらでも作るか」

「うん、いいね。それじゃあ早速作っちゃうから、台所借りるね」

「あ、俺も手伝うよ」

「~っ!?」


 立ち上がった結衣菜に続き、俺も腰を上げると、結衣菜の顔が更に赤くなった。


 え?俺、何もしてないよな。


「どうしたんだ?結衣菜、さっきから顔が赤かったけど・・・。今もかなり赤くなったし」

「えっと・・・その」


 結衣菜は俺の方をチラ見してはすぐにそっぽを向くことを繰り返して、何かを言おうとする。


「ふ、服を」

「服?」


 結衣菜の服はさっきも言ったが白のワンピースだ。胸元が開いているのは気になるが、他に特に変なところはないと思う。


「そのワンピース、可愛いし結衣菜に似合ってると思うぞ」

「う、うん。ありがとうって私の服じゃなくて・・・その、りん君の」

「俺?・・・・・あ」


 俺は自分の姿を見下ろして結衣菜が赤くなっている理由がわかった。

 俺は無地のTシャツにトランクスというあまりにもラフ過ぎる格好だったのだ。


「わ、わりぃ!着替えてから下に行くわ」

「う、うん。先にお湯とか沸かしておくね」


 結衣菜はそう言うとそそくさと部屋を出ていった。


「・・・・・ってか俺、この格好で結衣菜に抱き付いていたのか?」


 確か気絶する前に1回結衣菜に抱き付いてしまったた。ま、まぁ、結衣菜には気が付かれていないっぽいから大丈夫・・・だよな。


「・・・・・・今度からは休みでも寝間着はちゃんと着て寝るか」


 合鍵を持ってしまった結衣菜がいつ来るかわからない。せっかく付き合いだしんたんだし、飽きられてしまう前にちゃんとやれることはやっておこう。


 俺はそう決め、着替えてから1階の台所に向かうのだった。

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