第33話 種目決め
「とりあえず、種目書いていくね」
久遠先生は黒板につらつらと、体育祭の種目を書いていく。
100mリレー、400mリレー、クラス対抗リレー等、よくある徒競走が書かれていく。
その後ろに、綱引き、ムカデ競争、借り物競争、大玉転がし、騎馬戦、SASU〇〇とよく聞くものが書かれていった。
・・・ってSASU〇〇!?
「さてと・・・こんなもんかな?」
「せんせー!SASU〇〇ってなんですかー?」
クラスからは当然のような疑問が投げられる。
「SASU〇〇っていうのはね。いろいろな障害物をクリアして、タイムを測る競技だよ」
簡単に言ってはいるが、有名な某番組しか出て来ない。
「あ、因みにステージは4つあるからね♪」
うん。今ので確定したな。っていうか、学校にそんなもの作るのか?っていうかあんなの一般人である俺に出来るはずがない。妥当な徒競走系の何かの方がいいな。
「なるほど。あの資材と工事はそのためのものだったのだな」
「・・・どういうことだ?」
意味深な発言をした上北に問い詰める。
「学校の裏手の空き地に金属パイプやらが大量に搬入されていてな」
「・・・・・・・・」
俺はその事実に唖然とする。
「・・・ってことで、上北君と音無君はそれでいいかな?」
「ああ、構わない」
「うん、わかった。じゃあよろしくね♪」
上北が久遠先生に何かを聞かれて答えた。なんか俺の名前も入っていたような気がしたが。
「頑張ってね。りん君」
「え、なにが?」
結衣菜にそう言われるが、いまだに状況が飲み込めない俺。
「共に頑張ろうではないか」
上北が肩を組んでそう言ってきた。
「だからなにをだよ」
「前を見ろ」
「ん?」
上北に言われた通りに俺は前を向いた。
体育祭の各種目のところに名前がいくつか書かれていた。
そして、SASU〇〇のところに俺と上北の名前が書かれていた。
「って!俺何も言ってないぞ!?」
「ああ、俺が推薦した」
「勝手にすんな!」
上北と話していたはずなのに、いつの間に推薦したんだ?こいつは。
「んー、ざっくりとは決まったし、今日はこれぐらいにしておこうか。テスト終わったばっかりだしね。明日から2日間お休みに入るけど、体育祭のこと考えておいてね。この競技をやりたいって言う人いたら、週明けにまた時間取るからその時に言ってね。それじゃあ解散!」
結局、俺は望まない形でその場はお開きになった。
「今日はこの面子で遊びにいかないか?」
学校をいつもの面子、俺、上北、一、結衣菜、詩穗で校門を出たところで、上北がそう提案してきた。
「まだ昼過ぎだし、私は大丈夫だよ」
「僕も平気だね」
すぐに返事をしたのは詩穗と一だ。
今日は試験と体育祭の種目決めだけだったので、まだ昼過ぎだ。
「私はりん君が行くなら行く」
「相変わらずだね。結衣菜ちゃん」
こういう時の結衣菜はいつも俺が行くか行かないかで決めているのが、定番になりつつあるな。
「俺は大丈夫だぞ。でも遊ぶ前にどこかで昼飯食べないか?」
「無論だ」
俺達はそのまま祝芽峰駅前に向かうのだった。
☆ ☆ ☆
「りん君は何にするの?」
「これとこれてで悩み中」
「そんなもの早く決めてしまえ」
俺達は駅前にあるファミレスにやってきていた。
今は5人でテーブルを囲い、メニューを決めているところだ。
因みにソファー席に詩穗、俺、結衣菜と座り、椅子に上北、一と座っている。
あ、俺が女子2人の間に入ったのはたまたまだ。
「りん君、私こっち頼むから、りん君はそれ頼んでよ。それで分け合江原両方食べれるよ?」
「結衣菜がいいんなら」
「私は大丈夫だよ」
「店員呼ぶぞ」
俺が決めたのを見て、上北がワイヤレスチャイムを押して店員を呼ぶ。
そして、すぐに店員はやってきた。
俺達は順々に注文をしていく。
「私はお子様ランチお願いします」
「お、お子様ランチですね。かしこまりました」
最後に注文をした詩穗はお子様ランチを頼んだ。高校の制服を着た人がお子様ランチを頼んだもんだから、店員さんも笑みが一瞬ひきつっていた。
「「「「・・・・・・・・」」」」
「な、なに?」
詩穗は皆から見られていることに気が付き、皆の顔を見渡した。
「何でもないよ」
「だな」
「俺も特には」
「詩穗ちゃんらしいなって」
皆それぞれ適当に答える。結衣菜だけ素直に感想を言っているが。
「お、お子様ランチって凄いんだよ!色んな物が少しずつ入っているから色んな物食べれるんだよ!」
まぁ、確かに色々入ってはいるな。
お子様ランチにはハンバーグにナポリタン、ライスにサラダにフライドポテトと色々と少量で入っている。
「ぜ、ゼリーだって付いてくるし」
詩穗はメニューのゼリーを指差しながら言ってくる。
確かにゼリーも付いてくるな。それより詩穗は興奮していて気が付いていないが、俺に密着をしてきている。まぁ、結衣菜程ではないが、女の子特有の柔らかさはある。
「詩穗ちゃん、くっつき過ぎ」
「え?・・・ご、ごめんなさいっ!!」
詩穗は結衣菜に注意され、俺に密着していたことに気が付き、すぐに謝りながら跳ぶようにして離れる。
「あ」
詩穗は勢い良く離れ過ぎたせいで、ソファーが無いところまで跳び退いてしまっていた。
「詩穗っ!!」
俺はすぐに詩穗に手を伸ばして、腕を掴もうとした。だが、詩穗も慌てていたのか身体をひねって向きを変えてしまった。
「・・・・・・・・」
「・・・・琳佳・・・君」
結果、俺は腕ではなく、詩穗の胸元(あまり胸は無いが)辺りのブラウスを掴んで引き寄せてしまった。
引き寄せたので、詩穗は落ちることはなかった。しかし、俺の指は詩穗の胸元のブラウスのボタンの隙間から詩穗の柔肌(主に胸がある辺り)に触れてしまっている。
「・・・・・・そ、そろそろ離してくれない?」
「わ、わりぃっ!!」
俺は慌てて手を離す。が、慌てて離したのが良くなかった。
慌てていたせいで、詩穗のブラウスのボタンに指が引っ掛かり、数個弾き飛ばしてしまった。
ブラウスの前側は大きくはだけ、詩穗の下着が見えてしまう。
(ほ、本当にブラしてないのか)
そこで俺は以前、結衣菜から聞いたいらない情報を思い出してしまった。
「~っ!?」
詩穗は慌てて胸元を隠した。
「み、見た?」
「す、少しだけ」
「そ、そう」
詩穗はそう言いながら、胸元を鞄で隠しながら、席を立つ。
「な、直してくる」
詩穗はそう言ってトイレの方に駆けていった。
「やっちまったな」
「ああ、悪いことしちまった」
流石に彼女でもない女子に対してあれはない。いや、彼女に対してもどうかと思うが。
(彼女?)
俺はそこで俺の彼女、結衣菜の存在を思い出す。
はっと思った時には、俺の手首を結衣菜に捕まれていた。
そして、そのままあろうことか自らの胸に押し当てた。
ふにょんという感触が手に伝わってくる。
「うぅ~~・・・・」
結衣菜は顔を真っ赤にしながら、俺の手を胸に押し当て続けた。どうやら変なところで嫉妬してしまったようだ。
「もう・・・むり・・・」
結衣菜から力が抜け、俺の手は解放される。そして、結衣菜はそのまま俺の方に倒れてきて、俺の胸板に頭をくっつけて来た。
どうやら、恥ずかしさの限界を越えてしまったようだ。
「「・・・・・・・・・・」」
「・・・・・なんだよ」
向かいの席からにやにやとした視線を向けてくる上北と一に声を掛ける。
「いや、仲が良いなと思ってさ」
「普通にお熱いことで、と言えばいいだろう」
結局、詩穗がボタンを取り付けて戻って来るまで、結衣菜は俺の胸元で恥ずかしがっているのだった。