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第19話 部活紹介フェスタ最終日

 俺と結衣菜は同じ家から出て、学校を目指した。まぁ、最近は慣れたくなくても、慣れつつある結衣菜と手を繋いでの登校。


 周りからは相変わらず、男子生徒からの嫉妬の視線と女子生徒からの好奇の視線を浴びている。


 俺はそれに気が付かない振りをして、教室まで目指す。


「おはよー」

「おう、おはよう」


 教室に入ると、扉付近のクラスメイトが挨拶をしてくる。

 俺と結衣菜が手を繋いで教室に入るのは、もう慣れっこなのか、あまり気にしていないようだ。


「あ、琳佳君、結衣菜ちゃん、おはよう」

「ああ、おはよう」

「おはよう、詩穗ちゃん」


 自分の席の方に向かうと詩穗が挨拶をしてくる。

ただ、詩穗がにやにやしてるのが気になるが。


「で?どうだったの?結衣菜ちゃん、昨日琳佳君の家に泊まったんでしょ?」

「「っ!?」」


 詩穗の言葉で教室全体の空気が一瞬にして凍りついた。


「そ、そんなわけないだろ。なぁ」


 俺は内心ひやひやしながら誤魔化そうとして、結衣菜に話を振る。


「っ~~~」


 あ、こりゃダメだ。結衣菜のやつ、顔をゆでダコのように赤くして俯いてやがる。これはバレたな。


「本当だったんだ。上北君の情報もバカにできないね」

「なんで上北の名前が出てくるんだ?」

「それは俺が情報源だからだ!」


 俺の背後からいきなり姿を現す上北。ってか、どうやって結衣菜が俺んちに泊まったことを知ったんだ。


「上北、どうやって調べた?」

「お前達2人が音無の家から出てきたからそうではないかと思っただけだ」

「なんで詩穗が知ってるんだ?」

「鶴野宮ならそれとなく聞いてくれそうな気がしたから、メールで情報だけを先に送っただけだ。結果は言わずもだがな」


 なんか朝からこいつにしてやられると無性に腹が立ってくるな。


「結衣菜ちゃん、夕飯を作るだけじゃなかったんだね」

「そ、それは・・・その」

「夕飯の後は何してたの?」

「しゅ、宿題やっただけだよ!」

「へ?宿題?」

「う、うん。昨日出されていたやつ」

「何の?」

「数学」

「・・・・・あれ?その期限って来週じゃなかったっけ?」

「ううん、今日までだよ。この辺りは覚えづらいから、家でも復習するようにって出された宿題だから」

「ゆ、結衣菜ちゃん!宿題教えて!」


 にやにやしていた詩穗の顔が崩れ、結衣菜に泣きついた。


「詩穗も結構そそっかしいところあるんだな」

「宿題の存在を知らなかったりん君よりはましだと思うよ」

「うぐ」


 結衣菜にそれを言われては何も言い返せない。


「・・・上北はやってきたのか?」

「当然だ」

はじめは聞くまでもないか」

「えっと、何が?」


 話を聞いていなかったはじめは首を傾げていた。


「結衣菜ちゃん、ここは?」

「そこは・・・」


 朝のホームルームの時間になるまで、詩穗の宿題は続いた。



 ☆     ☆     ☆



 時刻は昼休みになり、今日は皆で食堂で昼飯を取ることになった。


「なんかいつもより勧誘が多いな」

「今日がイベントの最終日だからな」


 俺達は部活に入ったことを口実に断っているが、部活に入っていない生徒を見ると、しつこく勧誘を続けている先輩達が増えてきた。


「それだけ必死なのだろ?それより、今日の依頼だ。午後、文芸部部室にある同好会の会長が来るそうなので、詳しくはその時に話してくれるそうだ」

「ある同好会?」

「あれは確か・・・アイドル研究会だったか?」

「「「っ!?」」」


 その名前を聞いて俺と結衣菜、詩穗がビクッと身体を震わせる。


「な、なぁ、その依頼はキャンセルは」

「内容を聞いていないのに、そんなこと出来るはずはないだろう」


 そりゃそうだよな。上北はあのことを知らないからな。


 俺達3人は部活紹介フェスタ初日にお化け屋敷研究会の前で、結衣菜がしつこい勧誘を受けた。


 その時は俺がなんとかして場を切り抜けたが、依頼となると同じ方法は難しいかもしれない。


「り、りん君・・・」

「大丈夫だ。俺がなんとかするから」


 不安になったのか、結衣菜が俺の名前を呼んできた。俺も不安にならないように声を掛ける。


「昼食を食べ終わったら部室に向かうぞ。昼休み中に依頼主が来るかもしれないからな」


 結衣菜の様子に気が付いていない上北はそう言って、食べ終わった食器を片付けに行った。


(逃げるって手もあるけど、問題の先送りにしかならないか・・・。仕方ない。実際に会って関わらないように断るしかないか)


 俺は残りの昼食を食べながら、そんなことを考えていた。

 結衣菜も食事を再開していたが、不安な顔が晴れることはなかった。



 ☆     ☆     ☆



『学校別美少女サイト?』


 部室で俺達はアイドル研究会の人達の話をきいている最中だ。

 そこで謎のサイトの名前が出て来た。

 なんでも、地方学校別に美少女と思われる人物を紹介するサイトだとか。


 今回の依頼はその謎のサイトに結衣菜と詩穗の2人の写真を載させてほしいというものだった。


「これはただサイトに載せるだけなのか?」

「はい。ただ、これをきっかけにアイドルデビューした方もいますよ」


 因みに今回部室に来ているアイドル研究会の会長さんは、以前結衣菜にしつこい勧誘していた人ではない。以前勧誘してきた先輩達は恐らくメンバーの人だったのだろう。


 この会長さんは強要するような形ではなく、ちゃんと交渉をしてきている。


「一ノ瀬さんは言わずとも美少女ですし、鶴野宮さんも守ってあげたくなる可愛らしさがあります。いい線をいくと思うのですがどうでしょうか?」

「それは俺よりも本人に聞いてくれ」


 今までは上北が交渉していたのだが、今回直接依頼が来ているは結衣菜と詩穗だ。


 最終的な判断は2人に任せようとのことなのだろう。


「結衣菜ちゃん、どうする?」

「わ、私は・・・その・・・」


 結衣菜はやはり怖いのか、隣にいる俺の手を強く握ってきた。

 俺は軽く握り返してやると、結衣菜は少しほっとした顔をする。少しは落ち着いたようだ。


「あの、これに出たら何かあるのですか?」


 結衣菜が黙ってしまったので、詩穗が会長に質問を始めた。


「特には何もないかと。誰かの目に止まれば勧誘とかはありますが、基本的にはそういうことは滅多にないですよ」

「この2人が出るとしたら、お前の利益はあるのか?」

「ええ。この学校の行事の中には外部の人間が多くいらっしゃいます。その中には今回紹介したサイトを見てやってくる方々もいるのです」

「なるほど。それが学校を盛り上げる実績になるということだな」

「そういうことです」


上北と会長さんの会話は損得の内容ばっかりだな。


「こちらへの利益はあるのか?」

「学食で使える金券はどうでしょうか?五千円は出します」


 金で買収するってことか。まぁ、決定権はこちらにあるから、そこまで問題はないが。


「それは・・・・・撮影するだけですか?」

「は、はい。そうですね。撮らせて頂いたら、えっと・・・後はこちらで処理しますので」

「顔・・・だけ?」

「え~と・・・ですね。顔と全身を写した2枚です」


 ありゃ、会長さん、結衣菜から質問されてしどろもどろになってきてるな。


 それだけ結衣菜は他人から見て魅力的ってことなのか。まぁ、確かに可愛いけどな。


「・・・・・・・・わかりました。お受けします」

「ほ、ほんとですか!?」


 結衣菜の回答に会長さんは椅子から立ち上がって、興奮している。そこまでのことなのか。


「結衣菜ちゃんがいいなら、私もいいですよ」

「あ、ありがとうございます!!」


 相当嬉しいみたいだな。


「で、では、早速撮影の方良いでしょうか!」


 どこからかカメラを取り出した会長により、部室での撮影会が始まった。

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