第1話 波乱の幕開け
ここからが本編となります。
「え~・・・新入生の皆さん。入学おめでとう」
俺、音無 琳佳はこの学校、祝芽峰高等学校の新入生として入学式に出席している。
祝賀峰高等学校は祝賀峰市にある高校の1つだ。祝賀峰市はある2つの市が合併して出来た市で、出来てからそろそろ30年は経つ。
祝賀峰駅という駅もあり、駅ビルはこの前リニューアルしてショッピングモールが出来たばっかりだ。
そんなことはさておき、今は入学式の最中だ。
「私はこの祝芽峰高等学校の教頭をしている天音 源次郎という」
今、登壇して話しているのは、強面な顔をして厳しそうなおっさんだ。この学校の教頭らしい。
「まず最初に言っておこう。この学校は進学校ではない」
(はい?)
流石に俺も頭の中で疑問符が浮かんだ。それは新入生は例外なく疑問に思ったようで、少しざわつき始めた。
(確かこの学校の校風は・・・)
「皆が騒ぐのは無理はない。だが、この学校の校風を思い出してほしい」
この学校の校風はネットのサイトで見たはずだ。俺はそれを思い出そうとする。
俺以外の新入生も教頭の言葉を聞いて、こそこそと相談をしているのがわかる。
「思い出したかな?そう、『柔軟な発想力を鍛える』『生徒の自由性の尊重』、この2つが公開されている校風だ」
待て。公開されている校風ということは、公開されていない校風があるということか?
「私はこの2つの校風を最大限に生かすために『学校行事は最大限に楽しもう』という校風も追加した」
俺は貰ったばかりの生徒手帳を見てみる。大抵の生徒手帳には校風も記入されているはずだ。
(・・・・・・マジでありやがった)
そこには今教頭が言った校風も書かれていた。
「この学校は通常の学校より多くの行事が組まれている。もちろん最低限の勉強も教えるが、ここは学校行事が中心になる」
この学校は俺の家から徒歩20分ぐらいだ。そんな行事が多ければ喧騒が聞こえてきてもおかしくはないはずだ。
(・・・・・・・・・確かに賑やかだった日が多いような気がする)
「さて、話が長くなると嫌われるのが校長や教頭の在り方だが、私は嫌われたくないので、次で最後にしようと思う。これを最後に皆に見てもらいたい」
教頭がそう言った途端、教頭の後ろのバックスクリーンに何かが映った。
(・・・・・なんだ?古い感じはするけど・・・・・成績表か?)
今の成績表と少し違う感じはするが、あれは成績表だ。だけど気になるのはそこに書かれている数字だ。
「私の高校時代の成績だ。酷い物だろう」
そう、成績表に書かれているのは1か2の数字ばっかりだった。基本的に成績表に書かれる数字は最高評価が5で最低評価が1のはずだ。
「こんな成績でも私は教頭をやっている。この意味がわかるかな?つまり、勉強が出来なくても、人生はどうにかなるということだ。人間性さえしっかりとしていれば人生は楽しく過ごせるのだ。なので皆にはここで人間性を育ててほしい。素晴らしい人間になることを願っている。以上だ」
最初は呆然としていた新入生達だったが、先輩である2年生と3年生の在校生が拍手を始めると、新入生も拍手を送り始めた。それには俺も含まれる。
(・・・・・・こんな学校で大丈夫なのか?)
俺は始業式が終わる中、不安しか残っていなかった。
☆ ☆ ☆
始業式が終わり、俺は自分のクラスが書かれている掲示板までやって来た。この学校は最初に講堂に案内されたので、自分が何組なのか知らないのだ。
掲示板前は始業式が終わったばっかりなので新入生でごった返していた。
「えっと・・・」
順番に並んでようやく見える場所にまでやってきた。
「「B組か」」
俺が呟くと隣の男子生徒も同じ組を声に出した。
「・・・げ、上北か」
「げ、とはなんだ。音無よ」
隣にいたのは中学からの悪友の上北 博樹だった。見た目はイケメンなのだが、性格が色々と問題ある奴だ。
こいつはいわゆるトラブルメーカーという奴で連むと非常に楽しいか疲れるかの2択の奴だ。
「はっはっはっはっ、まさかここでもお前と一緒になれるとは、俺は運がいいのかもな」
「俺は不幸だよ・・・」
俺は初登校日から運に見放されているらしい。俺が肩を落とすと
「おい、そんなに喜ばれると照れるじゃないか」
「どこをどう見たらそうなるんだよ!」
俺の叫びは掲示板の前にいた新入生達の注目を集めてしまう。知らない人は距離を取っていたりするのだが、中学の俺達を知っている人からは「またあいつらか」という言葉と共にため息が聞こえてきてくる。
「皆!俺達はこれが平常運転だ!」
「んなわけあるか!!」
俺は思いっきり上北の頭を叩いた。
すると、周りから笑いが起きる。
「あ~もう!行くぞ!」
「ふっ、どこに連れ込まれるのやら」
「教室に行くだけだよ!!」
そして周りからまた笑いが起こった。
俺は嫌になり、上北を引っ張って無理矢理その場から離れることにした。
そんなこんながあり、不本意ながらこの上北と一緒に1年B組に向かった。
「いやぁ、本当にお前がいて良かった」
「・・・・そうか」
「だってそうだろう。中学での親友が高校でも同じクラスなんだぞ?これが喜ばずにいられるはずはないだろう!」
隣で上北は熱く語っている。そして、そのまま移動し東校舎の3階にある1年B組に到着する。
因みにこの高校は正門が南にあり、校舎が東西北3つ、食堂棟、講堂兼体育館、そして、少し離れた場所に部活棟とグラウンドがある。敷地もかなり広いので中庭まであるのだ。
生徒数は1学年約200人だ。30~40人クラスが6クラスあるそうだ。
無駄に校舎が多いのは同好会等も複数あるからだそうだ。
これらは学校の紹介サイトに書いてあった。
「あ、琳佳もこのクラスなの?」
「一か、お前もこのクラスなのか」
「俺もいるぞ。一よ」
教室に入ると中学からの友人、一 一が声を掛けてきた。
一は優しそうな見た目で落ち着いている性格だ。頭が良くもっと良い高校に行くと思ったのだが、俺と一緒の高校の方が面白そうだという理由でこの高校に共に受験をしたのだ。
それと、こいつの名前なんだが、苗字名前合わせて2画なので羨ましいと何度も思ったことがあった。だが、一にとっては苦労の種であるらしい。
名前を記入する際にどうしてもハイフンが2個並んでいるようにしか見えないらしく、名前を書く度に一回は呼ばれるそうだ。
高校の受験申込の時も連絡があったらしい。
「あ、いたんだ。上北」
「いたんだとは失礼な。俺はずっとこいつの背後霊のように付きまとっているぞ!」
「気持ち悪いからやめぃ!」
俺に後ろから抱き付こうとする上北を押し返した。
そんなこんなで中学時代の友人と話し込んでいると予鈴と思われるチャイムが鳴った。
「お、席に着かないとな」
「でもどこに座ればいいんだ?」
席順とか何も聞いてないし、黒板には何も掲示物が貼られていないし、書かれてもいなかった。
「適当に座っていいんだよ」
「あ、そうなんだ。ありがとう」
すると、近くにいた別の学校と思われる制服を着た女子生徒が教えてくれた。
いや、なんで別の学校の制服を着てるの?この子。
女子生徒はニコニコと笑って手を振りながら、別のグループに入っていく。
「じゃあ、適当にこの辺りにでも座るか」
「だな」
女子生徒に言われた通りに、俺は上北と一と一緒に近くの空いている席に着いた。
だが、しばらくの間待っていたが、先生はなかなかやってこなかった。そして、本鈴のチャイムが鳴る。
「・・・まさか授業やホームルームも生徒の自由とか?」
「流石にそれはないんじゃないかな」
俺の呟きには一が返事をしてくれる。先生が来ないことで、周りも少しざわついてきた。
すると、スタスタとさっき席について教えてくれた制服の違う女子生徒が教壇に立った。
「皆!初めまして!私がこのクラスの担任の天音 久遠でーす!よろしくね」
・・・・・・・・・・・・・・・・
『え、えええええぇぇぇ!!!』
そして、間を置き、まさかの真実にクラスの皆は初日から声を一つに合わせて叫ぶのだった。
ゆっくりとしたペースでの更新となりますので、宜しくお願いします。