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第12話 実績と顧問

いつも読んで頂き、ありがとうございます。

「え?結衣菜って小説家なの?」

「そ、そういうことになってる?」

「いや、俺に聞かれてもわからないんだけど」


 俺もその事実は知らなかった。あ、以前聞いた有名な賞を取ったって、もしかしてこれのことか。


「ほう、それなら部活名は文芸部としよう。それなら小説を書いていても不思議はない」


 上北は頷きながら未来を頭の中で描いているのだろう。すごくニヤニヤしている。


「あ、り、りん君。お茶あるよ」

「ありがとな」


 俺が食事を再開しようとすると、結衣菜がお茶を水筒から出してくれた。丁度お茶が欲しいと思っていたところだ。それにしても結衣菜の奴、話を逸らそうとしてるな。


「それにしても本当に2人は仲が良いね」

「まぁ、幼馴染だしな」

「うん」


 詩穗は俺達が仲良く1つの弁当を食べる俺達を見て言ってきた。


 小さい頃は一緒にお風呂にも入っていた仲だ。時間が空いたとはいえ、俺達にとっては当たり前のことに過ぎなかった。

 まぁ、こんなに結衣菜がここまで料理上手になっているとは思ってなかったが。


「詩穗ちゃんも少しいる?」

「いいの?」

「うん、まだあるから平気」

「ありがとう!」


 詩穗は購買で買ってきて食べていたパンを片手で持ち、結衣菜の弁当の卵焼きを空いた手で掴んで食べた。


「詩穗ちゃん、お箸なら貸したのに」

「いいのいいの。あ、美味しいね」


 詩穗も結衣菜の弁当は好評なようだ。


「それにしても上北君、お昼食べなくていいのかな?」

「今はいいよ。あいつは考えている時に声かけてもまったく気が付かないからな」


 俺は中学の時からの上北を見ている。こうなっては自分の考えが固まるまではこのままだ。


「ご馳走様」

「お粗末様でした」


 俺達は結衣菜の弁当を綺麗に残さずに食べた。


「で、結衣菜」

「ん、なに?」

「お前って小説書いてるの?」

「え?・・・・・うん」

「凄いな」


 俺にそんなことは出来る自信はない。


「噂だとそれなりに売れたって聞いたけど?」

「う、うん。一応売れたみたいだね」

「本当に凄いな」


 書籍化したのか。それで売れたってことはお金が入るってことだよな。


「なぁ、今度読ませてくれよ」

「・・・・え?」


 結衣菜が何故か固まってしまった。


「だから、俺に結衣菜が書いた小説とやらを読ませてくれ」

「だ、ダメ!!」

「な、なんで?」


 まさか拒否されるとは思っていなかったので、俺は少し戸惑ってしまう。


「結衣菜ちゃん、私も読みたいな」

「詩穗ちゃんなら・・・いいかな?」

「なんで俺は駄目なんだ?」

「それは・・・・・・言えない」

「ワケわからん」


 どうやら俺に小説を見せるのは嫌なようだ。


「で、でも」

「ん?」

「私に自信が付いたときは・・・・読ませてあげる」

「お、おう」


 何故か頬を赤らめて言ってくる結衣菜に、俺はドキッとしてしまった。


『只今より、部活紹介フェスタの3日目開催だ!!盛り上がっていけ若人わこうど共!!!』


 そんなこんなしている内に、今日の部活紹介フェスタが始まった。


「・・・・・・音無」

「お、帰ってきたか」


 今の放送で現実世界に帰ってきた上北が、絶望な表情を浮かべて声をかけてきた。


「俺の飯はどうなった?」

「知らねぇよ」

「お前!さっき買ってきてくれるって言ってたじゃないか!!」

「言ってねぇよ!!トリップしているお前の妄想の話題を振り込んでくんな!!」


 ほんっとうにこいつの頭はどうなってんだ。


「それよか部活はどうすんだ?」

「あ、ああ。内容は周りから依頼という形で何か仕事みたいのを貰おうと考えている。伝もあるしな。それと、最初は顧問を頼んでみようと思う」


 依頼か・・・。まぁ、それなら何か報酬みたいの貰えるかもしれないからいいかもな。


「そういえばその顧問の宛て誰なんだ?」

「久遠先生だ」

「へ~久遠先生かって久遠先生かよ」


 あの天才の久遠先生か。すぐに俺らの部活の内容に感付かれそうな気がすんだが。


「音無が心配しているところは問題はないと思うぞ」

「どういうことだ?」

「最初から全てを説明した上で顧問を引き受けて貰う予定だからな」

「・・・・・・・大丈夫か?それ」


 色々な部活の手伝い?をする部活で、それを隠蔽するために結衣菜の小説で実績で誤魔化す文芸部。通るのか?これ。


「その部活、面白そうだね」

「っな!?」


 いきなり俺の後ろから手が延びてきて、抱き付かれた。おもいっきり俺の背中で柔らかい物が2つほど押し潰されているんだが、抱き付いている本人は気にしていないようで、俺の顔の横から自らの顔を出して、会話に入ってくる。


「く、久遠先生」

「なにかな?音無君」

「いや・・・・・その」


 胸が当たってるから離れてほしいんだが、俺は緊張しているのか、上手く言葉が出せなかい。


「あ、もしかして私のおっぱいが気になる?結構大きいでしょ?」

「は、早くりん君から離れてください!!」

「うぉっと」


 結衣菜が久遠先生を俺の背中から無理矢理剥がしてくれた。


(た、助かった~)


 俺は内心ほっとしていた。だけど少し残念なような・・・・。


「りん君!!」

「な、何!?」


 結衣菜はあろうことか、久遠先生がしていたことと同じ事をやってきた。もちろん、結衣菜の胸が俺の背中で押し潰される。

 だが、久遠先生と比べると結衣菜の胸は慎ましい。


(久遠先生、本当に胸でかいんだな)


 久遠先生は見た目以上の大きさの胸を持つことがわかった。確かに着痩せするって言っていたけど、マジだったんだな。


「・・・・・・りん君、変なこと考えてない?」

「あ、あるわけないだろ」

「ふーん・・・」


 俺の肩辺りから顔を出した結衣菜は至近距離で見つめてくる。頼むから早く離れてくれ。


「本当に貴方達は仲がいいね。うんうん」


 俺達を見て、久遠先生は納得したように頷いた。


「やっぱり付き合ってるの?」

「「つ、付き合ってません!」」


 俺と結衣菜は同時に叫んでしまう。


「そ、それよりさっきの話、聞いていたんですか?」


 俺はとにかく違う話題にしようと話を振る。


「ん?貴方達が出来てるって話?」

「違います!」

「冗談冗談、部活の話でしょ?」

「・・・はい」


 久遠先生と話すの疲れるな。


「顧問なら引き受けてもいいよ。あまり関われないかもしれないけど」

「い、いいんですか」


 まさかあの内容を聞いてOKするとは。


「あ、でも1つだけ条件」

「条件?」

「うん、この学校の行事ごとに簡単でいいから新聞みたいの作ってほしいの。さっきの話だと、一ノ瀬さんしか実績に貢献していないからね」

「新聞ですか?」


 俺の背中に抱き付きながら、結衣菜が質問をする。


「そうそう。一応学食とかにある校内掲示板に張ろうかと思うんだけど、出来そう?」

「新聞か・・・」


 俺は考えてみる。新聞なんて俺は作ったことがない。いや、小学校の頃に班ごとで何か新聞みたいの作ったが、俺はあまり関与していないから分からない。


「それぐらいなら引き受けよう。それが俺達の実績になるのだろう?」

「うん、そうだよ」

「そういうことですか」


 結衣菜の小説だけでは、結衣菜以外は何もやっていないことになってしまう。これなら皆で作ったことになるので、俺達も実績に関わることが出来るというわけか。


「でも一番の理由は学校で皆が何を楽しんでいるか、私が知るためだけどね」

「それが一番の理由!?」


 久遠先生もやっぱり変わり者なのか?いや、変わり者だったか。


「じゃあ、この後、部室にできそうな場所に案内しようか?ある程度見繕ったから」

「え、いつ見繕ったんですか?」

「ん?ここに来る前だけど」

「なんでここに来る前に部活を作ろうとしていること知っているんですか!?」

「女のカン?」


 怖いよ、女のカン。


 そんなこんなでトントン拍子で部活を作ることが決定してしまった。

 改めてメンバーの紹介をすると、部長に上北、副部長に俺、メンバーに結衣菜、詩穗、はじめとなり、顧問は久遠先生となった。

 なんで入部を躊躇していた俺が副部長かというと、皆をまとめられる人だかららしい。

 俺はただ上北を抑えようとしているだけなのだが、それがまとめられるように見えたようだ。

 理不尽過ぎる。


 こうして、俺達の部活『文芸部』という名の謎の部活が出来たのだった。

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