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第101話 暑い夏の夜

 フリーマーケットの片付けは、思っていたより早く19時には終わった。


 俺は莉愛と一緒に家に帰ると、台所には結衣菜が立っていた。


「ただいま。もう大丈夫なのか?」


「まだ痛いよ。でも少しは動かないと」


 確かに筋肉痛は少し動いた方が楽になるけど。


「手伝うよ」


「ありがとう」


「莉愛は風呂そ………いや、風呂の栓を抜いておいてくれ」


「お風呂掃除ぐらい出来るようになったわよ!」


「ほんとか?」


 以前やったときは、酷い有り様だったが。


「うん。結衣菜に教えてもらったもん」


 教えてもらってた割には家事手伝いは、普段やったないけどな。


「それじゃ、準備してからやってくるわ」


 くるりと踵を返して、莉愛は行ってしまった。


「結衣菜、本当に莉愛の奴は大丈夫なのか?」


「う、うん。たぶん大丈夫だと思う」


「たぶん、なのか」


「えへへ」


 可愛く笑って誤魔化すが、あの莉愛を『たぶん大丈夫』と結衣菜が言うのは、凄いことなのかもしれない。


 密かにそう思ってしまった。


 そして15分程が経ち、夕飯もあと盛り付けるだけになった。


「………莉愛の様子を見てくる」


「うん」


 心配になった俺は、後を結衣菜に任せ、風呂場へと向かった。何事もなけれぱ風呂掃除は終わってるはずだ。


 今回は悲鳴とかは聞こえてきてないから、もしかしたらちゃんとやれているのかもしれない。


 風呂場の曇りガラスの扉に手を掛けようとした時。


「よし!完璧!!」


 中から莉愛の納得する声が聞こえてきた。


 どうやら心配は杞憂だったようだ。


 一応確認するために、曇りガラスの扉を開ける。


「莉愛、終わったの…………か………………」


 確かに風呂掃除は終わっているように見える。だが、風呂掃除をした割には壁やら天井やらが濡れているような気がする。いや、問題はそこじゃない。


「あ、琳佳。どう?今回はちゃんと出来たわよ」


 莉愛は得意気にこちらを向き腰に手をやり、『えっへん』とポーズを取る。


 その際にピンク色の実が付いた瑞々しいメロン2つがたわわと揺れる。


「なんで裸なんだよっ!!」


 莉愛の奴は真っ裸で風呂掃除をしていた。しかも、俺に見られることも気にしていないのか、隠そうともしない。


「お風呂場なんだから裸になるのは当然よ」


「風呂掃除の時はならんわ!!」


「でも濡れるわよ」


「なんでお前は風呂掃除だけで頭から水を被ったようにびしょ濡れなんだよ」


 莉愛の奴は長い髪から、ぽたぽたと水が垂れるぐらい濡れていた。


 俺はタオルを出して莉愛に投げつけた。


「とりあえず、夕飯がそろそろ出来るから、拭いてから来い」


「はーい」


 はぁ。俺も男なんだから少しは隠して欲しいものだ。


(………………今夜は結衣菜と……いや、結衣菜の気持ちも考えないと)


 俺は変な気分になるのを抑えながら、夕飯の準備が出来ているリビングへ向かった。


 そして。


「美味しそう!いただきます」


 莉愛が早速今日のメインのトンカツに手を伸ばす。


「ちょっと待て」


「ん?」


 そんな莉愛を俺は制止する。


「えっと、莉愛ちゃん。なんで服着てないの?」


 俺の疑問を結衣菜が引き継ぐ。


「着てるわよ。バスタオルを」


「それは巻いてるっていうんだ!」


 莉愛の奴は面倒だったのか、バスタオルを巻いただけの姿だった。


「だって食べた後、お風呂入るし」


「………もういい。好きにしてくれ」


 片付けで疲れてるのに、莉愛の相手をするのは疲れるから、諦めた。


「風邪は引かないようにな」


「はーい」


 莉愛はバスタオル一枚で夕飯を食べ始めた。


 食べ終わると、莉愛はそのまま着替えを取りに行き、風呂場へ向かっていった。


 そして俺は洗い物をしていた。


「りん君、変な気分になりそうだったでしょ?」


「……………」


「はぁ。莉愛ちゃんのずぼらな性格には困っちゃうね」


 答えなくても、俺の思考は結衣菜には筒抜けのようだ。


「でも今日は私の代わりに行ってくれたから、そこは感謝しないとね」


 結衣菜は洗い物をしている俺の後ろに立ち、抱き付いてくる。柔らかい感触がまた俺を刺激する。


「結衣菜、少しやりづらいんだけど」


「だって、今日はりん君とべたべた出来なかったんだもん。これぐらい彼氏なら許してよ」


 結衣菜は洗い物が終わるまで、ずっと背中にくっついていた。


 それからリビングでテレビを見ながらイチャイチャしてると、莉愛が風呂から上がってきた。


 今度はちゃんと寝間着を着て………はいなかった。パンツ一丁に肩にバスタオルを掛けてるだけだ。


「2人とも、お風呂空いたわよ」


 俺は莉愛の方を見ないように気を付けながら、結衣菜に声を掛ける。


「結衣菜、先に入っていいぞ」


「ううん。今日はりん君の方が疲れてるんだから、先に入っていいよ」


「そうか?なら先に入るな」


「うん。莉愛ちゃん、そんな格好だと風邪引くから、早く服着ようね」


「えー、でも暑い」


「着ようね」


「………はい」


 結衣菜の凄みに圧され、莉愛は頷いた。


 本当に莉愛の奴は、男というものを理解して欲しいものだ。


「…………襲ってくれてもいいのに」


 部屋に行く途中に、莉愛はそんなことを呟いた。


(こいつ、俺を誘っているだけか)


 莉愛の好意は直接的に行動してくるので、知っている。


 俺は結衣菜一筋と決めた。


 だが、ここまで身体を使われると、男として反応してしまう。


(はぁ、なんとか沈めないとな)


 そう思いながら、着替えを用意して、風呂へ向かった。



 そして、俺が今日掻いた汗を流し、風呂に浸かっていた。


「……………はあ」


 身体は疲れているのに、莉愛のせいでなかなか落ち着かない。


 洗濯物置く篭に着ていた下着類を、あえて見せるように置かれていたのだ。


 いつもなら見えないように置いていたのに。


「……………さっきまで、あいつがこの湯船に………ってなに考えてんだ俺は」


 駄目だ。思考がどうしてもそっち方面に行ってしまう。


「はぁ………」


「りん君、入るね」


「ああ……………………え?」


 ぼーっとしていたせいで適当に返事をしてしまった。気が付いた時には、結衣菜が風呂場の扉を開けて入って来ていた。


 もちろん何も隠す物もなく、その美しい裸体を晒して。


「…………あぅ。明るい場所で見られるのって恥ずかしいね」


 恥ずかしいと言っているのに、隠そうとはしない。


「なっ、なっ、なんで入って」


 俺は混乱しながら、瀕死状態の理性を奮い立たせて聞く。


「その……りん君がそういう気分になっているのは分かってたし………、静めるのはその、彼女の役目だと思ったから……………~っ、これ以上言わせないで」


 なんなんだこの可愛いい生物は!!


「結衣菜、その、いいのか?」


「う、うん。部屋だと莉愛ちゃんに気が付かれるかもしれないから」


 確かに俺の部屋と結衣菜達の部屋の隔たりは壁一枚しかない。


「そ、それじゃあ結衣菜、こっちに」


「う、うん」


 俺達は風呂で身体を重ねていった。



 ☆     ☆     ☆



「…………………聞こえてるのよ。琳佳のバカ」


 莉愛は布団の上で1人でモジモジしながら呟いていた。


「…………まだ、まだ琳佳のこと諦めないんだから。いつか絶対に抱いてもらうんだから」


 莉愛は少し聞こえてくる喘ぎ声を聞きながら、そう決意するのだった。


「ん……いつか、莉愛だって………んん」


 夏休みの音無家の夜はこうして過ぎていった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ご馳走様でした。m(_ _)m [気になる点] これまでの前半でたくさんあった学校のわちゃわちゃがそろそろ欲しいであります。 もちろん、2人のイチャイチャも見たいですが。 [一言] 果たし…
[一言] 最高でした ごちそうさまです(ㅅ´³`)
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