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プロローグ

これはプロローグとサブタイトルが付いていますが、少しでもこの物語の空気に触れて頂ければと思って書いた話です。なので、初めからキャラが複数登場しますので、分かりづらいと思いますが、少しだけ触れてみて頂けたらなと思います。

音無おとなし!そっちに行ったぞ!」

「ああ!わかってる!」


 俺、音無おとなし 琳佳りんかはこの高校に今年入学した1年生だ。


 そして今、ある生物と学校の中庭で追いかけっこをしている。時刻は放課後ということもあり、まだ部活中の生徒達の目はあるが、この学校ではこれぐらいの騒動は日常茶飯事だ。なので、周りも見て見ぬ振りをしている。


 俺は悪友の上北かみきた 博樹ひろきと声を掛け合い、その生物を中庭の一角に上北と共に追い込んだ。その生物は俺達と校舎に挟まれ、逃げ道は無いと思ったその時。


「上北!窓!!」

「まずいぞ!」


 運が悪いことに、偶然開いていた校舎の窓から校舎内にその生物が逃げ込んでしまう。


「くそ!」

「大丈夫だ、音無。そっちには一ノ瀬(いちのせ)に先回りさせている」

「それはそれでまずいだろ!!」


 俺は慌ててその生物と同じ窓から校舎内に土足で入る。その生物はすでに廊下の向こうまで行っており、俺は後を追いかけようとする。そこに


「りん君!」

結衣菜ゆいな!無事か!」

「うん!向こうに行ったよ!」

「ああ!あれは追いかけるだけでいい!無理して追いつくな!」

「わかった!」

「俺は反対から回り込む!」

「りん君も気を付けてね!」


 追いついてきた俺の幼馴染、一ノ瀬(いちのせ) 結衣菜ゆいなは俺の指示に従って、その生物を追いかけるように廊下を走って行った。


 結衣菜とあれが鉢合わせにならなくてよかった。上北のやつめ。俺の幼馴染を危険にさらせるなんて・・・後で覚えてろよ。


 そんな思考をしつつ、俺は敢えて反対側に走り出す。

 この校舎の一階の廊下は円状になっているので、結衣菜と挟み撃ちに出来るはずだ。でも、女の子である結衣菜にあの走っている生物を抑えられる可能性は低い。


「よし!こっちに来た!」


 そして、俺の思惑通り、その生物はこちらに走って来てくれる。後ろには結衣菜ともう一人女子生徒が一緒だ。友人である鶴野宮つるのみや 詩穗しほだ。恐らく途中で合流したのだろう。


 その生物は四足でかなりの速さで走ってくるが、俺の姿を見ると方向転換をしようとする。


「まずい!」


 向こうに行っては女の子2人だ。ヘタをすれば怪我をしてしまう。


「お前ら!下がれ!!」


 俺は叫んで避難するように叫んだ。しかし、その時には生物も速度を緩めることなく結衣菜と詩穗の方へと向かって行ってしまう。


「甘い!」


 なぜか天井から上北が出てきて、その生物の背中に乗った。そして、その生物に付いている手綱を手に取り抑えようとする。


 いや、なんでお前は天井から降りてくるんだよ。ってか、中庭からどうやって天井裏に入った。


「ぐっ!」


 だが、その生物は暴れだして、上北を振り落としてしまう。


「「きゃあ!!」」


 その生物はすでに結衣菜と詩穗の前に行き、前足を大きく振り上げ、結衣菜と詩穗の方に振り下ろそうと構えていた。


「させるか!!」


 俺は二人の前に立ち、振り落とす前の足を抑えにかかった。


「お、おも!!」


 それはそのはずだ。相手の体重は約400kgほどあるって聞いた。相手が後ろ足で立っているので全体重が掛かってないだけマシだが、それでも重い。


「りん君、抑えてて」


 結衣菜が素早くその生物の後ろに行き、手綱を脇から握る。


「大丈夫、大丈夫だから」


そして、結衣菜は宥めるようにその生物の頭を撫で始めた。


「りん君、そっと下ろしてあげて」

「あ、ああ」


 俺は慎重にその生物の前足を降ろしてあげる。


「怖かったんだね。驚かしてごめんね」


 結衣菜はその生物。ポニーの頭を撫で続けていると、雰囲気が穏やかになった。


「すげえな。宥められるのか」

「結衣菜ちゃん、凄いね」


 俺と詩穗はその光景に驚きを隠せなかった。


「み、皆・・・無事かい・・・」

「お、はじめか」

「やっと来たの?にのまえ君」


 そこに運動神経があまりないにのまえ はじめがやってくる。


「ご・・・ごめん・・・。僕・・・運動は得意じゃ・・ないんだ」

「ゆっくり休んでいいぞ。結衣菜が捕まえてくれたからな」


 捕まえたポニーは結衣菜に懐いたようで、大人しくしている。

 この暴れポニー、女の子に弱いのか?


「で、この子はどこに連れて行けばいいの?」

「そうだ。俺もそれは知らないや。おい、上北」


 俺は振り落とされて背中を打ち付けて苦しんでいる上北に声を掛ける。


「このポニーはどこに連れていけばいいんだ?」

「・・・・・・・・」

「おい」


 俺は上北を踏んだり蹴ったりして起こそうとする。


「琳佳君、普通に起こしてあげれば?」

「こいつはこれでいいんだよ」


 詩穗に注意されたが、俺はそのまま無言で踏み続ける。


「いつまで踏んでいるんだ!」

「な、起きただろ」

「それでいいの?」


 詩穗は怪訝な顔をしているが、こいつはこれでいい。


「あ」


 その時、結衣菜の声が聞こえた。

 次の瞬間


「ぐほっ!!」


 上北がまたもやポニーに蹴飛ばされてしまった。


「もう、大声を出すからだよ」


 結衣菜がそう言いながら、ポニーを再び宥め始める。


「結衣菜、よく宥められるな」

「だって可愛いじゃない」

「まぁ・・・可愛いのか?」

「うん。可愛い可愛い」

「なんで俺の頭も撫でる」


 結衣菜は背伸びをして、俺の頭を撫でてきた。背伸びしているせいで、結衣菜の顔が息がかかる位置まで近くなっている。


「結衣菜ちゃん、琳佳君とキスでもしようとしてるの?」

「へ?ちちちちち違うよ!・・・っきゃ!」


 詩穗の言葉に同様して、結衣菜は大声を上げてしまい、ポニーに蹴られそうになる。


「大丈夫・・・・か」


 俺は結衣菜が無事か確かめようと見ると、尻餅を着いた結衣菜がいた。それも思いっきり開脚した状態でだ。もちろんスカートの中の白い下着が見えていた。


「・・・・・・きっ、んん!!!」


 俺は叫ぼうとする結衣菜の口に手を当てた。


「馬鹿、叫ぶとまた蹴られるぞ」


 結衣菜がこくこくと頷いたことを俺は確認して、手を離した。


「・・・・うん、ごめんね。ありがとう。でもパンツ見た罰に今度一緒に買い物付き合ってね」

「・・・・・・マジ?」

「マジマジ」


 まぁ、それで許されるのならいいか。


「皆、依頼主連れてきたよ」


 そこに一が依頼主らしい生徒を連れてきた。いや、いつの間に呼びに行ってたんだ?


「おおっ!!この子だ!ありがぐおぅ!!」


 依頼主が感動して叫ぶと、ポニーは依頼主の男子生徒の男の弱点であるあの場所に蹴りを入れた。


「ぐおぉぉぉうおぅぅぅぅ」

「ほれ、手綱は握っとけ」


 悶え苦しむ依頼主の手に俺は手綱を握らせる。


「さ、依頼達成だ。行こうぜ」

「うん」

「ねぇねぇ、結衣菜ちゃん、約束したデートっていつ行くの?」

「でででデート!?」

「ぐほぅ!!」


 結衣菜の叫びになぜかポニーは依頼主を蹴った。


「え?琳佳って一ノ瀬さんとデート行くのかい?」

「デート・・・なのか?」


 俺は一の言葉を聞いて、そうであったらいいなと思いつつ、部室に向かって歩きだす。


「・・・・・・・誰か・・・俺らの心配をしてくれ」

「上北」

「・・・・音無」


 上北が俺の方に期待をした目で見てきた。


「報酬とかは貰っておけよ。俺らは先に部室に戻っているから」

「・・・・・・・・・・・」


 その場にはポニーの他に上北と依頼主が死んだようにしばらくの間、倒れているのだった。


 これが俺達の学校生活の一部だ。なんでこんな騒がしくなったんだろう。とりあえず、上北がこんな部活を作ったのが原因だろうな。


「本当になんでこんな部活に入ったんだろうな」

「でも、私の性格も少し前向きになったって先生に言われたよ」

「確かにね。結衣菜ちゃんの性格、明るくなった気がするもん」

「それは僕も思ったね」


 俺達は他愛のない会話をしながら部室に戻っていく。


 そう。この『文芸部』に。


 ・・・・・本当になんでこんな部活に入ったんだ?その前に、こんなこと文芸部はやらないだろ。


 俺はこの学校、祝賀峰しゅくがみね高等学校に入った時のことを思い出す。


 ・・・・・・確かに最初から普通ではなかったな。この学校。

次話から本編となります。


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誤字脱字や表現が理解しづらい場所があれば、指摘もして頂けたら助かります。

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