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異界での私の新人生  作者: 木瓜乃ハナ
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庶民な私には、異界の貴族様は理解不能!

遠くの方から、馬に乗った人が此方へ駆けてくる。どうしょうと思ってシャロンに声を掛けたけど、側には白い猫が居るだけだ。

馬を手頃な木に繋げると、自分方に歩いて来た。金色の髪にブルーの眼をした美丈夫だ。

私は、いつもの癖で下を向こうとしたが、心の声が私に囁く。

(何故、貴女は此処にいるの、自分の人生を変えるのでしょ。

下ばかり観てないで、真直ぐに相手を観てごらん。きっと自分を変えるチャンスだから)

私は、恐る恐る相手の顔を観る。

(何も見えない)ほっとして微笑んでいた。

「今日は、お嬢さん。何処か遠くから来たのですか?此方へは初めてこられたのですか?」丁寧な言葉と仕草で私の事を尋ねてきた。

もしかしたらシャロンが話していた。カーマインの息子?


「私は、遠方よりまいりました。こちらはカーマイン伯爵様の領地でしたね、勝手に入り込み申し分けありません。直ぐに余所へまいります。猫は私の友達なのです。」

私は猫を抱き上げて、その場を離れようとした。


「綺麗なお嬢さん!待ってください!僕は貴女とその友達を、咎めに来たわけではないのです。どうか誤解をしないで戴きたい。

僕の名前はロナルド・カーマインです。

父の名はクレスター・カーマインです。

お嬢さんの名前を、お聞きしても宜しいでしょうか?」

「私は結奈といいます。猫はシャロンです。領地に、無断で入ってしまい御免なさい。

ではこれにて失礼します。」

私は、即座にその場を離れて、町の在る方へ歩き出した。


「結奈さん!待って!町へゆくのですか?今から行っても、結奈さんの足だと夜中になります。」

ええっ!そんなに遠いの、此処から町が見えるのに、どうゆう事?


男性が側まで来ていた。

「直線で行けば近いのですが。町の間には川があり川を渡る橋には、左にいってその先の橋まで行かなければ、町へはいかれない。」

「結奈さんがお嫌でなければ、どうぞ我が家にお泊まりなさっては、どうでしょうか。」

昨日は野宿をしたので、お風呂にも入りたい。

今から行っても夜中では町で路頭に迷う。

悪い人でなさそうよね。眼を観ても何も見えなかった。

でもどうしよう?相談したいのに猫じゃ!全く頼りに成らない。


もう自分で決めるしかないのだ。即決断する。お言葉に甘えよう!


「あの~?私のような、つまり貴男の領地に勝手に居た、見ず知らずの不審者を、そのお~屋敷に泊めてもいいのですか?」

「ははは!結奈さんは面白いですね。自分の事を、そんなふうに言った人に、出会ったのは初めてで、笑った事は謝ります。どうぞ、安心してお泊まりください」

「ありがとうございます。お世話になります。」

私も人から笑われたのは、初めての事だ。

「結奈さん、もし良ければ馬に乗りませんか?大人しい雌馬です、歩くとなると、長い道のりに成りますが?」

「結奈でいいです。私、馬に乗った事が無いので歩きます。馴れているので大丈夫です。カーマインさんはどうぞお乗りになってください。」

「僕の事は、ロナルドと呼んでください。」

私の、側まで来ると私を抱き上げて、馬の背に乗せた。

自分も馬の鐙に足を掛けると、私の後ろから抱き抱える様に支えて乗り、馬の腹を少し蹴ると馬が動き出した。

私は、思わず腕の中の猫を落としてしまう。


「あっ!シャロン!ごめんね!」

「ニャ~!」

シャロンは一声鳴くと、そのまま馬の後ろを歩いて付いてくる。


私は、この体制の居心地悪さと、馬の背でお尻が痛いのを我慢するのと、自分が落馬するのではないかと、心配する事で精一杯だった。

「結奈力を抜いて、僕に身体を預けて掴まるといいよ。」

後ろから耳元で囁かれて言われても、私は、この状態は人生初体験な分けで、緊張で、身体も神経も固まっている。

「結奈は、本当に面白い人だね。あははは!そんな顔をしては駄目だよ。もっと構って、意地悪したくなるよ。」

私は、後ろを振り返り、そんな彼を見た。紳士の仮面を被った変態なの?

私やばいかも、親切心の裏は、彼の言葉を信じて付いてきて良かったの?


シャロンと二人に成ったら、相談しよう。


自分のお尻が限界に成りだした時、大きなお屋敷が見えて来た。

高い木が塀の変わりに屋敷の周りを囲んでいる。敷地に入るとバラの花のお出迎えだ。すごい数のバラだ。色の違う事に分かれていて、大事に手入れされている。

これだけの数があると、バラの香りに酔ってしまいそうだ。


中央に噴水があり、その周りを半周すると玄関らしきドアが見える。


彼は、馬の手綱を締めて馬を停止させた。私に向かって手を差し伸べた。

私は、少し躊躇したが、馬の背から飛び降りる勇気もないので、仕方なく彼の手を、借りる事にして馬の背より降りた。


「結奈、大丈夫?初めての馬の乗り心地は、どうでしたか?」

「ありがとうございました。正直、乗り心地は良くないです。けど好い体験ができました。」

「結奈は、本当に正直な人ですね。それに可愛いいです。結奈。」

なんてストレートな言い方。普通女子なら間違いなくノックアウトだわ。一人の男が現れてロナルドに礼をして、馬の手綱を持ち連れて行く。右の奥に厩舎があるようだ。ドアの中から、もう一人男性が此方に来て礼をする。


「ロナルド様。お帰りなさいませ。」

「スチュワート。珍しいお客だ。一番見晴らしのいい部屋を用意して、それからメイドの手配を頼むよ。

家の執事のスチュワートだ。何か用事がある時は彼に頼むといいからね。

こちらのお嬢さんは結奈さん。其処にいるのがお嬢さんの友達のシャロンだ。

猫も頼むよ。さあ、疲れたでしょう?お茶の用意をさせよう。」


「あの~ロナルド様。私は物置小屋でも構いません。その~私はお嬢さんではないし、一般の庶民です。一晩寝ることが出来るだけの粗末な部屋があれば、そちらでお願いしたいのですが。」

こんな扱いは御免だ、余計に疲れるのよ。少しは差してくださいよ。

こちらのマナーも知らないし、今まで人と、まともに会話した事すら無い自分には、本当はこの場から逃げ出したい。

やっぱりお断りして野宿しようか?断る理由が無い。

シャロン何とかしてよね。

貴男は、私の指導者なのでしょう?応接間に案内されながら、困惑していた。

「結奈、僕に様はいらないから、ロナルドと、呼んでくれたら嬉しいな。」

「決して忘れたりしていません。やはり一般ピープルの私が呼び捨てなのは、駄目でして、それに私・・・・つまり野宿をしていて・・そう浮浪者なの!不審者で浮浪者なんかを、豪華なお屋敷に泊めてもいいのですか?ですから、納屋の角で、一晩お世話になれば十分なのです。」

私は、彼に頭を下げてお願いをする。


「ははは・・・・・・・!全く、結奈は想像を越えるよ。

結奈!普通自分の事は、怪しい者では在りませんと言って、頭を下げてどうか泊めてくださいだろ。

こんな愉快な女性に出会ったのは、初めてだよ。

実に興味深いね。

益々結奈の事が知りたくなったから、数日は此処に泊まって貰う事にするから、ゆっくり休んでいきなさい。逃げようなんて思わないでね。」

(開いた口が塞がらない)とはこの事?なんでこんな事になるの?どこが間違って居たのか解らない。

未体験な事ばかりで、頭の中は真白になり、相当に自分は疲れているのだと思う。


メイド服をきた女の人が、ワゴンを押して入室し、テーブルの上に、上品な仕草でお茶の用意をする。

使用人の方まで上品なので、此処で働くのは無理だ。

お庭か部屋掃除なら働けそうかな?

馬鹿な私、自分で不審者名乗っておいて働く、それこそ怪しい奴じゃない!

もう一人で思い悩むのはやめよう。ドンドン底なし沼に沈んで行くような気分だ。


「結奈。冷めないうちに召し上がれ。家のコックが作ったお菓子は評判がいいのだ。美味しいから食べて。」

「ありがとうございます。戴きます。」

紅茶も美味しい(ダージリン似ているな)と思いながら、次は、お菓子に手が行く。

バターと蜂蜜の甘さに、オレンジの皮を、シロップに浸けて置いた物を、刻んで入れてあるマドレーヌの様なお菓子、本当に美味しい。流石、腕の好いコックさんを使っているのね。


そんな事を思いながら食べていると、ロナルドが微笑んでいるというか、完全に笑っている。私、今度は何をしでかしたの?テーブルの上の、お菓子の皿を見ると残り1個だけ、確か6~7個位あったような!!私だ!食べたのは!余りの喰維持張った自分が、恥ずかしくなり赤面する。

昨日の夜から、まともに食べていなかったとはいえ、ここは自分が自嘲すべきだった。

ああ~(穴が開ったら入りたい)

「ごめんなさい・・・・・あの~、もの凄く美味しくて留まらなくて・・・」

「いやあ~!僕の方こそ御免!笑うつもりはないのだ。結奈が、余りにも美味しそうに食べているので、見取れているうちに、こんなに、美味しそうに食べてくれる女性に、遭った事はないから、食べている君を観ているのが楽しかったのだ。

そうしたら自然に顔が綻んでいた。

決して結奈を、傷つけるつもりはないからね。

結奈が僕に傷つけられたと思ったら、僕を殴ってもいいよ。」

なにそれ・・・・ロナルドは、女に殴られて喜びを感じる趣味なの・・・変態・・・・私は凶暴な女に観られているの?マジ?その相手として招待されたの?・・・・私、対人恐怖症で在って、そちらの方面は無理ですから!


「私は、全然ロナルドに傷つけられたなんて、全く思っていません。神に誓います。だからそんなふうに言わないでください。」

「私は、余りの美味しさに、パクパク一人で食べた自分が、恥ずかしかっただけです。ロナルドの分無くなりましたね。1個だけですがどうぞ食べてください。ご免なさい・・・・」


「結奈、僕は君が、美味しそうに食べている姿が、好ましく思う。だからもっと食べてよ。他のも持ってこさせよう。」

「ロナルド!もうお腹一杯です。私、此以上食べる事はできません。いいです。」


侍従の方が部屋に入り。

「ロナルド様。お嬢様のお部屋のご用意が整いました。」

「そうか。スチュワート。ご苦労!・・・結奈、疲れただろう?夕食まで少し時間があるから、部屋でゆっくりするといいよ。案内を任せる。」

「かしこまりました。では、お嬢様どうぞ此方へ。」

「はい!・・・・お世話になります。宜しくお願いします。」

「結奈!また、夕食に逢おう!待っているからね!」

私は、正直もう夕食は入らない。

勝手が違いすぎて、お菓子を、焼いて作ったコックさんの料理には、興味もあるし食べては見たいけど、ロナルドの感性には自分は引ける。

多分純真無垢なお坊ちゃん何だろうな。優しすぎるわ。

見知らぬ相手を屋敷に泊まらせるなんて、お人好しよね。無防備すぎるよ。


部屋のドアを、侍従のスチュワートさんが開けてくれた。

部屋に入って唖然として言葉もでない。・・・・・・・何処のプリンセスが宿泊されるの?

部屋の内装は夢でも観たこと無い!何か侍従さんが話された様だが、私の耳には聞こえなかった。私は、呆然としてその場に立っていた。


直ぐに、メイドの服を着た女性が部屋に入室した。

私には、ドアをノックする音さえも聞こえなかった。動揺している。

「お嬢様。お湯の支度がしてありますので、どうぞ此方のバスルームへどうぞ」

「はい!あの~私お嬢様では無いので、名前で呼んで貰えませんか?」

「いいえ!お屋敷に仕える者は皆、たとえどのようなお方でも、御主人様のお頼みされたことは、御主人様同様にお仕えしなくてはいけないのですどうぞ、何なりと御用事をお聞かせ下さいませ。」

庶民の私には、どうしていいのか解らない。そうだ!シャロンにヘルプだ。


「ありがとう。貴女のお名前は?何てお呼びすればいいの?」

「わたしは、アンナです。アンナとお呼び下さい」

「じゃあ・・・アンナ・・・私、今は疲れているので、休みたいので一人にして下さいね。」

「解りました。では、御用のある時はこのベルを鳴らして下さいませ。失礼いたします。」

「ありがとう!」

彼女が、部屋から出たのを確認してから、猫を呼ぶ。


「シャロン!・・・シャロン!・・・・」

確かに一緒に来たはずなのに、何処にいるのよ。

肝心な時居ないのじゃ・・・・鳴き声が聞こえたので窓を開けた。


猫の姿から、人間の姿に変わる。


「シャロン!貴男何処に行っていたのよ!肝心な時に居なくなるなんて、指導者失格よね。」

「結奈?俺が話せるのは、君だけだって事を、忘れているわけ無いよな?

他の奴らが居たらアドバイス出来ないだろ?」

「猫のままでもいいから、私の側に居てよね。」

「いいなあ~・・・私の側・・・・結奈好きだよ。」

「馬鹿!ふざけている場合じゃないのよ。

いい!ロナルド様の事、変だと思わない?豪華な部屋に泊まらせるなんて!私たちは何処から観ても、不審者だよね?それなのにこの部屋観てよ。

豪華すぎる客室に泊めて、泥棒ならどうするのよね?」

「結奈?まさか何か盗むつもりなのか?指導者として一言。盗むのは食べ物だけにしろ。金品は絶対許さない。」

「誰がする者ですか!まさか?朝のパンにリンゴ・・・?シャロン?・・

もしかして?内緒で持って来た物?泥棒じゃない!わああ~!私半分食べたとゆう事は、知らない間に犯罪者に?選りに選ってこの屋敷で、とんでもない猫男!!自主しましょう!」


「結奈、俺の事、また猫男と呼んだ!」

「当たり前よ!何でこんな分け解らない猫に、私が、振り回されなければいけないの!元の自分でいいから、私を帰してよ!」

「結奈、落ち着いてよ。この世界で君は、誰かの不幸な未来が見えたかい?

「今はそんな事どうでもいいでしょ!」

「結奈、この世界では、観ては居ないのだね。」

「だから、なんだって言うの?」

「だから、この世界は結奈にとっては、自分自身で居られるのだよ。

本当は、誰にも思いやりをもてる人なのだよ。

元の世界では自分自身を隠していただろう?此処では君は笑い、今みたいに腹を立てて怒っている。

喜怒哀楽の感情を取り戻したのだよ。

この場所は人生のやり直しの場所幸せになる処なのだ。きっとね。」

「それは・・・私もシャロンと出会ってから自分が、笑ったり、怒ったりこんなに人に対して感情を表したことは、なかった事は認めるわ。

だけど私たち、今は、そんな事を、話している場合じゃないと思うのだけど、何か理由を考えて?」

「なんの?理由?」

「もう!シャロン!此処から撤退する理由よ!此処から出て町へいきましょう。

町なら、働く処もあるかも知れないし?いくら生死が掛かっていても盗みは駄目よ!

私がお金を稼ぐから、まあ~シャロンは屋根の上で昼寝をしていてもいいわよ。」

「結奈、なんで、此処から出て行かなきゃ成らないの?ここに居れば美味しいお菓子も食べられるし、こんな豪華な寝台で休む事も出来るのに?」

「シャロン!私がお菓子を食べて居たところを、観ていたのね!もういいわよ!シャロンが此処にいたければ好きにすれば!私は出て行きます。」

私は部屋から出ようとしても、シャロンはフワフワの布団の上で、寝ている。

私は、自分が焦って怒っていた事がバカらしくなった。

もう考える事を放棄して広い寝台の上に乗り横になった。

シャロンの鼓動の音を聞きながら不覚にも自分は眠ってしまった。・・・・・・・・・



広い食堂で、結奈が来るのを待っていた。

アンナがやってきて、彼女は猫と一緒にお休みになられています。

起こそうかと言うので、寝かせて置けと返事をする。

夜中にきっとお腹が空くと思い、軽食の用意を頼んでおく。

興味本位で屋敷に招待してみたが、不審者には違いないと思い、注意をしながら彼女の事を観察していた。

黒い髪。肌の色は東の海で採れる貴重なパールのような肌。

眼は髪と同じ黒で黒曜石のようにキラキラ光る大きな目だ。

鼻は小さくこの国の者よりは低いが、彼女には調度好い具合だ。

口もふっくらして紅もしてないのにピンクのバラの蕾のようだ。

身体は細くしかし出る所はそれなりにあるようだ。可憐で可愛いと思った。

大胆な娘かと思えば、自分は不審者なのに何故?と聞く。

俺の前であんなに物を食べる娘は、遭った事が無い。

まあ~上品とは言えないが、観ているのは実に面白い。

自分の事を偽り芝居しているのかと思ったが?そうでもなさそうだ。

明日、会うのが楽しみだ。

次はどんな顔を魅せるのか?・・・・・・



朝日が、山の頂から登り始める頃、何時もと違う違和感に結奈は目覚めた。

身体が重い、嫌、誰?私を、抱き閉めている男の腕を払い退ける。


「シャロン!起きなさい!何で此処に寝ているの!それにどうしてこんな状態で寝なくては成らないの!もう信じられない!自慢じゃないけど、生まれてこの方、男性に触れられた事はないからね。まあ~父以外は。」

「結奈・・・おはよう!朝から元気が良いですね、俺は君の保護者なのだから、守って上げているのだよ。大事な娘だからね。」

「シャロン!貴男、何時から指導者から保護者に転職されました?私、その事をお聞きしましたら・・・・・・即決で断固お断りします!」

「折角、抱き枕が出来て熟眠出来たのに、結奈の意地悪!」


私は、この脳天気野郎の頭に、拳骨を一発お見舞いした。

自分の腕時計を視る。此方に来た時に鞄は持ってはいなかった。

腕に付けていた時計だけだった。

(大学入学祝いに両親が買ってくれ物なのだ)・・・・・日の出と日の入りと四季があるとすれば地球と同じなのかもしれない、1日が24時間と同じように。

今なら屋敷の人達も起きてはいないだろう。

行動しなければ、思い出に慕っている場合じゃないのよ。

この屋敷から出ていかなければならない!ボロが出ないうちに!


「シャロン!行くわよ!」

「何処へ?」

「町に行くに決まっているでしょう!長居は禁物。駄目なの!私一人でも行から、じゃあ!さようなら!」


寝室から出るとテーブルの上に、何か置いてある、蓋を取るとお皿に載ったサンドイッチがある。折角用意してあるものを、無駄にしたら駄目よね。

サンドイッチを、作ってくれた人に申し訳ないわよね。遠慮なく戴きます。

これで、朝食はゲット出来たから、後は屋敷の人に見つからないように行こう。

ドアから出るのは駄目だ。見つかる危険がある。

だから窓から出ることにした。此処は2階だから降りようと思えば降りられる。

昨日、確認をしておいたのだ。


窓を静かに開け、頑丈そうなツタの蔓を掴もうとしたが、サンドイッチが邪魔なのだ。これじゃあ降りられない。


「結奈!俺がそれ持って上げるから、蔓にしっかり握って降りるのだよ」

「シャロン。ありがとう先に行くね」

私は、蔓にしがみつきながら、無事に降りられた。2階からサンドイッチを受け取る。


「シャロン貴男も降りてきて・・・・・?」なんで応えないのよ。

「結奈。貴女の国では意外な所から出入りするのですね?」


わああああ~心臓に悪い、帰る日よりもショック死で死ぬ方が早いよ。

私は、監視されていたの。どう視ても怪しすぎる?この状況は!


「ロナルド!おはようございます。起きるのが早いのですね。」


この時間、後期高齢者時間帯なのですが。


「結奈。手に持っているのは何かな?」

「えっっ~!あの昨夜は夕食を誘って下さったのに、寝てしまい本当にご免なさい!あの~夜に、お腹が空くのではと、用意していただいたのですが。

朝まで熟眠してしまい、今朝気が付いて、折角なのでお庭で花を、眺めながら戴こうかなと思って、外で食べるのって最高に美味しいのですよ。

私の国では、ピクニックと言って、わざわざお弁当を持ってお出かけします。」

私は、何を弁解しているのか、自分が情けない。


「そうですね!僕も散歩したらお腹が空いてきました。

向こうに東屋があるので、一緒に朝食にしましょう」

「用意をさせるので、支度ができるまで僕が庭を案内します。」

「でも、ロナルドはお忙しいですよね。私一人でも大丈夫ですから、気を使わないで下さい。大事にされた事が無いので、緊張するのです。」

ここまで、言ったら、引き下がってくれるでしょう。


「結奈。僕は、なんて無神経なのだろう、君にここまで、遠慮させるなんて、結奈が大事にされてなかったなんて思いもしないで、これからは、僕が結奈を大事にして守るから安心していいよ。」

嘘!この話の流れが解りません??いつの間に、誰が誰を大事に守るの???


その後は、東屋での朝食タイムとなり、満足そうなドナルドと疲れた結奈のバトルは解散。あ~疲れたお風呂に入りたい・・・・・・・・

結局、町へ逃亡するのは、失敗して諦めた。あの豪華な部屋に戻り、寝室の奥のバスルームへ行き、入浴タイムをする事にした。何故なら今がチャンスなのだ。誰もいない!シャロンの姿もない、絶好のチャンスなのです。

窓を、外側から開かないようにして、部屋のドアに鍵を締めて、これでユックリとお風呂に入れる。


下着とブラウスは洗おう。ジーパンはまだ大丈夫だから。衝立にジーパンを掛けて、ゆっくりと湯船に浸った。(うん~気持ちがいい~)足を伸ばして肩まで浸かり眼を閉じた。・・・・・・・



ドアをノックする音が聞こえたので、入室を許可すると。メイドのアンリだ。

「ロナルド様。結奈様が着て入らした物でございます。」

「ありがとう!着替えは用意してきただろうね。」

「はい。こちらは、どういたしましょうか?」

「一応、綺麗に洗っておいてくれないか。」


執事のスチュアートが蒼白な顔して慌てて来客を告げた。

「誰だ?この時期に来訪する者はいないはずだが?」

僕は珍客を出迎えた。友人であり悪友そして我が主君を。     


「そんな変態を迎えに来る俺も、ロベルトに言わせると、お前と俺は同じ穴の狢だそうだが。」

「いやあ~!殿下!我が友よ!どうされましたか?」

「お前が、何時になったら戻るのかと思ってきた。直ぐに都が恋しくて帰還していたのに、今回は、何が?お前を、領地に留めておく理由が出来たのか?確認をしたくなった。」

「流石!殿下。何時も道理の推察に感服いたします。」

「この領地に、素晴らしい者が出現しまして!それを眺めているうちに、都の事を忘れていました。」

「珍しいな?ロナルド!滅多に興味を示さないお前が?」

エンドリア殿下と、我が弟で殿下の護衛騎士をしているロベルトは、顔を見合わせている。



そこへドアの向こうからバタバタと廊下を走る音がした。


ドアをノックと同時に開けられる。

「私の服を返しなさい!人が入浴している間に取るなんてマナー違反よ!何とか言いなさいよ!」

結奈は、ロナルドが一人居るものだと思い、思い切り声を張り上げて怒鳴った。でも部屋の中は一人ではなかった!!!!!

「嫌だ!!!イケメンが増えている。・・・」

結奈はこの状況に、漠然とした。


結奈は、自分のジーパンが、無くなっている事に気が付いて、無我夢中でガウンを羽織、腰には紐を結び、洗髪した頭にはタオルを、ターバン巻きして飛び出して来た。後で、後悔する事になるとは思いもしないで・・・・・・・

我に戻った結奈は、咄嗟に方向転換して、きた廊下を駆けだした。やっぱりこの屋敷は鬼門よ、私にとって悪い方向に行く・・・・もう服はいいよ。


私は、取り敢えずフリルの少ない、水色のワンピースに着替えた。自分の、ブラウスを風呂敷代わりに下着を入れて、髪は目立つので帽子の中に入れて、窓の下を視る。

今なら誰もいない。朝の要領でツタを使い下に降りた。そのまま庭園の奥にある農園へ行き、果樹園を過ぎると小さな小川が流れている。濡れるのも構わずに小川を渡ると、そこは雑木林になっている。


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