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異界での私の新人生  作者: 木瓜乃ハナ
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不思議な白い猫との出会い

結奈と白い猫の出会い


大学から自宅までの道の途中には、桜の木に囲まれた池があり、花見の時期には、人通りも多いのだが、ゴールデンウイークを過ぎたこの季節は、閑散としていて、私のお気に入りの道なのだ。大学の教授の都合で、午後からは休講となり、私は、新緑の葉桜と爽やかな風を受けて、愛用の自転車に乗り自宅へ向かっていた。

私の、目の前に突然、真っ白な猫が、飛び出してきた。

白い毛並みだと思ったが、銀色に輝いている。綺麗な猫だ。

眼は片方が青でもう片方が緑。珍しい猫だ。動物図鑑も読んではいたが、こんな猫を観るのは初めてだ。もっと近くで観てみたいと思い、自転車を道の隅に止めて、私は、猫の近くに行った。

傍までより、触ろうと手を差し出した瞬間に、きらきらとしたスターダストの渦に、結奈は巻き込まれ光の中へ引き込まれる・・・今度は身体が急速に底なし沼に、落ちていくように感じて、私は意識を失った。・・・・・・・・・・・


小高い丘の木の下で、僕の膝に頭を乗せてやり、眼を開けるのを待つ事にする。(秋月・・結奈)彼女の、眼鏡は此処にくる途中で紛失して今は無い。前髪を上げて顔を観る。額は理知的で眉毛もなだらかに弧を描いている。鼻は小さく、唇は少しポッテリとした薄紅色。僕がミツバチなら君の唇の蜜を求めるだろう情欲する。肌の色は白く滑らかで柔らかい。身体は華奢で庇護欲をそそる。僕はこのまま君の顔を見つめて居たい。

長い睫毛がピクピク動く、気が付いたようだ。


私は眼を開けた瞬間に、眼に飛び込んだドアップの顔に驚いて、飛び起きた。余りの驚愕に身体がふらつき、倒れそうになる寸前知らない男が、私を抱き留めてくれた。

その場に腰を下ろして、自分の状況確認をしてみるが、混乱するばかりだ。

少し冷静さを取り戻すと、私の側にいる男の顔を覗き見た。

白銀の髪に凹凸のハッキリした顔、美しい人だ。男の人には表現はしないだろうが、でも眼の前にいる男にはその表現がピッタリなのだ。(眼鏡がない)


私は、不思議に思う。この男には何も感じない、自分の能力は消えたの?

男の目の色には、何だか見たことがある様な、そうだ!右の眼が緑、左は青、桜の道にいた猫の眼と同じなのだ。

「助けてくれて、ありがとう・・・・貴方は、もしや?・・まさか?猫が人になるなんて、化け猫だわ。」後の方は呟いた。

「いや~!僕が猫だって事、良く解ったよね。流石だよ。僕の思っていた通りの貴女で良かったよ。結奈、僕の名前はシャロンだ。結奈の指導者だから仲良くしよう。」猫男は私の手を捉えて握手をする。


「待ってよね!猫男さん貴男の独断と偏見で何を決めているの!」

「それに、初めて遭ったばかりの貴男が、私の名前まで知っているの?絶対に変だわ?それに此処は何処よ!」

「貴男が、私を誘拐したの!納得出来るように説明してよ!」


私の頭の中は、混乱の渦のなかでグルグル回っている。どうすれば又元の場所に戻れるか確認しょう。


「猫男さん!貴男が私を此処に連れてきたの?何故?どうして?」

「結奈!君を視ていたら、すごく辛そうだからかな?」

「貴男!人が辛そうなら、こんな場所に誘拐してきても、言い訳!冗談じゃないよ!私でなくても、世の中もっと辛い目に、遭っている人なら五万といるわよ。今すぐ元に返して!今なら、この事は犯罪として訴えたりしないから、約束するわ。誰にも言わないし、口は堅いから絶対に約束するわ!なんなら、神にだって誓うわ!」


「結奈。君も解るよね?異次元を通過するには、元の場所に戻れる確率はゼロに等しい。もしその入り口が見つかっても、解るでしょ!弾き飛ばされるか?何もない空間に死ぬまで閉じこめられる。」

「結奈。君は運が良かったよ。僕と二人でまともな世界に来られたからね」


結奈にも、もう戻れないことぐらい解る。この世界も、自分は異質な存在だ。何時この世界からも、突然消えてしまうか解らない。

そう思ったら、何だか今までの自分の生き方が、情けなくなり可笑しくなった。

見たくない物が見えて、友人も作らず、孤独に耐えてきた。

帰ることは、出来ないなら過去の自分は、もういないのだ。

そう此処に着た時点で古い結奈はいない。

今いる結奈は新しくやり直せばいいのだ。

もう私には怖い物は何もない。その思いに至る。


「何が指導者よ!猫なら猫らしく!可笑しいでしょう!猫は人になるなんて、一世紀前の話なら解るけど・・・・それでも私は理解しようとは思わない!文明が発達した世の中で、在るわけがない!世の中ロケット飛ばして、火星まで行こうとしている時に、冗談に付き合う程、私は脳天気じゃないの。」

シャロンという猫男は、飄々として話し出した。私が驚愕する事を・・・


「つまり此処は、結奈が居た場所、地球の惑星ではなく、全く違う異次元の世界なのだ。

この世界では、文明もそうだなヨーロッパの中世期位かな?電気もガス、石油も発見されていない。

移動するにも、歩くか馬に頼っている。

そしてね。この国の統治をしているのは王族だ。

貴族に、商人や庶民まあ、農業と家畜を育てている者、勿論漁師や猟師もね、結奈の居た処より空気はいいよ。

大気汚染で公害なんていうことはないからね。」


私は猫男の話を呆然として聞いていた。

確かに、異次元の世界が存在するであろうという事は、研究者の書いた本を読んで知っている。しかし、未知の領域で、誰も、まだ確証はされてはいない。

いくら科学が、発達してもこの分野は、本当の所は未知だ。

在ったとしても、其処に行く道筋さえ解らないのだ。

私は元の世界には戻れる確率は無いに等しい。猫男はどうやって地球にきたのだろう。


猫男には、地球への道を知っているの?

「貴男は、どうして私の処へ来たの?偶然着てしまったの?それとも、必然に私の前にきたの?」

「僕は偶然とも言えば偶然?必然と言えば必然?」

こんな時にふざけた返答する猫男に腹が立ってきた。馬鹿にして!!

「もういいわ!貴男の顔なんて観たくない!何処かに行ってよ!私の前から消えてよ!」激怒して言い離す。混乱する頭を、冷静に整理する必要がある。

結奈には一人で考える時間が欲しかったのだ。

私は元の場所に戻ることは、確率ゼロに等しい。

猫男が戻る術を知っていても絶対の確証はない。

何故なら緻密に計算しても、無事に戻ることは出来ない。

再悪別の世界に放り出されるか、異次元に永久に閉じこめられる。・・・


結奈は、現実に意識を戻すと、猫男の姿がない。

(私が何処かに行って!)と言ったから居なくなった。

空を見上げると夕焼けに染まりだしている。

結奈は、此からどうしたらいいのか迷った。

八つ当たりに声を出して罵る。


「猫男の馬鹿!何が指導者よ!生徒を置き去りにする指導者が何処にいるのよ!」

側で声がした。結奈はびっくりして振り向くと猫男がいた。

手には何かを持って立っていた。

「黙って急に居なくなら成らないでよね。」

「変だよね?誰かさんには、僕の事を、居なくなって、欲しかったのではないのかな?

その呼び方嫌だよ!僕はシャロンだよ。今度、変な呼び方したら本当に居なくなるから。」

「シャロンさん、変な呼び方してご免なさい。もう言わないから」

「シャロンでいいよ。お腹が空いたでしょう。食べ物を、調達してきたから、ここで食べよう。ここから町までは遠いので、結奈の足ではとても無理だし、今晩は野宿だよ。」

「シャロン!そんな遠い処まで買いに行ったの?」

「僕は猫だから、走るのは早いのさ。結奈、食べてよ。僕は結奈の前でしか、人間の姿には戻れないから、他の人間の前では、猫にしか観る事ができないし、話す事も出来ないのだ。」


結奈は、シャロンが調達してきた包みを開けた。そこにはベーコンとチーズに葉物野菜が挟んであるサンドイッチだ。それに瓶にはミルク。

「シャロン、貴男の分は?」

「僕は食べなくても大丈夫だから、結奈は気にしないで食べて!」

「うん。ありがとう!シャロンだって、お腹が空いているでしょう、半分にして食べましょう。」

結奈は、サンドイッチを半分にするとシャロンに渡した。

シャロンは嬉しそうに頷く。

「シャロン?貴男は次元の違う処に行き来できるの?」

「そうでもないさ。突然行かされた。僕の意志とは関係なくてね。」

「それはどうして?誰かに行かされているの?」

「これは僕の試練みたいな物だよ。結奈の事もそうだよ。結奈に逢って僕の遣るべき事が理解できた。」

結奈は、シャロンが何を理解したのかがわからない。

一つだけ解った事は、シャロンと私は多分運命共同体だと。

この世界では、私はシャロンが必要だし、まだ理由は解らないけど、私が必要だわ。

明日の事は解らない。

此処がどんな処かも、私には解らない事ばかりだ。

でも一人ではない、こうして1つの物を分けあえるシャロンがいる。

此処で、私の人生をやり直してみよう。

もう驚くべきことは、経験したから前に向かい進んでいけば、道が見つかるかも知れない・・・・・・・

結奈は、シャロンの温もりに守られて眠りについた。



朝日の眩しさに眼が醒める。側に居たはずのシャロンが又いない。

「シャロン!!どこにいるの!」大きな声で呼んでみるが、応答がない。

全く何処へ行ったのよ!指導者ならさぼらないでよね。

怠慢だよ。結奈の膝の上には、シャロンの上着が置いてある。

見かけによらず、優しいところもあるのね。


「いやあ!結奈。おはよう!」

「起きたら居ないから、心配するでしょう!」

「この辺を探索していた。情報を集めるのも僕の仕事だしね。」

「おはよう!私、挨拶もせずに、シャロンの事を責めてごめんね」

「結奈、もしかして僕の事を心配してくれたの。嬉しいよ」

「そんな事当たり前よ。私たちは同士でしょう。それで何か解った?」

「ここら辺りはカーマイン伯爵の領地らしい。

クレスター・カーマイン伯爵には22才になる息子と18才の息子が居るそうだ。

カーマイン伯爵は上級貴族で王様の信頼もあり、上の息子は王子の学友らしい。」

結奈は聞きながら、自分が寝ている間に、情報収集をしてきたシャロンの事を、感心をしていた


「朝飯だ。」とクロスで包んだ物を差し出す。温かいパンに、りんごとチーズが包んである。・・・・・・

「シャロン?聞いてもいい?このパン何処で買い求めたの?まさか余所の家から黙って持ってきたわけじゃないでしょうね!」

「結奈が、お腹をすかしていると思って、僕では、パン屋に買いに行けないでしょ。何しろ猫だから<ニャー!ニャー!>鳴き声にしか聞き取れないのだからね。」

私が悪かった、すっかり忘れていた。私の前でしか人間に成れない事を、私は、まだ何処かこの状況に馴れていない。私が、何とかしなければ行けないのよね。


「シャロン!私は、本当の意味で理解してなかったわ。ごめんね。大丈夫、自分の食べる分くらいなんとか考える。」

「結奈、無理しないでいいよ。僕は大丈夫だから」

「駄目よ!泥棒のような真似はして欲しくないの。私の気持ちも解るでしょう。

貴男は、立派な指導者になるのでしょう。

私も、ここで何かやり遂げなくては、いけないのだと思うから、それが何の事かは解らないけど、努力はしないといけないでしょう。」

「折角、シャロンが手に入れてくれた食料を、無駄にしたら罰が当たるわね。また半分ずつにして食べよ。」


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