私が、着いた場所は、辺境地で火薬つくり!
グリーンマイン国の北にある港町クリス港に着いた。
港には船が停泊している。船の名前はルーズ号。私達はルーズ号に乗り込んだ。
乗り込むと直ぐに船は、港を放れた。
海は、穏やかで揺れも少しで、船酔いの心配をしていた私だが、今のところは大丈夫そうだ。この船は、横から沢山のオールが出ていて、オール事に人が付いて、オールの櫂で船を動かしている。初めての体験だ。
4日目の朝、船は私の知らない港に着いた。
そこは、オース国とヘブライ国との境界線にある。ブロドリー港だった。
港から馬車に乗り、ヘブライ国にある都ラムダに行く。
私は何日も掛けて漸く到着した。
夜遅くに大きなお屋敷に、連れて行かれる。
部屋につくと、侍女のカリアがお風呂の支度をしてくれた。
私は、カリアも当然のこと疲れているはずなのに、私の世話をしてもらうのが心苦しかった。バスルームから出た私は、寝室のベッドにもぐりこんだ。
ようやく、目覚めて驚いたのは、もう太陽が空の真上にあるのだ、今の時間はお昼過ぎだろうと慌てて飛び起きた。
カリアが私の支度をするために必要な物を持って部屋に入ってきた。
「ごめんなさいね。私、寝坊してしまったわ」
「結奈様には、強行での旅でしたから、さぞかしお疲れになられたでしょう」
「カリアだって同じでしょう?あなたの方が疲れているはずよ。大丈夫ですか?」
「ご心配には及びません。わたくしは慣れております。」
「結奈様には、明日の夜に屋敷の主に、会っていただきますようお願い申し上げます。」
「はい、わかりました。」
「では、それまでは休息なさってくださいませ」
私の支度を終えて食事の用意をすると、カリアは部屋から出ていく。
カリアは無駄な話しはしない。ダンガリー伯爵に口止めされているのだろう。
私は、今やっとこの場所に来た。この屋敷の主は、誰なのか何処まで火薬ができているのだろうか?ふと、シャロンの事がよぎった。
(シャロン!今頃はどうしているの?逢いたい!)
結奈がグリーンマイン国からいなくなり、俺は、氷の魔女の所へ行くつもりで城から出た。結奈が、決断をしたなら俺も魔女と対決しなければならない。
魔女は手強い、氷付けにされるのかまた、異界に落ちてしまうのか?今は考えてみても仕方がないと思う。
結奈の、言葉道理敵の懐に入らなければ何も得られない。
俺は結奈と共に幸せになりたい!この大陸も俺が物心ついてから、毎年雪も多くなり北の地域では冷害も珍しくない。まさか!火の魔女がいなくなったせいなのか。
それで氷の魔女の威力が強くなったのだとしたら、父のした事は、この大陸全体を危機にさらすようなことになる。
火の魔女との恋が成就していれば・・・こんな時に後悔していても解決にはならないだろう。俺は馬鹿だな!そんな恋が成就していたら俺は、この世には生まれてはいないし、結奈にも会えないだろうに。
結奈は元気にしているだろうか?無謀な事はしてないよな。会ってこの胸に抱きしめたい!結奈!今度会ったらもう絶対に放してはやらないから、覚悟しておけよ。
猫の姿の俺には、雪道は難題だが少しでも早く、魔女の住む所へ行きたかった。それが一番結奈と逢える近道に思えたのだ。
私は今、緊張している。ようやくこの屋敷の主に会うのだ。
カリアが迎えに来て、後についていく。3階の奥に案内される。
ドアの中から、一人の紳士が私を招き入れた。
「ようこそ、ヘブライ国へ、結奈様、お待ちしておりました。」
「初めまして、旅の疲れは取れましたかな?私は今、この国で宰相をしております。ベネット・コルーマンと言います。」
「結奈です。コルーマン宰相様、私に会いたいと、ダンガリー伯爵に聞きました。何故?私に会って、何をお知りになりたいのですか?」
「やはり、ダンガリー伯爵の話していた通りです。理知的なお嬢さんだ。」
「宰相様。お互いに腹の探り合いはやめませんか。私は今、この国に来ています。逃げも隠れもしません。出来ない事はお分かりになりますでしょう。私に、何をさせたいのか、教えて下さい。」
「結奈様には、驚かせられます。では、こちらも本音を申し上げます。我が国は、東に山脈があり、北には、氷河があるので、中々作物が育ちません。近年では、益々寒さが厳しくなり、このままでは、飢餓で亡くなるものも出るでしょう。何か良い案があれば教えてもらえないだろうか。」
公害で、大気汚染の為に、地球温暖化は分かるけど、この大陸は冷えていく。
なん前年の昔には、氷河期があったけど、どうしたらいいのか解らない。
「そのために、私を呼んだのですか?」
「そうです。このままでは、いずれかこの国は滅んでしまいます。よその土地を求めて、侵略するほか無いでしょう。」
結奈は、宰相の思惑が読めた。侵略戦争をするつもりだ。
どこの国へ仕掛けるつもりだろうか。自分なら、北は無意味だ。
東は山脈に阻まれている。南のサウス国なら、間違いない!
「宰相様は自分の故郷を捨てると、お考えですか?」
「馬鹿な!誰も、自分の育った場所を、離れたいと思うものか!皆が生きていく為には、仕方がない。」
「大体、気温が変わってきたのは、いつごろか分かりますか?」
「かれこれ20年前頃から毎年冬の季節が長くなり、春の訪れが遅くなった。それに対して、秋がくるのが早くなりで、お陰で作物も不作だ。これまではサウス国から食糧を輸入していたが、近年のサウス国は食料の輸出を減らしてきたのだ。これでは、我が国は、生きてはいかれないのだ。」
「多分、サウス国でも同じような現象で、作物の生産量が減少傾向にあるのではないでしょうか。」
「確かに、一番打撃を受けているのは、北に位置するオース国とヘブライ国でしょう。しかし、この気温低下は大陸全体に影響を及ぼしています。原因を突き止めなければ、なりません。」
「馬鹿な事を言わないでくれ!気温の変化を調べるだと!お前は、神か!」
「私は、庶民です。でも、ここよりはるかに上回る文明を持っている国にいました。きっと、宰相様には、想像が出来ないと思いますが。私には、少し心当たりがあるのですが、やらせて下さい。」
「火薬を作り、サウス国に侵略するおつもりですか。」
「何故!お前が知っているのだ!」
「私は、最初から話していますが、この世界より進歩した所にいたと。勿論、私が必要だと認めた時は、自分で、火薬を作り東にそびえる山を爆破して風の通り道を作ります。西から吹く偏西風が山脈にぶつかり、雨も雪もこの土地は多くなります。」
「火薬の事は、誰から聞いたのだ!」
「誰にも聞いてはおりません。」
「本当に聞いてはおらぬと・・・・」
コルーマン伯爵は暫く、思案しているようだ。私の顔を見つめて、大きくため息をつくと、私に頭を下げる。
「結奈殿、ヘブライ国を救ってはくれまいか。宜しくお願い致します。」
「宰相様、結奈と呼んで下さい。私は、庶民ですから。頭を上げて下さい。私が困ります。私の知識がどこまでの可能性があるか分かりません。ですが、私頑張ります。国民のために!」
コルーマン伯爵に依頼された。私は、この国の問題を解決しなくてはならない。私は、シャロンから聞いた氷の魔女の事を、考えていた。
20年位前だと、グリーンマイン国の先の王様が、炎の魔女と分かれてからだ。
確か、その後に炎の魔女は力を失い亡くなったのよね。
その後には、火山活動はなく、休火山になったと。
それもまた炎の魔女と関係があるのではないか。
氷と炎は正反対。裏を返せば、お互いに良い均衡を保っていたのではないか。
炎の魔女が居ない今は、氷の魔女の力が強くなるのは当然のことなのではないか。
私は、原因が氷の魔女にあるのではないかと思った。
「宰相様、火薬の完成にどこまで進んでいますか。」
「ようやく、硝石が、必要なものだとは解ったのだが、調合がまだわからないようだ。」
結奈は、この世界に、火薬を持つ事には、不安だが使う用途で、国は救われる。
結奈は決断する。
「宰相様、私に火薬を作っている場所まで、連れて行って下さい。」
「結奈殿、どうするつもりですか!」
「火薬を、作ります。火薬を持って、氷の魔女の所へいきたいと思います。」
「何故?氷の魔女の所へ?」
「今の異常な気象は、氷の魔女が原因です。私は、彼女に会いに行きます。それには、火薬を持っていかなければならない。話し合いをするには、こちらも準備が必要なのではないですか。そうとは思いませんか宰相様。」
「結奈殿には、驚かされてばかりですな。大胆不敵、強者ですな。可愛い顔して、恐ろしい事を言われる。ダンガリーが言っておった、面白い娘さんだとね。」
「宰相様はダンガリー伯爵とは、お友達なのですか?」
「そうだ、はなたれ小僧の頃からの付き合いだ。」
「そうでしたか、では、もしも私がこの国を、緑溢れる大地を取り戻したら、一つお願いを聞いて貰えませんか?」
「もし、それが叶うなら、私の出来る事は何でもしよう。」
「では、約束しましたからね。」
コルーマン宰相との話は終わり、結奈は、今は自分のやるべき事をしようとする。
次の朝、結奈は侍従の案内で、火薬を作っている場所に着いた。
その場所は、ヘブライ国の都から、一日中馬車に乗り山懐にある、小さな村だった。周りは閑散としており、人々の顔も覇気がなく、村全体が暗い。
結奈は、一つの小屋に案内された。ここで、火薬を作っている場所のようだ。
その時、小さな爆発が起きた。
「危ない!その場から離れなさい!」
しかし、手遅れだ。一人の若者が、爆発に巻き込まれた。
「貴方!大丈夫ですか?誰か!早く!綺麗な水を持って来て!」
結奈は、若者の腕に、水を掛けて赤くなった患部を冷やす。自分の鞄を持って来てもらい、中から、火傷に効く練薬を幹部に塗り、白い布で若者の腕に包帯をする。
「他の人は、ケガをしていませんか?」
結奈を取り囲む人達は、お互いの顔を見て、無事を確認している。
その中の一人が、結奈に向って、話しだした。
「お嬢さん、あなたは医者なのかね?」
「私は結奈と言います。医者ではありませんが、多少の心得があります。森の魔女の弟子です。」
人々は、一応驚愕している。
魔女はこの世界では、忌み嫌われている事を思い出した。
結奈は、不味い事を言ってしまったと思ったが、後の祭りである。
皆の冷たい視線の中、30位の男性が声を挙げた。
「どうしたのだ!魔女の弟子と聞いて怖気ついたか!俺は先ほどから、お嬢さんの、治療法を見ていたが、見事だった。こんなに若くて綺麗なお嬢さんを、歓待しない奴は、俺が相手になるぞ!」
「ケンダース!お前には、敵うものはここには居ない。しかし、こんな所では歓待したくても、できないだろう。」
「お嬢さん、こんな場所へ何しに来たのだ?」
「結奈と呼んで下さい。火薬を作りに来ました。」
ここに居る皆が、唖然とした顔をしている。
結奈自身も皆と同じなのだ。異世界で、火薬を作る事になるとは、夢にも思ってはいないのだから、本当に人生はわからないようだ。




