結奈は、宮殿より姿を消す!
結奈は、高い木々の塀で囲まれた屋敷に来ていた。
屋敷から、侍従らしき人が出てきた。馬車は今来た道を戻っていく。
「結奈様でいらっしゃいますか?主から伺っておりますので、どうぞ此方へお入りくださいませ。」
私は、侍従の後に付いて屋敷の中に入った。
「結奈様には、此方のお部屋でくつろいで戴くように、主から言われております。そこにいるのが、メイドのカリアです。ご用のさいは、なんなりとお申し付け下さい。」
「カリアと申します。お世話をさせて戴きます。どうか宜しくお願いします。」
「カリアさん、私は結奈と言います。こちらの事は何も知りません。教えて下さいね。宜しく。」
侍従は部屋を出て行った。カリアがお茶を用意してくれている。
私は、窓の外を視てみる。綺麗に多分されているだろう庭、今は雪に埋もれている。
とても寂しい景色だ。そう写るのは、側にシャロンがいない所為なのだ。
自分で決めた事なのに、何故か無性に彼に逢いたいと思ってしまう。
「どうぞ、冷めませんうちにお召し上がり下さい。」
「カリア!ありがとう!」
少し、休みたいので一人にしてくれるように頼むと、カリアは部屋を出て行った。
私は一人になって、思案したかった。急な申し出を直ぐに受けて来てしまった。
それで良かったのだと、きっと自分はシャロンに逢ったら迷ってしまう。
離れたくないから・・・・・・私の決断は間違っていないのだと。
今は、シャロンに対する気持ちを封じ込めて、先に進むことを考えた。
それからの数週間は、ダンガリー伯爵も屋敷には、戻って来なかった。
窓の景色が徐々に、雪も溶け木々も芽を出し、春の息吹が感じられるようになり始めた。私は、この屋敷で働く人の治療をしている。
厨房の人は火傷の治療をし、下働きのメイドさん達には、手荒れのクリームを作り喜ばれた。庭師のお爺さんには、腰痛に利く温湿布をしてあげる。でも何も情報は得られない。
ここで働く人にとっては、ダンガリー伯爵は主なのだ。
私も、疑われないように自粛している。
すっかり雪も溶けた日の夕方、伯爵が屋敷に帰ってきた。
メイドのカリアが、伯爵様が夕食を一緒になさりたいと申し出が在ったと伝えた。私は、それを了承した。いよいよ次の段階に進む事になるだろう
「お帰りなさいませ、伯爵様。」
「結奈さん、屋敷で、不自由な事はありませんかな?」
「いえ、みなさんに良くして戴いております。」
「それは、こちらが言うべきですね。屋敷の者が喜んでおりますよ。」
「私の方こそ、無断で勝手な事をいたしました。お許し下さい」
「結奈さんは、医療の方もなかなかの腕前ですな。」
「私は元々、医学の道に進むべき勉強をしておりました。森の魔女からは、薬草の知識も教えて貰いました、まだまだ未熟者です。」
「そうでしたか。結奈さんには、驚かせられます。」
伯爵は、食事中私の様子を伺いながら、無断な会話をして終えた。
伯爵は食堂から、居間に場所を移し、人払いをして話を変えた。
「結奈さん、長く待たせました。貴女に遭って戴きたい方と連絡がとれました。」
「そのお方は、此方にいらっしゃるのですか?」
「なかなか忙しい方ですので、結奈さんから、その方に遭いに行っては貰えないだろうか?是非!頼みたいが。」
「解りました。お忙しいのなら、仕方がないですね。私、そのお方に会いに行きます。」
「そうですか!私は、仕事もあり一緒に行けませんが。私の信頼している者が、結奈さんに付いて行きますので、心配なさらないで下さい。」
「はい、解りました」
今の時点では、黒幕が誰なのか?解ってはいない。
伯爵も用心深い人なのだ。私を1ヶ月以上軟禁状態で、監視していた。
私も誰とも連絡を取らず屋敷の外での情報も入ってはこなかった。
私は、この時の事は後で後悔するとは、この時は思いもしなかった。
それから、数日たったある日、私は、馬車に乗りある港町を目指していた
ロナルドは、結奈が、ダンガリー伯爵の屋敷に行った時から1ヶ月経ったある日、部下より連絡を貰った。
結奈と侍従らしき者と侍女と三人で、馬車で港町に向かっていると。
俺は、漸く伯爵が動き出したと思った。
部下には、その後も結奈の監視を依頼する。
(結奈!あまり無茶しないでくれよ!)
結奈が城から居なくなり、いつの間にか猫の姿も城から消えていた。
殿下は結奈が居なくなった時は、大騒ぎして捜査しようとしていたが、殿下の耳にだけ話をした。
その後は、二人の王女と当たり障りのない付き合いをしている。これはダンガリーの眼を欺ける方法なのだ。
しかし、結奈の話していた、恐ろしい火薬の事は、俺自身どんな物なのか解ってはいないのだ。何としても結奈だけは、無事で戻って欲しい!俺は、今まで神とか巫女の存在は信じてはいない、勝手な話だが結奈の事は、神に祈りたい!俺の腕の中に結奈が無事に戻るのなら。




