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愛想笑い

作者: 学生A


私は子供だから「愛想笑い」ができない。

母は大人だから「愛想笑い」ができる。

大人だからだ。


「ただいま」

家に帰ると私の言葉の返事は無くて、二人の話し声が聞こえてくる。

後、テレビの音も。

また母と叔母が楽しそうに会話している。本当は叔母だけがその会話を楽しんでいる。きっと今母は叔母に対して笑みを向けているのだろう。大変そう。私はいつだって他人事だ。なぜなら、叔母が嫌いだから。大したこともしないくせにいきなり家に入って来た。例えるなら、不法侵入と同じ。私の心はそんな行動を許すことができる程柔らかくない。カチカチなのだ。母も同じはずだ。


「ご飯食べるよ」

母が5センチ位だけドアを開け言う。そしてすぐ閉める。早く来てほしいんだろうな。部活で疲れた体を起こして居間に向かう。


「おかえり」

叔母に言われ返事を返した。無視はしない。したら母に怒られるからだ。夕食はカレー。父は出張。どこにでもある家庭なんだろうな。無言で頬張るカレー。美味い。口には出さないが思う。私なりの母への感謝のつもりだ。また母と叔母が話し始める。


「お迎えの前田さんの奥さんは結局亡くなったんだが」

この間救急車で運ばれたのだ。部活終わりで帰ってきたら家の目の前に救急車があって何事かと驚いたのを覚えている。結構記憶に残るものだ。亡くなったとしたら何なんだ。関係ないくせに。


「噂では植物状態らしいよ」

母は優しい。腹の中では何を考えているか分からないが叔母のどうでもいい話に必ず付き合ってあげるのだ。笑みも忘れない。うん、感じが良い。本当に私と血縁関係があるのかを疑ってしまう位別人なのだ。まあ、この後私に愚痴るんだけど。


「ごちそうさん」

汚いゲップを私の目の前で一発かまして部屋へ戻って行った。あの癖やめて欲しい。せめて誰もいない所でしてほしいと思う。最初に口を開けたのは母だった。


「おばあちゃん(叔母の呼び名)お父さんが怖いんだってさ。だからお父さんが居る時だけ洗い物するんだよ。居ない日は完全無視。それもどうよってね。」

ほらね、口から出た言葉は愚痴。聞くのは嫌いじゃないができるなら聞きたくない。聞いても幸福にはならないから。


「へえ、自分の息子なのにね。」

我ながら凄く適当に返事したと思った。でもこれで母は満足なのだ。少しでも自分の不の気持ちに共感してもらえるだけで。ほら、嬉しそうにカレーをおかわりしたでしょ?


「お父さんって怒りやすいでしょ、だから駄目なんだってさ。お父さんに頼みたい事私に言ってくるのよ?頼んでって。面倒くさい」

確かに怒りやすいが、本気で怒っている訳ではない。むしろあれは父なりの愛情表現な気がするが。なんとも父は怖がられているとは知らずに接しているのか。不器用な家族だな。子供ながらに上から思う。


「言い方がきついだけだと思うけどね」

また適当。でもいいや。母との会話も少しできたし、カレーは全てお腹の中に入っている。部屋に戻ってゲームもしたいし。会話を切り上げて部屋に戻ろう。


「ごちそうさまでした」

言って席を立ちトイレに向かう。叔母がまた居間へ来た。父が居ないと良く喋るなあ。トイレを出ると母と叔母が楽しそうに会話している。本当は叔母だけがその会話を楽しんでいる。母はまた笑みを向けている。

大人だけが得意な「愛想笑い」で。



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