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人探し

「…あれね。ここからじゃよく分からないけど、確かに似てる…特注品だってのが本当なら、写真と同じ物の可能性は高いのかな。」

「でしょう?昨日は詳しく見せてくださいって頼んだんですけど断られちゃったんですよ。」

「でも、その探し人の物が何であんな場所にあるんだろう?どこで拾ったのかな。」

「そこなんですよ。せめてどこで拾ったのか教えてくれって聞いたんですけど、覚えてない帰れって…それで昨日は諦めたんスけどね。」


橘川は伊澤に探偵であることを明かし、事情を話した。運転手に聞いた通りに噂のゴミ屋敷を訪ねてみたが、頑固な家主に追い返されてしまった。その日は諦めて帰ったのだが…他に手がかりもないし、雨川が近所で拾ったのであれば近所に落とし主である友美が住んでいる可能性がある―として近辺を探ろうとしていたのだった。

「このへんで児玉友美さんって知らないですかね。失踪した理由によっては偽名使ってるかもしれないすけど。」

「知らないなあ。写真の人にも見覚えはない。」

「そうですか…。まあ地道に近隣の人に聞いてみたいと思います。」

「まてまて、怪しい奴がうろついてるってまた通報が来たら困る。数件だけ付き合うから収穫がなかったらそのまま帰ってもらえないか。」

「ええ…そんなぁ。」

「その依頼者の娘にももう一度警察に行って見るよう言ってみると良い。内の署だったら対応してくれるかもしれないから。それにこのへんに住んでる可能性まで掴めてるなら、行方不明者情報募集のポスターとか色々手は尽くせると思うし。何だったら俺から本署に連絡してみるから。」

橘川は渋々了解した。調査の依頼期限は今日までだし、これまでの情報だけあれば、伊澤の言う通り警察も対応してくれるかもしれない。


その後は、近隣を地道に聞きまわっていった。警察が一緒にいる組み合わせなのもあってか、皆すんなり対応してくれたが残念ながら有益な情報は得られない。5件廻ってみたところで休憩にと公園へ立ち寄った。

「ふぅー、疲れた。」

「そろそろ、交番に戻りたいんだが、諦めてくれないか。」

「そうっすねー…でも、もうちょっとだけ。」

橘川はそう言いながらベンチに寝転がった。「ベンチが冷たくて気持ちいい~」等と気持ち悪いことを言いながらうつ伏せになっている。異様な光景だった。

伊澤も隣のベンチに腰を掛けた。同じベンチに近所のお爺さんがタバコを吸っていたので「鬱陶しくてすいません」とお辞儀をした。

「お巡りさん、なんかあったんかね。」

人の良さそうなお爺さんは気に留めること無く伊澤に話しかけた。

「なんか人探しをしているみたいでね。」

「ほう、迷子にでもなってんのかい。」

「うーん、そういうレベルではないみたいで。」

「そうなんです!すいませんけどお爺さん、この人知ってませんか?」

突然元気を取り戻した橘川は、ベンチから起き上がって写真をお爺さんに差し向けた。

「ははは…知りませんよねぇ。すいません。ほら、元気になったなら次にいくぞ。次で最後だからな。」

伊澤は橘川の腕を掴み歩みだそうとした。橘川は「あ、ちょっと」と言いながら振りほどこうとする。


「んー見覚えあるなぁ、その女の人。」

お爺さんのその台詞で二人は立ち止まった。

「えっ、えっ。本当っすか!?」

「ちょ、慌てんなって…本当なんですか?」

暴れだそうとする橘川を静止しながら伊澤はお爺さんに尋ねた。

「そうだなー、確か…。」


プルルルルルルル…


「あ、ちょっとすみません。」

お爺さんが思い出そうしていたが、そのタイミングで伊澤の携帯が鳴った。交番で待っている先輩からだ。伊澤はその場を離れ電話に出た。

「おい、おせえぞ。何してんだ。」

「すんません。さっき連絡した探偵の件が長引いていまして…もう終わらせますんで。」

「いや、その探偵の野郎は一旦放っといていいから。そんなことより事件だ。」

「事件?」

先輩の声が何やら焦っているようだ。

「死体が発見されたらしい。いま、本署の刑事課が現場に向かっているから。」

「し…死体ですか?」

「おお、そうだ。今すぐ応援に行ってくれ。お前のほうが現場に近い。」

「え、あの…何か事故があったんですか?それとも―。」

「多分、殺人事件ってやつだな。」

先輩の言葉を聞きながら伊澤は冷や汗を流した。



一方、そんな伊澤を他所に橘川はお爺さんの話を急かしていた。

「どこで?どこで見たんすか?」

「あぁ、そうだ思い出した。佐藤の愛人だ。」

「佐藤?近所の人ですか?」

「うん、佐藤洋一って男なんだがね。あいつの愛人とそっくりだ。」

お爺さんは「よく一緒にいるから、ありゃ多分愛人だろうなあ。」とつづけた。

「おお、マジですか!じゃあその佐藤さんに聞けば何かわかりますかね!お爺さん、その人の家どこかわかりますか。」

「分かるよ。えっとね…おや、お巡りさん血相変えてどうしたんかね?」


電話を終え、戻ってきた伊澤にお爺さんは心配の言葉をかけた。橘川もそれに気づいて「うわ、上司に怒られちゃいましたか?時間取らせちゃってすんません。」と呑気に謝っていたが伊澤の耳には届いていなかった。


「お爺さん、その男の名前…もう一度聞いてもいいですか?」

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