表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/2

Begegnung ―出会い―

君はこんな話を知っているだろうか?


お話はだいたいこんな出だしで始まる

これは昔からの決まりごとのようなもの


「むかしむかし あるところに ひとりぼっちの おんなのこ がいました」


かわいそうな女の子のお話

誰かが助けてくれるお話

剣を携えた王子様か

あるいは旅人か


・・・静かに私はこう呟く



『助けなんか  来なければいいのに』


私はこの少女の不幸を願った

目を閉じて少女を呪う


普通だったら彼女の無事を祈り、幸せを願うのだろうが・・・私はそうではなかった


パタンと絵本を閉じてベッドの上に座る

少しシミのついた布団をしっかりと掴み引き寄せ、体に巻きつけて眠る


・・・私は『ひきこもり』だ



「――――!!―――――――――!!!!」

ガシャーン!!

「―!―――――!!」


またいつもの騒ぎ

うちの家庭環境は最悪に等しい


父親は最近仕事を辞め、ギャンブルにはまった

母親は教育ママというやつなのか、受験受験と騒がしい


私には双子の妹がいる

前までは「お姉ちゃん」と慕ってくれていたけれど最近はトイレ以外部屋から出ていない為、顔を見ていない



妹は私と正反対でなんでも出来てしまう

勉強、運動、どんなことでもできてしまうのだ

しかもスタイルもいい

顔も可愛い

文句なし


みんなの人気者だ


私は細いが、それはただ病気によるものだ

顔も可愛くない

妹と違って一重だし

胸もそんなにないし

学校休んでるから勉強も遅れがちだし

運動も満足にできない


母も、妹をとても可愛がった

可愛い服などを買ってきては妹に着せていた


父も妹を見るといくらか気が緩んだような顔になっていた

正直それを見るたびに吐き気がした


母は私に汚物を見るような目を向け、父も私を見るたびに嫌そうな顔をした


妹だけは私を見ても嫌な顔一つしなかった

逆にいつも笑っていた


未だに妹だけは私を心配しているのか、ご飯を部屋の前までもってきてくれる

・・・どうして優しくするのよ、と聞いたことがある




「お姉ちゃんが好きだから」





妹は少し考えたような沈黙のあと、そう答えた

そしてこうも言った


「心配だよ、お姉ちゃん。顔、もうずっと見てないもん。お願いだから・・・少しでいいから、顔を見せて欲しいよ・・・」


その言葉を聞いて私の中のなにかが爆発する


「うるさいっっ!!!!!」


それは一気に溢れ出し、私の中を一気に黒に染め上げる


「あんたも、本当は私のこと役立たずって思ってるんでしょ!?いらないのにって!あはっバッカみたい!!!」

「お、お姉ちゃん・・・」


止まらない

私はやめたいのに、口が全て吐き出してしまう


「うるさいのよ!!いつもいつもお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんって!!!私知ってるんだよ!?あのババアと一緒になって私の悪口言ってること!」

「ち、ちが・・・」

「違わない!私はね!あんたのことも大っ嫌いなの!はやく!私の部屋の前から消えて!喋りかけないでよ!!!」


違う

違う違う

違う違う違う


「・・・お姉ちゃん・・・私」

「いなくなれよぉぉぉっ!!!」


ガシャーン!!


そういって私じゃない私の手は近くにあった花瓶をドアに叩きつける


「・・・ごめん・・・なさい」

「あ・・・」


小さく謝罪の言葉を残してパタパタと小走りする音が遠のいていく

それを聞いて私はやっと私に戻る


「・・・・・・・・・ふうっ・・・うう・・・っ・・・・・・・」


溢れる

感情が溢れて止まらなくなる


ポロポロと涙が溢れて止まらなくなる


ごめんね

ごめんね

ごめんね


そう呟きながら意識は暗闇の底へ落ちていく

妹に対しての謝罪の言葉を口にしながら









「ここは?」


目を覚ますと闇の中にいた

暗くて何も見えない


「ここどこ・・・?私、部屋で・・・」

『おめでとう。あなたは力を得る権利を得た』

「だっ誰!?」


何もないはずの空間から声が聞こえる

声は反響しているように聞こえるためどこから聞こえているのかがわからなかった


『あなたの役割は憎しみ?それとも孤独?』

「え・・・?」


何を言っているのかがわからない

憎しみ?

孤独?

どちらにしろロクな単語ではない


「なによ・・・?あなたは誰なの!?」

『私は・・・そうだね、神様だよ』

「神・・・様・・・?」


・・・バカバカしかった

神様なんかいない

ずっとずっと私はそう思ってた

それが目の前・・・には、いないが近くにはいるらしい



「神様・・・ですか。では、質問。よろしいでしょうか」


一応敬語を使っておく

まだ死にたくはないから


『どうぞ』

「力っていうのは、どんな力でも構わないんですか?」

『構わないよ。ただ、神の力が欲しいとかそういうのはダメだよ。人間の体が持たないからね』

「・・・そうですか。ではもうひとつ、お聞きしてもよろしいでしょうか?」

『うん?』

「役割ってなんですか?」

『今から始まるゲームの役割だよ』

「今・・・から?」

『そう。あなたたちにはそこでバトルしてもらいます』

「・・・どうして私は・・・」

『あなたの心の中で一番大きかったのが憎しみ、孤独だから』

「違う!どうして私が選ばれたの!?」


そう叫ぶと神様とやらはにっこり笑った・・・気がした


『あなたにチャンスを与えようと思ったの』

「・・・チャンス・・・?」

『あなたはまだ幸せになれる。でもこのままいくとあなたは不幸なまま一生を終える』

「!!!」

『だから、チャンスをあげることでこれから幸せになれるかもっていう希望を持たせてあげたかった』

「・・・神様・・・」

『本当はね、あなたは選ばれないはずだったの。もっと強欲な人が選ばれるはずだった』


『でも、私があなたをそこにねじ込んだ』


ほかの神様から怒られちゃうかもね、となぜか嬉しそうに呟いた


「・・・とにかく、私はどうすればいいわけ?」

『生き残りなさい、ほかのチャレンジャーも能力をもらうはずだよ。あなたみたいに選べないけれどね』


「ほかの人は選べないの?」

『うん、君は特別。私の推薦枠だからね。ほかのチャレンジャーを倒して生き残ればいい』

「・・・生き残ったら、どうなるの?」


『君がその世界の神になる』



私の時が止まる

私が 神になる?


「・・・ちょっとまって、どういう」

『さて、そろそろ能力を決めてもらおうかな?』

「・・・で、でも・・・」

『今更怖気づいたとか・・・ないよね?』

「・・・・・・・・・」

『さぁ・・・あなたの能力はなに?』

「・・・箱庭・・・」

『え?』

「箱庭が欲しい。私の、私だけの、箱庭。私だけの居場所が欲しい」

『・・・そう。じゃあそれでいいんだね』


そういうと闇で覆われていた世界が一気に光で溢れる

あまりにも眩しくて目を瞑ってしまった

そして目を開く

そこには天使がいた

それが・・・彼女が神なのだろう

彼女は私を見て微笑む


『あなたの願い、叶えましょう』


そう言って私に近づき、額にそっと口づけをする

そして私の意識はそこで途絶えた・・・

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ