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ユエのトラウマ

本日2話目です



 ユエ




 お風呂でリン君に体を隅々まで丁寧に洗ってもらって、服を頂きました。それから夕食をリン君にあーんで手ずから食べさせて貰いました。お風呂では私の全てを見られてとても恥ずかしいです。それと同時に何も出来ない私は申し訳なく思います。


「さて、それじゃあお休み。何かあったら起こしてね」

「はい、お休みなさい」

「ん、お休み」


 与えられた一室はベッドが二つあるだけの狭い部屋です。そこを私とリン君、ひなたちゃんの三人で使います。リン君とひなたちゃんは同じベッドで寝て、私は一人で寝ます。でも、これはおかしい事ではありません。ひなたちゃんは幼いし、私はリン君のものになったとはいえ他人ですから。一人で寝るのは怖いですが、これ以上リン君に迷惑を掛けられません。だから、掛けて貰った毛布に身を包んで目を閉じ、一生懸命に寝ようとします。






 目を開けると、そこは草原に作られた砦前でした。私の手足も戻っていて、今までの事が夢だったのかと思うと嬉しいとともにリン君に近づけた事実が無くなり悲しくなりました。でも、それもすぐにもっと恐ろしいことがわかりました。


「あっ、ここって……」


 それに気付いた瞬間、私は恐怖で身体が震えて動けなくなりました。


「居たぞっ!!」


 直ぐ目の前には槍を持った鎧姿の私を傷つけて手足を切り落とした男の人達。


「いっ、いやっ、いやあぁぁぁぁっ、来ないでっ!!」

「死ねっ」

「死ね死ね死ねっ」


 何度も身体を突き刺され、痛みを必死に我慢して逃げるも、投げられた槍が私の足に突き刺さって地面に転がり動けなくなりました。


「痛いっ、痛い痛い痛い痛い痛い痛いっ、痛いぃいぃぃぃぃぃぃっ!! やめてっ、やめてぇぇぇぇっ!!」


 何度も何度もお願いしても男の人達は笑いながら私を突き刺して、手と足をえぐるようにして切り落とし、最後には貼り付けにされました。そして、今度は手足だけでなく、お腹を突き刺されて激痛を与えられたました。リン君が助けに来てくれるはずなので必死に耐えます。


「ダンピールはしぶといな」

「玩具には丁度いいだろうよ」

「ああ、たっぷりと悲鳴を聞かせて貰おうか」


 しかし、リン君が助けに来てくれる事は無く、砦の中で延々と拷問されて死にました。その瞬間、また草原に戻って繰り返される永遠の地獄が私を待っていました。


「いやぁあああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁっ、助けてぇええええええええええぇぇぇぇぇっ!!」


 伸ばした手は空を掴むはずでした。ですが、温かい何かを掴んだ感触がすると、引き上げられるような感覚が襲って来ました。


「ユエ、ユエっ!」


 次の瞬間には、目の前に心配そうな顔をしたリン君が私を抱きしめていてくれます。


「あっ、あっ、ああぁぁぁぁ……リン君、リン君っ」


 泣き出した私を胸に抱きしめて頭を撫でてくれます。頭の感触とリン君のとくん、とくんという心臓の鼓動が私を落ち着かせてくれました。


「大丈夫?」

「は、はい。魘されただけです……もう大丈夫です……」

「嘘だね」

「ち、違います。私は大丈夫です……」


 リン君にこれ以上迷惑は掛けられません。


「そう、わかった」


 リン君が私をベッドに寝かせて去っていきます。それだけで心は不安に押し潰されそうになり、手を出してリン君を引き止めようとします。ですが、肘の辺りから無い私ではどうしようもなく、リン君は行ってしまいました。


「あっ、あぁ……」


 怖い、怖い怖い……また眠ればあの地獄に戻ってしまう。リン君が助けてくれなかった場合の私に……また戻る。そんなのは嫌っ! で、でも、リン君には迷惑を掛けられません。知らず知らずのうちにまた涙が溢れてきます。


「ユエ」

「り、リン君……? な、なんですか……」


 リン君に顔を見せないようにそっぽを向きます。


「全然大丈夫じゃないよね」

「そ、そんな事は……ありません」

「そう。そう言うんだったら仕方がないね」

「あっ……」


 リン君は私をベッドの奥の方にやって、中に入ってきました。


「一緒に寝ようか」

「わ、私は大丈夫ですから……ひなたちゃんと……」

「ひなたも連れて来たから大丈夫」


 振り向くと、私とは反対側に眠っているひなたちゃんが居ました。


「で、でも、これ以上リン君に迷惑を掛けられません……」

「ユエは遠慮しすぎだよ」

「私はリン君に何も返せていません。迷惑ばかり……んっ!?」


 リン君が人差し指で私の口を封じました。


「僕は助けたいから助けてだけだよ。ユエが気にする事なんて何も無いよ」

「それでも私はリン君に……」

「ああ、もう! そこまで言うなら今から命令するね。ユエは僕のものなんだから従うんだよ」

「は、はい! ど、どうぞなんでも言ってください! えっ、えっちな事……男の人のせっ、性処理でもな、なんでもします!」


 恥ずかしい言葉に身体中が真っ赤になってしまう。リン君も想像したのか、真っ赤になっています。


「ど、どこでそんな知識を……」

「兄さんの部屋で……その、見つけて、しまって……」

「……」

「り、リン君は?」

「と、友達に……って、そんな事はおいておいて。それじゃあ命令するね」

「は、はい」


 リン君に何を命令されても答えられるように疲弊した心でしっかりと決意する。


「じゃあ、これから素直に僕に相談する事」

「え?」

「次に僕のものとして抱きまくらになる事。拒否は許さないからね。ユエがなんでもするって言ったんだから」

「そ、それは……でも……」

「でもも禁止。僕はユエのあんな姿を見ちゃった責任もちゃんと取るつもりだよ。ユエの事を好きだけど、まだ愛しているかはわからない。だから、そういう事は成人して、それでもユエが僕を受け入れてくれるならしよう」


 リン君は本当に私はの事を大切に思ってくれている。兄さんの本とかだと男の人はこういうシチュエーションだと直ぐに襲い掛かってたのに。


「わかりました。でも、私は何時でも受け入れます」

「ユエ……」

「私は、生涯リン君だけを愛します。リン君が私を愛さなくても構いません。リン君に尽くしますから、都合のいい女だと思ってくだい。その代わり、お側に居させてください。これが私の本心です」

「ユエの気持ちはわかった。でも、やっぱり僕には答えられない。ユエの生涯を左右する事を簡単になんて決められないから。だから、悪いけど待ってね」

「はい。リン君が私を大事にしてくれている事はわかりますから……何時までも待ちます」

「うん、ありがとう。それとユエの意見も尊重して都合のいい女として扱わせて貰うね」

「り、リン君?」

「ユエが悲しんだり、辛い思いをするのは僕の都合がよくないの。だから、ユエはちゃんと僕に相談して。一緒に頑張ろ?」

「っ!? は、はいっ!」


 リン君は私を優しく包んでくれる。リン君と一緒なら、あの悪夢も頑張れるかもしれない。


「あの、リン君……」

「何?」

「私に勇気をください」

「僕はどうすればいい?」

「抱きしめてキスをしてください」

「わかった」


 リン君は私に優しくキスをしてくれた。でも、足りません。


「あの、舌を入れて魔力をください。身体の中と外からリン君を感じれば頑張れます」

「目を閉じて」

「はい……」


 舌を絡めて唾液を交換し、魔力を貰います。リン君の魔力が体内を回って私に暖かな力をくれます。


「お休みなさい」

「うん、お休み」


 リン君は私を胸に抱いて、眠るまで撫でてくれました。それでも悪夢はやっぱり見ます。ですが、今度はリン君が私を助けてくれました。繰り返す事も無く、夢の中でもリン君に抱かれて私はゆっくりと眠りにつけました。





 朝になり、身体にダンピール特有の朝のだるさを感じながら目を開くと、直ぐ近くにリン君の整った眠った顔が見れました。リン君の綺麗な首筋には、あるはずの傷がありませんでした。


「ん? あ、おはよう……」

「おはよーございます……」

「どうしたの?」

「り、リン君……おはようのキスを……したいです……」


 私は知らない間にリン君にそんなお願い事をしていました。


「おはようのキス?」

「だ、駄目ですか? できれば、魔力が欲しいです……」

「いや、いいよ。僕もユエとのキスは……その、気持ちいいし……」

「リン君……リン君とキス、嬉しいです……」


 目を閉じてリン君とのキスを受け入れます。直ぐに舌を絡めて魔力を流し込んで貰います。魔力が流れ込んでくると意識がはっきりとしてきました。そのせいか、お互いn見つめ合っていると、自分からおねだりした事を思い出して凄く恥ずかしいです。


「むーひなも」

「ひなたっ!?」

「あっ」


 ひなたちゃんがリン君にキスを私と同じようにしていました。兄妹でする事じゃありませんよ!?


「ちょ、ひなた!?」

「ユエお姉ちゃんだけ、ずるい」

「いやいや……」

「あらあら、朝からモテモテね」


 声が聞こえて扉の方を向くとエリゼさんが居ました。


「朝ご飯を用意したからほどほどにして降りて来なさい」

「ま、待ってっ!? ひなたを止めてよ!」

「え? 別にいいじゃない。ここは異世界なんだからひなたの好きにすればいいわ。それに血も繋がってないのだし」


 ひなたちゃん、リン君と血が繋がっていないんですね。それならセーフですよね。


「やった」

「お母さん!?」

「でも、今日は移動するから早くしなさい」

「ん、わかった」


 ひなたちゃんが離れたのでリン君が立ち上がって着替えて行きます。それから、ひなたちゃん、私の順番で着替えさせてくれました。リン君はひなたちゃんを甘やかし過ぎな気がします。

 着替えたあと、リン君に抱っこされてリビングで食事をします。もちろん、私は食べさせて貰いました。食事が終わると外に出て砦の東門へと向かいました。そこには怖がっている大きなお馬さんが繋がれた馬車とヴェロニカさんが居ました。お馬さんが怖がっているのも無理ないかも知れません。隣にガルムのガーくんとブラッドタイガーのターくんが居るのですから。ライちゃんとベーちゃんはここで待機みたいです。


「おはようございます。今日から少しの間、一緒に居ることになったヴェロニカです。改めてよろしくお願いしますね」

「こちらこそよろしく」

「案内を頼むぞ」

「はい。おまかせください。君達もよろしくお願いしますね?」

「リンです。よろしくお願いします」

「ユエです。こちらこそよろしくお願いします」

「ひなた。よろ」

「はい、よろしくお願いします。それでは馬車に乗ってください」


 言われた通りに皆さんが馬車に乗って行きます。私もリン君に抱かれて乗ります。


「それでは出発します」


 ヴェロニカさんの声に馬車がすぐに動き出すのですが、問題がありました。凄く揺れるのです。私はリン君に抱いて貰っているので平気ですけど、他の皆さんはそうは行きません。それにあんまり速度が出ていないようです。


「ヴェロニカさん、どれくらいで到着するの?」

「三日ですね」

「……支援するから早く行きましょう」

「わかりました。お任せします」

「ええ。さて、二人は風の精霊魔法で車体を浮かせて。私は馬に支援魔法を掛けるから」

「やり過ぎではないか?」

「こんなの耐えられないわ!」

「ひなも、無理」

「わかった。好きにしろ」

「あははは」


 20Kmくらいで進んでいた速度が4倍の80Kmくらいになりましたね。車体が浮いてるので振動もあまりありません。


「速いっ、速すぎですぅぅぅっ!?」

「頑張りなさい。後で美味しものをあげるから」

「ひぃー!? わかりましたぁっ!!」




 4時間で目的の村の近くに到着しました。村にはまだ距離がありますが、アースさんがここに止めるように指示したのです。


「こいつらを連れて行くとまずいからな。ヴェロニカさん、この馬車はどういう扱いだ?」

「これは皆さんに差し上げるものです」

「なら改造していいな。村に住む訳ではないんだエリゼと行って来きてください」

「わかりました。では、行きましょう」

「ええ」


 ヴェロニカさんもさすがにガーくんとターくんの事はまずいと思ったのでしょう。すぐに納得してエリゼさんと一緒に向かいました。


「お父さん」

「少し嫌な予感がするからな」

「ん~村自体は普通の村だけど……」

「とりあえず様子見だ。エリゼの周りを監視していてくれ」

「わかった。何かあったら突撃させるんだね」

「そうだ。俺は改造しているから、リンはひなたとユエちゃんと遊んでろ」

「わかった」


 それから、私達は森に遊びという名の探検に行く事にしました。お供にはガーくんを連れてきます。リン君が気配遮断を行い、ガーくんに乗っての移動です。


「あ、可愛いウサギを沢山見つけた」

「おー」

「ウサギさん……」

「茶色が殆どだけど黒いのと白いのが居るや。あれ襲われて怪我をしているみたい。仲間割れ?」

「お兄ちゃん、ウサギさん、捕まえる」

「そうだね。助けるついでにテイムしようか。ユエもいい?」

「もちろんです。撫でてみたいですし」

「じゃあ、空間設定で確立。よし、これで逃げられない。ガーくん、GO!」


 リン君の指示に従って私達を乗せたガーくんが全速力で掛けていきます。角を持つウサギさん達はこちらの姿を目視して慌てて逃げ出しました。ですが、白と黒の二匹だけは空間が固定されているので逃げられません。リン君が固定された空間で暴れる二匹の所へ入って行きました。すると二匹はリン君に噛み付きましたが次第におとなしくなって指を舐め出しました。

 いいな~はっ!? なんでウサギさんに嫉妬しているんですか!? でも、リン君の美味しい血……駄目駄目っ!! リン君にテイムされた者として、先輩になるんですからしっかりとしないといけません!!






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