アムシャヌス王国との戦争3
お待たせしました。難産でした。次は本陣が必死に突撃します。
スオォード砦を出発したワレリー・アランピエフ率いるアムシャヌス王国軍、四万八千人はバスムル平原の中央を通り抜け、ミリニア王国側に侵入していく。彼等の進軍は順調に進んでいる。ここに至るまでミリニアとモンスターの襲撃が何もないのだ。
(何故だ。行軍の行程は至って順調そのものだ。だが、なんだ……このいいしれない不安は。なにかとんでもない見過ごしがあるのではないか?)
「ベレジン大佐」
(警戒するにこしたことはないか)
「なんでしょうか?」
「斥候を放て。場所は……」
(どこだ。どこがいい? 相手の砦は当然として、どこが怪しい? 今回の相手はろくに増援がこずに砦に籠るしかない。そんな連中がどうすれば我等を撤退させられるか考えればいい。私が相手なら、奇襲して兵糧を焼き払う。では、奇襲するのに隠れる場所は……森だな)
自らの経験則からミリニア側の思惑を漠然として感じながら、警戒するアランピエフ将軍。彼は経験則から一番やばい相手を見つけることができた。
「砦、森、草原……全方位に放て」
「全方位ですか?」
「そうだ。できれば砦の先にも送って、本当にモンスターの襲撃は起こせるか確かめてくるのだ」
「はっ」
(これでいい。情報を制する者が戦いを制するのだ。しかし、まだ不安だな)
「全軍に通達。これより、森から距離を取るために南へ進軍ルートを変更する」
「奇襲があるとお考えですか?」
「私達が敗北するとすれば奇襲だからだ。これが杞憂ならばよいが、危険をわざわざ犯す必要はない」
「しかし、それでは万が一、相手の増援が間に合う場合があるやもしれませぬ」
「うむ。ならば部隊を別けるとしよう。歩兵五千、弓兵二千、騎兵千の八千を先遣部隊として本来のルートを通らせる。八千もいれば先遣部隊としては十分だろう」
普通なら、これだけ対策を取ればすくなくとも被害は押さえられただろう。しかし、残念ながら結界もない地上では天の目のごとく、監視している存在からは逃れられず、即座に報告される。
軍団を別けたゲオルギー・ベレジン大佐率いるアムシャヌス王国軍の先遣部隊は、予定通りの進軍ルートを何事もないかのように進んだ。こちらも一切の襲撃がなく、砦の前まで到着できた。所々ひび割れし、蔦が絡みついている。防壁の上にはミリニア王国の旗が掲げられており、ミリニア王国の鎧を着た兵士達が複数存在している。
「斥候の報告通り、城壁はボロボロだな」
「はっ。ろくに修理も手入れもされておらぬようです」
「うむ。これぐらいならば落とすことが容易かろう。まずは陣地を構築し、降伏勧告をだせ。攻めるのは翌朝からだ」
「御意」
彼等は砦から少し離れた場所に陣地を構築し、砦にたいして降伏の使者を派遣する。しかし、使者が防壁に近付くと等間隔で綺麗に整列された矢の雨で歓迎される。当然、使者の身体に矢が無数に突き刺さるはずだったが、彼等はぎりぎりで後ろに飛び退ったことで助かった。矢は境界線のように綺麗に地面に整列して突き刺さっていた。少しでも先に進んでいたら死んでいた。
「大佐!」
「おのれっ、愚か者共が……今すぐ滅ぼしてくれる!」
「お待ちください。流石に今から直ぐはまずいです。休息をいれた方がいいと思います」
「確かにそうだな。夜襲を警戒しながら休息を取るぞ」
「ありがとうございます」
当然、休息を取るにしても相手の砦がすぐ近くにあるため、ゲオルギー・ベレジン大佐は部隊の半分を警戒にあたらせ、交代で休憩する。四千人もいれば篝火をしっかりと焚いて、灯りを十分に確保すれば夜襲にも対応できるからだ。
そのまま次の日の早朝まで何事もなかったが、陣地では不気味な雰囲気が漂っている。そんな状態で攻めようかという時に防壁の上にクロードが現れる。
「我が名はクロード・ウルカレル! この砦での指揮官だ! アムシャヌス王国の者達よ、バスムル平原とここは我がミリニア王国の物である! 今すぐ祖国に帰投するか、降伏すれば今、この場だけは助けてやる。これが最後通告であると心得よ」
「ふざけるなっ! 降伏するのはそちらのほうだ! だいたい使者を攻撃するとは何事だっ! 無礼であろうっ!」
「事前の宣戦布告もなく、国境を超えて砦に軍勢を接近させるのは無礼ではないのかな?」
「ここは我等が領地だ! 貴様等に通達する必要はあるまい!」
「それは認められていない。我等の物であると主張しよう。どちらにせよ、先の戦いでバスムル平原の半分までを互いの国境とすることに調印したはずだ」
「あれはただの停戦協定であろう!」
「期日はまだ残っていたはずだ」
「黙れっ! だいたい我等は亜人共に洗脳された貴様等を解放する軍であり、唯一絶対の神の地上代行者である! 大人しくせよ!」
「洗脳などされていないし、されていたとしてもそんなものは願っていない。ましてや邪神を奉じる邪教徒共のいうことなど誰が聞くものか」
「貴様ぁあああああああああぁあぁぁぁぁぁっ!! 殺せぇええええええええええぇぇぇぇっ!!」
ゲオルギー・ベレジン大佐の命令で前衛部隊である歩兵が盾を構えながら突撃していく。彼等にとって唯一絶対の神を邪神と断じられるなど、決して許されないことであり、即座に首を跳ねられても文句のいえないことだと思っている。よって、全力での突撃が行われるのは必然だった。それが相手の狙い通りだと知っていても、どうすることもできない。
歩兵五千が突撃し、弓兵二千が防壁の上にいるミリニア王国の弓兵を仕留めるために射撃を開始する。相手が籠城している攻城戦では騎兵は役に立たない。そのため、遊撃や本陣の護衛として配置される。
クロード・ウルカレルはアムシャヌス王国軍の進軍をが確認すると、そのまま砦の中に戻りながら指示をだしていく。
「後退するぞ」
「はっ」
クロード・ウルカレル達は即座に全員で防壁と防壁の上にかかっている橋を渡り、奥にある第三防壁に戻っていく。残された外部防壁と名付けられた使い捨ての防壁の上にはミリニア王国軍の鎧を着て自動で矢を放つ無数の簡易ゴーレムだけが残される。それらは次第に矢が突き刺さって動かなくなり、崩壊していくこととなる。
レン
砦にある司令部。そこに設置されているテーブルの席について、相手の部隊を表す赤い駒を地図の上に置いていく。バスムル平原と外部防壁という名の第四防壁の前に敵軍の駒が沢山置いてある。後は森の中や草原を南に下った場所にも小さな駒を置いている。味方を表す青い駒は砦や前方と背後の森の中にある。前方はお母さんで、後方はワーウルフとミノタウロス達だ。
司令部で駒を微妙に動かしながら待っていると、戦争が始まって相手の国の人達が攻めてくる。現状、外部防壁に取り付こうとして盾を構えた歩兵の人達がゆっくりと詰め寄ってきている。そこにお父さんが用意したゴーレム達が、矢の雨を等間隔で綺麗に降らせている。矢は盾に突き刺さって防がれたりしているので、ダメージは少ししか入っていないみたいだ。
「リン、どんな感じなの?」
司令部にボクの護衛として入っている調がボクの隣に立って聞いてくる。本当にすごく近くで、彼女の綺麗な炎のような赤い深紅の長髪からいい匂いが漂ってきてドキドキしてくる。ただでさえ、暇を持て余したユエがボクの長い髪の毛を梳いて暇つぶしをしているからなおさらだ。
「えっと、戦いが始まったけれど、こっちは全然ダメージを与えられていないよ」
「作戦通りだけど、まずくない?」
「その辺はどうなの?」
一緒にいるお父さんに聞いてみる。お父さんは少し考える。
「クロード達は撤退しているんだよな?」
「そうだよ。今、こっちに向かってる」
「持つか?」
「わかんないよ……」
「それもそうだな。それに持ったとしてもこのままじゃ、罠だと思われて計画通りに進まないかもしれない。ひな」
「ふにゃ?」
お父さんが隅っこの方で椅子に座ってケーキを食べているゴシックドレスを着た金髪のひなに声をかける。ひなの周りには紫色の肩ぐらいまである短い髪の毛で、赤と青のオッドアイをしたフランツィスカこと、フランと銀色の髪の毛をツインテールにしてシスター服を着ているティナがいる。ティナが二人に紅茶を入れてお菓子を与えたりと世話をしている。
「白騎士と黒騎士、持ってきてたよな?」
「……ある、よ……?」
「なら増援として出してくれ。一体ずつでいい。連携させて暴れさせろ」
「ん、わかった」
ひながアイテムボックスから二メートルはある黒騎士と白騎士が出現する。黒(白)の全身が機械の鎧で作られたひな特製殺戮怨霊騎士ゴーレムが出現する。鎧には金色の紋章や金色の線が引かれており、黒色(白色)で金の紋章が描かれた盾を腕に装着している。
背中には黒い(白い)機械の翼まである。武装は黒騎士が両手剣二振り。白騎士との違い翼には追加されたブースターがある。白騎士は巨大化された盾を片手で持ち、盾の裏には魔法によって光を収束させて放つ高出力ビーム兵器が搭載されている。どちらも怨霊をエネルギーとして戦うのだけど、操っているのは精霊さん達のチームなので学習してしまう。言ってしまえば小さな低級精霊たちが戦闘経験を積んでレベルアップするための人形らしい。
「二体もいるの?」
「いや、いらないと思うが、防壁が落ちると同時に撤退させろ。それと白騎士は防壁の上から時間を空けて拡散攻撃。黒騎士は外から本隊の護衛である騎兵を相手させろ。撤退の合図は銅鑼をならす。できるか?」
『へいき~』
『倒してしまってもかまわんのだろう?』
「大丈夫だっていってるよ?」
「あくまでも苦戦しているように戦えよ。一割、倒しても撤退するように」
『無念』
精霊さん達はやるきいっぱいみたいだ。この二体は倒されても自爆装置がついているから問題ない。精霊さん達が脱出してからだし、そもそも実体を失った精霊さん達にはダメージが入らない。一旦世界に溶けるだけで、精霊樹に戻ってらすぐに魔力を回復して実体化してくるらしいから。つまり、精霊さん達にとって多人数で遊ぶゲームをしている感じだとひな達がいっていた。ただ、精霊さん達が無事でも依代である白騎士と黒騎士が無事というわけではないので、その精霊さん達はお休みして順番待ちをしないといけない。黒騎士も白騎士もひなにしか作れないし、無尽蔵に作れるほどコストも安くないのだ。
「あの~すいません」
「どうした?」
「戦場に出すのなら、非常に申し訳ないのですがウルカレル家の紋章をつけるか、旗を持ってほしいな~って」
「やだ。カッコ悪い」
「ですよね~」
ヴェロニカさんが残念そうにいってくる。
「クロードの私兵ってことにしたいんでしょうけど、黒騎士と白騎士は私達の商会、アースガルズの防衛戦力としても使うから、今回は貸し出すという形にしてもらわないと駄目よ」
「やっぱり無理ですよね~」
「あ、だったら黒騎士が旗を最初に敵陣にぶん投げてから突撃すればいいんじゃないかな?」
「なにそれカッコイイ!」
ひなも喜んでいるので、これでいいと思う。旗を用意してもらった、ボクがゲートを開いて黒騎士を草原に、白騎士を防壁の上に送る。
白騎士は防壁の上につくなり、盾を構えて裏に仕込まれている砲塔に光を収束させて近付いてきていた集団を薙ぎ払う。ビームの魔法兵器の前では普通の盾など役に立たない。一瞬で溶けて集団が滅びる。
防壁に近付いてきていた人達にはゴーレムたちが矢の雨を降らせる。普通なら効かないはずが、今度は精霊さん達が協力している。光の精霊さんがビームを放ち、風の精霊さんと火の精霊さんが矢の威力をあげる。水の精霊さんと土の精霊さんが地面を泥にかえて動きにくくする。
先程まで優勢だった敵陣は劣勢に陥って次々と打ち取られていく。本陣は魔法部隊が投入されたと思ったのか、相手側も歩兵の中にいる魔法使いやその護衛達を前線にだして対抗してくる。
収束するならまだしも、拡散しか使えない白騎士では魔法使い達が多重に展開した障壁の防御を抜けない。そのため、砦前が拮抗仕出した。そのタイミングで黒騎士が本陣に特攻をかけた。
手薄になった相手の本陣に旗を投げて作られていた柵を粉砕し、ホバーリングしながらそのまま陣地にものすごい速度で突入。両手の大剣で相手の鎧ごと一刀両断して暴れまわる。慌てていた本陣が立て直すころには弓兵部隊のところに突入して、そちらで無双している。一太刀で二人から三人を斬り殺したり、吹き飛ばしたりしている。
「ひな、このままじゃ勝っちゃいそうなんだけど……」
「一応、聞く限り魔法使い達のところに突入していないだけ手加減しているわよね」
「戦闘開始から三分は好きにさせろ。それから苦戦しながら戻ってこいって伝えてくれ」
「なんで三分なんですか?」
「魔法でブーストしているように思えるだろ?」
「なるほどです」
お父さんがユエの質問に答えてくれる。ユエは納得したようで、ボクの髪の毛をツインテールにしだした。
「ナニヤッテルノカナ?」
「リン君とお揃いです」
「そうしてみると、つくづく美少女ね。これでついてるなんて信じられないわ」
「ひなの自信作」
まあ、いいか。今は見ることに集中しよう。ひなから伝令を受け取ったのか、目に見えて速度を落として、ホバーリングではなく地上に足をついて戦いだした。そのせいか、相手は弱ったとみて押し込んできている。
「ただいま戻りました。それで、計画と違うようですが……」
司令部にクロードさんが戻ってきた。計画と違うので急いできたみたいだ。
「ああ、あんまり弱すぎても中に入ってきてくれないと困るしな。それに本隊はまだだ」
「相手の本隊はエリゼさんの手中に入っていますか?」
「ああ、入っている」
「でしたら、問題ありません。今いる連中は一旦滅ぼしましょう」
「わかった。撤退用の銅鑼を鳴らしてくれ」
兵士の人が銅鑼を鳴らすために走っていった。これからの予定を話し合っていたので、内容がわかってきてボク達は青ざめていく。それでも、ボクはお母さんに見るといったのだから、見ないといけない。
黒騎士と白騎士の二機が銅鑼を聞いてそれぞれの行動を開始する。黒騎士は反転して砦を目指して走っていく。その後を追撃として騎兵隊がでてくるが、ブースターを使ってホバーリングを開始した黒騎士には追いつけない。いや、追いつきそうで追いつけない。そんな状態で一定距離まで近付くとリステア城塞の防壁の方から白騎士の砲撃が飛んでくる。
突如、狙いを変えた砲撃に魔法使い達の対応は追いつかず、黒騎士を追っていた騎兵の部隊に直撃してその大半が消し飛んで焼失する。黒騎士はそのまま防壁の前の連中に突撃し、白騎士は砲塔を防壁に向けてみずから一部を破壊して群がっていた敵を一掃する。できた穴から黒騎士は戻り、白騎士と共に彼等を牽引してもらう。
相手側は防壁が壊れたことで突撃してくる。どうやら、今の間に将である弱っていると思われている白騎士と黒騎士を最低でも討ち取ろうと思ったみたい。突撃してきた彼等はそのまま二機の後ろ姿を追ってどんどん入り込んでいく。
外部防壁と第三防壁の間はかなり空いている。四方を囲まれた壁を登る手段はなく、前方に進むしかない。天上にかかっていた橋には届かない。下には藁や樽などが多数置かれているし、床も濡れている。
そんな状態の中、進んでいく彼等はついに追いついた。ただ、白騎士は先に進んで、黒騎士がアーチ状になっている通路に陣取っている。その手には血が滴り落ちる二振りの大剣があり、絶対に通さないといった感じだ。そもそも、黒騎士の後ろは第三防壁となっているので通しちゃ駄目な奴だ。
『ここから先は行き止まりだ~!』
『通りたければぼくたちのしかばねをこえていけー』
『しなないけどね!』
『えっと、一対二をたった数千回繰り返すだけだーです!』
精霊さん達は遊びモードに入っている。白騎士はといえば、壁を登って隔離された上の通路を進んで第四防壁の方に向かっている。大量に入ってきた兵士達は討ち取れば褒章は思いのままだとか言われたのか、突撃しては斬り殺されていく。矢は腕の盾で弾き飛ばされて効かず、剣や盾は大剣でもろとも切断というより圧壊される。そして、不気味に瞳や剣、鎧を精霊さん達が光らせて呪われた感じを演出し、さらには実際に闇精霊さんが怨霊まで集めている。
「リン君、どうですか? 敵は全部入りましたか?」
「全部はまですが、かなり入ったよ」
「そうですか……どうしましょうか?」
「押し込めないか?」
「白騎士が向かってるから、背後からやればいけると思うよ」
「そうか。それならいけるよな?」
「そうですね……やってしまいましょうか。お願いできますか?」
「大丈夫」
「ありがとうございます。ヴェロニカ、頼む」
「お任せください~」
ボクは風の精霊さんに頼んで、白騎士を操っている精霊さん達に伝えてもらう。彼等はすぐに移動してくれる。部屋に視線を戻せばヴェロニカさんが外に出ていった。
白騎士はそのまま防壁から外に向かって走り、防壁の上から加速して遠くに飛んでいく。かなり高い場所から加速して飛び降りただけでなく、風の精霊さんの力で相手側の後ろまで飛んでいった。そして、着地すると同時に反転して即座に砲撃を放つ。敵は背後からの強襲でほとんど防御も取れずに消し飛ばされる。
相手側は恐怖につられて急いで防壁の中へと逃げ込んでいく。しかし、それはさらなる地獄を生み出すことになる。彼等が中に入ると、第三防壁の上に立つ、魔女の姿をしたヴェロニカさんと護衛の騎士さん達の姿に気付いた。彼女はボク達が送った杖を構えて詠唱しているようで、足元に大きな魔法陣が作られている。
構築された魔法陣から大量の火の粉が噴き出し、ヴェロニカさんの頭上で集っていく。それだけではなく、リステア城塞の中にある大樹などにいる精霊さん達からも力が送られていっているみたいで、杖の中に居た火の精霊さんが出てきて力を集めて巨大な炎でできたドラゴンの姿になってしまった。
その状態をみたヴェロニカさんや騎士さん、そして敵までもが呆然としている中、杖の中にいた精霊さんが口を開けてブレスを敵が入り込んでいる外部防壁と第三防壁の間に作られた広場みたいな場所に打ち込まれる。この広場は油や燃えやすいものが多数おかれていて、一瞬で引火して――
ーー大爆発を起こした。
衝撃で外部防壁が崩壊し、黒騎士や白騎士達に瓦礫が襲い掛かって破壊された。第三防壁の方はしっかりと作ってあった上に精霊さん達が守ってくれたみたいで無事だった。ただ、爆発が終わった後も炎の柱が空高くまで聳え立っていて遠くからでも確認できる。
当然、こちらに迫ってきていた敵軍の本隊も確認したみたいで非常に慌てている。ボク達も同じだ。
「これ、計画通りにいくの?」
「む、無理じゃないかな……」
「ええ、無理でしょうね……」
「リン、本隊の位置はどこだ?」
「だいたいこれぐらい?」
リステア城塞から一〇〇キロぐらい離れた南西の場所に置く。
「これならまだなんとかなるかもしれん。とりあえず、リンとひなは精霊達に雨を降らせてもらってくれ。鎮火させないといけない。それと後はエリゼの裁量に任せるが、いいよな?」
「ええ、それでなんとかなるなら問題ありません」
「しかし、これは後で反省会だな。精霊との意思疎通がこれほど難しいとは……」
『『『『よかれとおもって~』』』』
よかれと思ってやってくれたみたいだけど、過剰すぎる威力になったのが原因だよね。それに精霊さん達もボクとひなの魔力を使って急成長させた精霊樹から供給される大量の魔力で、加減がわからなくなっているのかもしれない。現状、この地方だけ魔力が溢れているから精霊さん達が集まってきているのも理由の一つかもしれない。まあ、ショッキングな映像をみなくて助かったと思っておこう。残ってるのはクレーターだけだしね。
エリゼ
リステア城塞の方から爆発音に続いて炎の柱が立ち昇った。これは作戦の変更が必要みたいね。そのために私の契約精霊であるアルとユグドラシルの力を借りましょう。
『若い子達は元気ですね~』
「ちゃんと作戦通りにしてくれないと困るのだけれどね」
『叱りますか?』
「別にいいわよ。どちらにせよ、かわらないわ。アル」
『はい!』
「水の精霊を率いて通り雨を降らせ続けてちょうだい。ユグドラシルは土の精霊を率いて大地を泥に変えて沼地を形成。バスムル平原を湿地帯にするのよ」
『『お任せください』』
フードをしっかりと被ると辺り一帯に大量の雨が降り出してくる。植物操作ですぐに葉っぱの傘を作って濡れないようにしておく。
「風の精霊達は相手の位置を把握して、本隊から離れている連中を狩りだしなさい。火の精霊達は反省。雷の精霊達は補給部隊を壊滅させなさい。くれぐれも荷物に傷つけないように感電死よ。終わった後は風の精霊達と交代。風の精霊達は荷物を運んできなさい」
『『『『『『『『おお~~~~!』』』』』』』』
『『『『おー』』』』
さて、指揮はこれでいい。相手の補給物資は全て奪い、こちらの物とする。それで相手の力を削いでこちらの力が増すわ。
『女王陛下、終りましたわ』
「早いわね」
森の隙間から外をみると、土砂降りの雨が草原を水浸しにしている。地面も泥になっているようで……ミスを発見した。
「ユグドラシル」
『なんでしょうか?』
「動物達を急いで救助してちょうだい。それとバスムル平原、湿地帯っていったけれど、計画を変更して密林のジャングルにしてちょうだい」
『かしこまりました。防衛用に木でできたエントやドライアード達も配置しておきます』
「お願いね」
『お任せくださいませ』
目の前の草原の下から、太い太い根が突き出てきて大きな木に成長していく。こうしてみると自然の力というのは本当に恐ろしいわね。私も力を使いましょう。植物操作で凶悪な植物兵器を作り出しては放っていく。
作ったのは霧を発生させる植物だったり、擬態して人を食べる植物だったり、色々だ。動物達には悪いことをしたので、動物は襲わないようにして食料を豊富にしておく。管理はユグドラシルに任せれば森全てが敵になるので防衛面は問題ない。
面倒な国は隔離するに限る。こちらの体制が整うまではこれでいいでしょう。ああ、向こうの砦も破壊しておきましょう。そうしたら、色々と面白いことになるでしょうし。それにロミルダの家族も助けないといけないから、やることが多いわね。
『ああ、本当に素晴らしいです。力が溢れてでてきます』
「支配領域が拡大したからでしょうね。なんだったら、精霊樹も何本か植えておく?」
『いえ、それは駄目です。もしも襲撃されて奪われたら大変ですから。あくまでもここは本陣の防衛用と考えましょう』
「それもそうね。ちょうど実験場も欲しかったから、この作った森をそうしましょう。それなら迷惑はかからないでしょうし」
『何を作るので?』
「農場に入れる新しい植物や、遊び道具ね。これから交易メインになるのだから、しっかりと品物を作らないといけないのよ」
『ただいまです。本隊以外、殲滅が完了です』
「ご苦労様。じゃあ、次はロミルダが脱出してこちらにやってきしだい砦を押し流してしまいましょう」
『じゃあ、手伝ってきます!』
「はい、いってらっしゃい。気を付けて怪我しないようにね。ああ、ひなから渡された白騎士と黒騎士も持っていっていいわよ。身体がないと助けるのも大変でしょうしね」
『やったです』
『なんですか、それ。少し気になります』
ユグドラシルも気になるみたいだし、全部だして任せればいいわね。白騎士七体、黒騎士九体あるし、精霊達に渡してしまう。こうみると精霊が操る訳だから、精霊騎士って感じね。リン達は鉄道騎士団にするつもりなんでしょうけれど……まあ、どっちでもいいわね。
そんなことよりも、アムシャヌス王国をどうするかのほうが問題よ。私の可愛いリンの妻になるユエの手足を取ってくれたんだから、それ相応のお返しはしないといけないわ。そうね、精霊達の狩場にしましょう。精霊騎士達を送り込んで学習させたらいいわよね。あの子達はネットワークを通して知識と技術、経験を共有するのだし。止むことのない嵐というのも考えたけれど、この方法は民間人に被害がですぎるからこちらのほうがいいでしょう。精霊達には武装した奴等を襲うように言っておけばいしだけだし、それぐらいなら若いあの子達でもわかるでしょう。




