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リンとユエの出稼ぎ③

再開します。




 クロードさんに言われた通り、ヴェロニカさんを連れていくために廊下を歩いていく。ヴェロニカさんの居場所は廊下を歩いていた騎士さんに話を聞いたので、問題無くヴェロニカさんがいる部屋に到着できた。さっそく扉を叩く。


「リンですけれど、ヴェロニカさんいますか?」

「はいはい、居ますよ~。開いていますからどうぞ~」

「お邪魔します」


 部屋の中に入るとすぐに目に入るのは本棚に収まる沢山の本とソファーにテーブル。窓際には執務用の机があり、そこではヴェロニカさんが机に座って何かを書いていた。何を書いているのかはわからないけれど、邪魔をしたら悪いので大人しく座って待ってることにしようかな。


「要件はなんですか?」

「ちょっと込み入ったことだから、お仕事が終わるまで待ってるよ」

「いえ、このまま教えてもらったほうがいいですよ~。優先順位を決めないといけませんからね」

「そういうことなら……えっと、クロードさんからヴェロニカさんを連れていくようにって……」

「えっと、詳しいことを教えてくれますか~?」

「うん。えっとね……」


 ことの経緯を説明していくと、ヴェロニカさんがため息をついた。


「リン君、そういうことは優先順位が高いからすぐに伝えてくださいね~?」

「そうなの? 危険はないんだけど」

「確かに危険はありませんが、逃げられたり、証拠を消されてりしますからね。まあ、リン君はまだ知らないことが多いでしょうから無理ありませんが、気を付けてください~」

「うん。それで急いだ方がいいんだよね」

「そうですね。ですが、少しだけ待ってくださいね。クロード様に引き継ぎの確認をしてから、準備してすぐに向かいますから。リン君は移動の準備をして門のところで待っていてください」

「わかった。それじゃあまた後で」

「はい」


 ヴェロニカさんと別れてボクは言われた通りに門のところで待つことにする。その間に皮を縫い合わせて簡単なポーチを作る。これらもアイテムボックスとして使えるようにしておく。黒騎士や白騎士に持たせて倒したモンスターの素材を回収させるのにいいと思う。いや、それだけじゃなくて予備の武器なども収納しておいて、相手によって変えるというのもいいかもしれない。それだけ相手は対策しないといけないわけだしね。


「お待たせしました~」

「ヴェロニカさん」

「はい、ヴェロニカさんですよ~。準備はできていますか~?」

「大丈夫です」


 やってきたヴェロニカさんの背後には沢山の騎士さん達がいた。彼等も連れていくみたいで、転移魔法を使った移動は無理みたいだ。いや、なんとかなるかも。


「では、いきましょう~」

「はい。こちらに乗ってください」


 ライちゃんに客車を接続してそちらに乗ってもらう。


「わかりました。エスコートをお願いしますね~。それと一部はリン君達が使ってる駅とかいうのに置いていきますので」

「うん。それじゃあ、そちらを経由するね」

「お願いします」


 ライちゃんに乗り込んでもらったら、しっかりと座ってシートベルトモドキで身体を固定してもらう。それから窓も全部閉めて出発する。二時間ほど走ってから転移魔法を使って距離を移動し、ターミナルへと転移した。

 無事に


「ヴェロニカさん、到着しましたよ」

「無茶苦茶早いですね~」

「快適な移動ですよ。騎士さん達も大丈夫でしたか?」

「「「はい」」」


 皆、問題なかったようなので扉を開いていく。すると冷気が車内に入り込んでいっきに寒くなる。そんな中、身体を両手で抱きながら外に出ると待っていたユエがボクに抱き着いてくる。


「リン君、お帰りなさい」

「ただいま。でも、すぐにでるけどね」

「わかりました。調ちゃんを呼ぶのでちょっと待っていてくださいね」

「必要ないわよ」


 いつの間にか横に来ていた調が片手を振るうと、一瞬で温度が温かくなった。雪が溶けない程度だけれど充分に温かい。


「はいはい、再会の挨拶は置いておいて今はこちらのことをよろしくお願いいたしますね~」

「そうね。それで騎士の人達はこちらで預かればいいの?」

「はい。班分けしておきましたから、こちらの人達を教師としてあげてください」


 ヴェロニカさんは列車から降りてからすぐに騎士の人達を別けていたようだ。こちらに残る騎士の人達は年配の人や怪我などの後遺症で戦える状態の人じゃないみたい。


「講師として問題ないのよね?」

「実戦には出せませんが、戦い方を教えたりすることは問題ありませんよ~」

「わかったわ。リンもそれでいいわね?」

「うん。クロードさんやヴェロニカさんを信じるから」


 それに模擬戦の相手は黒騎士や白騎士でいいしね。教えてもらうのは剣の握り方などの基礎とかだしね。


「ありがとうございます。では次の目的地に移動しましょうか~」

「うん。調、後はお願い」

「ユエは……って、聞くまでもないわね」

「はい。私はリン君についていきますから」

「了解。それじゃあ騎士の人達はこちらで預かるわ」


 一部の騎士さん達を調が連れて駅に入っていく。ボク達はユエを加えて残りの騎士さん達とフェルトの街へとライちゃんで進んでいく。





 運転席に座りながら雪を掻き別けて設置されているレールの上を進んでいく。隣にはヴェロニカさんが座っていて、ボクの膝の上にはユエが嬉しそうに座っている。寒いのでユエを抱きしめていると温かいし、ユエの綺麗な黒い髪の毛から良い匂いが漂ってくる。


「しかし、凄い速さで進んでいきますね~。それにもっと寒いはずなんですけどね~」

「確かに暖かいですね。リン君が温かいからかもしれませんが……」

「ボクはユエが温かいけどね」

「いいですね~私もくっつきたいですよ~」

「なら、来たらいいですよ。いいですよね、リン君」

「うん」

「あらあら、いいですね~」


 ヴェロニカさんも寄って来てくれたので、さらに温かくなった。でも、良い匂いと体温を感じるようになって、恥ずかしくなる。


「おや、照れてますね~」

「リン君、何時でも私達を堪能してもらってもいいですよ?」

「いえ、ヴェロニカお姉さんは困るんですけどね~」

「あうっ」

「ちょっと揶揄い過ぎましたね~。まあ、現実的な話をしましょうか。フェルトの街に私達が到達すると同時に全ての門を閉鎖します」

「それって兵力が足りないんじゃないですか?」

「ええ、足りませんね。ですが、問題ありません。私の魔法で兵を増やして封鎖しますから」


 確かフェルトの街は四つの門があるし、その全てを封鎖するんだったら数がいるはずなんだけど、魔法を使うなら多分問題ないよね。


「経済的な損失は大丈夫なんですか?」

「経済的な損失が何かはわかりませんが、たぶん大丈夫ですよ~」

「えっと、確か……商人の移動とかで税金が落ちたりするんじゃないかって」

「なるほど~。でも、大丈夫ですよ。冬に移動なんてしませんよ。それに冬があけたら戦争ですからね」

「戦争、やっぱり確実なんですか?」

「はい。確実ですよ~」


 お母さん達がいるから大丈夫だと思うけれど、やっぱりこっちでも予定通り戦力を用意しておいた方がいいよね。予定ではミノタウロスとワーウルフの人達もだけど。


「まあ、今はフェルトの街です。封鎖した後は捕らえた人達から聞き出した商人達を捕まえます。商人達から証拠を得たら代官も押さえます」

「得られなかったら?」

「商人達のことを見過ごしていた監督責任で追放ぐらいですね。証拠がでてきたら他にも色々としますが」

「そもそもどうやってこの短期間で聞き出したんだろ……」

「リン君、それを聞くのはやめておいたほうが……」

「それはひみつですよ~」


 唇に指をあててそんなことを言ってくるヴェロニカさん。拷問とかそんな感じなのかな?


「とりあえずそんな感じで動きますので、リン君達は好きにしてくださっていいですよ」

「どうしますか?」

「こちらとしては基本的に粛清するだけですから、全然大丈夫ですよ」

「粛清するの?」

「内容によっては一族郎党皆殺しですよ~」

「え!?」

「何を驚いているんですか~?」


 日本と異世界では本当に色々と違うみたい。それに一族郎党ってやりすぎだよね。恐怖政治な部分があるのかな。


「この時代なら普通のことなんですよね……」

「怖いね。ボク達、大丈夫だよね?」

「リン君達は大丈夫だと思いますよ~。正直言ってこちらの戦力では蹂躙されるだけでしょうからね~。良き隣人として付き合っていくのが一番です~」

「そうなんだ。それでもやっぱり不安だよ」

「まあ、流石に一族郎党はやりすぎですよね」

「うん。子供には関係ないと思う」

「その辺は偉い人が決めていることですからね」

「偉い人?」


 ボク達でいう政治家とかかな?


「貴族ですか?」

「そうですね。領地持ちの貴族の人が基本的に国法に定められている範囲を越えないように法律を作っています。といっても、調べられることは滅多にないので守ってないところは多いですけどね~」

「そうなの? それって駄目なんじゃ……」

「駄目ですが、物理的に不可能ですからね」

「あ、距離の問題ですね」

「そうなんですよ。普通は砦ここまで数十日はかかりますよ~? 冬ならその数倍どころか大概死んじゃいますし」


 そっか。移動が馬車だとどうしても時間がかかるよね。現代だと自動車や電車、飛行機があるけれどそんなのないんだし。こっちでもボクは転移魔法があるけれど普通はそれがないし。ましてやモンスターがいるから街から街への移動でも大変なことになっているしね。


「それってボク達が列車を作れば解決するよね」

「確かにそうなんですよね~。リン君達のお蔭でウルカレル領はかなり発展することになるでしょうね~」

「リン君のお蔭で助けられる人が増えます」

「ボクのお蔭じゃないよ。ユエや調、お母さん達皆のお蔭だよ。ボク一人だと何もできないし」

「そんなことないですよ」


 そんな話をしていると、フェルトの街に到着した。すぐにヴェロニカさんが降りて、騎士の人達も降りていく。


「それでどうするの?」

「こうしますよ~」


 ヴェロニカさんが真紅の杖を持ちながら、地面を付くと大きな魔法陣が街を覆うようにして展開される。そこから防壁が巨大な炎の壁に変化して街を覆ってしまった。


「あれ? 熱くない?」

「リン君、触れますよ?」

「そうですよ。私が味方と認識する人達は触れられますし、中に入ることもできます。できないのは外に出ることだけですよ~。さて、皆さんは各分隊ごとに動いてください。一班から四班は門の守護をお願いします。そして残りの班は事前の取り決め通りに容疑者を確保してください」

「「「「はっ!」」」」


 騎士の人達はヴェロニカさんが指示を出すと、騎士の人達が指示に従って炎の壁になんの躊躇もなく突入していく。すごく勇気がいる光景だと思うのにヴェロニカさんは不思議がっていない。ユエのほうをみると彼女は不安そうにしていて、ほっとした。やっぱり怖いよね。


「ほら、二人共行きますよ~」

「あっ、待ってくだいっ」

「わわっ」


 ヴェロニカさんが杖をアイテムボックスに仕舞って、ボク達の手を掴んで炎の壁へと突入していく。ボクは眼を瞑って炎の中に入るけれど、ユエが言っていた通りに熱くないし、ヴェロニカさんが言っていた通りに焼かれることもない。

 でも、炎の壁を通る時にはなんだか身体の中から少し魔力が抜けた気がした。ヴェロニカさんはボクの方をみながら、ちょっと驚いていた。


「はい、無事に通り抜けられました~」

「あの、さっきのは?」

「リン君、また魔力が増えていませんか?」

「ちょっと、増えたかな?」


 まあ、極大魔力のレベルが上がったから、普通の人よりは増えているね。


「リン君、極大魔力のレベルアップはちょっとってレベルじゃないと思いますよ……?」

「魔法に携わる者にとっては本当に羨ましい限りです~」

「ボクにとってはこの子達のご飯でしかないんだけどね」


 ふわふわした可愛らしい精霊の子達がボクの身体に抱き着いて身体を擦りつけてくる。動物型の子なら尻尾をぶんぶんと振っているし、もふもふしている。


「って、そうじゃなくてなんだか中に入ったら魔力が抜けた気がするんだけど……」

「それは私のせいですね。この魔法陣は中の人達から保有する魔力量に応じて微かな割合を吸い取り、魔法陣の維持をします。余分な魔力は威力の強化に回されますので~」


 後ろを振り向けば凄まじい業火の壁ができていた。今までは防壁と同じ大きさだったのに、今では数倍の大きさもある。近付けばあっという間に燃え尽きてしまいそうな感じもする。


「リン君の魔力を勝手に使ったんですか?」

「結界系の魔法はだいたいそうですよ。抵抗しようと思えばできますが、完全に抵抗するのはお勧めはしません」

「なんでなの?」

「簡単です。その場合は術者に探知されてしまいますから~結界が張られている大きな街に入る時は一般人程度の魔力をあげるといいですよ~そうじゃないとリン君の魔力だと鬱陶しい人達がダース単位できますから」


 つまり、結界系の魔法には逆らわずに平均的なものを与えるといいんだね。鬱陶しい人っていうのはボクの魔力を狙ってくる人達のことだろうし、気を付けないといけないや。


「えっと、参考までにどうなるんですか?」

「そうですね……リン君だと領主から強制的な呼び出しと、召し抱えられたり……宮廷魔導師にされたり……魔力タンクにされたりと色々とありますね~」

「うわぁ……」

「絶対に駄目ですね」


 ユエの言う通り、そんなのは絶対に嫌だ。本で読んだことがあるけれど、宮廷とかドロドロしてとっても大変だろうし。ましてや魔力タンクなんて嫌だ。だから、極大魔力を切ってしまえばいいよね。


「えっと、これくらい?」

「それでも充分に多いですよ~」

「ヴェロニカさん、リン君のは今は何人分くらいですか?」

「1000倍は軽くありますね。でも、ハイエルフの血を引いているので、おかしくはないんですが……」

「頑張ってみる」

「それがいいですよ~っと、こちらも動きますね」


 話しているといつの間にか大きな商店についていた。そこはボクとユエが嵌めたところだ。


「お二人は外で待っていてくださいね~すぐに終わりますから~」

「リン君、どうしますか?」

「そうだね。じゃあ、ボクはユエと一緒に街を見て回るよ」

「デートですね~」

「リン君とデート……」

「デート……うん、そうだね。じゃあ、どこに行こうか?」


 食事をしにいこうとしても、現状のこの街じゃあんまり期待できないよね。食糧を大量に配ったけれど、まだ不安だろうから出し渋りをするかもだし。


「私はリン君と一緒に歩くだけでもいいです」

「じゃあ、外で遊んでようか!」

「お外ですか?」

「そうそう。雪がいっぱいだしね」

「それもいいですね。雪で滑り台とか、かまくらとか作りますか?」

「う~ん、かまくらは作ってみたいね。後雪うさぎ!」

「じゃあ、そうしましょう」

「では決まりましたね~終われば連絡しますから、準備しておいてくださいね~」

「了解~」


 ボクとユエが街の外で数時間、ライちゃん達も入れて遊んでいるとしばらくしてヴェロニカさんが騎士の人達と戻ってきた。


「終わったの?」

「はい。後は残した騎士が後処理をしてくれます。次の街へ行くのですよね~?」

「うん。食料を配らないと駄目だからね」

「でしたら、丁度いいので膿を出し切らせてもらいましょう」

「私とリン君が囮ですね」

「お願いしますね~」


 報酬はしっかりともらうし、問題ない。もとからやる気満々だったしね。ウルカレル男爵領はボク達の家があるんだし、ユエ達が狙われるのは嫌だから悪者は捕まえさせてもらおう。







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