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リンとユエの出稼ぎ②





 さてさて、さーて。楽しい商売の時間だよ。時刻は明け方。フェルナの街の外で僕達は大量の木箱を積み重ねて開門の時を待っている。周りにはライ君の引く大きな列車と多数の篝火が焚かれていて周りで子供や大人達が暖を取っている。少し離れた所では炊き出しが行われており、皆が思い思いに食事を行っている。


「リン君、リン君」

「どうしたの?」

「計算したら8社で金貨8000枚です。一社辺り約1000個ですね」

「おー稼げたね」

「でも、ちゃんと回収できますか?」

「証文があるから、強制回収だね。契約違反は呪いもあるし払ってもらうよ。そうじゃないと調に怒られちゃう」

「確かにそうですね。っと、ご飯を今のうちに食べておきましょう」

「そうだね」


 ユエが用意してくれた食事を食べていく。ユエには恥ずかしいけれどあ~んをして食べさせてあげたり、逆にしてもらったりした。夫婦なら普通の事だってお母さんや調達も言ってたし、間違いじゃないはずだ。そんな感じでいたら門の扉が開いて目を血ばらせている見覚えある多数の人がやって来た。その後ろには屈強な武装した男の人達と沢山の馬車。


「これはどういう事だこれは!!」

「そうだそうだ!」

「他の商会には売らないという事ではなかったのか!」


 こちらにやって来た商会主さんが僕に詰め寄って言いがかりをつけてくる。そう、言い掛かりだよ。だって、僕が約束したのは別の街に“今回”は売らないってだけだしね。


「僕はここで買ってくれるなら別の街に行く必要は無いと言っただけですよ。それに彼方達も取引には納得して契約書を交わしました。もしかして、契約違反ですか?」

「そ、そういう訳ではない!」

「おい、小僧。このままだとどうなるかわかってんだろうな?」

「こちらは商売をしているだけですので、お金を受け取って品物を渡して終わりです。さあ、さっさと取引を始めましょう。時間も無いですからね」

「そうか」


 厳つい大男さんが何か言って来たけど、何も間違っている事は言ってないし、取引を開始する。大量の木箱を商人達に確認してもらって証文と交換していく。中にはいちゃもんをつけて来る人も居るけれどそれも問題ないようにしている。


「ユエ」

「任せてください」


 監視していたユエが時間停止で移動して転けるようように誘導したりする人を、箱を運ぶ人ごとどかしたり、異物を入れようとしている人の腕を捕まえて逆に損害賠償を請求したりした。箱一つ分の値段を請求するので金貨一枚だ。拒否したら法に照らして腕を切り落とすか奴隷に落ちるか選択して貰う。悪人に容赦する理由は一切必要ないしね。



 一時間後、取引が終えたので奴隷の人達に列車に乗ってもらって雪の中、ゆっくりと街から離れていく。


「釣れるかな?」

「釣れると思いますよ。調ちゃんも一緒になって考えた作戦ですよね?」

「そうだよ。僕一人じゃどうしても無理だからね」

「だと思いました。なら、大丈夫だと思います」


 列車の天井に作ってある監視台に座り、膝の上にユエを乗せて抱きしめながら周りを見回していく。寒いからって最初にユエが乗ってきた時には驚いたけれど、暖かいしユエからいい匂いがするしでぽかぽかする。恥ずかしいのが難点でけど。


『ひとがいるよ~』

『もり、かくれてる~』

「いっぱい?」

『いっぱい~』

『後ろからも~』

「ありがとう」


 精霊さんにお礼を言って魔力をたっぷりとあげる。


『『『おいちぃ~♪』』』

「ユエ、お仕事の時間だよ」

「むぅ、もっとリン君と抱きついていたかったですが、仕方ありません。素早く狩ってきしょう」

「あははは、そうだね」


 僕とユエはライちゃんを止めて外に出る。僕は槍を持ち、ユエはデスサイズを持っている。


「ユエ、いいよ」

「はい」


 僕は首元を隠しているマフラーをずらして首筋を露出させる。その時、長い銀色の髪の毛がサラサラと靡いて寒さで少し震えてしまう。


「リン君、いただきます」

「どうぞ」

「はむ」

「っ」


 首筋に少し痛みが走る。それからざらざらした舌で舐められる感触がし、直ぐに吸われていく。次第に寒かったはずが更に寒くなってくる。でも、直ぐに身体が熱くなって気持ちよくなっていく。


「はぁ、はぁ……リン君、リン君……ちゅっ、ちゅるるるっ」

「ユエ?」

「はっ、ごめんなさいです。つい、美味しくて……」

「まあ、いいけどそろそろ時間がね?」

「はいです」


 吸血されるのも気持ちいいけど、これってかなり危険なんだよね。増血ポーションとかないかな?


「リン君、大丈夫ですか?」

「平気だよ」


 少しフラリとするけれど直ぐに元に戻っていく。ステータスを確認する。



 名前:リン

 種族:エルフ/ドワーフ

 肉体:肉体強化Lv.5、肉体再生Lv.2、状態異常耐性Lv.3、頑強Lv.4、剣術Lv.6、魔力回復(中)、槍術Lv.5、盾術Lv.6、受け流しLv.4、毒耐性Lv.4

 魔法:精霊魔法Lv.5、時空魔法Lv.4

 技術:騎乗Lv.4、技能付与Lv.2、建築Lv.4、木工Lv.4

 特殊:エクストラテイミングLv.2、極大魔力Lv.6、千里眼Lv.2、経験値10万倍(PT)、成長限界突破(PT)、精神障壁Lv.1、強運Lv.3、パーティー枠拡大Lv.1



 状態異常耐性がレベル2から3に上がっていた。貧血って状態異常なんだね。確かにそうです平常時とは違うけど、どうかと思う。身体が危険なん状態なのにそれがわからないとかあり得る訳だしね。


「うん、大丈夫」


 両手をにぎにぎしてから槍を持って軽く振るう。なんの問題もない。


「リン君、来ました」

「そうだね」


 前方から多数の男達が出てくる。訂正、少数ながら女性も居るや。その姿は見覚えがある人や無い人が居る。でも、なんていうかゴロツキとか、普通の職業の人じゃない感じの人達だ。


「金目の物と食糧を置いていきな」

「あと女もだ」

「それって僕以外全部じゃん」

「お嬢ちゃん、男なのか?」

「そうだけど?」

「見えねえ……」

「五月蝿いよ!!」


 失礼しちゃうな。僕はちゃんと男の子なんだからね。


「これはこれで高く売れそうだ」

「なら、全部寄越しな!」

「だが、断る!」


 言ってみたい言葉っていうランキングの上位にあった言葉をとりあえず言ってみる。


「そうです。リン君を穢らわしい目で見ないでください」

「それ、男の僕が言う台詞だよね? ね?」

「間違ってないです」

「目をそらさないで言ってよ!」

「何をくっちゃべってるんだい! この状況が見えないのかい!」

「鴨が葱を背負ってきた状況ですね」

「何を言っているんだい?」

「簡単に言うと、僕達を相手に足止めするのにたったこの程度の人数でいいのかな? って親切に教えてあげてるの」

「何言ってやがる。こっちは37人だぞ」

「まあ、そっちがいいならいいや」


 槍を持ちながら飛び上がり、雪の上に着地してスケートのように滑っていく。


「なっ!?」


 やった事は簡単。精霊さんにお願いして凍らせて貰っただけ。ついでに彼等の足もだ。ユエも同じで滑るようにして彼等を斬ったりしている。僕も突いたり、払ったりして倒していく。


「出来る限り殺さない方がいいんですよね?」

「うん、クロードさんやヴェロニカさんに売れるから」

「了解しました」


 直ぐに彼等を倒したらその内の何人かを武装させたままで、口と足を縛って背中を向けて列車を守るように後ろ向けでたたせる。僕達は隠れて少し待つ。すると後ろから列車が通った道を馬に乗った多数の男達がやって来る。


「助けに来たぞ!」


 そう言って近づいて着た彼等は男を斬ってニヤニヤしながら扉を開ける。それから直ぐに中にある金貨が入った袋とかを運び出そうとする。この列車は貨物車で乗っているのは皆前だ。


「ユエ、盗賊の仲間が居るよ」

「倒しましょう」

「なっ!?」


 僕達は天井に腰掛けながら彼等を手をつないで笑いながら見ている。


「何を言っているんだ、俺達は助けに……」

「真っ先に金貨を盗み出そうとしているのに?」

「それに彼方達の仲間は吐きましたよ」

「それにしても酷いね。仲間を斬るなんて」

「ちっ、ここまでか。野郎共、ヤッちまえ!!」

「だってさ、ユエ」

「そうですね。ではこちらもやっちゃいましょう。蹴散らさしなさい、黒騎士」

「やっちゃえ、白騎士」


 僕達の言葉に貨物車や各車両に設置されている防衛システムが起動し、2メートルはある黒騎士と白騎士が多数出て来る。彼等はホバーリングで雪の上を瞬く間に接近して彼等を殴り飛ばしていく。


「なっ、なんだこいつら!!」

「こんなの聞いてねえぞっ!!」

「逃げろ、逃げろっ!!」

「残念ですが、回り込まれてしまいました」


 横に居たはずのユエがいつの間にか街の方に居て、逃げようとした男の頭を機械仕掛けの鉤爪で掴み、馬から転げ落として切り裂く。馬はそのまま逃げていく。


「そして、チェックメイトだね♪」


 彼等の周りを黒騎士と白騎士、ユエが包囲した。どんなにあがこうが人外の速さで動き、人を軽く吹き飛ばす力のある鉄の塊からは逃れられない。ましてや魔法の準備までされて囲まれているのだから。


「投降するなら命は助けてあげる」

「投降しなければアンデットにしてあげましょう」

「「「「ひっ、ひぃぃぃぃぃっ!!」」」」


 ユエが牙を見せながらそう言うと効果覿面だった。彼等は大人しく馬を降りて武器を捨てた。なので縛り上げて貨物車に入れておく。それから移動しながらタイミングを見計らって転移する。まずは作成している駅の拠点で購入した奴隷の人達を降ろして調に任せる。そのまままた転移して、今度はレスティア砦で捕まえた人達を兵士の人達に渡して事情を説明。すると直ぐにクロードさんの所に連れて行かれた。


「それで、これか」

「彼等を奴隷にして最前線などでお使いください」

「私がその手紙を見た方が早くないか?」

「あははは」


 大人しくカンニングペーパーを差し出す。僕には難しい事はあんまりわかんないよ。政治的な事とか、特にね。


「ふむ。了解した。それでは私の代わりにヴェロニカをつける。悪者を捕まえてきなさい」

「はい!」


 逮捕権と捜査権を与えると書かれた書類を貰った。


「それとこちらから騎士を何人か教師として送る。こちらが今、君達が開発している土地の使用許諾契約書だ。それとギュンター、金庫から白金貨を10枚持ってきてくれ」

「畏まりました」

「お金?」

「援助金だ。代わりに君達が育成した者達の半数を我が男爵寮で数年雇い入れる。我が領の発展に繫がるなら安い物だ」

「ありがとうございます。任せてください!」

「あまりやりすぎない事を期待……いや、いいか。盛大にやりなさい」

「いいんですか?」

「うむ。どうせこのままだとこの国は持たない。いざという時の為にな」


 ニヤリと笑うクロードさんはお母さんと同じ感じがした。


「いざという時が起これば嬉しいんですか?」

「私は嫌な結婚をしなくてよく済むからな」

「それはそうですね」


 ユエ達の事を思うと確かに嫌な結婚なんてしたくない。幸い、僕はユエ達と結婚するのは……


「おや、顔が真っ赤だな」

「なっ、なんれもにゃいれす」

「そうかそうか。まあ、頑張るんだ」

「はい……」


 ユエ達に好かれるようにこれから頼れる男になれるようにいっぱい頑張らないと!! 妹の将来も心配だし、僕が頑張って養ってあげないとね。そうじゃないと、マッドサイエンティストになって大変な事になりそうだし、うん。お父さんはお母さんがいるし大丈夫。多分。




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