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契約





 ユエと調と共に盗賊達の無力化を行った。捕まえた人達の殆どは僕達を見て怯えている。それ以外の人は睨み付けてきている。


「ボスと同じような奴か」

「ボス?」

「そうだ。少し前にふらりと現れて俺達のボスになったお方だ。どんなに頑張ってもお前らじゃボスに勝てねえよ」


 少し前とい事は僕達と同じプレイヤーの人かな? でも、こっちは三人だし、勝てると思うんだけど。


「さっさと俺達を解放して逃げた方がいいぜ。捕まえればてめえらは犯されるだろうからな」

「どんな奴よ?」

「誰が答えるかよ」

「そう……」

「リン君、どうしますか?」

「とりあえず、首輪を嵌めてから村の人達を護衛してもらって村に戻ってもらおう。そこで炊き出しをして貰う」

「わかりました」

「おい聞いてんのか!?」


 男の人はスルーして隷属の首輪を嵌めていく。調が五月蝿い人は黙らしてくれた。


「あの、本拠地には妻や娘が居て……」

「連れてこないといけないね」

「それだけじゃなくて、ボスに娘が捕まっているんです」

「俺の所もだ。毎日悲鳴が聞こえてきて……くそっ!」


 碌でもない奴みたいだね。これはどうにかしないといけない。僕達の同類が迷惑を掛けているんだから。


「任せてください。必ず助け出します」

「ありがとうございます!」

「ありがとう!」

「もう、安請け合いして……」

「リン君のいい所じゃないですか」

「いや、出来ない事だったら質が悪いから」

「いくら僕でも出来る事と出来ない事はわかるよ。その為に情報を教えて貰わないとね。出来る限り詳しく教えてください」

「わかりました」


 投降した人や捕まえた人達から色々と聞いていく。それで分かった事が無茶苦茶移動速度が速い事。斧で攻撃しても擦り傷しかつかないくらい頑丈な事。そしてとんでもない怪力で大きな斧を使う事だった。情報を教えて貰った僕達は彼らから離れて相談する。


「速さは聞いた限り私達と同じ時間魔法かそれ相当のスキルですね」

「怪力ってのもスキルでしょうね。攻撃力に関しては私達は問題ないから防御力は大丈夫ね」

「掴めば関係ありません」

「そうだね。問題は速度か」

「そうよ。私が要らない子になるわ」

「でも、火力でいえば調ちゃんが一番強いんですよね」


 文字通りの意味で火力的に生ける聖なる炎である調がトップクラスなんだよね。


「確かに問答無用で周りを焦土にしていいならいけるわよ? でも、それは駄目でしょ」

「「駄目です」」


 救うべき人達まで消し飛ばしちゃうしね。


「というか、アツシ? リン、悪いけれど姿を見て報告してくれる? 知ってる奴かも」

「えっ、あの人ですか?」

「可能性があるわ。だからお願い」

「わかった」


 千里眼で確認すると、結界も張られていないので直ぐに見れた。そいつは嫌がる裸の女の人に男のアレを入れていた。周りには何人もの女の人や女の子が居て、皆泣いている。


「リン君、大丈夫ですか?」

「顔色が悪いわよ?」

「僕は大丈夫」


 僕は彼の特徴を知らせていく。それと女の子が見るべき姿じゃないのでそちらは告げない。


「ああ、やっぱりアイツの取り巻きか」

「って事は女の人達は酷い目に合わされていますね」

「よし、殺そう。何が起こってるかはリンの顔を見たら分かるし」

「調?」

「リン、この世には生きてても害しか生まない奴と更生しない奴が居るのよ。コイツはその両方」

「そうですね。私もお尻を撫でられたり舐められたりした事もあります」

「更生しないの?」

「ええ。少年院に入れられてもしないわ」

「それにリン君。ご家族や本人の事を思うと仕方ないと思います。リン君は私や調ちゃん。それにひなたちゃん達が同じ目にあったらどう思いますか?」


 皆がこの女の人達と同じ目にあう……? 想像したら嫌な気分が更に増えて、憎しみが湧いてくる。


「そうだね……でも、僕達が決めていいのかな?」

「それは彼らに聞いてみましょう。今から聞いてきます」


 ユエが助けてくれと懇願した人達に聞きにいく。僕は調と話をする。


「ん~リンはアイツを殺しきれる?」

「防御力次第かな。嫌、殺すだけなら心臓や脳に刀を転移させればいいだけだからいける」

「そう。出来れば私の手で始末をつけたいし……うん。リン、実は私には婚約者が居るの」

「え!? それじゃあ、僕と結婚するのは不味いんじゃ……」

「ううん、全然そんな事はないからね。あの腐れ外道と結婚するくらいなら死んだほうがマシだから」


 調の婚約者という言葉に驚いたけれど、その次の言葉にもっと驚いた。なんだか憎しみで人が殺せたらって感じみたい。でも、そんな事よりも――


「死んじゃダメだよ!!」

「わかってるわよ。それに父様達家族と会社の従業員とその家族の為に死ねないから。本当に嫌だけれど、受け入れるしかないと思ってたの。例えそれが――」


 調から伝えられた奴等の行動はとてもじゃないけれど許されるものじゃない。いじめを行って自殺をさせたり、全く関係の無い人を犯罪のスケープゴートにしたり、女の子を誘拐して監禁したり本当に好き放題している。親が警察の上層部の人とも知り合いらしく、証拠の偽造とかもやっているらしい。調はあいつらの被害者の救済にも頑張っていたらしい。


「調……」

「でも、ゲームを始めたお陰でその必要もなくなったわ。そこで提案なんだけれど、私の全てをリンに捧げてリンのモノになるから……碌でもない害虫共を殺して、この世界に来ている従業員とその家族を助けるのを協力してくれないかな? 奴隷の身でこんな事を言うのは間違っているとは思うし、碌でもない事を頼んでいるのもわかってる。でも、あいつらは私だけじゃなくユエも狙ってるから」

「別にいいよ」

「え? 本当に?」

「うん。こんな奴等をのさばらせておくのは駄目だしね。それにユエや調をあんな目に合わせようとするなら――僕が必ず殺す」

「いいの? こっちでは違うかも知れないけれど、元の世界では確実に犯罪になるわよ」

「うん、構わない。世界をよくする為には誰かが罪を背負わないといけないなら、僕は進んで罪を背負う。特にそれが僕の大切な人達の為なら尚更ね」


 どうせ無くなるはずだった命だから、どうせなら家族や皆の為に使おうと思う。


「リン……」

「それにダークヒーローってのも憧れるし?」

「なにそれ……まったくもう」


 ひなたがやっていたゲームで出てきた黒威の断罪者っていうダークヒーローなんだけどね。あの人、格好良いよね。それに綺麗だし、今の僕が目指すにはいいかも知れない。


「じゃあ、殺ろうか」

「あ、待って」

「?」

「保険の事もあるし、契約しましょう」

「契約?」

「そうよ。私はスキルの聖なる生ける炎で、精霊みたいなものになっているから」


 つまり調が言っている事は精霊による専属契約という事かな。人が精霊の世話をする変わりに精霊が人に力を貸す。でも、人は何体とも契約できるけれど、精霊は契約者に合わせて自身を変化させる為に一人しか契約できない。それに自身を変化させる為に簡単に契約解除は出来ない。


「いいの?」

「いいわよ。これもある意味で嫁入りだからね。ほら、行くわよ」

「うん」


 調と抱き合いながらキスをする。すると調から熱い何かが入り込んでくる。


「熱っ!?」


 身体中が熱くなって肌から煙が出て来る。手や腕をはじめとして顔以外の場所に幾何学的な紋章が焼印されているようで無茶苦茶痛い。肉体再生も無視して急激に焼かれていく。


「痛い痛い痛い痛いっ、痛いぃいっ!!」

「頑張ってよ」

「何してるんですか!?」

「契約よ。でも、キャパシティーが超えそう……ユエ、ちょっと触媒になってよ」

「わかりました! リン君を助けられるならなんでもします!」

「即答ね。わかったわ。ちょっと……かなりユエにはきついかも知れないけれど頑張ってね」

「はい!」


 調がユエにも同じ事をしだした。正確には僕を契約主にして触媒としてユエを使う事によって足りない部分を補う。真祖の血族であるユエは触媒としては最高級みたいでいいみたいで、直ぐに楽になった。


「契約完了ね。大丈夫?」

「……へ、平気……」

「……お、同じく……」


 なんとか肉体再生で楽になった。身体中に出来た紋章は次第に薄くなって消えてしまった。いや、消えるというより身体の中に入っていった感じだね。


「それじゃあ、二人共、私の力を試してみてよ」

「わかったよ」

「やってみます」


 僕が調の力を意識して引き出して見ると光り輝く白い炎が出る。ユエのは逆に禍々しい黒い炎だった。


「わ、私の炎が乗っ取られた!」

「掌握しました」


 ユエの身体からは今もなお煙が出ている。闇に属するユエが光に属する調の力を取り込んだのだから仕方ないかも知れないけれど。


「ユエ、身体は大丈夫?」

「正直言って大丈夫じゃないです。凄く痛いので……」

「わかった。僕の血を飲んで」

「リン君……大丈夫なんですか?」

「僕は大丈夫だから、ね?」

「はい」


 ユエに血を飲んでもらって回復して貰う。特にユエは義手とかの部分が大変だろうしね。


「それじゃあ、さっさと殺ろうか」

「大丈夫なの? 明日でも別に……」

「被害が増えるから駄目だよ。それに出来る限り早く助けてあげたい」

「リン君……」

「わかった。それじゃあ……アレでいいわね」

「え?」

「見てなさい」


 調の体が炎に包まれて形が変わっていく。そこから現れたのは白く輝く長い刀身と長い真紅の柄で出来た槍のような剣のようなモノ。感じる力は凄まじく強い。


「綺麗ですね」

「そうだけど……なにこれ?」

『レーヴァテインをイメージしてみたのよ。まあ、姿なんていくらでも替えれるのだけれど』

「そうなんだ」


 調の声が武器から聞こえてくる。僕は柄を持ってみる。すると力が溢れ出てくる。


『さあ、さっさと殺っちゃいましょう。これなら一撃でしょう』

「そうだね」

「何をするんですか?」

「『ちょっと悪役を倒すだけ』」


 千里眼で座標を調べて目標の内部へと穴を開けて調を突き刺す。微かな抵抗も無く差し込まれた調は内部から目標を焼き尽くしていく。目標の断末魔が聞こえ直ぐに聞こえなくなった。千里眼で確認すると、周りに一切の被害がなく、対象だけが焼かれていた。


「さて、救助に行こうか」

「そうですね」

『先に行くわ』


 武器としての調が炎の状態で穴を通ってあちらで元の姿である人型になった。


「リンは見るんじゃないわ」

「そうですね。リン君はゲートを開いたらタオルとかを準備してください」

「わかったよ」


 ゲートを開いてから急いでタオルやお湯を準備していく。それから村人であるおばあちゃん達に事情を話して手伝ってお貰う。ゲートを秘匿すべきなんだろうけれど、今回は仕方ない。あちらに移動して貰って彼女達のケアをして貰う。その間に僕は他の人達を村まで護衛していく。村に到着したらアーマード・ライノスで皆の所に向かうとしよう。







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