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食料配給


 ユエとお風呂に入った後、着替えて助けた人達との所へと向かう。彼らはティナに治療して貰ってから食堂車で食事を取っているそうなのでそちらに来たのだけれど、すごい光景になっていた。彼らの席には沢山の食器が置かれていて、運ばれてくるそばから食べている。相当お腹が空いていたみたいだね。


「ご主人様、勝手に食事を与えてしまって申し訳ございません」

「いいよ、気にしないで。それよりも話を聞くのは落ち着いてからの方がいいかな?」

「そうですね。ご主人様やユエさんもお食事を取った後でよろしいかと思います」

「それじゃあ、お願い。ユエもそれでいいよね?」

「もちろんです」

「では直ぐにご用意致しますね」

「「お願いします」」


 直ぐにティナがパンプキンスープとオニオンサラダ、焼いたパンに野菜と揚げたオーク豚のロースを挟んだカツサンドを持ってきてくれる。


「美味しそうですね」

「そうだね。冷めないうちに食べよう。頂きます」

「頂きます」


 二人でサクサクのカツサンドを食べていく。ソースはお母さんが作った奴だけれど、日本で食べていたものと同じくらい美味しい。ただ、様々なハーブとかを調合して作ってるらしいから、見た目は違うんだけどね。


「むぅ、ティナさんの料理の腕がどんどん上がっていますね」

「そうだね。ユエもだけど、皆が僕のスキルの恩恵を受けているからね」

「確かに作ったら作っただけ腕が上がって行きますからね」


 美味しいご飯だからか、気が付けば全部食べていた。すると食後の紅茶をティナが入れてくれる。ユエもすぐに食べ終えて紅茶をふーふーしながら飲んでいく。


「あちらも落ち着いたようだね」

「そうですね。私は片付けを手伝いますからリン君はあちらをお願いします」

「うん。任せて」


 ユエはティナと一緒に食器類の片付けに入る。僕は三人の男性の前に座る。すると直ぐに僕と彼らの前に紅茶が運ばれてくる。


「それでは話をしましょうか」

「ああ。先ずは礼を言わせて貰おう。助かった」

「助かりました」

「食事、美味かったっす」

「お口にあってよかったです」


 お礼を言って貰った後、三人との名前を教えて貰う。


「俺はグレゴリー。こっちがベルンとアデムだ。俺達は三人で行動しているアドリアという冒険者パーティーだ」


 彼らが冒険者と呼ばれる人達なんだね。僕も男の子だから、ロマンを追い求めるのは凄いと思う。少し憧れるよ。


「僕はミッドガルド商会の商人をしているリンといいます」

「商人なのか……」

「あの戦闘力で?」

「凄いっす」


 商人には間違いないしね。今は商売をしている人を全部商人って呼んでる時代だしね。


「主に取り扱っているのは武具類と食料品、それと物資の輸送です」

「食料品を取り扱っているのか?」

「はい。領主様からの依頼で物資を配るように依頼も受けていますし、販売する分も持ってきています」

「それは助かる!」

「これで家族が救われるっす」


 凄い喜びようだね。それも家族の為だと思えば納得できる事だし、別にいいんだけど……問題は足りるかなんだよね。


「すまん。それでここはなんだ? 数日前までは無かったはずだが……」

「これは私達が作った輸送拠点よ。エルフとドワーフの技術が使われているから詳しくは企業秘密ね」


 僕が答えようとすると背後から現れた調が答えながら僕の横に座ってくる。正直、僕に商売の事なんて録にわからないから調が頼りなんだよね。


「そちらは?」

「彼女は調。僕の……家族です」

「商売に関してリンに助言をするように上から言われているので介入させて貰うわね」


 お母さんから頼まれているはずだし、ありがたいよね。僕は無理してやるよりも出来る人がやればいいと思うんだよね。


「そうか。それで村への配給があるとの事だが……」

「ええ、そちらに関しては直ぐに持っていけるわ。ただし、一つの村に関しての量は決まっているから、それ以上となると私達から買ってもらうしかないわ」


 本当は困っているなら無償で助けてあげたいんだけれど、それだと駄目なんだよね。お母さんや調から言われたけれど、代償を支払わずに恩恵だけを得ていると人は堕落して碌な事にならないらしい。何時も誰かが助けてくれるとは限らないしね。


「お金がない場合はどうすればいいですか?」

「奴隷での支払いになるわ」

「っ」

「奴隷と言っても衣食住を保障するし、給金を支払うから借金と変わらないよ。子供と希望する人はこちらで教育を施すから」

「本当ですか?」

「本当よ。こちらとしては商会を立ち上げたばかりで人手が足りないのよ。この補給拠点を効率良く使うには宿をする人や店する人など沢山の人手が要るわ。こちらとしては食料を先に渡して逃げられると困るから支払いが終わるまでは奴隷になってもらうわ。食料を後で支払うと餓死者が増えるでしょ?」


 食料の後払いは今が大事な時なのに困るよね。日雇いにすればまだましなのかも知れないけれど、そうなると今度はこちらの事務手続きが増えるんだよね。計算が出来る人は僕と調、ユエとティナだろうけれど他にも色々とやる事があるからね。


「確かにそうだな。契約で明記されるなら問題無いか」

「そうですね。こちらとしても餓死者が減るなら助かります……それに」

「ああ、そうだな」

「盗賊っすね」

「やっぱりいるんですか?」

「ああ、居る」

「アイツ等の中にも食うに困った奴らが村や家族を助ける為に盗賊になるのが多いんでなんとも言えねえっすが」


 家族を助ける為には手段を選ばないというのは褒められた事じゃないけれど、そうも言ってられない現実があるんだよね。


「盗賊は盗賊よ。厳しいけれど罪は償わせないといけないわ」

「殺すのは駄目だよ、調」

「もちろん、殺さないわよ。捕らえて労働力にするわ」

「でも、それって……」

「出来るならそうしてくれ。思う所がある奴は大勢居るだろうがな」

「わかりました。それじゃあ、早速移動しましょうか。食料は早く届けた方がいいでしょう」

「その方が助かりますね」

「ああ。俺達も食料を取りに来ていたからな」


 彼らを連れて彼らの村に向かって列車で移動する。もちろん、全員で向かうのではなく、ティナとフラン、ひなたを残して僕とユエ、調で向かう。僕一人でも良かったんだけれど、調は交渉の為で、ユエは護衛として来る事を聞かなかった。出来れば残って欲しかったけれど駅の周りは一掃したし、黒騎士や白騎士がいるから大丈夫だと思うし許可した。まあ、千里眼でこまめに確認をしておけば大丈夫だからね。







 アドリアの三人と僕とユエ、調を乗せたアーマード・ライノクスは雪を退かして道を作りながら村へと進んでいく。邪魔な木々などは退いて貰って道を広く作っておくのも忘れない。そんな事をしていると直ぐに村の入り口の近くへと到着する。


「あ~このまま行けばやっぱり警戒されるよね」

「そりゃそうよ。貴方達、先に行って連絡をしてきてくれないかしら?」

「ああ、わかっているさ」

「了解っす」


 アーマード・ライノクスは村の近くで止めてアドリアの三人に村へと連絡に行ってもらう。いきなり高さ3メートルもある巨大なモンスターが現れたら誰でも警戒するからね。実際、三人もかなり驚いていたからね。


「荷物はアイテムボックスに仕舞って僕達も歩いていこう」

「この子はどうするんですか?」

「ここで待機しておいて貰おうと思う」

「そうね。村には入れないでしょうし、怖がられるから外に置いておく方がいいわよ。アイテムボックスを見られるのは不味いかも知れないけれど、アイテムボックスも売りにするつもりだし大丈夫よね?」

「うん。アイテムボックスは結構簡単に作れるしね。魔力は沢山要るけれどある程度なら量産は出来るから冒険者の人達用として売り出すのはありかな。貸出の方がいいのかもしれないけれど」


 空間操作で使用者から一定距離離れた場合やもしも死亡した場合はこちらに転移するように魔法を作れればいいな~。


「貸出の方が安全そうね。敵側に利用されたらたまったものじゃないし」

「輸送力は勝敗を左右するらしいしね」


 補給を制するものが戦を制するとか聞いた事があるし。実際に食べられないのは辛いからね。


「そうですよ。っと、見えてきましたね


 村に向かって歩いていると村を覆う柵が見えてくる。モンスターや盗賊の対策の為かしっかりと作られているし、見張りも居る。


「こいつらがさっき言っていた奴等か?」

「そうだ。すまんが早く食料を出してくれ」

「それはいいけれど、広さが足りないよ?」 

「そうですね。広場はありませんか?」

「それならこっちだ」


 村の入り口から少し歩くと村の中心部にある広場へと到着する。そこには既に何人もの若い男性と女性が集まっている。ユエと調は警戒しているようなので僕も彼らの周りを確かめてみる。広場の周りにある家に隠れている人はいるけれど、武器は持っていないから問題ないと思うし放置でいいかな。


「ここに頼む」

「わかった。それじゃあ、領主様から支給品を出すね」


 アイテムボックスから沢山の箱を取り出して積み上げていく。調が箱を開けて中身をリストと確認していく。ユエは周りを警戒してくれている。


「確認したわ。そちらも確認をして」

「わかった」


 グレゴリーがリストを受け取って確認していく。


「それじゃあ、受け取り欄にサインをお願い。貴方で大丈夫なのよね?」

「ああ、問題無い。ここだな。サインしたぞ。これでいいな?」

「ええ、それはもう好きにしていいわよね?」

「いいよ。配っちゃって」

「みんな、並ぶっす!」


 アデムの声に従って村の人達が配給品を受け取っていく。


「それじゃあ、村長の所に案内する」

「お願い」


 ユエと調を連れて一際大きな家へと移動していく。大きな家の前で一人の少年が待っていた。少年はアデムの姿を見ると彼に抱きついていく。


「兄ちゃん大変だ!」

「どうした?」

「爺ちゃん達が盗賊退治に行っちまった!」

「なんだと!?」


 盗賊って言っていた人達だよね。それを退治しにいったって事は……勝てる見込みがあるのかな?


「なんでだ……」

「少しでも食べる量を減らすって……年老いた人達を連れて……」

「口減らしもかねた玉砕覚悟ね。食料がないのだから仕方の無い選択かも知れないけれど……」

「私は嫌ですよ……」


 僕も嫌だ。だからこの辺一帯を千里眼で探索する。すると少年の言った老人達が盗賊達と森に囲まれた丘の下と上で向かい合っている姿が見えた。


「行くよ」

「リン君……わかりました」

「仕方ないわね」


 僕はユエと調の手を掴んで短距離転移を行う。転移先はおじいちゃん達と盗賊達の真ん中。


「な、なんだっ!?」

「何者だ!?」


 どちらも急に現れた僕達に驚いている。


「それでどうするのよ?」

「制圧しますか?」


 ユエの案は物騒なのでそっちは最終手段だね。まずやる事は話し合いだ。


「僕は領主様の命で食料を運んできた商人です。なのでご安心ください。そして、盗賊の皆さん。大人しく投降して僕達に雇われるならお腹が一杯になるまで食料を差し上げますよ」


 大量の食料品をアイテムボックスから出して彼らに見せてあげる。見せた量は彼らにとって数ヶ月分の食料だ。


「た、食べ物だ……」

「これだけあれば家族は救われるっ!」


 盗賊の人達は食料に目を奪われている。いや、おじいちゃん達も同じだ。飢えた人達の前に食料品を差し出しているのだから当然かも知れない。


「どうするのよ?」

「投降をお薦めしますよ。リン君に手を出そうとしたら……殺します」

「お、俺は投降するぞ!」

「馬鹿野郎! 何考えてやがる! 奪っちまえばいいんだよ!」

「そうだそうだ! 女も食料も奪っちまえ! 相手は所詮餓鬼だ!」

「仕方ありませんね」


 動き出そうとするユエの前に手を出して止める。


「リン君?」

「何か考えがあるの?」

「うん」


 僕は殺したワイバーンの死体とブラッドタイガーのアンデットを複数取り出してあげる。盗賊達はワイバーンの死体に驚く。その直ぐ後に起き上がってくるアンデット化したブラッドタイガーを見て身体を震わせる。


「見ての通り、戦力差は決定的だけどどうしますか? これでも投降しないなら仕方ありません。この子達の餌となってもらいます」

「生きるか死ぬか、さっさと選びなさい」

「リン君は優しいですから投降すれば貴方達本人と家族や大切な人の命の安全は保証してくれますよ」


 僕の言葉を理解した二人が即座に畳み掛けてくれる。ブラッドタイガーが3体もあれば彼らを全滅できると思う。それなのにこちらが用意したのは全部で12体。そうなると彼らが取る選択肢は決まっている。


「と、投降する!」

「お、俺もだ!」


 武器を捨てるか――


「に、逃げろっ!!」

「化け物だっ!」


 逃走を行う――


 この二つの選択肢しかない。大穴で仕掛けてくるかも知れないけれど殆どそんな事はない。


「逃げるのは殺っても問題ないわよね」

「そうですね」

「そうだね。僕が殺る」

「リン君の手を汚すまでも……」

「皆が手を汚すくらいなら僕がやるよ。それが家長としての役割だから」

「「リン(君)……」」


 体の速度を早め、周りの時間を遅くして逃げる彼らに追いついて女も食料も奪えと言った男を槍で貫く。直ぐに次の人に移動して生かしておくのと殺すのを選別する。選別の基準は独断と偏見によるところだよ。具体的には調とユエ、僕に変な目を向けた嫌な感じがする人達。


「無力化するくらいなら簡単よね」

「そうですね。リン君だけに任せる訳には行きません。私はリン君の剣で盾なのですから」

「はいはい。貴方達、さっさと捕らえちゃって」


 ユエ達も動いちゃった。ユエは僕と同じように時間を操作しての高速行動を行い、調はブラッドタイガー達を放ち、投降した人達の武装解除と拘束を行っていく。それから数分で決着がついた。






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