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食料支援の旅・出発






 さて、ヴェロニカさんからの依頼を行う準備を行った。食料を箱に詰めてそれを車両にある保管庫に仕舞うだけではなく、必要であろう薬と毛布や薪も用意した。もちろん、駅用の資材も沢山用意してある。


「えっと、補給物資は問題なしっと」

「リン、そっちはどう?」

「うん。問題ないよ」


 アンデットになっているドリルホーン・ライノクスに繋いだ車両の中で調とユエに手伝って貰いながら頑張って準備している。支援は早急に行わなくてはいけないし、距離が遠いので僕がゲートの魔法を使って瞬時に運んでいく予定だ。それでもゲートの魔法などを隠す為に一定の距離は移動しないといけない。なので、各村を回るついでに良さそうな場所を下見して駅を作成する予定。後は精霊さん達に線路を作って貰う。お母さんからも駅に出来る用に調整した魔力を生み出す木をお願いして用意してもらった。


「宿泊車両も問題なく作ってあるし、暖房も絨毯も敷き詰めた。こっちも問題ないわ」

「ストーブや服は?」

「防寒具も貰ったし、ストーブも問題ないわ。それとユエの義手や義足も耐寒仕様にしてあるから問題ないわよね?」

「ええ、ありませんよ」


 ユエが奥の車両から答えてくれる。そちらの方は食堂用の車両、食堂車でキッチンなどがある。今回、使う車両は寝台車両と食堂車、貨物車の三つ。出たらしばらくは帰って来ないから寝泊りしたり、食事をしたりできるようにする必要がある。

 さて、ユエの義手と義足だけれど、お母さんに頼んで火の精霊さんと水の精霊さんに宿って貰った。二人の精霊さんがユエが怪我をしないように随時調整してくれるらしい。これで雪山とかもへっちゃららしいから良かったよ。

 服に関してはどんどん寒くなってきているのでお母さんが作ってくれた。素材は品種改良した食物繊維で色々と付与されていて耐寒、耐熱、耐刃性能がしっかりとしている。僕が作った防具はお母さんに却下された。魔力を食いすぎるし、人の多いところで誤作動でも起こしたら大変だという理由だ。まあ、これは仕方ないのでお母さんに任せる事になった。頼りすぎているから早く独り立ちしたいんだけどね。

 服装はロシアの人が着ているような暖かいもので、助かっている。調だけは完全に無視してゴスロリっていうらしいミニスカートのワンピースを着ている。まあ、彼女は体温調節とかも自由自在だしね。今回、移動に関してだけど調と火の精霊さん達に雪を溶かして貰ったりもする。この時期は大変便利だね。


「何?」

「どうかよろしくお願いします」

「変なの。まあ、任せて。それよりも準備よ、準備」

「うん。黒騎士と白騎士の搬入もしないとね」

「護衛にしては過剰戦力だと思うんだけどね……」

「作った駅の防衛も行わないといけないからね。その為に態々魔力を生み出す木で駅を作るんだから」

「わかってるわよ」


 黒騎士と白騎士の搬入も終わり、内部でやる事も無くなった。外にいくと雪を排除する為にライノクスの前には咥えて押す事で除雪ができる器具が取り付けられている。


「ひなた、フラン。そっちは?」

「……こっちは問題ないよ」

「バッチリだ、です」

「じゃあ、後はティナだけか」


 ティナは教会と教師の引き継ぎなどを行っているから遅れているのだと思う。お城で勉強を子供達や大人達に教えてくれていたからね。


「出発はもうすぐだけど、大丈夫かな~」

「大丈夫ですよ~」

「わっ!?」


 心配しているといきなり後ろから抱きつかれてびっくりする。頭を横にするとすぐ近くにヴェロニカさんの綺麗な顔があって、いい匂いがして背中に柔らかい感触が――


「はしたないですよ」

「ひゃいっ!?」

「は~い」

「? ご主人様までどうしたのですか?」

「なんでもないです」

「リン君はうぶですね~うりうり~」

「や、やめてって」


 慌てて逃げるとニヤニヤと笑っているヴェロニカさん。弄ばれたみたい。


「悪ふざけが過ぎますよ」

「ごふぇんなひゃい(ごめんなさい)」


 ヴェロニカさんは直ぐにティナに頬っぺたを引っ張られて涙目になっていた。


「ティナ、もういいよ」

「ご主人様がそういうなら仕方ありませんね。それと遅れてしまって申し訳ございません」

「いいよ、気にしないで」


 ティナはシスター服のままだけど、改造された暖かそうなのを着ている。ヴェロニカさんは厚手のローブを着ていて露出は格段に減っている。急激に寒くなってきているから納得の格好だよね。


「準備の方はどうですか~?」

「ちゃんと出来ているよ。後は実際に出発するくらいだね。ティナは大丈夫?」

「こちらも大丈夫です。ちゃんと引き継ぎもしてきましたから」

「わかった」

「では、皆さんも準備が出来ているようですので、お願いしますね。道中、魔物も出るでしょうし、気をつけてくださいね。それと……騎士団が出れないのをいいことに、盗賊が村を襲ったり、冬を越える為に占拠したりしている場合もあります。くれぐれも油断しないようにお願いしますね」


 雪の中を強行軍で進んでくる人達も居るんだね。僕達も一応そうだけど。占拠に関しては納得してしまう。そうじゃないと死んじゃうしね。納得できても許せるとは思えないけど。


「気を付ける。皆を守るのは僕の役目だから」

「はい。それがいいですよ~。それとこちらが売買契約書と奴隷契約書、奴隷取引許可証になります。この契約書に署名をしてもらえれば契約魔法が発動しますからね。契約書各種と隷属の首輪に関してはこちらに300程用意してありますから、契約魔法が発動している間に嵌めちゃってください」


 ヴェロニカさんは僕があげたアイテムボックスから隷属の首輪や契約書などが入った箱を取り出して渡してくれる。契約書などと一緒に受け取って全部、自分のアイテムボックスに仕舞っておく。


「これで私の用事はなくなりました。どうかお願いします。領民を飢えから救ってあげてください」

「任せて。僕達がしっかりと届けるよ」

「お任せ下さい。怪我人や病人も治療して回りますから」

「ありがとうございます」

「よし、じゃあ早速行こうか」

「はい」


 ひなたやフランにも声を掛けて列車に乗ってもらう。六人、皆が乗っている事を確認してヴェロニカさんに見送って貰いながら出発する。


「いってらっしゃい~」

「「「いってきます」」」


 地下から出ると子供達や大人の人達、ミノタウロスの人達やワーウルフの人達、シルバーウルフ達も見送りに来てくれていた。そんな彼らに見送られながら出発する。最後にここにはいないお母さんとお父さんの声を精霊さんが届けてくれた。“いってらっしゃい”“気をつけてな”と。







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