列車開発と牧場開発3
ミノタウロス達を仲間に入れた次の日、僕はフランに呼ばれて城にある彼女の部屋に来た。すると目の前には膝を付いているワーウルフの人達。
「何事なの?」
「説明しますね」
「ヒルデさん」
フランの姉であるヒルデさんが教えてくれるようだ。
「私達は助けて頂いたリン様にご恩を返す為、お仕えすることにしました。どうか、許可を頂きたく……」
「えっと……」
「昨日聞いた計画、人手は必須だぞ、です」
「まあ、確かに」
フランは土魔法使いとしてかなり優秀だから列車計画も教えてある。制作を手伝ってもらおうと思ったからだ。
「元からミノタウロスさん達には打診するつもりだったから僕は助かるけれど、砦の方はいいの?」
「もちろん、砦の件が片付いてからですが、それについてもご相談があります」
「何?」
「ミノタウロスのミルトス殿と相談したのですが、彼らも戦いに参加したいそうです」
彼らからしたら自分達の有用性を見せ付ける必要があると思っているのかな。幸い、僕達と戦っていないから戦力はあるはずだ。安全だと彼らが信じきれていなくても戦士の半分、15人くらいなら出せるだろうし。
「わかりました。そちらは考えてみます。それで仕えるっていうのは恩返しだけですか? それならフランが……」
「それなのですが、私達は夫や婚約者などを殺されています。それもアヌシャヌスの策謀によりです」
「……うん……」
「私達は奴等に復讐したいというのが偽らざる本音です。ですが、復讐心に駆られて行動すると必ず他の者達に迷惑を掛けることになります。そこで受けた恩は必ず返すという我らの掟で理性を繋ぎ止めることにしました」
つまり、彼女達にとって自分達が特攻して死ぬことは問題無いと思っているけれど、何も無ければ作戦を無視して特攻しそうなので掟を利用して暴走しないように枷を嵌めようとしているんだね。確かに優秀な敵より無能な味方の方が被害を出すってお母さんやお父さんが愚痴ってたし、彼女達の考えは僕でも分かる。でも、これは彼女達の都合で僕には関係無い。
だけど、僕にも人手が入るというメリットがある。彼女達のような身体能力が高い人達が。ここには仕事がいっぱいある。ミノタウロスさん達にはバイソンとオークの管理と管理しやすくするためにバイソン達の天敵であるサーベルタイガー達を任せるつもりだ。ワーウルフさん達にはシルバーウルフやガルムなど狼系列を任せたらいいか。コカトリスに関しては全部テイムしているので僕の言うことを聞いてくれるからこちらは問題無い。
「分かりました。お受けしますが、順番を逆にしましょう。今から僕に仕えてください」
「構わないのですか?」
「枷が聞かずに暴走するかも知れねえ、です」
「いいよ。僕も一緒に行って止めるから」
「「っ」」
今の彼女達は僕がテイムした状態だから、僕の命令には抗えない。だから、暴走を禁止するために僕も砦に行けばいい。怖いけれど、こんな卑劣な手段を使ったアムシャヌスは皆の安全のためにも許せない。
「危険だぞ、です」
「分かってる。でも、連中にしっかりと教えてやらないといけないからね。僕達に手を出したらどうなるかって事を……」
「分かりました。では、私達は今からリン様にお仕えします。皆もいいですね?」
「「「はい」」」
ワーウルフさん達が頷いてくれた。
「では、我らはこの時より主様にお仕え致します。なんなりとご命令を」
「じゃあ、シルバーウルフ達の事を任せるね。戦闘訓練と生まれてくる子供達のサポートをお願い。戦場でも彼らと協力すればいいから」
「よろしいのですか? シルバーウルフ達は強力な戦力になります。それを手柄も上げていない我らに預けるのは……」
「構わないよ。それとフランはガルムを欲しがってたっけ?」
「欲しいに決まってる、です。でも……」
「ならあげる。ヒルデさんもリーダーだからガルムをあげるね」
「あ、あのっ!?」
「でも、パートナーってことを忘れないでね」
「本当にいいのですか?」
「一度パートナーにしたら、ぜってぇ返さねー、です。いいのか、です?」
「いいよ。ここに居る皆の役に立つなら何の問題もないよ」
ワーウルフさん達は獣人だけあって動物と意思疎通が出来るらしいから、彼らに任せる方がいい。動物の飼育で何が難しいって、会話が出来ずに相手の考えていることが分からないことだと思う。動物園は本当に大変だと思う。
「必ずやご期待に応えてみせます」
「任せろ、です」
「よろしくね。皆にはこれから作られる騎士団の中核になってもらうからそのつもりでね」
「「「はっ!」」」
鉄道騎士団は機動力も必要だろう。列車に乗り込んで一緒に移動してもらう。そして、モンスターや盗賊などが襲撃してきた緊急時には戦ってもらう予定だ。時には列車と並走しなければいけないこともあるだろうから、シルバーウルフ達と意思疎通が出来る彼女達は何よりも代え難い人材になると思う。
「じゃあ、失った体力を取り戻す訓練をしておいてね。フランは僕と一緒に列車造りだ」
「了解です」
「やる、です」
フランを連れて工房に移動する。工房には既に調やユエが居て、思い出せる限りの構造を書いている。
「お待たせ。それじゃあ、作っていこうか」
「ええ。まずは模型からよね」
「うん。とりあえず客車から作るよ。現状はライノクスに引かせる感じでいいからね」
「分かりました」
「フランはしばらくやることねー、です?」
「そうだね。少し待っていて」
「わかったぞ、です」
それから精霊さんにお願いして鉄で客車の模型を作っていく。
「どうせなら二階建てがいい」
「そうですね。ライちゃん達は大きいですからそれに見合う方がいいです」
「そうかな? 重くなって速度が出ない気もするけど」
「大きさと重量は力。大きければ小型のモンスターは寄ってこないらしい。そうよね?」
「あってる、です」
「そっか。なら寝台列車か」
「数も作れないですから、そっちの方がいいかと」
「じゃあ、それで決定」
ただ、いきなり二階建てを作るのは難しい。なので一階部分を制作して同じ物を重ねる方策を取る。数時間掛けて完成した客車を見ると――
「どう見ても馬車を良くしただけだね」
大きくて内部で過ごし易いようにしただけの感じがする。
「アブソーバーを組み込んだサスペンションも入れたし、確かに」
「でも、列車は線路の上を走行する車両のことですから……」
「レールを引いて走る車両ならいい。車両は車輪のついた乗り物の総称だから、これも問題ない」
「なるほど。確かにそうだね。なら、メインを考えて。僕はこの客車を設計図にするから」
「ええ。ユエ、やりましょう」
「そうですね」
二人に任せて作った模型を分解して設計図に書いていく。すぐに書き終わったのでフランと一緒に作っていく。
「よし、フラン」
「やっと出番だ、です」
「お待たせ。それじゃあ……」
「無理、です! んな細かいの作れねー、です」
「何事もチャレンジ!」
「仕方ねえ、です」
同一規格とか言ったら速攻で無理って言われたけど、仕方ないよね。精密部品だから。螺子とか色々。とりあえず作ってみる。大量の精霊さんに協力をしてもらって三日で高さ四メートルの客車がクレーンに吊るされた状態とはいえ完成した。補助装置も何も付いていないので本当に引っ張られるだけの車両だ。この辺は要改造だね。とりあえず、これを解体して型を取って同一規格の物を量産する事にした。型を取るのは精霊さん達が正確にやってくれるので非常に楽だ。
「さて、問題の機関車だけど……」
「簡単な構造しか思い付かなかった」
「ごめんなさい」
「いや、いいよ。機関車なんて詳しくないだろうし。それで?」
「私達が考えたのは自転車と同じシステムよ」
「なるほど」
自転車はペダルを漕いでチェーンを動かし、後輪に動力を伝えて動かしている。それを利用してライノクスにベルトの上を走らせてベルトの左右に設置させたギアを動かす。それから車輪に向かって力を加えさせる。確か、列車の車輪は斜めから動力を伝わらせて引き上げたり押したりしているんだっけ。まあ、この辺も実験かな。
「ブレーキを掛けるのは時間が掛かりそうだね」
「ライちゃん達に止まってもらって、車輪にブレーキを掛けないといけない」
「あの、風の精霊さんに逆風をお願いすればいいんじゃないですか?」
「それもそうだね。って、待てよ。ベルトよりアヒルさんボートとかのでいいんじゃ」
「そうね」
「ベルトより、そっちの方が良さそうですね」
「そっちなら構造は知ってる。父の会社で作った事があるから。売れなかったから技術だけ海外に売りつけたけど」
「なら大丈夫か。いや、問題はライノクスの手足が短い事だな」
「それなら、義手とかでいいかと」
ユエが自分の手を見せながら行ってくる。お陰でなんとかできそうだ。実際に一番難しい動力がドリルホーン・ライノクスということで外側が外観と動力を車輪に伝えるだけの構造なので簡単にできてしまった。精霊さん達がチート過ぎる。




