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リーブル村2





 ヴェロニカ





 私は今、エリゼさんの所で美味しい朝食を食べています。パンプキンスープに柔らかいパン。そして高級品であるジャムが使い放題という贅沢までさせてもらっています。このジャムも貴族御用達の店で売っているジャムよりもまろやかで味も濃さによって分けられており、まさに至れり尽くせり状態なのです。連れてこられた子供達や大人達も美味しい食事に笑顔になっています。


「ヴェロニカさん、話があるのだけれど」

「はいはい、なんです――」


 何時もの調子で話を聞こうとしたのですが、どうやらそんな雰囲気でもありません。


「ここじゃなんですので、別の所で」

「そうね」


 私は急いで食べて席を立ちます。残すなんて勿体無い事は出来ません! 他では食糧難なんですよ。






 執務室に移動すると、真剣な表情をしているエリゼさんが話しだしました。その内容は信じられない事でした。


「本当の事なんですか?」

「疑うの?」

「いえ、リン君達が嘘をつくとも思えませんし、ついたところで意味がありません。信じられないのですが、事実なんですよね?」

「ええ。行った時から怪しかったから精霊達に監視もさせていたから、裏も取れているわ。少なくとも、あの女は敵国の者ね」

「アムシャヌスの工作員ですか……」


 村長になったミケランジェロと一緒に居た女性がリーブル村を変え、村人だった人達をゴブリンやオークに与えていたという事ですか。確かに人は少なかったですし、大人に近い年齢の獣人達は居ませんでした。


「やってくれますね……」

「で、どうするのかしら?」

「モンスターの方はどうなりますか?」

「そっちはリン達が捕獲と始末をしてくれるわ」

「捕獲ですか?」

「オークとミノタウロス、コカトリスを捕獲して養殖……繁殖させて安定して肉と卵を手に入れるのよ」


 凄い事を考えますね。私達にとってオークとミノタウロスは確かに食糧になるのですが、危険もあるので自ら繁殖させようなんて思いません。ましてやコカトリスなんて石化しちゃいますよ。それにモンスターは一定以上産まれると変異種が誕生し、更に上位種まで産まれて来ると伝わっています。こんな危険な事を出来るのはそれこそ圧倒的な武力が無いと……はい、ありますね。中級精霊さん達をよく見かけますからミノタウロスやコカトリスはともかくオークなんて楽勝でしょうね。


「子供達だけで問題は無いのですか?」

「大丈夫よ。貴女には教えていない切り札を何枚か持っているし、護衛もしっかりと付けているわ」

「ですよね~」

「モンスターは心配しなくていいわ。それよりも、リーブル村よ」

「監査を入れるとの事ですが、逃げられるのも困りますから私がやりますよ」


 リーブル村へ向かう為に扉へと向かいます。


「まあ、待ちなさい」

「なんですか?」

「手伝ってあげるわ」

「これは私達の問題です」


 ウルカレル男爵領に入り込んだ工作員を排除し、反乱分子を一掃する。こんな汚れ仕事に皆さんを巻き込む訳には行きません。村ごと焼却する必要があるかも知れませんし。


「そう、“私達”の問題よ。アムシャヌスだったかしら、アレは私達の敵よ。私達の娘に手を出したんだから、それ相応の報いを与えないとね」


 エリゼさんから伝わって来るプレッシャーがすごいです。周りの精霊さん達がやっているのか、雷の球体が出現してバチバチと鳴っています。


「その時って、娘さんじゃ無かったはず……」

「何か問題でも?」

「何でもありません、はい」


 一応、意見してみましたが、通るはずもないですね。さて、こうなると皆さんで行った方がいいですね。私も楽が出来ますし。


「それじゃあ、行きましょうか。どうせならアースさんも一緒に行きましょうよ。私が囮になるので一網打尽にしましょう」

「そうね。私が逃げる者達を倒せばいいわね」

「はい。アースさんには村人を殺さずに捕らえて欲しいです」

「わかった。伝えてくるから準備していなさい」

「はい。それではまた後で」

「ええ」


 執務室から出て自室へと向かい、エリゼさんが作ってくれた戦闘服に着替える。ドレスのようなこの服はミニスカートというらしい物の上に別の前の部分がないマントのような厚い生地のスカートが後ろの部分を隠してくれます。なぜ前に無いのかは謎ですが。胸元も露出していますし、少し恥ずかしいですね。性能は良いですし可愛いので着ますけどね。長めの靴下を履いてガーダーベルトに装着してズレなくします。これで着替えは終わりです。最後に貰った杖を持ってトレードマークの帽子を被れば準備完了です。



 外に出ると鎧に大盾を持ったアースさんに踊り子のような衣装の上に白いフード付きマントを身に纏ったエリゼさんが居ました。エリゼさんは綺麗な美貌に合わさってとても似合っていますが、妖艶さもあって子供達には刺激が強いような気がします。


「この格好、恥ずかしいわね」

「似合ってるぞ。今夜が楽しみだ」

「もう……」

「はいはい、惚気てないでさっさと行きますよ~」

「そ、そうね。行きましょう」

「わかった」


 この二人は揃うとラブラブなんですよね。子供達の前以外はですけど。


「ひなたちゃんはどうしますか?」

「ひなたはユエちゃんの新しい腕がもうすぐできるから、そっちの調整をしている」

「そうですか。彼女の腕は急いだ方がいいですしね」

「ああ」

「こっちの準備は出来たわ。行きましょう」

「はい」


 馬に乗ってリーブル村を目指して道を駆け抜けます。その間に確認しておく事があります。


「エリゼさん、精霊さん達に逃がさないようにお願いしてくださいね」

「わかっているわ。私は村を封鎖するから夫と行ってきなさい」

「俺が守ってやるから攻撃は任せるぞ」

「はい! 任せて下さい」


 エリゼさんによる精霊さん達の支援もあり、すぐにリーブル村へと到着しました。エリゼさんは私達から離れ、私達はそのまま進んでいきます。


「で、どうするんだ?」

「止められるのも面倒ですから、このまま突入します」

「派手だが、面白い。映画みたいだしな」

「エイガってなんですか?」

「気にするな。それよりも見張りが居るぞ」


 村の入口には武装した村人が居ます。本来なら止まるのですが、今は緊急事態です。


「このまま押し通ります。退いてください! 緊急の要件です!」


 私の叫び声を聞いて見張りの人は慌てて退きます。そのままアースさんと二人で村の中に入って村長さん……いえ、ミケランジェロの所に向かいます。


「嘘は言ってないな」

「はい、嘘は付いていません」


 家に到着すると私達は馬から降ります。村人の人達が何事かと集まってきますが、それらを無視して乱暴に扉をノックします。すると扉が開らかれました。


「おいおい、何事――」

「フレイムバインド」

「――っ!?」


 私が発動した拘束の魔法は瞬時に飛び退ったミケランジェロには命中しませんでした。


「てめえ、どういうつもりだっ!!」

「ミケランジェロ、貴方を反逆罪で捕縛します」

「なんだと? もういっぺん言ってみろ!」

「ですから反逆罪で捕縛すると言っているのです。貴方がアムシャヌスの工作員を匿っていた事は判明しています。大人しくお縄についてください」


 まあ、処刑は免れませんが。


「ざけんな! お前ら、構わんから亜人諸共殺っちまえ!!」

「「「……」」」


 周りに居た村人達が一斉に武器を構えて私達に生気の無い瞳で襲いかかってきました。


「ヴェロニカさん、少し揺れるぞ」

「はい!」


 アースさんの声が響くと地面が振動して私とアースさん、馬達の居た場所が盛り上がっていきます。それは10mも盛り上がりました。私はすかさず魔法を詠唱して発動させます。


「ファイアストーム!」


 盛り上がった場所を中心に出来る限り殺さないように手加減をして発動させます。これによってミケランジェロ以外は火傷で動けなくなりました。彼自身も少なくないダメージを受けています。そんな状態でも大剣を振り回して鉄の壁を攻撃しています。


「って、鉄ですか!?」

「表面だけのコーティングだがな」


 大剣ではびくともせず、必死に頑張っているミケランジェロに炎の槍をプレゼントとします。動きを止めて剣で切り裂こうとしましたが、私が瞬間的に熱量を増大させて大剣を熱します。


「ヒート」


 熱を与えて高温にする魔法を使ってもてなくしてあげます。


「ぐっ、あああああああああああっ!?」


 叫び声をあげて大剣を放り出しました。そこにアースさんが檻を土魔法で作成して他の村人ごと捕らえてくれました。


「これでこっちは終わりか?」

「はい。後は監査の方にお願いしますが……女の人が居ませんね」

「逃げたか。まあ、エリゼなら問題ないだろう」

「そうですね。ですが、私は一応向かいますので残りの捕獲をお願いします」

「了解した」


 さて、あちらはどうなっているでしょうか?






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