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ウルカレル男爵領魔の森・外周①

ワンダーランドはやめました。北欧繋がりにしました。




 短距離転移によってゴブリンの村が有った場所まで一気に戻る。周りを見ると特に変わりはなくシルバーウルフ達がゴブリンの骨をかじって遊んでいる。どうやら問題は無かったようで安心した。空を見上げながらこれからの事を考える。時刻は砦で数時間を過ごしたので既に夕方に近い時間となっている。女性の人達は動かせないだろうから野宿の準備をしないといけない。問題は元から野営をするつもりが無かったので野営道具が一切ない事くらいかな。


「リン君、お帰りなさい」

「ただいま。そっちはどう?」

「ティナさんが来てくれたのでなんとか大丈夫です」

「ティナが?」

「はい。危ない人が何人か居たので調ちゃんが戻って連れて来てくれました」

「それで、その人は大丈夫なの?」

「どうにかですが……自殺だけは止められました」


 あんな事をされていたら仕方ないのかも知れない。


「そっか。今はとりあえず野営の準備をしよう」

「わかりました。でも、道具なんてないですよ」

「そうなんだよね。あ、彼女達はもう動かせるの?」

「無理です。体調の事もそうですが、別の問題もありますから」

「わかった。それじゃあ本格的なのを作ろうか」

「はい!」


 先ずは雨宿りが出来るようにしないといけない。これは洞窟があるからどうにかなりそうだけどね。


「洞窟はどう?」

「出来れば壊したいくらいです。汚いですし、トラウマが……」

「なるほど。しかし、どうしようかな……」

「私達に家を作る技能なんてありませんしね。それこそエリゼさんやアースさんしか……」

「そうだね。困った時は頼ればいいんだ」

「え?」

「ちょっと行ってくるね」


 短距離転移を発動してお母さんの下へと移動する。お母さんは晩御飯の用意をしているのか厨房に居た。


「お母さん」

「リン、摘み食いかしら?」


 僕が急に現れても動じないなんて、流石はお母さん。


「違うよ。実はゴブリンに攫われた女の人達を助けたんだ」

「それはいい事をしたわね」

「うん。それで彼女達を動かせないから家が欲しんだ。それも直ぐに出来る奴。あと食料。砦には届けたからもうないんだ」

「わかったわ。アイツ等は同じ女性としても許せないしね。すぐに用意するから待ってなさい。それでクロードさんはなんて言ってた?」

「うん。実はね……」


 クロードさんから聞いた話をしていく。もちろん、列車の事もだ。クロードさんに言われた通り、あちらから話が来るだろうし、僕の方から話した方がいい。


「なるほど、鉄道ね。確かに面白そうね。いいわよ、全面的に協力してあげる。こういう異世界の知識は早い者勝ちみたいなモノもあるしね。それとリン。これをあげるからから時間魔法を覚えなさい」


 お母さんが料理しながら渡してくれたのはスキルカードだった。


「いいの?」

「ええ。私もアースもしばらくはここから出るつもりがないからね。それに鉄道を作るならリンが作ってくれる完成したアイテムボックスが有った方がいいわよ。輸送に関して多大なアドバンテージが得られるわ」

「お母さんは作らないの?」

「私だと魔力が足りなくて作れないからね。しばらくは鍛えるわよ」

「わかった。それじゃあありがたく貰うね」

「ええ」


 スキルカードで時間魔法を習得する。時間魔法最大値って書いたけれど、残念ながらレベルは1だった。それもまたエラーが出た上に時間魔法と空間魔法が融合して時空魔法という物になった。


「どうしたの?」

「時空魔法とか出来ちゃった」

「あらあら、面白いわね。まあ、考査は後回しね。出来たから持って行きなさい」


 お母さんは大きな鍋に入ったスープと大量のパンに加えて袋に入れた種を渡してくれる。


「この袋の中の種を植えて魔力を与えたらツリーハウスができるから好きに使いなさい。それとオークとミノタウロス、コカトリスはなんとしても雄と雌の両方を確保なさい」

「食べるの?」

「ええ、そうよ。飼育して増やしなさい。彼らの食料はハーブがいいわね。完全に食用とするのよ。酷い事かも知れないけれど、生きていく為には仕方ないわ。あちらでも同じ事をしているのよ」

「わかった。頑張って確保するよ」

「お願いね。それと危なくなったら逃げること」

「うん」


 お母さんと話しながら時空魔法のレベル1で出来る事を調べる。レベル1では基礎の空間認識に時間認識に加えて時間の停止と空間操作が出来るようだ。とりあえず、アイテムボックスに時間停止の機能を追加する為に技能付与を行う。極大魔力がレベル3なのにこれを使うと三分の一くらいも減ってしまう。


「燃費悪っ!?」

「そりゃそうでしょう。時空間の制御ってどれだけ反則なのよ」

「あははは……というか、短距離転移も使えないじゃん……レベル上げよ」

「それじゃあ、こっちもよろしく」

「うん」


 お母さんの分を付与を行うとレベルがようやく2になった。2で使えるのは短距離転移と時間経過。短距離転移はそのままだとして、時間経過は対象の年月を進める事が出来るようだ。残念ながら時間を戻す事は出来ず、進ませる事だけだ。使い方としては体感速度を進ませる事で超加速ができたり、転移した時に瞬時に出現するのではなく、時間をずらして移動ができる。もちろん、成長させる事も出来るみたいだ。待てよ? これを使えばシルバーウルフ達の生まれた子供も成長させる事が出来るね。うん、便利そうだ。僕達にもできるだろうけど、怖い。某ハンターさんみたいな事になるかも知れないしね。


「どうしたの?」

「色々と使えそうだなって」

「でしょうね。それで短距離転移は覚えたのかしら?」

「ちゃんと覚えたよ。僕は戻るけど、お父さんやひなたのは待つように言ってね」

「ええ、大丈夫よ。いってらっしゃい」

「行ってきます」


 僕は短距離転移を発動してユエの居る場所に戻る。ユエは木を切り倒したり、石を集めて竈を作ってくれていた。


「ただいま」

「お帰りなさい」

「調とティナは?」

「まだ中ですよ」

「そっか。それじゃあさっさと家を作ろうか」

「そうですね」


 時間も遅くなってきたのでツリーハウスの種を地面に植えて魔力を与えていく。すると直ぐに大きな木が伸びて五メートルくらいになった。その上に家があり、スロープとリフトが付いている。人数から考えて複数の種を植えて家を作る。


「リン君、枝が動いています」

「そうだね。なんか槍みたいだよね……」


 僕達が話していると調が洞窟から出てきた。その後ろにはティナが居て彼女は一人の女性を一人の幼い少女と共に支えている。頭部に犬の耳を付けた紫色の髪の毛で同じ紫色の瞳の女性。彼女はお腹が膨らんでいた。幼い少女の方は髪の毛の色は変わらず、瞳の色だけ赤と青のオッドアイだった。それぞれの服装は見覚えのあるものだ。女性はティナの神官服を着ている。胸がティナよりも大きい。幼い少女の方は調のワンピースを着ている。彼女はひなたぐらいの身長なのでブカブカだ。そして、女性と幼い少女の首には調やティナと同じ首輪が嵌められていた。


「その人達は動いても大丈夫なの?」

「本当は余り動かすべきではありませんが……」

「どうしてもと頼まれたのよ。二人共、この人が私達のご主人様よ。二人は分かると思うけど助けた人よ」

「うん。それで僕に何かあるの?」

「はい。実は――」

「姉様と皆を開放しやがれ、です」

「え?」


 幼い少女の口から出たのは乱暴な言葉だった。開放しやがれって元からそのつもりだけど……どういう事だろ?


「申し訳ございません。フラン……フランツィスカには後で言って聞かせますのでどうかご容赦を頂きたく……」

「別にいいですよ。子供の事ですから」

「むっ」

「フラン」


 フランツィスカを女性が口を塞いで喋れなくした。


「私は姉のヒルデガルトです」

「僕はリンだ」

「リン様ですね。どうか私達の話を聞いてください」

「わかりました」

「私達はベードゲアというワーウルフの集落よりレスティア城砦の援軍の要請を受けてそちらに向かっておりました」

「レスティア城砦?」

「そんな事も知らねえの――ふがっ!?」


 フランツィスカを止めながらレスティア城砦の事を聞くとクロードさんが居る砦の事だと判明した。確かに中には城と街があったや。


「続きをどうぞ」

「はい。レスティア城砦へと向う途中でリーブル村に寄り、歓待を受けてから砦へと向かいました。問題はその次の日の夜、野営をした所です。そこまでは覚えていたのですが、見張りの者まで眠ってしまい気が付けばゴブリン達に捕らえられてここに連れ込まれていました。ご承知の通り、男達は殺され、私達は……」

「言わなくて大丈夫です。その、見張りの人達が眠ったのが原因ですか?」

「いえ、それだけではありません。我々ワーウルフはゴブリンなど臭いの激しい生物が近づけば確実に起きて戦えます。ましてや戦士職の者が殆どなのですから」

「つまり、アレね。盛られたわね」

「ワーウルフの方達は殺気にも敏感だと聞いております。シラベさんの言葉が正しいと思われます」


 本来、起きるはずが捕まって監禁されるまでわからなかったんだ。確かにおかしいよね。そうなると怪しいのはリーブル村かな。お母さん達もあそこには行くなって言ってたし。


「ぜってえ盛られた、です。アイツ等、ぶっ殺してやる、です……」


 フランツィスカの言葉と同時に膨大な魔力が吹き上がる。それは僕にこそ及ばないが、極大魔力のスキルを持っているぐらいには膨大な魔力だった。


「落ち着きなさい」

「凄いわね」

「そうですね。まるでリン君やひなたちゃんみたいです」

「ワーウルフなど獣人の方は魔力が少ないはずなのですが……」

「この子は特別なのです。私達ワーウルフの中でも唯一の魔法使いです」

「そうなんだ。とりあえず話を戻すとリーブル村の人達に薬を盛られたって事でいいかな?」

「そうね。それと彼女達が奴隷の首輪をしている事も彼らかはともかく、人間が関わっている事を証明しているかな」

「私達はこの首輪を嵌められてここから動くなと命令されています。そのせいで逃げる事も出来ず、皆で身体を張ってフランを守る事しかできませんでした」

「その子ならいざという時に逃げられるって事だね」

「そうです」


 要約すると、砦に向かう途中に寄ったリーブル村で薬を盛られて捕まって隷属の首輪で奴隷にされた。そして、ゴブリン達モンスターの繁殖の道具にされたという事だね。誰がやったかは知らないけど、許せないね。


「それで、先程のフランの言葉になるのですが、どうか私が――」

「フランがお前の奴隷としてこのまま一生懸命に仕えてやるから、姉様達を開放してくれやがれ、です」

「――フランっ!?」


 フランツィスカが姉より先に言った。


「うん、いいよ。君達は僕のになるんだから僕の好きにできるんでしょ? だったら皆を開放してあげる」

「本当か、です?」

「本当。元々開放するつもりだからね」


 お母さんに見つかれば勿体無いとか言われるだろうけど、彼女達は無理矢理奴隷にされたんだ。だから開放してあげるのが筋だ。今回はお金とかもあんまり掛かってないしね。精々、家と食料、衣類くらいだ。


「ありがとうございます。フラン」

「ありがとう、です。お礼になんでも言う事を聞いてやる、です」

「そう? じゃあ――」


 僕はフランツィスカの言葉に凄く気になっていた耳と尻尾に触ってみる。


「わふっ!? なななななな、なにしやがる、です!!」

「あ、あの、ご主人様……」

「いや、つい興味があって……」

「フラン。いえ、フランツィスカ、あなたが言った事ですからわかっていますね」


 何か雲域が怪しいような。


「お、お前の言いたい事はわかった、です。や、約束通り好きな時に好きなだけ触りやがれ、です」

「いいの?」

「二度は言わねえ、です!」

「じゃあ、遠慮なく」

「ああ……」


 ムニムニ、モフモフと楽しむ。フランツィスカは顔を真っ赤にして耐えているけれど、しばらくしたら気持ち良さそうにしだした。それにしても、ティナは何か言いたそうだけどどうしたんだろ?


「とりあえず、座って話そうか。家にどうぞ」

「分かりました。それにしてもエルフの技術は凄いですね」


 リフトで上がって家の中に入る。入ると直ぐにリビングになっているので椅子に座って貰う。僕達も席に着くが、ティナとフランツィスカだけは立ったままだった。


「ティナ?」

「私はこちらに他の人達を運びます。調さん、手伝ってください」

「わかった」


 二人が出て行った後、フランツィスカが僕の膝の上に座ってきた。


「撫でやがれ、です」

「うん」


 撫でながら話す事にした。耳が気持ちいいしこのままでいい。


「それで奴隷から開放する方法って僕は知らないんだけど、知ってる?」

「奴隷を開放するには奴隷商に行く必要があります。ですが、今回の場合は特殊な手段が必要です」

「特殊な手段?」

「今回の場合はフラン達にこの首輪した糞野郎が生きていやがるから、主人の書き換えが出来ねー、です」

「死んでいれば所有者無しになってリン様のモノになれるのですが」

「どうして生きているっていうのがわかるの?」

「命令が生きているからです。この辺りから離れられません」


 そういう事か。でも、さっき開放しろって言ってたよね。それってどういう事なんだろ?


「でも、フランツィスカは――」

「フランでいいぞ、です」

「フランは僕に開放しろって言ったよね?」

「言ってやったぞ、です」

「先程の少女、調という方が貴方なら解除出来ると」

「僕ならか。確かに手段はあるかな。非常に貴重な物を使えばだけど」

「それはどういったものですか?」

「スキルカードって言う好きなスキルをもらえる物だよ」

「アーティファクトじゃないですか!?」

「そ、それをフラン達のために使うのは……オススメできねーです」

「いや、いざとなれば使うよ」


 この犬耳と尻尾にはそれだけの価値がある! って言う人が多いと思う。二人共美女と美少女だし特にケモナーとかいう人なら絶対に使うと思う。


「それに代価はフランにもらってるしね」

「フラン、無茶苦茶高けえが、そんなにしねえ、です」

「フランの価値は僕が決める。それにこれからの事を考えると僕が覚えても損は無さそうだし」

「むう、そういう事なら理解出来る、です」


フランは僕が彼女達に与えると思ったのかな? 流石にそれはしないよ。僕が使って隷属の首輪を解除するための力を手に入れて、それを使ってあげるくらいだね。


「という訳でこれを使おうか」

「あの、リン君」

「どうしたの?」


 今まで黙っていたユエが胸元を触りながら近付いて来た。


「彼女達はワーウルフなんですから、私と同じ方法は使えませんか?」

「同じ方法? ああ、テイミングだね。上書きだとどうなるんだろ?」

「分かりませんが、試す価値はあるかと」

「なら、フランがやってやる、です」

「フラン……」

「姉様の身体は負担を掛けられねえ、です。なら、実験はフランがやるべき、です。さあ、とっとときやがれ、です」

「わかった」


 フランにエクストラテイミングを発動する。なんだか抵抗を感じるが、魔力量に物を言わせて押し通る。すると彼女の胸元にテイムが出来た紋章が出て成功した事が理解出来た。


「成功ですか!?」

「みたいだね。命令の上書きは出来るみたいだけど、首輪の解除は出来ないね」

「そちらは砦に出向けば問題はありません。解除出来ますから」

「ありがとう、です」

「お礼は早いよ。先ずは全員をテイムして動けるようにしてあげよう。それに悪いけど、砦に行くのはしばらくしてからになるよ」

「もちろん、そちらの都合に合わせさせて頂きます」

「ありがとう。僕の予定はここの奥に居るモンスターの確保だよ。もちろん、砦には今回の事を報告するけど」

「分かりました。私達も動けるようになったらお手伝いします。今しばらくはフランをお使いください」

「任せやがれ、です」

「ありがとう。でも、大丈夫だよ」

「むう」


 不満そうにしているフランだが、こればかりは仕方ない。まともな手段じゃ勝てないだろうから僕は小細工を沢山するつもりなのだ。それに危ないから僕一人の方が都合がいい。とりあえず、食事の用意をして機嫌を取ろう。






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