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開拓2




 ユエ





 目が覚めたら目の前にリン君の心配そうな顔がありました。リン君に声を掛けようとすると身体中を激しい痛みが襲ってきます。


「っぅ~~」

「まだ安静にしないと駄目だよ」

「安静にですか……」


 身体の中にある違和感を感じて、それを動かしてみると鉄製の凶悪な物が私の目に飛び込んで来ました。


「腕……」

「うん。調整はしたらしいから、後はリハビリだって」

「わかりました。これでようやくリン君の役に立てます」

「今ままでも充分に役に立ってたよ」

「抱き枕ですか?」

「それもあるし、話し相手としてもね」

「ありがとうございます。でも、それじゃあ足りないんです」


 リン君に膝枕をしてもらいながら両手を動かしていく。激痛が襲ってくるけれど、繰り返していると次第に慣れていく。痛みすらも手足が戻った証明だと思うと嬉しくなって来ました。十分もすると両手の違和感は無くなり、痛みも引いてきました。痛みが完全に無くなるとポーンという音が脳内に響き渡りました。


「何かが上がったようです」

「ん?」

「痛覚遮断をLv.1を覚えたようです」

「やってても覚えるんだ」

「習得条件はわかりませんけど、これで楽になります」

「でも、痛覚を遮断するのは危険だからあんまり使わないようにね」

「はい。身体の危険信号なんですよね」

「そうだよ。ユエの身に何かあったら大変だからね」

「わかりました」


 リン君は本当に私を大切にしてくれています。私も出来るだけ答えないといけません。その力は貰いましたし。痛覚遮断以外にもスキルが増えていました。増えたのは振動破砕と殺戮機構というスキルです。どちらも特殊に位置するスキルで、振動破砕は対象に振動波を送り込んで共振させて内部から破壊するスキルです。殺戮機構は殺せば殺すほど強くなるみたいです。どちらもキリングドールに取り付けられていたスキルだと思います。腕や足に嵌っている魔石もそれらのものでしょうし。


「腕と指はちゃんと動くようになりました。足を試してみますね」

「わかった。支えるね」

「お願いします」


 リン君に抱き上げて貰った状態で立たせて貰う。痛覚遮断のレベルが低いからか、痛みはあります。ですが、我慢してリン君に腕を掴んで貰って歩いていきます。腕を掴んでもらう理由は私の手が凶器なので触れるとリン君の手が大変な事になるからです。


「リハビリも直ぐ終わりそうだね」

「そうですね。どんどん違和感が無くなって来ます」

「これも経験値に入るんだろうね」


 リン君の経験値10万倍は本当に凄いですね。これなら頑張った分だけ、結果がわかりやすく出ていいです。


「っと、ご飯を食べに行こうか」

「はい」


 私は初めてお城の中を自分の足で歩きました。リン君と一緒に歩いていると、博物館とかにデートしに来たと思えてしまいます。私がここに住んでるなんて未だ思えません。


「おはよう。あら、動けるようになったのね」

「はい。これも皆さんのお陰です」

「気にしなくていいわ。ユエちゃんはもう家族なのだからね」

「あ、ありがとうございます。それじゃあ、お仕事をください。私も家族の一員として精一杯働きます」

「そうね。じゃあ、リンと一緒にご飯を食べたら道を作ってもらいましょうか」

「道? やっぱり砦まで作るの?」

「ええ。輸送しやすいように砦からここまで森を切り開いて街道を作って頂戴。それが二人の仕事よ」


 リン君と二人で仕事……頑張らないといけません! でも、道ってどうやって作るんでしょうか? コンクリートとかもありませんし。


「森を切り開くの? 木に退いてもらうんじゃなくて?」

「ええ、そうよ。この森、木々が近くに沢山あるのよ。だから古い木に太陽光とかが遮られて若い木が育ってないのよ。だから間引かないと森が衰退しちゃうわ」

「エルフ的にいいのかな?」

「構わないわよ。アルから聞いたのだけれど、年老いた木とか長年生きた物は魔力を大量に持っていれば精霊さんに生まれ変わるそうよ。間引いた木はこちらに運び込んで魂は精霊さんに生まれ変わって貰い、木は加工して木材にするわよ」


 確か間伐と言うんですよね。土砂災害の対策にもなるのでした方がいいですよね。


「あれ、でもそれだと道が出来ませんよね?」

「そうね。若い木だけを残したら精霊さん達に協力して貰って移動すればいいわ」

「なるほど」

「じゃあ、僕達の仕事は木を運ぶのも入るんだね」

「切るのと、モンスターの討伐かしらね」

「モンスター?」

「この森は特殊でして、モンスターが沢山居るんですよ。倒したら血の匂いで寄ってきますし、人の気配を感じたら襲ってきます」


 ヴェロニカさんもやって来たので、一緒に食堂に入る。中にはひなたちゃんやアースさんが居たので挨拶をして席に着く。今日からリン君膝の上じゃありません。


「木を切るだけでもモンスターが襲ってくる場合もありますから、気を付けてくださいね」

「はい。でも、任せてください! 私が全部倒しちゃいます!」

「期待しているわ。それで、ヴェロニカさんはどうするのかしら?」


 エリゼさんが料理を作りながら聞いています。


「私はそろそろ戻りますよ。でも、兵士に渡す武器はまだ出来ていないんですよね?」

「そうだな。ユエちゃんの事を優先していたからな。今日から始める」

「すいません」

「いえいえ、構いませんよ。しかし、そうなると攻められた場合が怖いですね」

「ん。出来次第輸送」

「いや、手段がないですよ」

「ガー君達、運ばせる。速い」

「それだとここの戦力が疎かになりませんか?」

「いえ、問題無いわよ。ここは精霊さん達が沢山居るし、彼らもここを気に入って住処だと思ってくれているわ。そんな所に敵が来たら戦ってくれるわよ。ね?」

『たたかう~』

『まもるよ~』


 今まで聞こえなかった精霊さん達の声が私にも聞こえて来ました。ヴェロニカさんも驚いている事から、あちらも聞こえているようです。


「ここの子達も成長が早いからこれぐらいは出来るわよ」

「わかりました。それじゃあお願いしましょう」

「ああ、それともしもの時を考えて昨日からヴェロニカさん用に作った物が有る」

「なんですか?」

「これだ」


 アースさんがヴェロニカさんに渡したのは木で作られた杖でした。上の方には台座があり、直径30cmくらいもある大きな丸いルビーが配置されています。


「いやいや、なんですかそれ!」

「君が求めた物だ」

「それじゃあ、この家の木で作られた杖なのかしら?」

「そうだ。今尚、成長を続けているからな。要らない枝は切り落としている」

「そんな問題じゃなくて、その宝石はどうしたんですか!?」

「作った。俺はこれの作り方を知っているからな。気にせず持っていけ」

「わっ!? こんな貴重な物を投げないでください!」


 アースさんが投げた杖を慌てて受け止めたヴェロニカさんは、その杖を見詰めてから抱きしめた。


「返せって言っても返しませんよ」

「ああ、持っていけ。代金はいらん」

「いえ、駄目よ。それで国境を守ってもらわないと」

「任せてください! これがあればいっぱい焼き殺せます!」

「ふふふ、頑張ってね」


 怖い事を平然と言っています。でも、あの人達は嫌いですし、この世界の事を考えたら普通なんでしょうし構わないと思います。それに彼らがリン君達に酷い事をするのは分かりきっていますから。


「でも、ヴェロニカさん。戻るなら食料も持っていった方がいいよね」

「そりゃそうですよ」

「そうね。三日だけ待ってちょうだい。それまでに沢山用意するから」

「いいんですか?」

「ええ」

「じゃあ、僕達も三日で砦までの道を作ろう」

「わかりました」

「さらりとリン君も凄い事を言いますね。出来ないとは思いませんけど」

「ヴェロニカさん、暇になったなら手伝ってくれ。火を頼みたい」

「わかりました」


 鍛冶に火は重要らしいですし、ヴェロニカさんなら確かに適任ですね。


「ひなは?」

「ひなたは切り出した木材を使って馬車でも作るといい」

「輸送手段ね。ひなたなら人形魔法を使って全自動で動くようにできるかも知れないわね」

「というかさ、馬の変わりをアンデットにすればいいんじゃない?」

「あ、それならいっそのこと列車とかどうですか?」

「列車か。有りだな」

「まずはトロッコくらいになるかも知れませんけど」

「トロッコより原始的に行こう。馬車の車輪をレールの上を走らせればいいだけだ」

「ん、ひな、頑張る」

「それじゃあ、ご飯を食べたら開始しましょう」

「「「はい」」」


 エリゼさんが作った美味しいご飯を食べてから移動します。食堂から出るとリン君がヴェロニカさんを呼び止めました。


「ヴェロニカさん、騎兵ってどうなってますか?」

「騎兵ですか? 少数居るだけですね。維持費も掛かりますし、何より馬自体が高いですから。あちらの国は馬を飼育して増やしていますけど……我が国は少数です。数が居れば楽なんですけどね」

「ありがとうございます」

「いえいえ、何かのお役に立てたら幸いです」


 リン君が話を終えて、待っていた私の方へとやって来ます。


「お待たせ」

「どうしたんですか?」

「うん。騎兵って色々と便利だからさ。僕の力で用意出来ないかと思って」

「それならモンスターをテイムして育てて騎兵や戦力として渡してあげたらいいと思いますよ。育成速度は他を圧倒しますから」

「そうだね。じゃあ、出来る限りモンスターを捕まえよう。強いのがいいけど……あっ、そうなると住処も問題か」

「でしたら、余っている土地を牧場や動物園にすればいいのではないですか?」

「牧場や動物園か。魔物園? ありだね。乗れそうな魔物は確保しようか」

「はい! 任せてください!」

「よろしくね、ユエ」


 頼まれたの全力で頑張ります!




 第五大樹。南にある入口の第一大樹の左上側に位置するこの大樹の壁の部分を無くして貰います。通り抜けた先は完全な森林地帯です。ここに道を作ります。態々大樹の中から外に出て道を作るのには理由があります。一つ目は基本的に大樹同士が全域を枝で壁を作って侵入を禁止しているからです。こちらは私達なら精霊さんにお願いして開けて貰えます。二つ目は入ってくる物や人を確認して監視する為です。言ってしまえば入国管理ゲートですね。これで外敵を排除します。危険な異世界なので防衛はしっかりとしないといけません。


「あ、ユエ。これを返しておくね」


 リン君が渡してくれたのはデスサイズでした。前の私なら凄く重かったのですが、今なら普通に持てます。この機械の義肢のお陰ですね。


「それと血を飲んでおこうか」

「はい。何があるかわかりませんしね」

「うん。どうぞ」

「頂きます」

「召し上がれ? ふふふ」

「あははは」


 二人で笑い合ってからリン君の首筋に噛み付いて血を飲みます。凄く美味しい血を飲むと身体がポカポカして全身が暖かくなり、力が湧き上がって来ます。


「それじゃあ、行こうか」

「はい!」

「まずはその右側の木ね」

「これですね」

「そうだよ」


 リン君が千里眼や精霊さんの話を聞いて私に指示を出してくれます。私はそれに従ってデスサイズを振るって大きな木を力に任せて切断します。


「っと、アイテムボックス」


 切ったら倒れて来るので、それをリン君が直ぐにアイテムボックスに仕舞います。残った木の根っこなどは精霊さん達が運んでくれます。


「どんどん行こうか」

「わかりました」


 しばらく切り倒していると頭上から1mくらいの鳥さんがリン君目掛けて急降下して来ます。私はそれに対してデスサイズを連結させます。


「いけ、ダブルハーケンっ!!」


 全力で投げたデスサイズは――あさっての方向に飛んでいっちゃいました。


「練習が必要ですね」

「だねえ」


 のんきな事を言いながら、私は鳥さんと自分に対して魔法を使います。


「スロウ、ヘイスト」


 瞬時に遅くなった鳥さんはまるで止まっているような速度でこちらに進んで来ます。私は飛び上がって義手で鳥さんを掴みました。するとあっさりと首が落ちてしまいました。


「切れ味良すぎですね」

「そうだね。あ、それは血抜きしないといけないからその辺に吊るしておこうか」

「わかりました。でも、モンスターさん達が来るんじゃ?」

「来ると思うけど、この辺だったら何時でも逃げ込めるし、おびき寄せよう」

「わかりました。あ、でも先にデスサイズを拾ってきていいですか?」

「いいよ。それと突き刺さってるのも回収してこうか」

「? わかりました」


 リン君の案内に従ってデスサイズが落ちた場所に移動すると、そこでは大きな猪さんがデスサイズに切り裂かれて絶命してました。


「とりあず、食料も確保しながら行こうか」

「そ、そうですね」


 それから、リン君と一緒に間伐をしながら襲いかかって来るモンスターさん達を倒します。隠れている蛇さんだって、リン君の千里眼による索敵からは逃れられません。ダンピールの身体能力と魔法の性能にものを言わせた戦いのお陰でスキルレベルがどんどん上がって行きます。新しく斧術スキルも覚えました。

 倒した小さなモンスターは血抜きして魔石をアリスちゃん達にあげています。大きなモンスターは残念ながら鳥さん以外来ていません。ですが、着々と広くなる道に突き刺している丸太に吊るされてモンスターから出る血の匂いはだんだんと酷くなってきています。


「んー団体さんが来たよ」

「団体さんですか?」

「うん。狼さんだね。この速度なら後五分かな」

「すぐじゃないですか」


 私はデスサイズを構えてレベルの上がった時間魔法を使う準備します。用意するのは上位魔法に位置する物だと思います。何せ――


「来た――」

「時よ、止まれ……停止世界(ワールド・ストップ)


 ――世界を一時的に止めるのですから。これは時間魔法の中でも上位なはずです。これ以上となると未来視や過去の改変くらいしかないと思います。っと、今はモンスターさんですね。

 周りを見渡すと、森から飛び出して来た複数の銀色の綺麗な毛並みを持つ狼さん達が空中で止まっています。後ろを振り返ればリン君も止まっています。この世界で動く事が出来るのは私だけです。この世界なら、某シューティングゲームのメイドさんみたいな事ができますね、きっと。そう、私の能力は世界を止める程度の……程度ってレベルじゃないですね。


「こほん」


 とりあえず、足に少し傷を付けて動けなくしておきましょう。私の手はロープとかも持てませんから。流石に集団で動くだけあって数が多いので大変ですが、頑張りましょう。


 少しして、魔力が切れたので停止世界が解除されました。魔力消費が大きいのが難点ですね。たったの五分しか持ちません。お陰で最後の一体だけは首筋に爪を充てがうしかありませんでした。


「「「「きゃいんっ!?」」」」

「――よ。って、終わってるし」

「はい、終わりました。テイムをよろしくお願いします」

「わかった」


 ガルムよりは小さいですが、1mくらいはある大きな狼さんは私の爪に警戒して動きを止めています。本当に賢いですね。動けばスパッと行っちゃうんで、止まる事が正解です。


「狼さん、僕達の仲間になるか、ここで倒されるか選んで。僕達の仲間になるなら衣食住は保証するし、子供の安全も保証するよ。それに治療もする」


 リン君がそう言うと、狼さん達は寝転がってお腹を見せてくれました。リン君は彼らを一匹ずつ撫でて契約していきます。私の同胞ができました。


「精霊さん、治療をお願い。治療が終わったら君達は子供達を連れておいで。僕達の家に案内しよう」

「わう」


 一旦戻って、狼さんの子供を草原に入れて何体か残って貰ってから、リン君が彼らに森で道を作るお手伝いを頼みました。小動物系のモンスターを捕まえたり、彼らでは叶わないモンスターをこちらにおびき寄せて貰うのです。他にも彼らと同じ群れが居ないかも聞いて案内してもらい、彼らを仲間に入れました。







 名前:リン

 種族:エルフ/ドワーフ

 肉体:肉体強化Lv.4(up)、肉体再生Lv.2(up)、状態異常耐性Lv.2(up)、頑強Lv.4

 魔法:精霊魔法Lv.3、空間魔法4(up)

 技術:

 特殊:エクストラテイミングLv.2、極大魔力Lv.2(up)、千里眼Lv.2(up)、経験値10万倍(PT)、成長限界突破(PT)、精神障壁Lv.1、強運Lv.1


 名前:ユエ

 種族:吸血鬼/人間

 肉体:肉体強化Lv.4(up)、臓器再生Lv.3、状態異常耐性Lv.1、頑強Lv.4、痛覚遮断Lv.2(new)、斧術Lv.3(new)

 魔法:吸血魔法Lv.3(up)、時間魔法Lv.4(up)

 技術:

 特殊:血の従者、殺戮機構Lv.2(new)、振動破砕Lv.1(new)

 状態:隷属

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