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第44話 アイテムベンダー

 さて、両替機風アイテムベンダーこと、ミアベンダーについてである。

 Q&Aによれば、トークンを能力、アイテムに変換する装置、とのことだ。

 使用できるのはそのとき白い部屋にいる者のみ。


「どう思う、ミア」

「救済措置っぽく見えるけど、すごく怪しい」


 ですよねー。

 ゲームに比較的詳しいぼくたちふたりは、顔を見合わせてため息をつく。

 アリスとたまきは、ぽかんとしている。


「どういうことですか、カズさん」

「第一に、救済措置なら、トークンなんかと交換にする必要はないんじゃないか、って話だ。そもそもこの白い部屋の主は、ノートPCにしたって、重要なこともすべて聞かれるまで答えてくれないようなやつなんだぜ」

「ん。基本的に、意地悪い」


 ぼくたちふたりの意見に、アリスは少し考えたすえ……。


「でも、この部屋の主さんは、わたしたちにスキルをくれました」

「そのへん含めて、相手の行動の意味がわからないんだ。だからこそ、ぼくもミアも困惑している。これまではスキルを使わなきゃ生き残ってこられなかったから、否も応もなかったけどね」


 だがこのミアベンダーは、少し違う気がする。

 どこが、とはいえないのだが、なにかまた別の意図があるような……。


「たとえば、ミアならどう裏を読む?」

「すべてはトークン回収が目的だった、とか」

「すべて、っていうのは……」

「この世界に山ひとつが呼ばれて、そこにオークが攻めてきて、わたしたちがスキルを手に入れたことまで、すべて」


 考えられないこともないけど……。

 そのオークたちを直接、白い部屋の主が倒せばいいだけの話じゃないんだろうか。

 こんなおおがかりなことを仕掛けるのだ、その程度、造作もないことだと思うのだが……。


「たとえば神さまみたいな存在がいて、自分では動けないから、他人にやらせなきゃいけない的な設定」

「なんかのアニメか?」

「ゲームかアニメかラノベか漫画」


 なるほど、まあ創作ではよくある話ってことか。

 だいたい創作における上位存在って、自分では身動きが取れなかったり、なにかが不自由だったりするもんだしな。

 当然それは、そうじゃないと主人公たちの意味がなくなるからだけども。


 リアルに考えて、そのあたりどうなのだろう。

 なんらかの上位存在がいると仮定した場合、その目的は……。

 自分のかわりにちからを振るわせる存在が必要だった、というあたりでほぼ確定、かなあ。


 そうじゃないと、このスキルとかのシステムは成り立たない。

 明らかに尋常じゃないちからが働いていて、それにぼくらは翻弄されている。


 ひょっとしたら、ぼくたちが地べたを這いずってのたうちまわる様を上から見て、げらげら笑っている誰かがいるのかもしれない。

 だとすると、そもそも……。


 いや、とぼくは首を振る。

 そんなのはまあ、些細なことだ。

 ことの善悪すらも関係ない。


 いまぼくたちが気にしなければいけないことは、たったひとつだ。

 そういったなんらかの介入に乗ることが、今後のぼくたちにとって有利になるか、不利を招くか。


「このミアベンダーを活用するべきか、どうか。ミアはどう考える」

「積極的に使っていくかどうかは別として、テストはするべき」


 なるほど、ミアのいう通りだ。

 とはいえ……と液晶ディスプレイに表示される必要トークン数を見て、ぼくたちはため息をつく。


「高い……」


 いちばん安いのは、意外にも魔法だった。

 たとえばランク1の魔法、リード・ランゲージ。

 これでトークン100個である。


 ランク2の魔法となると、必要トークンは400個だ。

 特殊スキル、盾術は必要トークン200個。

 特殊アイテム、アイテム複製セット:クラスAが200個。クラスBが2000個。


 また変わり種としては、メモ帳というものがある。

 これがトークン250個。

 Q&Aによると、白い部屋でこれに書いた文字を、外に持ち出せるようだ。

 うーん、たしかに便利だけど、ボってるなあ。


 魔法はランク2のものまでしか表示されていない。

 ノートPCに質問してみたところ、レベルアップと共にラインナップが増えるとのことであった。


 なおぼくたちがいま持っているトークンは、青が8個、赤が30個ほどにすぎない。

 残りは育芸館に預けてある。

 や、だってこんなところで用途が判明するなんて思ってみなかったし……。


「買えるの、ランク1の魔法だけ」

「つーかこれ、買ってからどうするんだ」


 改めて、そのあたりをQ&Aする。

 以下、判明した事実である。


・ミアベンダーに必要数のトークンを入れて取得アイテムを選ぶと、ノートPCに選択画面が出る。

 あとはノートPCの指示に従えばいい。

 だったら最初からノートPCですべてやってしまえばいいんじゃ……。

 トークンを回収するために必要な手順ってことかね。


・魔法の場合、現在習得している同じランクの魔法をどれかひとつ潰して、かわりに習得する魔法を入れることになる。

 つまりぼくの場合、召喚魔法か付与魔法、どちらかのランク1魔法をひとつ潰せってことか。

 ぼくならサモン・コールドロンあたりが入れ替え候補かなあ。


・特殊スキルの場合、スキルポイントを消費して習得する。

 つまり盾術ランク1を手に入れるためには、スキルポイント1点を消費か。

 さらに2点を使えば、盾術ランク2になるのか。

 うーん、トークン200個も使って、さらにスキルポイントねえ。


・アイテム複製セットは、これのなかにアイテムを入れると、同じものがもうひとつできるというスグレモノ。

……どういう技術なんだこれ。

いや、魔法にどうこうツッコんでも仕方がないんだけどさ。


 ちなみにクラスAのアイテム複製セットは、サッカーボールくらいのおおきさの球体がすっぽり入りそうな、正方形の箱だ。

 クラスBは直径一メートルくらいらしい。


 複製できるのは一回限りで、この白い部屋でのみ運用可能。

 箱のなかに詰め込める範囲なら、いくらたくさんのアイテムであっても複製可能であるという。


 ただし、複製できないものもあるとか。

 たとえばトークンは複製不可能らしい。

 そりゃそーだ。


 いちおう、「銃弾を詰め込めるだけ詰め込んだら、まとめて複製可能か」と訊ねてみた。

 イエスという答えが返ってきた。

 そうかい、そうかい。


 まあ、いいや。

 いま考えるべきは、そんな他人のことじゃない。


「いまの手持ちだと、ランク1の魔法しか買えないわけだけど」


 ランク1の魔法は全部で二十個以上あった。

 面倒だけど、一個ずつQ&Aする。


 ざっと調べた感じだけど、こうして買えるランク1魔法には、二通りのタイプが存在するようだ。

 ひとつは、普通のランク1魔法と比べていささか弱めなランク1魔法。

 ランク2の魔法は、ランク1クラスの使い勝手だ。

 なかには、露骨にぼくらが使える魔法の下位互換も存在した。


 ああ、そうか。

 だから買えるのか。

 あくまでもスキルポイントで得られる魔法スキルがメインで、こちらは補助なわけか。


「攻撃魔法のないカズっちが自衛のために買うなら、アリ?」


 ミアの言葉がすべてだろう。

 偏った編成をしているひとが、偏ったパーティが、あくまでも補助として得る能力ということだ。


 そしてもうひとつが、便利系魔法。

 たとえば、リード・ランゲージは、どんな文字でも読むことができ、意味を取れるようになる魔法らしい。

 見知らぬ文化のなかで暮らしていく場合、こういった魔法が必要になることだろう。


 見知らぬ文化、か。

 ここが異世界であるとするなら、この大地にもやはり、ひとが住んでいるのだろうか。

 オークについてQ&Aした際、「現地でオークと呼ばれるモンスター」という回答があった。

 つまりやつらを現地でオークと呼ぶ者がいる、ということなのか。


「ひとつ買うとしたら、リード・ランゲージ、マジック・ハンド、ゴースト・タイアードあたりか」


 マジック・ハンドは、ゆっくりと動く透明な手をつくり出し、自由に操作する魔法だ。

 具体的には、こっそりスカートめくりはできるが、剣を持ち上げたりはできないらしい。

 投擲するとか、そういう激しい動作も無理。

 使いようによっては有効な気がする。


 ゴースト・タイアードは、対象に触れてこの魔法を使うことで、対象に多少の疲労を覚えさせるという魔法だ。

 地味だが、それなりに有効そうである。

 問題は、対象に接触しなければいけないということで……。

 これ、むしろアリス向けかなあ。


 なお直接攻撃魔法は、せいぜい、ティンダーという名の発火魔法がある程度だった。

 このティンダーの魔法、アリスやたまきは便利だ、といったのだが……。


「ん。ライターかチャッカマン使おう」


 ミアの賢明なひとことが、すべてだった。

 そう、ぼくらの手もとにある文明の利器で代用できるような魔法はいらないのだ。

 リストに二十個あるランク1魔法のうち、半分以上はそういう魔法だった。


「リード・ランゲージに一票」


 ミアがいう。

 ぼくとしても、たしかにこれなら、と思わないでもない。

 皆の同意を得たあと、ぼくは赤トークン30個、青トークン7個をミアベンダーに入れ、液晶パネルのリード・ランゲージを選択する。


 背後のノートPCから、メールの着信音のようなメロディが流れた。

 ぼくのノートPCを覗きこむと、新たにリード・ランゲージという魔法を得たため、既存の魔法のどれと入れ替えるか選択しなければならない旨が表示されていた。


 ぼくはカーソルを操作し、サモン・コールドロンを選択する。

 さらば大鍋よ。


 いやまあサモン・コールドロンも使えるっちゃあ使える魔法だけど、鍋が欲しけりゃ育芸館の調理室に行けばいい。

 寮の調理場を漁ってもいい。


 なおリード・ランゲージを手に入れても、ミアベンダーの表示からはこの魔法が消えなかった。

 よし、各種アイテムは早い者勝ちという懸念については払拭されたか。

 ならばなおさら、今後のことを焦る必要はない。

 できればみんなと、最低でも志木さんと相談したうえで、必要なものだけ手に入れよう。


 かくしてぼくは、新たにリード・ランゲージという魔法を得て……。

 白い部屋を出る。


 もとの場所に戻る。



和久:レベル10 付与魔法4/召喚魔法3 スキルポイント4



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