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61_2 - 魔の戦士エドゥ

 魔同士の激突は最初から激しいものとなった。

 バーリハーが地を蹴ると同時に急降下したエドゥが、重量感を感じさせない動作で大剣を振り下ろせば、紅い刀身を頭上に構えてバーリハーが待ち受ける。

 常識から考えれば受けきれるはずもない。大人ひとりを余裕で隠せる巨大な大剣が重力を味方につけて、しかも漏れ出すほどの魔力を宿らせて振り下ろされたのだ。同じく大剣で受けるのならばまだしも、片刃の細い刀身しか持たないバーリハーの刀ではあっさりと叩き折られるのが分かり切っていた。

 よしんば刀が耐えたとしても、踏ん張りきれない。

 それがシュキハの予想だった。


 大剣と刀がぶつかり合い甲高い金属の悲鳴を上げる。耳をつんざく不協和音は、とてもではないが金属同士が奏でる音ではなかった。

 びきっとバーリハーが立つ地面に亀裂が走る。まるで地割れだ。

 再び腕を前方に突き出したルーダが展開した魔力障壁が余波で生じた衝撃波を防いだ。

 バーリハー、そしてエドゥの周囲に大小様々な魔力球が浮かび上がる。その数、十数個。宿した属性で色分けがされているのか、淡く色付く魔力球から禍々しさは感じられなかった。

 対してエドゥが浮かべた魔力球はいづれも光を受け付けない紺色一色。鼓動を刻むように収縮を繰り返す魔力球からは禍々しさしか感じられなかった。

 同時に魔力球が射出される。

 威力はほぼイーブン。バーリハーの魔力球は何かに衝突すると、夜空に華やかな花を咲かせる花火のように余韻を残しながら威力を発揮するが、エドゥの魔力球は何かに衝突すると、すべてを平らげるブラックホールのように余韻すら残さず威力を発揮したら速やかに消滅した。

 シルエットが黒いという点を除いたらすべてにおいて正反対な2人だった。


「バーリハーってちゃんと戦えたのね。もやしかと思ってたわ」

「かなりアクティブに切りかかられたりしたけどな、俺は」

「そうだった?」

 前方で繰り広げられる激しい戦闘とは裏腹に、ただの観覧者と化したエリスとシックの割とのんきな会話が聞こえてきた。

「魔力総量は王様のほうが上だよね」

「じゃがエドゥには王にない豊富な経験と身体能力がある」

「そうだな。単純な腕力はエドゥのほうが高そうだ。空も飛べるようだし、戦術の幅ははるかに上だ」

「あら、そんなことないわよ。バーリハーの馬力ってすごいのよ」

「君はさっき彼のことをもやしと評してなかったか?」

「そうだったかしら」

 ルーダとハスノミヤが会話に参加すると、もはやただの観客席状態だった。

 というか、だ。

 ハスノミヤは爛々と目を輝かせて頬を紅く染めながらエドゥの応援をするのはやめてもらいたい。無意識なのかもしれないが、会話中ではエドゥの優位性しか主張していない。操られているとはいえ、一応敵に分類されているのだから自重して欲しいと思うのはわがままだろうか。


 剣と魔導を巧みに織り交ぜた2人の魔の戦いは、周りの被害を考慮するという概念が頭にないのか、障害物の何もないだだっ広い空間に多数のクレーターを穿ち、なおも激化を極めていた。

 なんというか、大変に悔しいが、シュキハがエドゥと刃を交えていたら3分も持たなかっただろう。肉弾戦ならば得手としているが、魔導となると完全な門外漢だ。ブラックホール的な黒い魔力球を打ち出されたら対抗する術がない。

「気になっていたことがあるんだが」

「なに?」

 蚊帳の外に置かれているシックたちの会話に緊張感は早々に抜け出していた。世間話の延長のような空気を醸し出してすらいる。

「フューレにしろニッチにしろ、ドアを開けてすぐに彼らのトラウマを見せつけられたが、今回はなかったな」

「ああ、そう言えば。まぁニッチのは見てないけどね。誰かさんが先に行っちゃったから」

「ごめんなさい」

 棒読みで謝るルーダの頭をエリスがくしゃくしゃと撫で回す。

 感覚としては弟と接しているつもりなのだろうが、反対側で目を細めてルーダを見ているシックの存在を、エリスはもう少し意識すべきだ。さすがに可哀想だった。

 とはいえ、それでヘソを曲げるほどシックも余裕のない男ではない。


「そもそもトラウマ映像を俺たちに見せる理由はなんだ?」

 話を戻されてエリスもルーダから手を放す。

「こっちの心を折るためなんじゃないの? そう言ってなかった?」

「ああ、俺もそう思ったがどうも違う気がする」

「どういうこと?」

 怪訝気に口を尖らせるエリス。

 質問に答えたのはルーダだった。

「ニッチたち自身が見せてきてたんじゃないかな」

「自分のトラウマを? わざわざ?」

「俺は……あれを見て、絶対に勝たなきゃならないと思った。あれがなければ最後の最後で立ち上がることもできなかっただろうし、そもそもフューレの攻撃に殺意がこもっていなければ初手で俺の負けだった」

「ルーダも?」

「うん。ニッチはきっと、オルフェ以外に友だちって呼べる人がいなかったんだって思って、じゃあ歳が近い自分と全力で遊べれば満足するんじゃないかなって」

 ぱちぱちと目を瞬かせて、エリスの視線は宙を滑り未だ激しくぶつかり合う2人へと向けられた。

 エドゥの大剣から溢れ出た黒い魔力がバーリハーを捕らえようと触手のように蠢く。対してバーリハーは、紅い刀身を閃かせてその悉くをなます切りにしていく。

 一進一退の攻防は未だ終わりが見えなかった。


「それって、まるで黄昏の支配から脱しかけてたみたいじゃない」

「ああそうだな。俺もそう思う」

 激化を極める2人から視線を戻す。

「恐らくじゃが、あの女魔導師の力添えでは?」

 熱心にエドゥを見ていたハスノミヤも話題に興味を持ったのか、視線は相変わらずエドゥに注ぎながらも会話に加わってくる。

「パレニー様の見解だと、黄昏が彼らを切り捨てたんじゃないかって」

「うむ、そうじゃな。エドゥの支配を優先したのじゃろうと思う」

「だからエドゥのトラウマは見られなかったってこと?」

「あくまで予想だけどな。そう考えれば納得できる」

 なるほど、と腕を組んでつぶやくエリスをいちべつし、思う。

 なんだろうこの疎外感。

 ひとりだけ直接戦闘を行っていないからシックやルーダの意見に同意できないし、ハスノミヤやパレニーのように見解を述べることもできない。立場的にはエリスと同じなのだろうが、彼女は元からそういう立ち位置だ。シュキハとは大きく違っていた。

 思わず、活躍の場を奪った張本人であるバーリハーに剣呑な視線を送ってしまう。


 戦局は徐々にエドゥ優勢に傾き始めていた。

 ほぼ互角の実力を持つ者同士なら、結局最後にものを言うのは経験だ。かつて多くの戦場を渡り歩いたエドゥとは違って、バーリハーは1000年以上も島に閉じこもっていた人物。エリスと出会って初めて外に出たのだから経験値に差が出てしまうのは致し方ないと言える。

 天性の戦闘センスはあるのだろうが、エドゥはセンスだけで凌駕できる存在ではなかった。

「まずいな」

 つぶやくシックに完全同意だった。

 このままだと遅かれ早かれバーリハーは負ける。かと言って下手に助太刀に入ってもかえって邪魔になるだけだ。

 なんとも歯がゆい状況にあった。

 だが――


「シュキハ」

 不意に呼ばれて視線を転じる。

「わらわの邪視をそなたに貸与することは可能じゃが、それで王を救いエドゥを無力化することはできるか?」

 軽く目を瞠った。

 予想だにしなかった提案である。エリスたちにとっても予想外のことだったらしく、一様に驚いた表情を浮かべていた。

 覚悟を決めたのだという言葉に偽りはないのだと。

 そうわかってしまえば、ここでシュキハが否を口にできるはずもない。

 思案するように沈黙を挟んでから、シュキハはしっかりとうなずきを返した。

「やります」

 やれるとは断言できない。だけど、やるという覚悟はある。

 瞬きの刹那にだけ、ハスノミヤの瞳に切なさが浮かんだが、それには気づかないふりをしておいた。

 ハスノミヤの手がシュキハの額に触れる。

「……エドゥを、許して給う」

 その囁きを最後にハスノミヤの手が遠ざかった。

 顔を上げる。

 目に映る光景は何も変わらない。しかし、360度すべてが知覚できる。それまで漠然と目で捉えていたものが、明確な存在として認識できる。

 視力だけではなく、魔力で物を認識しているのだと一拍置いて理解した。

 視界の広さは変わらないのに、この空間のすべてを俯瞰しているように把握することができた。

 目を細めてそのまま閉じる。

 視界を遮断しながらもなんの不便もなく生活できていたハスノミヤの謎がひとつ解けた。これは視覚すら必要としない。

 目を開け、二槍を両手に構える。

「行ってまいります」


 踵を返して、ルーダとハスノミヤが二重で発動している魔力障壁の外へと足を踏み出す。途端に濃密な魔力が圧となってシュキハの体から自由を奪わんと襲いかかった。

 魔の島であるブラスノルカ島とは比にならないほどに濃い魔力は、人の身で受け止めるにはあまりにも無謀すぎると言わざるを得ない。わずかにではあるが魔の血を引いているシュキハだからこそ、窒息感に喘がずに済んだ。

 小さく深呼吸をしてから地を蹴る。粘つくようにまとわりつく魔力は気合だけで無視した。

「助太刀御免!」

 駆け足を止めず、こちらに背を向けていたバーリハーの肩を踏み台に跳躍する。ちょうど大剣を振り切った体勢のエドゥの眼球がギロリとシュキハに向いた。


 大気に満ちている魔力層を突き破り槍が地面に突き刺さる。その槍を足場にしてバーリハーが、シュキハの刺突から避けたエドゥに追撃をかけた。

 即座に槍を引き抜き、横に体を投げ出す。

 横薙ぎの雨のように降り注いだ魔力の塊が、槍が突き刺さっていた地面をさらに抉った。

 もしハスノミヤから邪視を貸与されていなかったら今の攻撃は避けられなかっただろう。それほど反撃は迅速だった。

 両手で地面を突いて投げ出した体を起こす。

 エドゥは皮膜の羽を広げて上空へと離脱していた。

 いや、ただ離脱しているだけではない。

 無数のピンポン球大の魔力球を驟雨(しゅうう)のごとく降らせてくる。身体能力だけで雨に濡れずにいられるはずもないのと同様、シュキハがそれらを完全に避けきれることができないことは浴びる前から容易に推測できた。

 だからシュキハは(はな)から避けるという選択肢を捨てた。


 槍を肩の高さに構え、体を弓なりに反らす。

 狙いをじっくりと定めている時間はない。魔力球は眼前にまで迫っていた。

 引き絞った腕から槍が射出される。弧も描かない槍の弾頭は、追走するように放たれたバーリハーの魔力の矢と融合してさらにその速度を増した。

「ぐっ」

 降り注ぐ魔力球が全身を殴打する。顔の前で腕をクロスさせているものの、それで防げるようなものではなかった。

 容赦なく体を打つ。バーリハーがとっさに張った魔力の膜がなければ殴打だけでは済まなかったに違いない。今頃全身は穴だらけになっていたかもしれない。

 だが防御を捨てて攻勢に出た成果はあった。

 投擲した槍がエドゥの片翼を穿った。

 体を打つ魔力球を振り払うように腕を振って駆け出す。片翼だけでは自重を支えきれずに降下してくるエドゥの降下地点へと先回りに駆けた。

 降下中のエドゥと目が合う。

 勢いを殺さず、シュキハは槍を突き出した。

 大剣の腹で刺突を受け止めたエドゥが後方へと吹き飛んでいく。背後からバーリハーの大量の魔力球の群れが吹き飛ぶエドゥへと追撃をかけた。

 爆炎の中にエドゥの姿が消えていく。

 シュキハは結果を見届けずに体を反転させた。


 駆けてきていたバーリハーが目の前で跳躍する。差し出すように前方に突き出した槍の穂先に足が付いたか付かないかのタイミングで、槍を振り上げてバーリハーの体を上空へと打ち出した。

 と同時に体を戻す。

 大剣の一振りで爆炎を引き裂き、ちょうどエドゥが姿を現したところだった。

 槍が貫いた羽以外に目立った外傷はない。バーリハーの魔力球散弾はどうやら防いだらしい。あの状態からよく防げたものだと思う。

 羽の傷も魔としての高い自己治癒力によってすぐにでも塞がるだろうと思えた。

 時間をかけるほどに勝利からは遠ざかる。それが否応なく理解できた。

 エドゥの血を引いていたとは言え、かつての英雄スオウはよく彼に勝てたものだと改めて英雄の偉大さを実感する。その彼の血を遠からず引いているのだ、ここで投げ出すわけにはいかない。

「行くぞ!」

 裂帛の気迫と共に地を蹴る。

 エドゥもまた同時に地を蹴っていた。


 振り上げられた大剣が左に傾けた体をギリギリ掠めていく。突き出した槍は皮膜の羽に弾かれた。

 槍を持つ左手がジンと痺れるのを歯を食いしばって耐え、大剣が振り下ろされる前に足を踏み込みエドゥの間合いの内側へと入り込む。フリーになっていた右の拳を固く握り込んで(たい)の開いたエドゥの腹に拳を叩き込めば、ほぼ同じタイミングで側頭部に大剣の柄を叩きつけられた。

 側頭部に受けた衝撃を少しでも逃がすために力に逆らわずに吹き飛ぶ。腹に叩き込んだ拳もそれなりの効果があったのか、すぐには追撃はこなかった。

 クラクラする頭を押さえて立ち上がる。

 体勢を立て直したエドゥと目が合った。

「?」

 違和感に動きが一瞬だけ止まる。

 その隙を見逃さず、距離を詰めてきたエドゥの大剣がシュキハの左腕を槍ごと切り飛ばした。

 一拍置いて切断面から血が噴き出す。

「シュキハ!」

 ハスノミヤかエリスか、誰か女性が上げた叫び声が鼓膜を揺らす。

 だがそれに構っていられる余裕などシュキハにはなかった。


 肩口付近から切り落とされた左腕を残った右手で掴み上げる。まだ体温が残っているそれを振り回せば、まだ内部に溜まっていた血液が切断面から飛び散った。エドゥの目に。

 半ば反射的にエドゥが目を閉じる。こういうときの反応は人だろうと魔だろうと変わらない。

 それは戦いの場においては決定的な隙になる。

 拾い上げた腕を捨て、シュキハは渾身の力をもってエドゥにタックルをぶちかました。

 女とは言え普段から鍛錬を怠らないシュキハの体当たりは、隙を突いたこともあってエドゥを吹き飛ばすには十分な力を発揮した。吹き飛ばせただけとも言えるが、今回の場合はそれこそが目的だ。

 エドゥが踏みとどまった場所、そこが上空に打ち出したバーリハーの落下地点。


 下に刃先を固定した紅い刀身がエドゥの背中を貫く。

 完全にではないが目つぶしができたこと、血臭で嗅覚を鈍らせたことで上空から降ってくるエドゥに気付けなかったのだろう。姿を消していたバーリハーを警戒はしていたようだが、こちらがハスノミヤの邪視を所持している以上はエドゥがこちらの裏をかくことは実質不可能だった。

 エドゥの背を蹴る反動で突き刺した刀を引き抜きながらも、バーリハーは止めを刺すその瞬間まで攻勢の手を緩めない。エドゥの足下に光陣が浮かび上がったと思ったら、次の瞬間には火柱が立ち昇ってエドゥの体を飲み込んでいた。

 だが。

「……タフすぎるのも大概にしてほしい」

 ポロリと愚痴がこぼれ出る。

 邪視で見えるエドゥは火柱の中で笑っていた。実に楽しそうに。

(笑う?)

 ハッと目を瞠る。

 大きく羽を羽ばたかせることで火柱をかき消したエドゥが、口元に滲んだ自身の血を舌先で舐めた。その顔に浮かんでいる表情は愉悦だ。

 強敵を前にしたトウナが嬉しそうに笑う姿とそれは酷似していた。

 先ほど疑問を抱き、一瞬だけ意識を奪われたそれ。

 一切の光を宿していなかった瞳は爛々と、背中から胸にかけて穴が空いているというのにまったく意に介した様子はない。正しく戦闘バカの見本だった。

「貴様は死んでもその性格は治らなかったようだな」

 呆れたようなバーリハーのつぶやきにエドゥは答えなかった。代わりに放ったのは鞭状にしなる魔力。

 戦闘バカとしての本能は目覚めたのだろう。だがまだ黄昏の支配下にある。そういうことなのだろうとシュキハは予想した。

 捨てた腕が放り出した槍を拾う。

 急激な失血で体の芯が冷えていく感覚はあれど、戦闘による昂揚感がそれを中和した。シュキハもまた戦闘バカのひとりだ。


 振り返ってハスノミヤの様子をうかがう。

 邪視をシュキハに貸与している現在でも彼女には邪視は有効なのだろうか。有効なのだとしたら純粋に戦闘を楽しんでいるエドゥの笑みが見えただろうか。見えたとしたらどう思っただろうか。

 邪視で見えるハスノミヤの表情に揺らぎは見えなかった。

 それにホッとしてもいいものかどうか。

 振り切るようにしてバーリハーと打ち合うエドゥへと視線を戻す――邪視に違和感を覚えた。

 戻しかけた首を再度ハスノミヤらがいるほうへと向ける。

 おかしな点はどこにも見られない。はずなのに。

「おばあ様!」

 感じた焦燥のままに声を張り上げる。

 そうしなければならない気がした。


 ビリッ


 最初は小さな音だった。

 何かが裂けるような。ビリッ、ビリッ、と。

 シュキハ以外の誰もがその異変に気付いたときには、ハスノミヤの背後の空間が完全に裂けていた。

「おばあ様!」

 そこにいた観戦者たち全員が息を呑む時間すら与えない速さで、裂けた空間から伸び出てきた腕がハスノミヤの体をつかみ上げる。駆けだす足も間に合わない。

 空間の裂け目から腕の主が這い出てくる。

 それはひどく醜悪な姿をした、まさしく『化け物』と呼ぶに相応しい巨躯の存在だった。

 悲鳴が上がる。恐らくはエリスの。

 駆けるシュキハの脇を何かが通り過ぎる。

 黒いシルエットのそれは最短距離で化け物に近接し、ハスノミヤの体をつかみ上げている化け物の腕を切り落とした。

 が――

 化け物の動きはその巨躯からは想像ができないほどに俊敏だった。


 丸太よりもなお太い腕が押しつぶす。骨が折れ肉がつぶれる不快な音をまき散らして。

 ハスノミヤを助け出したエドゥごと。


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