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16 - 嘘より甘く、真実より儚く

 シックは目を覚ました。なぜか? そんなものは体に聞いて欲しい。

 なんとなく損をしたような気分を味わいつつ体を起こす。


 照明の落とされた室内は薄闇に塗りつぶされ、外から聞こえてくる虫の輪唱と誰かの歯ぎしりの音を覗けば静寂そのものだった。

 片手で額を押さえる。

 不覚にもシックはカウンターにうつ伏せになって眠っていた。グラスが転がっているので酔いつぶれてしまったのだろう。酒に強い自信はあったのだが、疲労の蓄積と睡眠不足が重なれば酔いが回るのも早い。

 ずきずきする頭を落ちつけようと水を探すが、それすらも億劫だった。


 誰もソファーに――ベッドは2つしかないので必然的にシックが寝る場所はソファーになる――運んでくれなかったことをネタに朝起きてから2人に絡むと決意し、せめてもの仕返しにエリスの無防備な寝顔でも観察してやろうと椅子から立ち上がる。明日それを話せば盛大に悔しがってくれるだろうか。

 自分の予想にほくそ笑みながら、盛り上がったベッドの内のひとつを覗く。歯を食いしばって難しい顔をして眠っているルーダがいた。外れだ。

 ならばと残ったほうのベッドを覗く。

 つぶらな瞳のくまのぬいぐるみがいた。


「……………………………………………………まさか――」


 血の気が引くようにして一気に酔いが醒める。

 慌てて小屋から飛び出すも、室外に広がっていたのは物言わぬ静寂のみ。エリスの魔導の炎で焼却処分された帝国のホバーが横たわる姿は、シックの目に滑稽に映った。

 ため息を吐いてドアに寄りかかる。


 頭のどこかで予想はしていた。

 いつかエリスはシックらの前から姿を消すだろうということ。予想していたよりもずっと早かったが、少しもおかしくなかった。

 落胆が広がる。

 女性の足でそう遠くは行っていないだろうが、どこに向かっているかもわからない相手を追うのは至難の業だ。ましてや、エリスには空間移動のできるラドという仲間がいるのだ。今頃別の国にいたとしても不思議ではなかった。


 目を閉じて再度ため息を吐く。

 みすみす黄昏への手掛かりを失ってしまった。

 明日ルーダになんと説明すべきか、瞼の裏を見つめながらシックはぼんやりと考えた。


 ふともたれかかっていたドアから体を離して左右に視線を巡らせる。

 虫の鳴き声に混じって別の音が聞こえたような気がした。

 見渡せる範囲にかすかな音の発生源らしきものはない。

 室内かもと思いドアを閉めてみる。かすかに震えるような音は変わらぬ音量で聞こえてきていた。


「…………裏、か?」

 誰にともなく呟いて足を裏庭へと向ける。自然と足音を忍ばせていた。

 確率的には高くないが、もしかしたら帝国の追手が潜んでいるかもしれない――それが杞憂でしかなかったことは間もなくしてわかった。


 裏庭にいたのはエリスだった。


 小屋に背を向ける形で井戸を覗きこんでいる。

 彼らを置いて出ていってしまったと早とちりしていただけに、エリスの後姿を見たときの安堵感はひとしおだった。同時に恥ずかしさもこみ上げてくる。

 勝手な勘違いにしろ驚かされたのは確かだ、とエリスにしてみれば被害妄想も甚だしいことを思うと、口元を不敵に歪めてシックは足音を忍ばせてエリスの背後に近付いていった。


「――――でいいよね?」

 近づくにつれ小さく吐き出されるエリスの声が聞こえてきた。

「黄昏が招く不幸はさ、私が全部引き受ければみんな幸せになれる」

 足を止める。

 耳を疑った。

 こう言うと失礼かもしれないが、エリスがそんな偽善的な発言をするような女だとは思えなかった。もっと独善的な女だと思っていた。


「死んでも誰かを幸せにできるって…………素敵だよね、ママ」


 溜まらずに息が漏れる。

 我ながら勝手な話だとは思う――シックの中で確立してきていたエリスという女のイメージが崩れていくのをシックは感じた。

 失望とは違うが落胆はした。

 そしてじわじわと沸き起こってくる別の感情もある。


「俺はそれをステキだとは思わないな」

 痙攣するようにエリスの体が震えた。

「君が死ねば後の時代に美談として語り継がれるかもしれないが、他人の勝手な願いを叶えるために死んでそれで君は幸せか? 俺から言わせればそんなものただの無駄死にだ。自己犠牲の上に成り立つ幸せなどあるはずがない」


 脳裏に浮かんだのは兄の笑顔だった。

 家出してまで騎士団に入りたいと告白したシックに付き合い騎士団に入り、そしてリブエンド荒野の戦場に命を散らせた兄は果たして幸せだったろうか。あの兄のことだから笑顔で幸せだと答えるだろうが、それをシックは認めたくなかった。弟のために平穏な生活を捨て戦争の犠牲になった兄が幸せであったはずがない。


「……盗み聞きなんて趣味が悪いわね」

「ごまかすな」

 井戸を覗きこんだ体勢のままエリスは振り返ってこない。表情が見えないことがシックには不満だった。


「君の傍には俺やルーダがいる。ひとりで背負い込もうとするな」

「別に背負おうなんて思っちゃいない。私は私の幸せのためにずっと黄昏を追ってきた」

 エリスの肩が震える。井戸の縁に置かれた手に力が込められているのが見て取れた。


「でも半年前に狂った。夢喰い人になった時点で私はもう願いを叶えることができなくなった。……――私が選べる道なんてこれ以外にないのよ!」

 初めて聞くヒステリックな声だった。

 必死に感情を抑えようとしているのに、喰いしばった歯の間から這い出るかのように。


 彼女の気持ちを完全に知ることはできないが、想像することくらいできる――その決断をすることがエリスにとっていかに苦しいことだったか。

 言葉に迷う。慰めの言葉は侮辱になるかもしれない。

 数呼吸分の間を開けてからシックは口を開いた。


「夢喰い人の死をもってしか願いを叶えられないのだとしたら、黄昏なんて壊してしまえばいい。そうすれば君は夢喰い人という呪縛から解放される。それしかないと諦めるにはまだ早いはずだ」


 意図していたわけではないが口調はどこか淡々としていた。

 ゆっくりとした動作でエリスが振り返ってくる。眼差しには嫌悪にも似た感情が宿っていた。

「あんたは鍵の本質も夢喰い人の意味も知らないからそんなことが言えるのよ」

「本質……? 鍵には夢喰い人を選定する以外の性質があるのか?」

 ゆるゆるとエリスが首を横に振る。否定の意味ではなく、拒絶の意味で。

 見つめるシックの視線から逃れるようにエリスの顔が上に向く。つられて頭上に目をやれば、薄い雲に隠された月が見えた。白銀色の光を放ち悠然と空に居座っている。


「黄昏を求めるということはね、結果的に誰が犠牲になったとしても願いを叶えることを望むということなの」

 顔を下ろしてエリスを見る。月を見ていると思っていたエリスの目は瞼の裏に隠されていた。


「それはできない。他人を犠牲にしてまで叶えた願いなど虚しいだけだ。君のように巻き込まれてしまった女性が犠牲になるとわかっているのならなおさらだ」

「巻き込まれたわけじゃない」

 閉じていたエリスの瞼が開く。


「むしろ私はすべての原因。この戦争を引き起こしてしまったのも、ね」


 息が止まった。見開いた目は瞬きを忘れ、夜風に晒されて痛みを訴えるまでエリスを凝視し続けた。

 ――なんと言った?

 頭が理解することを拒絶しているかのようだった。

 唇は言葉を紡ごうと震え、しかし何も言えないままキュッと引き結ばれる。

 動悸が激しさを増し、息苦しさすら感じた。


「それは……本当か?」

 理解が追い付いても信じることはできない。

 問いかける声が震えていても取り繕うこともできなかった。


「本当よ」


 一度もシックを見ることなく、それでもはっきりと認めるエリス。

 これが虚言だとしたらこれほど悪質なものはない。口内に苦いものが広がっていく感覚に気持ち悪さを感じた。

 シックから遠ざかるようにエリスが歩き出す。シックはそれを目で追った。


「半年前の皆既日食の日に、私はリドルの協力を得て黄昏の鍵を手に入れた。その後すぐに裏切られて殺された」

 彷徨うようにしてエリスの右手が彼女自身の胸元に触れる。

「でも私は鍵によって生かされた。今ここには心臓の代わりに黄昏の鍵がある」

 触れた胸元を示してエリス。

 シックはただ黙っていることしかできなかった。


 反応のないシックをどう捉えたのだろうか、エリスはそのまま続けた。

「鍵は寄生型の魔力結晶。何かに寄生して初めて価値が出る。それが夢喰い人」

 止めていた歩みを再開させて再びエリスが歩き出す。

「そのときにはもうバーリハーと契約を結んでいた。契約の内容はとてもシンプル。すべての準備が整ったら、私が黄昏へと至るために世界に混乱を招く。夢喰い人の誕生はその合図だった」

「……君は自分の欲望のためだけに世界に戦争をもたらしたのか?」

 足を止めて、こくりとエリスがうなずく。


「私は夢喰い人になるつもりなんてさらさらなかった。夢喰い人の運命を知りながらそれを他人に押し付けるつもりだった。そしてバーリハーすらも出し抜き自分の願いを叶えるつもりでいた」

 そこまで口上を続けて、エリスは肩越しに振り向いてきた。

「戦争は手っ取り早かった。あんたらみたいな人を引き込み、欲深い帝国の目をこちらに向けさせないためにも」

 エリスの口元だけに浮かんだ作り物の笑みはやがて自嘲的なそれに変わる。


「打算的で自分勝手な女の浅知恵が人と魔の戦争を引き起こした。私は――」

 再びエリスの顔が天を仰ぐ。


 自分でもエリスを見る目つきが鋭く剣呑なものに変わっていることに気づいていた。

 腰に吊った剣帯に納まる剣を意識している自分がいる。

 体が変に緊張して息を吐き出すことも意識的に行わないとうまくできなかった。


「つまり君は己の欲望のために起こした戦争の罪滅ぼしのために、俺たちのようなバカを集めて旅をしているわけか」

「罪の意識がないわけじゃないけど、夢喰い人になった今でも私は己の欲のために行動してる。世界なんてどうなってもいいとも思ってる」

「罪なき人々の命が戦場に捨てられる今でも君はまだ己の欲のために他人を利用するのか?」


 女性相手にここまで声を低くして会話をする日が来るとは思っていなかった。

 今エリスに対して抱いている感情をうまく説明することはできない。怒りなのか、哀しみなのか、虚しさなのか、そのすべてなのか、あるいはまったく別の何かなのか。

 兄の笑顔を思い出すとどうしようもなく震えてくる。胃の辺りがじわじわと熱くなってくる感覚は逆に寒気を呼び込んだ。


「そこまで君を欲に狂わせる願いとはなんだ?」

「あんたに話す気はない。憎みたければ憎めばいい。それでも私は止まらないから」

「君はすぐにそれだ。なぜ理解を求めようとしない? 心を閉ざして他人を拒絶しても失うばかりで何も得られはしない」


 足を動かす。一度動き始めてくれた足は一直線にエリスの元へと向かった。

 シックの動きに気付いたエリスが振り返ってきたが、歩調を変えずにシックは近づいていった。


「どうせ誰も彼も裏切るなら初めから拒絶すればいい。あんただっていつかパパやリドルみたいに裏切るんでしょ!」


 叫んで踵を返しかけたエリスを逃がすまいと、シックは一気に駆け出した。勢いを殺さずエリスの右手首をつかむ。相手が女だという気遣いもせずに、強く。痕が残るほどに、強く。

 痛いだろう。

 それでもエリスは振り払おうと腕を振るだけで痛みを訴えてこない――そこが彼女の強さであり、そして同時に弱さでもある。

 シックはつかんだエリスの手を引いた。バランスを崩したエリスの体を両腕の中に閉じ込める。


「どうしたら君の心を溶かすことができる?」

 突然のシックの行動に硬直していたエリスだったが、すぐに思い出したように腕の中で暴れ出す。

 所詮は女の力だ。暴れた程度で抜け出せるほどシックも手を抜いていない。


「どうしたらいいのか、わからない。戦争を引き起こした君は憎いけど、俺はここまで知ってしまった。君をこのまま見捨てることはできない」

「あんたにも誰にもどうにもできないわよ。私はもう死んでるの。……だから憎んで突き放してよ」


 エリスを抱く腕に力がこもる。息苦しいだろうに、そんな気遣いも今のシックはする気がない。

 かき抱くエリスの体は温かく、刻まれる鼓動は触れあった肌を通して確かに感じる。


「君は今ここに生きている。君から感じるすべてがそれを証明してる」

「……鍵に生かされてるだけ。鍵が私を宿主として見限ればそれで終わりよ」

「言ったはずだ。絶対はないと」


 抵抗しなくなったエリスを抱く腕から力を抜く。

 正直なところ、兄を失う原因となった戦争を引き起こしたエリスのことは憎い。どうしたところで身勝手な理由で世界を巻き込んだ彼女を許すことはできないだろう。

 彼女は罪人だ。しかる処罰を受けるべきだ。

 が、黄昏へと至る道はエリス以外に知る者はない。贖罪のためにも彼女をここで処断するわけにもいくまい。


 それが理性の声。

 感情は別の理由を挙げる。


 彼女に告げたとおり、深く事情を知ってしまった以上見捨てることはできない。ある意味ではエリスも被害者なのだ。

 肩に手を添え、エリスの体を離す。

 伏せられていた目がシックを映し出すと、一度ためらうように目を泳がせ――シックの背後に視線が向いたときに、大きく見開かれた。

 何事かと振り返るよりも早く、エリスの声が耳朶を叩く。


「……――――っ駄目!!」


 エリスがそう叫んだ瞬間、強く腕を引かれた。エリスとシックの体が回転してその立ち位置が変わる。

 一体なんだと問う前に視界に飛び込んできたのは、今まさに刀身の紅い刃を振り下ろそうとしている黒ローブ姿の男の姿だった。

 目を見開く。

 とっさに剣を抜き放とうとしたたが、エリスに抱きつかれている体勢のままでそれを行うことは不可能だった。

 紅い刃が夜気を裂く。

 反射的に突き出そうとした右手は間に合わず、闇夜の中でも不気味なほどの鮮やかさを誇る紅い刀身はエリスの背中を薙ぐ――その前に動きを止めた。

 舞い上がった風が男の顔を隠していたフードを背中へと流す。

 獅子のたてがみを連想させる長い髪を夜風に遊ばせ、深淵を思わせる深い紫色の双眸が無機質にシックを捉える。


「エリシアナ、契約だ。お前を傷つける可能性のある輩を排除する」


 鋭さを伴った低い声が音を紡ぐ。

 そこにいたのは、魔の王バーリハーだった。

 バーリハーが刀――島国ヤマトの刀と形状が同じなので恐らくは刀だろう――を引く。無造作に下げた刃先は地面を向いていても、油断をしていれば次の瞬間にはシックの首を刎ねているだろう。


「……契約、ね。それはまた随分とこの子に有利な内容だ」

 余裕を演じるために軽口を叩きつつ、エリスの腕を引いて下がらせる。エリスの話やバーリハーの言葉を信じるならば、バーリハーがエリスを害することはないだろうが念のためだ。


「そこまでこの子に譲歩するほど黄昏は君にとっても魅力的な存在なのか?」

「貴様には関係のないこと。我とエリシアナの契約は黄昏に関係なく効果を発揮する」


 弧を描き頭上に掲げられた刃が月の光を受けて妖しく煌めく。気圧されるようにしてシックは思わず剣を抜いていた。

 冷厳に細められた目と視線がかち合う。

 心が完全に圧されるのに抗い、シックは無理やりに声帯を震わせて声を吐き出した。


「なるほど? ならなおのこと不可解だ。その契約で君は何を得る?」

 無言でバーリハーが刀を振り下ろした。

 防衛のために頭上に掲げた剣が、バーリハーの紅い刀とぶつかり鈍い不協和音を奏でる。

 思っていたよりもずっと重たい一撃だった。


「ちょっと! やめて!!」


 力の逃がし場所を失い正面から受け止める形となっていた紅い刀身から、不意に圧が消える。

 バーリハーの視線が迷わずエリスに向いた。対峙するシックのことを見ていなくても問題ないとでも言うように。実際、魔を統括する王であるバーリハーから見れば、ジスターデ国の一騎士でしかないシックなど歯牙にもかける必要のない存在だろう。

 頭でそう理解はできても、シックにもプライドはあった。だからと言ってプライドで命を捨てるほどシックだって愚かでもない。

 重さの和らいだ剣を引いて後方に下がる。


「君がこの子を守ろうとするのと同じく、俺も彼女を傷つけるつもりはない。俺と君が争う理由がどこにある?」

 追撃がなかったことに若干の拍子抜けを感じながらも――バーリハーからすればわざわざ追い打ちをかけなくてもいつでも殺せるという腹積もりなのかもしれない――、限りなく0に近い勝率しかないこの不毛な交戦を終わらせるべく言葉を投げかける。

 エリスへと向いていた視線を一度だけシックに向け、バーリハーはエリスの言葉に従うようにして刀を腰に佩いた鞘へと納めた。


「エリシアナは人を怖がりながら人を求める」

「ちょっ!? いきなり何言ってんのよ!!」

 詰め寄るエリスから逃げるようにして、重力を感じさせない動きでバーリハーの体がふわりと小屋の屋根へと飛び移る。

 人ではありえない跳躍力を見せるバーリハーを見ると、外見は人のそれに似ていてもやはり魔なのだと思い知らされた。


「だが彼女を満たせる者はどこにもいない」

 屋根の上からシックを見下ろして、バーリハー。


 シックはその言葉を鼻で笑った。

「この子もそうだが、決めつけるのは良くない。何事に対してもね」

「貴様に与えることはできまい。疑心に囚われたエリシアナが確かに信じられる絆とやらを」

「できないと君に決められたくないな。やるかやらないかを決めるのは俺自身だ。結果はその先についてくるものだろ?」


 黒い空を彩る月を背後に、佇むバーリハーの目がエリスに向く。鋭さは失われていなくても、シックに向けられるそれとは明らかに違った。

 果たしてシックの返しをどう捉えたのか――それは想像することしかできなかったが、バーリハーはそれ以上の言葉を与えるでもなく宵闇に溶けるようにして消えていった。


「……何しに来たのよ、あいつ」

 怪訝そうにぼやくエリス。シックは苦笑した。


 肩を落として息を吐き出したエリスが小屋へと戻りだす。シックは黙ってそれを見送った。

 彼女に問いただしたいことはたくさんある。それこそ根掘り葉掘り彼女が泣きだして許しを請うてくるまで。

 それでもしない。エリスが話そうと思うまで。


「………………アニキでも、そうするだろ?」

 問いかけは夜風に溶かされ消えていった。


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