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閑話5

短め。

最終決戦の前にナルたちの様子。

 踊るように舞い降りた天使は、見た目の美しさを裏切り破滅の力を振りまく。

 街全体を覆っていた結界はなんの役にも立たなかった。これだから粗悪な結界は駄目なんだ、と思う。前々から売り込んでいる師匠特製の結界装置を早期に導入しなかったこの国は、多少痛い目に遭ってもいい。

 破滅の力を受けて崩れゆく家屋を眺めながら、ナルはそんなことを思った。

 足しげなく売り込みに通ったのに、曖昧な返答ばかりだった恨みは、ナルの中でまだ根を張っている。すべてが無事に終わった暁には、盛大にニヤニヤ笑いながら訪ねてやろう。そう決めた。


『総員、配置に着いたのだ』

 国の役員たちの胃が多大なるダメージを受けることが決定したところで、一時的につないだ思考リンクから報告が届いた。

 いつでもどこでも元気いっぱいのテンテではあったが、今ばかりはそうそう能天気ではいられないのだろうか。声に無邪気な張りがなかった。

 便秘だろうか。お菓子ばかり食べているからだ。

「帰ったらキャベツ一玉食べるっしょ」

『ケーキがいいのだ!』

 無言で思考リンクを切断する。もちろん一方的に。

「爆発するっしょ」

『おめぇがしろ! バーカ! バーカ!!』

 打てば響くような迅速さで罵倒が返ってきた。

 ルーダは忙しいだろうからトウナに絡んでみたが、面白みという点ではルーダには及ばない。罵倒一辺倒では飽きが来てしまう。

 待機中に散々からかい倒して、涙目にさせたせいもあるかもしれない。あいさつをしただけで犬歯を剥き出しにするようになったのは、それはそれで面白いが。

 妹はルーダたちと頑張っているのだ、彼にも頑張ってもらおう。主にナルの相手を。


「第二班、ターゲットを東に誘導するっしょ」

 不真面目な考えに没しながらも、やることに手は抜かない。

 切断した思考リンクを再びつなぎ直して指示を飛ばす。放牧主義の師匠のせいで、てんで統率のとれていない召喚獣たちではあったが、手足として使える数は無駄に多い。いずれの召喚獣も戦闘のできるタイプではないので戦力としては数えられないのが残念。

 荒事に慣れていない召喚獣の、緊張のせいで裏返った返事を聞き流し、ナル自身もその場から移動を開始する。


 敵は全部で3体。こちらはナルを含めて3チームだ。

 ナル及び愉快な召喚獣たちがチームとなって対応する魔導国レトポーフ部隊。

 トウナを筆頭に傭兵を招集して組まれた島国ヤマト部隊。

 そして、魔の王バーリハーが率いる魔部隊。

 師匠の予言した通り、3体の敵はそれぞれレトポーフ、ヤマト、ジスターデの3カ国に降り立った。待ち構えていたナルたちがその対応に追われているわけである。

 なぜ師匠がそこまで正確に予言できたのかはわからないが、あの(・・)師匠だし、と思うと不思議と納得できてしまうのがなんとも師匠らしいというかなんというか。

 基本的になんでもありなのだ、あの人は。そこにオルフェとかいうさらになんでもありな人が加わったのだから、なんでもあり振りに拍車がかかったに違いない。

 考えてみたらむちゃくちゃではないか。鬼に金棒どころの騒ぎではない。近年稀に見る最低の組み合わせだ。


『ナルちぃ、B地点を通過したのだ』

「仕掛けの準備は?」

『完璧なのだ!』

 潜っていた影から飛び出す。ちょうど敵の姿が真上に見えた。

「キミたちが天下だった時代から、あたいらが進化してないと思ったら大間違いっしょ」

 敵が作り出す影から無数の竹槍が生えてくる。作りたてほやほやの新鮮な竹槍だ。

 ぎょろりと不気味な目玉が下を、つまりはナルを捉えた。

「撃ち方始め!!」

 号令の声が高らかに響く。思考リンクで会話しているので声を張り上げる必要はなかったが、こういうものは気分の問題だ。場の雰囲気はなかなか侮りがたいものがある。

 物陰に隠れていた師匠の召喚獣たちが、待ってましたとばがりに一斉にマナチップを発動させた。合わせてナルも影から生えた竹槍を打ち出す。

 真上を除いた全方位からの一斉攻撃に、羽を広げた敵は迷わずに真上へと逃げた。こちらの思惑通りに。

 同時に、ナルも影へと再び潜り込む。


 世界と黄昏との大地の覇権をかけた戦い――黄昏の戦争は、ここに幕を下ろされた。


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