空手撫子
「生田潤壱、ただいま参りました! 遅くなってすみません!」
「ぶったまげっ!!」
元・生田潤壱。男達の巣窟、空手道場に登場。念の為、ミス紫陽花も同行。道場にて、五分刈りの師範と丸刈りの師範代が驚きに合唱した。
師範がビックリ。
「おお! アンタ違うっちゃなかいや!?」
「俺です、師範! 生田です!」
「オイ達ん道場にゃ、女ん子はひとりも居らんとぞっ!!」
「朝、目ん覚めたら、女ん子に成っとったとですよ」
丸刈りの師範代、元・空手男児の驚きの証言に脂汗噴かし、頭をテカらせた。
「そそそん口調は間違い無く生田じゃな」
「有難うございますっ! 師範代!!」
潤が頭を下げたその動きを見た、五分刈りの師範。
「う、うむ。そん動きは、間違い無く生田やな」
「有難うございます! 師範!!」
潤、再び頭下げたのちに嬉しそうにひと言。
「師範、師範代。俺、今から着替えてきます!!」
「お……おう」
「行ってこい」
更衣室に向かう潤の後に続く茜に、二人の大柄な空手家が気が付く。そんな女へと話しかける、五分刈り。
「アンタ、誰か?」
「潤さんの、お友達の大原茜です」
やがて、潤が道着を身に着けて出て来た。百七〇の身長に変化は無いが、細身に成って少しばかりダブついているようだ。しかし、茜は瞳を輝かせる。
「潤さん、似合うっ」
「そ……そうかな」
少し頬を赤らめて、腰に手を置き片足出してポーズ。なかなか様に成っているではないか。
五分刈りの師範、困惑。
「うぬぬ。我が道場に、乙女が来るとは……」
「信じ難いですな……」
丸刈りの師範代の頭から、大粒の汗が流れ落ちる。
「よし! えーっと……」
「生田潤壱改め、生田潤です」
「分かった。潤! 今から、オイ達に型ば見せろ!」
「押忍っ!!」
呼吸整え、半身に構える。
腕を垂直に曲げ払う。
迷い無き拳の突き。
急角度に膝を突き上げる。
天井高く足刀を蹴り上げに繋げた。
風が音を鳴らす。
踏み出して腕を交差。
槍の如く横一線に肘鉄。
踏み込み正拳中段。
呼吸整え足の位置を戻す。
「うむ!! 疑い無く生田じゃな」
師範と師範代、納得の合唱。
「我々も改めて宜しく。生田潤」
「有難うございます! 恐れ入ります! 宜しくお願いします!!」
潤が二人に感謝の頭下げた。
その姿を見て、茜は優しく微笑んだ。
『変身♪』完結
このような書き物に最後までお付き合いしていただきまして、ありがとうございます。
これは、比較的にというか、なんだか自身で気に入っている書き物のひとつです。